Romansing saga ms~In the Fate~   作:藍鷹

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ようやくストーリー進展?
なかなか進まないのがつらい……。


乙女は立ち向かう、様々な物事に

 

あれからどれだけ考えても、その一点(船をつかうこと)で煮詰まってしまう。

まるで捻れた輪の中を宛どもなくぐるぐる回り続けているようだ。

 

どうしようもないこの気持ちに対してのフラストレーションに近い何かを解消するには剣を振るのに限る、と磨いた両手大剣を手に(やしき)を出る事にした。

バルハル族は、長く悩むのは性分にあわないのである。

 

 

 

 

 

 

 

明け方の緋色が辺りの白を染めていく。

あたりが騒がしく感じるが、集中。

鞘から剣を抜き、峰打ちからの巻き打ち、横に一閃から縦に唐竹割(じゅうじぎり)

一呼吸、二呼吸、三呼吸。冷たい空気を肺に貯めて、今度は祈りを込めての破邪の十字斬(クロスブレイク)。新雪が僅かに吹き飛び舞い散る

悩んでいては、足さばきは乱れ縺れ、転んでしまう。再度鞘に剣を収め、ひたすらに、その流れを何度も何度も繰り返すのだ。

 

……実際の話、雪原を抜けた先にある街にアルベルトを送り届ければ、それで事は終わりのはずだった。

しかし、あの心神喪失にも似た状態ではいつまで経っても目的地に到着する所か、途中で遭難しかねない。

 

ローザリアの領土に入るか、あるいはクリスタルシティのナイト・ナントカ様とやらの所まで無事に送り届けるのが一番ベターな方法ではあるだろう。

その送り届ける人員も問題だ。

 

面識の無い人物と長くいるのは、最初のとっかかりさえあれば打ち解けるのは早い。

けれど、彼のあの様子ではなかなか難しいかもしれない。

 

と、繰り返す内にある気配を感じた。

久しぶりの、けれどよく見知った気配だ。

 

「ツウ、」

低い声。

それなりに地位を獲得した今では昔のようにつるむ事は少なくなった、すっかりバルハル戦士として成長したリガだ。

しかし、こんな朝早くにどうしたのか? リガも引率者として南の洞窟に討伐に向かったのではなかったか?疑問点(ききたいこと)は山ほどあった。

しかし、振り向いて。

その風貌を見てそれら全ての問いかけは口から漏れることはなかった。

 

その顔は黒ずんだ血がこびりつき、バルハル族特有の小麦色の髪の毛はすっかり固まっている。

自ら捕らえた鹿の角で拵えた長弓は、弦が切れてしまっている。乱暴に巻かれた脚の包帯には血が滲んでいた。

「南に、夫婦(・・)が住み着いた」

 

その言葉に、わたしは青ざめる。

 

 

 

 

 

 

 

南の洞窟はこの一帯で数ある洞窟の中でも、古き神々の遺産とされている。

洞窟としての形をまるで意思を持っているかのように、時折変えてしまうのだが、涌き出るモンスター自体は大した事はないとされる。

例外たる夫婦(・・)を除いては。

 

夫婦、というのはある意味符号だ。

極北企鵝(バルハルペギー)の寿命は短いが、ごくまれに長生きをする個体がある。

それらはオスなら企鵝男爵(ペギーバロン)、メスならば企鵝女爵(ペギーバロネス)と呼ばれており、大抵つがいでいる為にそう称されている。

強い膂力(ちから)に手製の武器、術法(ちのう)という、高位魔獣と呼ばれるに相応しい奴等は、我が母・リウンが死ぬ原因になった、村へのモンスター進行事件でも中核になっていたのだ。

 

数十年単位で現れるそれ(・・)はまず間違いなく、第一級殲滅対象だ。

 

細かい話しはリガの連れていた新人連中の中でも比較的傷が浅いらしい者が長へ直接報告しているのだとか。

しかしその他皆、何らかの形で被害を受けていて、術師や薬師が懸命に治療に当たっているのだという。明け方過ぎに外が騒がしかったのはそれが要因なのだとか。

リガは自身が撤退するのを見誤った為に犠牲を出したのだと、酷く悔やんでいた。

右腕に自分の体を通して支え、邸への道を戻る。

わたしの気配が外にあったから、こちらへ来てしまったのだと。助けてほしいと、力無く言うリガ。

 

体が重く冷たく感じるのは血が抜けている所為か。

ヤアはもう起きているか、治療は出来るか。

あまり血が抜けすぎては脳に酸素が行かなくなり危険だ。回復の術法が使えるキバは、今はバイゼルハイムでの修行で不在だ。

唇を噛む。

バルハル族の村での生き方は、火に頼平る部分が大きい。これにより、術法打ち消しの関係により、水の術法は扱えなくなる。

また、光の術法を覚えるには遠く帝国領地か変わり者の術法屋を見つけるしかない。

 

「ツウ、さん?」

 

邸の入り口には物憂げな顔付きのアルベルトが立っていた。

何らかの重大な話し合いの最中だから、部外者は席を外すべきだろうという考えなのか。

しかし、わたしの顔と、その肩を組んで支え立っているのがやっとのリガの血の気の無さを見て、慌ててこちらに寄ってくる。

そして、空いた左手側に自分の体を入れた。両側から支える形になり、リガの体位はやや安定する。

 

玄関先にリガを凭れかからせる。包帯を外せば、濃密な血の匂いが溢れた。薬草は常に持ち歩いているが、血止めの効能は少ないものばかりだ。痛み止めになる麻痺草も、ここまで傷が広がって来ては意味がない。

 

そんな時だ。

 

 

「な……何を……?」

黙っててください(You, shut up.)!。……大いなる神、偉大なる父よ。満つる月は癒しを与えん……」

 

困惑するリガの脚に手をかざし、精神を集中させるアルベルトの体からうっすら金色の光が立ち上がる。

光は微かな、しかし確かな志向性を持ってリガの傷口を塞いでいく。

 

話には聞いていたが、水とは違う力で傷が塞がる。光の力で細胞を活性化させて塞いだようだ。確か、術法としての名前は父神与えし活性の月光(ムーンライトヒール)、だったか。

 

 

「坊っちゃん凄いね、見直したよ」

「いえ、初見でしたので勝手がわからなくて……けど、次からは大丈夫そうです。無詠唱では流石に無理ですが」

言葉を区切ったアルベルトは、少し視線を迷わせたようだが、真っ直ぐこちらを見つめ返して来た。

空の青が、わたしを射抜くようだ。

 

「ツウさん、村長様から聞きました。洞窟にモンスターが住み着いたんですよね? 私も連れていって下さい。皆さんに受けたご恩を返さなければ……!」

 

詰め寄るように故郷であったような事を二度と起こしたくない一心なのだろう。

わたしには、それを覆す説得の言葉(いいわけ)を語る技量は、ない。

 

「……坊っちゃんかと思ったら、案外見所かありそうだね。一度長に報告してからだけど、いいよ。行こうじゃない」

 

差し出した左手を見て、アルベルトは右手を出す。

がっちりとした握手を、二人で交わしたのだった。

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