守は無所属の政治家である。男のような名前だが、女だ。そして、良きコスプレデザイナーであり、お金持ちでもあった。
しかし、守はずっと政治活動をしてきた。
守の公約はこれである。
「私財を投じてでも、世界で一番ファッショナブルで格好いい部隊を作ってみせます! どうか国民の皆さん、私にチャンスを!!」
そして、何の間違いか、受かってしまったのである。
そして、総理にスカウトされてしまったのである。
「ありがとうございます! ありがとうございます!! 国民の皆様がご満足いただける様なファッショナブルな部隊を作ってみせます!」
そして、早速防衛省に乗り込んだのである。
不安そうな顔をするお偉いさんを集めて、飲み物を配って一席ぶった。
「皆様、時代は酔拳です!」
「はぁ?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください大臣」
「酔拳いず格好いい! ちょっぴりアルコール中毒の心配があるので、そこは配慮が必要ですが! と言うことで、日本の古式ゆかしい伝統酒で戦う部隊を作ります!」
「大臣!」
「まあまあ、飲んでください」
「これ、お酒ですかぁ!?」
「全員、弊社のお酒を飲むまで返しませんよ! 部隊にはこれを配備します」
「配備て。めちゃくちゃ利権じゃないですか!」
「約束通り私財を投じるので、そこは無料で提供します! 最初はね。さあぐいっと!」
「酔ってるんですか大臣!?」
飲め飲め言われて、仕方なくお酒を飲む。
カッと体が熱くなった。
「度数高っ」
「まずは私が手本を見せます! はぁっ」
そして、大臣の背後にスタンドが現れた。
スタンドが現れた。
「なんか出たっ!?」
「ウオッ なんか出た!!」
スタンドがあちらこちらで出る。
「総理大臣の裁可はいただいております。この酔拳を使ってファッショナブルな! 国民全てを魅了する部隊を作ることが目標です! 衣装も訓練内容も全て私が用意します!! 陸海空で5名ずつ、15名の部隊の予定です!」
「……それでこのお酒はいただけるので?」
「もちろんですとも!」
こうして、偉い人々の許可を得て、陸レンジャー、海レンジャー、空レンジャーの3部隊の設立が決まったのだった。
それぞれの部隊から強さと顔で50人ずつ選抜し、お酒を飲ませ、スタンドが出たものからさらにファッショナブルなスタンドの持ち主を選ぶ。
さらに採寸し、大臣の怪しげな訓練を施し、歌舞伎すぎた服を着せられ、一年後、お披露目の時は来た。
その場も、まさかの東京ドームである。日本国民の皆様なら誰でも入場無料。
お土産の限定グッズも配るよ!お酒を出すから18歳以下は我慢してね。
色物防衛大臣の宣伝に、日本国民は、怖いもの見たさでまあドームの半分くらい集った。
「日本国民の皆様! ありがとうございます! 私は公約通り、私財を投じて世界一ファッショナブルな部隊を作りました!! 日本の伝統的で神聖なお酒を使って一年でマスターした至高の酔拳を、どうぞご覧ください!」
そして、一人一人、紹介されていく。そして酒らしきものを飲んでいく。
装備はなんかファンタジーに出てきそうなものだ。
個人情報は守られるので、陸レッドとか海ブルーなどの名前で紹介だ。
アイドルでもさせるつもりか。まあ私財ならいいんじゃね? いや公私混同では。
それに酒って。何で受からせたの。
そんなふうに国民が戸惑っていると、暗くなった。
演舞の部である。
「それでは、陸レッド、陸グリーン、陸ブルー、陸ピンク、陸イエローの訓練の成果をご覧ください!」
明るくなると、薄い光の壁がドームの内側を覆っていた。
その中には陸レンジャーと、巨大な狼!!
「うおー! 頑張れ陸レッドー!!」
そしてヒートアップする大臣。
巨大な狼(なんか魔法にしか見えない炎弾も撃つ)と戦う陸レンジャー。
ちなみに海レンジャーは空を泳ぐ魚、空レンジャーはワイバーンだった。
巨大なそれらは倒すと消えてしまう。
必死で戦いの様子をスマホに収める国民の皆様。戦いの余波はバリアが防いでくれていた。
「国民の皆様! 守は頑張りました! これが自信を持ってお送りする世界一格好良い部隊です。アル中対策はまた考えます。レンジャー部隊が世界一格好いいと思ってくださる皆様は、どうか拍手を!!!」
総理は力いっぱい拍手した。一人だけだったその拍手は全観客に広がって行った。
「私の任期中にグッズに書いてある方法で行われた寄付は全てこのファッショナブルなシステム、ファッショナブルな装備、ファッショナブルな自衛隊に配備する特別なお酒、異能酒に使うことを誓います!」
こうして、名誉永年防衛大臣は誕生した。
なお、彼らの出動要件は主に日本を害する魔物、怪獣、異世界人が現れたときである。永遠に来そうにない。