Romansing saga ms~In the Fate~   作:藍鷹

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今北産業

ツウ
一気に
成長しました

つ進化の秘宝

暑くて魔が差した、そんな第六話です。


ツウ、成人後編
乙女は営む、雪原の日々を


極寒の世界、白銀のバルハラント。

一年のほとんどを雪に覆われ、マルディアスにおいても僅かな交易道を除いて、閉ざされた大地とも称される。

 

そんな中でも逞しく生きる人々がいた。

 

勇猛なる戦士。

あるいは嘲笑の意味を込めて蛮俗なるものと揶揄される事もある、バルハル族。

 

この地域に生息する牛を始めとする獣の頭蓋を被り、顔にはペイント。

両手持ちの剣や斧、弓矢による狩猟を行い、その糧による恩恵で、日々を営んでいる。

 

そんな中、一風変わったバルハル族が、ひとり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片方の角が折れた牛の飾りを頭に、遮光硝子の嵌め込まれた眼鏡(ゴーグル)と口元に布。

ほとんど体の線がわからない程の装備に身を包んだものがいた。

 

対峙するのは、死臭を放ち、巨大な斧。あるいは剣にも見える骨を手にした統括能力を持った屍鬼(グレーターグール)

 

東の洞窟に罠を張り、この統括者を倒すために牙と呼べる両手大剣の技を磨いてきた。

静の構えは技を使う為の集中動作(プリショット・ルーチン)

 

身の丈に合わない武器を使えば武器だけでなく身を損なう。

背丈に合わぬ大きさ(サイズ)のそれを掲げ、討伐者は声を上げる。

 

相手の大振りな攻撃から身を翻して、巻き打ち。

あの骨の武器は敵の動きよりも遥かに遅い。しかし、攻撃は重い。

少しかすってしまったが、間合いは十分だ。

十字に斬りかかる(クロスブレイク)が、肉片を削り取り、もはやどす黒く凝り固まった体液が踏み固められた地面に散らばる。

 

敵もまた、死にながらも生にしがみつく。

振りかざした骨武器で、頭蓋を叩き割り脳を啜りとろうと殴り付ける、新鮮な肉を抉りとろうと武器を打ち下ろしてくる。

武器弾きの技術を持った者でもその猛攻は見切れなかっただろう。

 

だが唐突に戦いは終わりを告げた。

最終的に動く屍は、ただの動かぬ死体へと還っていった。

残ったのは、僅かな腐敗臭と骨の武器。

 

討伐者は大きくため息を付き、戦利品の回収を始めた。

絶対戻ったら、ふやけて出汁が出るくらい、長い間暖かいお湯に浸かってやる、と。

 

 

この東の洞窟に入ってから、まる一昼夜は過ぎたか。

朝焼けが地平線の果てから現れ、紫色の夜をぬぐい去るように、橙の光が白い白い雪原を染め上げている。

 

海岸に面した崖には、本来は群れるはずのないはぐれ狼たち(ストレイウルフ)や、この地域に住む極北企鵝(バルハルペギー)が徒党を組んでいる。

 

なるべく体力は消耗したくはないが、騎士団領から村と交易を行う定期便に影響が出ても困る。

少々傷んだ相棒の武器を手に眩しい世界へ駆け出した。

 

 

……弱肉強食のこの大地(せかい)では、負けたのならば、文字通り骨も血肉も残らない。

 

人が獣を食べ、獣が他の獣を食べ、死んだ獣を大地に存在する小さきものが分解(たべ)る、それが循環していることが特に顕著にわかるのだ。

 

魔力と武器、そしてモンスターの存在するこの神々の創りし世界(マルディアス)では。

 

露払いと、その果てに得た糧はしっかりと頂いた。

 

人間には不要だが、他の獣にとってはご馳走になるであろう臓物や骨の欠片以外で残したものがないかを確認した、もふりとした毛皮の外套(コート)に身を包んだ蛮勇なるものは、一人武器を鞘へと仕舞った。

 

 

 

 

 

 

バルハル雪原の海岸線を少し上がれば、族長ガトの治める村がある。

 

人口のほどは三百人程度のものだが、その半数はバルハル戦士という厳しい環境を生き抜く為に生み出された戦闘職についている。その他は、後方支援……例えば鍛冶屋や、薬師など……の職や、子供や老人がほとんどだ。

 

寒さを防ぐために何重にも毛皮を敷き詰めた家の中。

壁には保存食の穀物、干し肉や砂糖漬けの果物。

どれもこれも、古くからの雪原の知恵。

 

「長、ただいま戻りました」

「お帰り、ツウ」

 

ツウ、そう名前を呼ばれたのは、一仕事終え、風呂に入ってようやく一息つけた様子の女戦士だった。

バルハル族でありながら、剣士であり、また旅商の資格を持った変わり者。

もっとも、彼女は純血のバルハル族ではなく、父親は他国の商人だったが。

 

年は今年で二十二。

膂力はあれど、その体つきは同じ年頃のバルハル族から見たなら細く、またかなりの寒がりでもあった。

けれど、その頭には確かに成人し、バルハル族のいち戦士としての証である極北雪原牛(バルハルオックス)の角飾りが存在している。

 

「どうだったかね、東の洞窟は」

戦利品を毛皮の上に並べ終えたツウに村長ガトは優しく問いかける。

 

「いつも通りです、あの場所はアンデッド属性の溜まり場になっていました。統括者を潰しましたからしばらくは安全だと思いますが」

「ふむ、やはり1ヶ月から2ヶ月で再生するようじゃな」

パイプに摘めた薬草に火を当て、煙をくゆらす長。ツウは表情を変える事なく淡々としていた。

 

「他のみなさんは?」

「南も西も、やはり同じような時期に統括者が復活するように感じた、と。だが、これでしばらくは安全じゃな。しばらく骨を休めるがいい。次の巡回はいつになるかはわからんが、行商には行かんでも良いぞ」

「おそらく、キバが帰る頃には武器(あいぼう)も直ると思いますので」

「では、また頼むぞ」

 

特に抑揚もない声で、ツウは緞帳を抜けて去る。

 

……村から出て、幾年もしない内に父親が流行り病に倒れ、そのままエロールの下に還り六年。

ひとりで生活をし、遣り繰りしている内に、いつしか勇猛なる戦士のひとりに名を列ねていた彼女は。

まるで何かを探すかのように、今日もまたひとり、敵に戦いを挑んでいる。




有名なバルハルモンスターイベントです。
実際はバルハル戦士と詩人を連れて、逃げるわ交渉するわで戦闘回数減らす努力で一時間近くやってたのですが。
ちょっと含みがある内容にしたのは、次あたりでようやく世間知らずな彼と絡ませる為の下地のような、そうでなかったり(ぇ
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