Romansing saga ms~In the Fate~   作:藍鷹

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とりあえず、閑話です。どうやら次回は原作に到達出来そうです。


閑話・村の人々

 

side バルハル族戦士

 

 

 

 

パン屋の子供がひとりで帰ってきた時は血の気がひいた。

近くの洞穴で、愚息と、薬師の娘、術法屋の子に、道具屋の娘が、季節外れの『牛』(アレ)に遭遇したのだ。

 

十年に一度か二度、突然変異体とも呼べる、本来の牛よりも小さい体躯のアレ。何人ものバルハル戦士が餌食になった。

しかしアレが現れるのは春先の、雪がまだ沢山残っている時期だし、前回現れてからからまだ五年弱しか経過していない。

何より、今は暦の上では夏だ、もう草原の八割は緑の絨毯となっている。

こんな時期に現れるのはおかしい。

 

話を聞けば、パン屋の子供は道具屋の娘の案に乗り、単身で助けを呼びに来たのだという。

 

すぐに討伐隊が編成される、子供達が対峙している敵の居場所は、子供が走って息を切らす程度の距離。

 

……己に良く似た性格の愚息が、無事だと良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

・・

 

side 薬師の女

 

 

 

 

薬師の自分の後継となりたいと言い出したあの()に、猫をかぶり『女の子でありなさい』と諭したのが悪かったのか。少々お転婆が過ぎるきらいのあったあの娘。

だから、棒を振り回したり、料理や調薬以外で刃物を使ってはいけないと、取り上げてしまった。

あれから四半日以上経過している。

薬研を握る手に力が入りすぎて、せっかくの薬草がまたダメになってしまった。

 

不意に、外が騒がしくなる。

身につけた調薬用エプロンに薬草の汁が飛んでいるが、そんなことにも気が回らず、裸足で外扉を開く。

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

side 術法屋の老婆

 

 

 

 

孫は泣き虫だ。

バルハル族にはあるまじきものではあった。

原因はわかっている。体の弱いものの肚より出でたからだ。

ネズミに驚いては泣き、夕食に人参が出たからと泣き。

あの年頃にしては多少頭がひとつ飛び出た魔法適正があるとはいえ、このままではバルハル族としても、術法屋の跡継ぎとしても二流以下にしかならないだろう。

 

今朝までは、そう思っていた。

 

……倅は、孫が生まれた年に、あの悪魔に殺された。思えばこれは運命じゃったのか。

帰ってきた孫は、多少擦り傷と、無理に魔術を扱った時に出来る火傷以外には五体満足で。手にしたかごには何かが入っているのか、重そうに、けれど満面の笑みで運んでいる。

 

その中身を見て、ワシは確信する。

孫の力は、バルハル族にとどめておくには勿体ない。

幼いながらも留学経験を積むのは良い結果を起こすやもしれん。

古い友人の住む街への手紙を書こうとそう思った、ある午後の話。

 

 

 

 

 

 

・・・・

 

side パン屋店主

 

 

 

客と話し込んでいた時の事だ。

息子が帰ってきてそうそう、村の入口で叫んだ。

いわく、『牛』が出たと。

そんな嘘をつくような子供に育てた覚えはねぇと、拳骨をくれてやる為に店の外に出たんだが。

あいつのあんな必死な顔ははじめてだった。

俺ぁ、親とはいうが、感情というものをかかあの腹ン中に忘れてきたんじゃねぇかって位笑わねぇ、泣かねぇ、そんな息子だ。あんまり愛情なんてもんは向けたことはなかったんだがな。

 

細かい話を聞いたのは全部が終わってからだったが。

 

あいつは、友達の為にあの距離を走りきったのか。足は血が滲むぐらいの傷と泥まみれの体はそう言った理由からか。

感心すると共に安堵の息、ただ少しばかり呆れちまったがな。

 

 

 

 

・・・・・

 

side 村長と……

 

 

 

「ふむ……ツウが、こやつを倒す作戦を考えたと」

 

目の前には、悪魔と呼ばれたモンスターの首。

子供達の手に負えるような者ではないはずだが。

しかし、こうして息絶えているのも事実。

 

占師の見立てによれば、この幼体に見えるもの(・・)は、冬眠から開けたばかりの個体だとか。

本来の狩りの方法ならば、多数で取り囲みはするが、一体一で戦うものなのだ。

今回は油をかけて余分な毛や皮を燃やしたので、急所が見えるようになったというのも幸運だった。

 

だが、……なにか、良くない事が起きる前兆やもしれない。

 

「ガト様、娘は……」

 

件の娘の父親(てておや)は、こちらを伺うようにしているが。

大方今回の()についてどうするかを心配しているのだろう。

肝心の本人は身の丈に合わない、誰かの動きを見ただけの物真似で体に負担をかけ、自室で寝ている。

無理をしたなら命を落とし掛けない状況だったのは日の目を見るより明らかだった。

 

「ふむ、この件で周りのものは浮き足立っておる。新たなるバルハル戦士の誕生だとな。じゃが、儂はそうは思わんわ。今回の功績は別にして、成人の儀式はそれぞれ規定年齢に達した年に執り行う」

 

茶で口を湿らせる。困惑しきりなのはわかるが、もう少しどっしりと構えていて欲しいのじゃが。

 

「お前さんは、娘を連れて旅に出るのだ。商いのノウハウを叩き込むのじゃ」

「それは、吝かではありませんが。でも、何故です? 罰するおつもりで私を呼んだのでは?」

「ある意味では、罰じゃな。この村からしばらく離れてほしいのじゃから」

「……ツウが、災厄の元になる、と?」

 

言葉に、対峙する男は反応した。しかし、告げねばならない。

「憤慨するのはわかるか、先代占師の言葉を忘れたか?」

 

そう言った儂の顔も、きっと強ばっていたのだろう。先に折れたのは、男の方じゃった。

 

「……っ、わ、かりました。近いうちに荷をまとめましょう」

「何も、二度と戻るな、と言うわけではない。そうさな、ほとぼりが覚めるまで、といったところか」

 

二、三度言葉を交わし、父親が緞帳を上げてその場を辞してから。

 

 

其の力は、神に祝福されたもの。悪しき宿命を呼ぶも、断ち切る力を抱くもの。貴き金鳥が囀ずる時こそ、其の道開かれし時と知れ。

 

 

バルハル族の占師が見立てた、あの娘の御告げ。他の者とは違い、明確な何かを表している。そして、今回の一件がその悪しき宿命の一端をを引き寄せたものだとしたら。

……本来ならば、放逐すべきなのやもしれん。

だが、仮にも義理の息子と孫だ。やはり身内には甘くなってしまう。

 

せめてその時が来るまでは、この村の一員として、扱いたいのだが。

 

そう世界が簡単に転がらない事を、実体験として経験しているが故に。

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

そして。

 

 

……ーー短い夜が終わり、

長い昼が、また始まるーー……




今後はメインストーリーと閑話を挟む形でやっていきたいです。

幼少期編と銘打ちながら、幼少ではないことに気づいたのは今更です←
某有名ゲームの紫色ターバンの彼は少年期・青年期でわかれてましたしねー……まぁ、それはそれ。これはこれ、で(ぇ
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