Romansing saga ms~In the Fate~ 作:藍鷹
リガの引き連れていた新人四名の治療に半日。
それでも、骨や筋肉の具合から見て、
今回の要因を推察しようと頭を巡らせる。
回復法術よりも攻撃法術よりも、何よりも先手を取って戦うという雪原の慣習がまずあげられるだろう。
これが知らず知らずの内に体力や気力の消耗に繋がっているのは確実だ。
また、意識を正常に戻した四名に原因は何かと自らに推察させた所、全員は揃って慢心だと答えた。
本職の戦士が居て、自分達もモンスターをほぼ一撃で倒せるという環境が、それを引き起こしたのだと。
その点を踏まえて、精進するように指示を出し、長に以上を報告。
わたしが準備を終えた時には選ばれたメンバーは、
いい歌が作れそうだと、着いてくる事になった彼なのだが、ギターとリュートを組み合わせたような特殊な仕込み武器から繰り出される剣技は見事としか言いようがない。
その他、動ける戦士達はそれぞれの決められたポイントで討伐に当たることになった。
姉も良家の血筋の淑女が多数所属する騎士隊に籍を置いていた。
ただし、貴族の息子でローザリア辺境兵として修練を積んでいたはずの彼の主力武器はドレスソード……装飾過多の、全く実用性がない
錆び付いていたそれは鍛冶屋に頼んで打ち直しの修理を頼んだ為、仕方なしに流れ着いた霊木を武骨に削った杖を持たせている。
本人曰く、今は無き母親より光の矢を生み出す法術を学んでいるのだという。この杖で、少しは有用に使えるようになればいいのだが。
※ ※ ※
南の洞窟は、騎士団領との境目にある、坂道の先にある。
長い長い登り道に、坊っちゃんは足を取られそうになりながらも左手の杖を着きながらなんとか着いてきていた。
洞窟の外は静まり返り、これからの嵐を予感させる。
途中、腐り落ちかけた死体が襲いかかって来たが、まだ日が高いだけあってそれらの動きは酷く緩慢だ。
自慢の爪や
何度か振り返りながら道を行く。
……やはりやる気はあるようだ、と彼に対する認識をわたしは改めながら。
予想通り洞窟の中は混沌のるつぼだった。
徒党を組んで闊歩する獣。
耳障りな音を立て羽ばたく鳥。
ねっとりべっとり、不快な臭いを撒き散らす粘体種。
植物種族のモンスターは、あまり賢くない他種族を自身のエネルギー源にすべく、口をぱっかり開けて待ち構えている。これらは今確認出来るだけで百は下らないだろう。
時折、甲高い嫌な音が響く。リガに言わせれば、夫婦が手下を呼び寄せる際の声なのだとか。
なるべくモンスターを刺激しないようにゴツゴツした岩壁沿いに走る。
本来ならば、この手の魔力に満ちた洞窟では何らかの仕掛けが施され、それを解くことで先へ行く事が出来るようになるのが定説だ。
けれど、リガ達が此処を探索した際、先に進む為にそれぞれの鍵を守る
ふと足元を見れば、まだ新しい血だまりと何かの小さな獣の骨がいくつか散らばっていた。
弱肉強食の成れの果て、だろうか。
とりあえず血を隠すように雪をかけておく。無いよりはましだ。
六角形のそれぞれの頂点の先に棒をくっつけたような結晶型の中央。
風の影響を受けない段が下がった場所にそれらはいた。
先ほど見た骨の親だろうか。猪のような、それなりに大きい体躯の豚が
「あれは……遊んでいるのでしょうか」
「……多分ね、力の差は歴然としてるのに、殺さないギリギリを見極めてる。嫌な感じだわ」
坊っちゃんが杖に手をかけるが、わたしはそれを制す。
恐らく正規の方法で立ち向かっても余り意味はないだろう。
この人数では、返り討ちにされるのが目に見えている。
さて、どう出るべきか。
回りは尖ってゴツゴツした石筍。巻き上げられた雪で時々白く冷たい。
とてもではないが、剣ごときでは切り落として奇襲、は無理だ。
様子を眺める。
夫婦の真向かいには窪んだ穴蔵があり、白くて丸い何かが並んでいた。
「タマゴだな……やっぱりここは奴等の住みか」
リガが呟いた。
タマゴは硬い殻に覆われていて、しかもモンスターのものならばそう簡単に壊れはしない。
これも奇襲のタネにはなりそうもない。
そうこうしている内に豚は
再び響く、耳障りな声。
「……一つ、策があります」
口を開いたのは、今まで喋ることのなかったハオラーンだった。