神「オマエ転生さしてやるからちょっと頑張ってこい、ちなみにチートはナシじゃ」 俺「は?」   作:ND内

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第七話 責任を持つくらいなら、愛などいらぬ!

 

 「…どうだ、ひとまず落ち着いたか?」

 

 俺は泣き出したシスターの頭を愛を持って撫でている。

 

 「ひぐっ…ありがとうございます。」

 

 慰めの甲斐あって少しずつ落ち着いては来たようだ。

 先程の反応を見た限り余程孤独が怖いと見た。原因は知らんが、あまり放っておけるような感覚はしないな。

 

 「まぁ、泣いた後は少しはすっきりするだろうから構わないよ。こういう時は温かい飲み物なんだが…すまん、今温かいのは白湯しかない。」

 

 民宿だし頼めばなんとやらかもしれないが、前世の経験ゆえか、誰彼構わず頼るのは俺にとっては不可能に近い。一度頼ったことのある人に対してなら頼ることもやぶさかではないが、それ以外なら緊急時以外は頼りたくない。

 

 「いえ…泣き止むのを待ってくださるだけでなく、温かいお飲み物まで用意してくださる程の優しさなど、私は知り得ておりません。なんと幸せでしょうか…。」

 

 やばいなぁ…。どういう生い立ちしたらこうなるんだよ…。

 

 家庭環境とかその辺の話は俺も胸を張って言えるような家庭ではないが、この子の口ぶりから察せられる傷つき様は流石に異常だ。どの世界でもそういう福祉業は変わんねえな。そういう奴らはいつも困ってるやつの声を無視しやがる…。

 

 「シスターさん、これを幸せと思えるのなら、きっとこれからの人生は幸せだらけだよ。あんたのその純心さがあるなら、どこへ行っても幸せに暮らせる。」

 

 この子に自活できる能力があるならの前提だけどね。

 

 「…マサオ様、実は私、もうどうなってもいいや、って思って歩き続けてたんです。マサオ様が水を下さった時に、命の美しさを見つめ直す事ができました。」

 

 「…そうか。」

 

 この子もうリミッター壊れきった後だったのかよ!親は何してんだよ!!

 

 「私はそんなマサオ様に恩返しさせて頂きたいです!!」

 

 …わかってたけどな、シスターさん、それは違うんだ。

 

 「恩返しは必要ない。もし俺に恩を感じたなら、その分を困ってるやつらのために使ってやってくれ。それが俺にとっての恩返しにもなる。」

 

 この言葉は公園のジモさんではなく、俺が世界で一番尊敬してた人の語録を解釈したものだ。

 

 『恩を感じるなら、その良心の矢を世界に広げろ。』

 

 シスターさんは目を丸めてポカンと口を開いてフリーズした。

 

 「お、おい、大丈夫か?」

 

 「あ、あ!はい!すみません、なんて素敵な言葉だろうと思って。」

 

 すごくわかるよ。あの人の言葉は、全てにおいて素敵だった。

 

 「わかるよ。俺の言葉じゃないから。」

 

 俺はそう言って、さっき買ったアップルジュースに手を伸ばそうとした。もう空だった。

 

 はぁ…。と別に何もないがとりとめもなく溜め息をついたら、シスターさんが突然俺の手を両手で握ってきた。ニギニギタイムですか!?

 

 「えっと…どうした?」

 

 「貴方の言葉でなくても、その様な素晴らしい言葉を仰るのにっ!どうして貴方はずっと哀しい眼をしてるのですか!?」

 

 …俺哀しい眼してたかな。そんなに顔に出てたかな。

 

 そう思いエビワラーの方を向くと、普段の気怠げな固定フェイスではなく、俺が初めて見るような顎が外れる勢いの驚き顔をしている。お前、その顔はなんだ。

 

 モンスターボールの中も確認する。バチュルは変わらず何かしら創作しているが、イーブイは見たこともないようなマジ泣きの顔をしてる。マジでお前らどうした。何を悟ってやがる。知らなくて良いことも世の中には蔓延してるぞ。

 

 「さあな、俺には俺自身が哀しい眼をしている認識すらなかった。」

 

 「それではその言葉を教えてくださった人は今どうしているのですか!?」

 

 シスターさん、あんた自身が追い詰められてるだろうに人の心配とは、そんなことしたら回復してもすぐに沈んでしまうだろうに。

 

 「…死んだよ。」

 

 この子にそれを告げるのは少々堪えるが、俺はこれだけは絶対に嘘はつけない。あの人の死の事実だけは、俺だけでも誤魔化してはいけない。俺だけは魂に刻みつけて覚えておかなきゃいけない。

 

 「…それはっ…すみません、私ったら…。」

 

 「いいや、君が気にすることじゃない。あの人に繋がる様な話にしてしまった俺にも非がある。」

 

 俺も他人には話したいような内容じゃない。この話だけは世界が変わっても悪い予感がするからな。あれ以上は何一つも巻き込みたくない。

 

 「…ですが、辛いことだったようなことを思い出させてしまったことは事実です。本当にすみません…。」

 

 …それは本当に構わないんだけどな。この子自身が人に優しいのに自分自身に厳しいんだろうな。いい若さだ。

 

 「俺のことは大丈夫だ。まずシスターさん自身のことを考えな。俺もできる範囲で手伝うから。」

 

 実際こんな謝罪合戦でゴタゴタしてても状況なんて変わりやしない。それよりも目を向けなければいけない事があるからな。今は特に他人の心配なんてされたら困る。

 

 「私、の事ですか。」

 

 「ああ、どういう事情かは俺からは聞かないが、帰る家もない、寄る宛も生活する基盤も何もないんだろ?だったらその状況はどうにかしなきゃな。」

 

 まあぶっちゃけ『養ってください!』って言われても今あるレポートの収入だけでもしばらく養えるんだけどな。あの色黒収益の話で景気付きやがったのか割ととんでもない額を振り込んできやがった。ここまでとは言わないけど今後もレポートと動画配信の収益が出たらもっと入るし、言われないと思うけどウェルカムなんだよね、一応。

 

 

 

 「…あの、もしよろしければなんですが、マサオ様のもとで働かせて頂けないでしょうか?」

 

 「………」

 

 …予想の斜め上だね。

 

 これが『養ってください!』だったら『喜んで!俺の胸にようこそ!』って言ってたのに。ちゃんと働きたいって言うってことは『ゆくゆくはキャリアアップして転職したいんです。恋愛は今のところ考えられません。』ってことだよな。ちょっと鼻の奥がむず痒いぞ。…まだしょっぱくねえからな!ただ…

 

 「…俺のところで働くって…何すんの?」

 

 そう、業務内容である。俺のところでって言われても、俺の仕事なんてその辺のバイトよりもゆるゆるな日記レベルのレポートを最低日に一回出すだけの簡単なお仕事だよ!?一人で回るどころか一人で回さなきゃそれはそれで問題ありだよ??

 

 「そっそれはっ!家事などのマサオ様の身の回りのお世話をさせて頂けないかと!」

 

 …家事って言うけどねえ、俺も家ないんだけどなぁ…。

 

 「…その、ご用命とあらば、夜のお勤めも致します。」

 

 !?

 

 今、夜のお勤めって言った!?夜のお勤めって○○○だよな?○○○以外ねえよな!?待て俺の心のバーサーカー、まだ剣を持つ時じゃない。その剣から手を離すんだバーサーカー。

 

 「うーん、そう言われても、今の所俺も家無しだし、旅をしてる身だし、仕事も一人でしてるしなぁ…。」

 

 断りたい訳ではないが、割り振れる様な仕事がない…。だが、目に見えるほどシスターさんの顔がショックを受けて落ち込んでいる。出しているつもりはあまりないだろうが、感じられる。この捨てられた感!くっ…どうすればいい!?………そうだ!!

 

 「…そうだな、今の仕事は一人でやってるが、もうすぐ新しい仕事のようなものをすることになったんだ。キミが良いなら手伝ってくれるかい?」

 

 正直そっちも一人で出来るがこの子を一人で置いておけないのと、俺が手放したくないので考え抜いて出した妙案である。正直この子タイプだから『養ってください!』の方が良かったのは秘密。

 

 …まぁ養うことになっても養うだけだけどな。何もしない。養うことになってナニしてみろ!それこそ結婚して責任がついて回る!愛のあるワンナイトラブしか俺は受けないからね!

 

 …まあそれ自体が絶滅危惧種だから俺のバーサーカーがずっと持て余されてんだけどな。

 

 「わかりました!私で良ければ是非!!」

 

 …もう何この笑顔!めっかわ!!

 

 「…よろしく。」

 

 とりあえず同行が決まった。とりあえず俺のバーサーカーの魂が解き放たれるのはまだまだ先になりそうだ。

 

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