先遣隊はしばらく前田藤四郎を休ませることにした。前田藤四郎は南海太郎朝尊に抱かれたまま居室に運ばれた。仲間たちの手で武装を外されるまで、前田藤四郎はすべての気力が抜けたように黙ってされるがままになっていた。だが、布団に入ろうとはせず部屋の隅でうずくまってしまった。
「ごめんなさい、僕のせいで……」
今にも泣きだしそうな声で前田藤四郎は謝った。
「前田は悪くないって。まさか一期が斬ってくるなんて誰も思わなかったしさ」
加州清光はそう言って前田藤四郎の頭を撫でた。
「そうだとも。僕たちは戦いに行ったわけじゃないんだ」
南海太郎朝尊が心配そうに前田藤四郎を覗き込んだ。
「分かってるんです。あのいち兄は……あれは一振り目の面影さんの夢の中だから、僕のことを知らないから……仕方ないって」
前田藤四郎は顔をそむけた。
「……ごめんなさい……しばらく一人にしてください」
こんのすけが進み出て、前田藤四郎に寄り添った。こんのすけが頭を前田藤四郎の膝に押し付けると、前田藤四郎の片腕がこんのすけを抱いた。
「私がついていますので、皆さんは」
「分かった。頼むね」
加州清光はこんのすけに前田藤四郎を任せ、南海太郎朝尊と面影を促して広間に移動した。
広間で待機していた者たちに、加州清光は夢の断片で一振り目の面影に追い返されたいきさつを話した。
「一振り目の面影は俺たちのこと知らないから、あれだけ警戒するのも無理ないよ」
「つまり何度やっても結果は同じ、か」
一文字則宗はくやしそうに言った。
「一振り目の私が過ごしていたもう一つの本丸に、助力を頼もう」
面影は言う。
「前田が落ち着いたら、こんのすけとともに私が行こう。見たところ、一振り目はもう消えかかっていた。時間がない。あの状態で二つの本丸を再構築するのは難しいだろう。一振り目の仲間たちとともに迎えに行き、私を一振り目に習合する」
みな面影の言葉にギョッとした。
「でも、それって……お前が消えちゃうってことだろ?」
加州清光は深刻な顔つきだ。
「私はもともと面影の名を持つ別々の刀剣の集合体だ。一振り目との共存は可能だと思う。だが……」
そう言いながら面影は少し寂しそうな笑顔を見せた。
「もし、ひとつになった私がここに戻ったとき、この本丸の記憶が消えていたら、再び私との思い出を紡いでくれるだろうか?」
その場にいる全員がただ押し黙って面影の顔を見ている。この本丸は襲撃で多くの仲間を失った。目の前で折られた者もいた。これ以上仲間を犠牲にしたくはなかった。しかしそれしか方法がないのも、みな分かっていた。
しばらくして、大和守安定が思い切って口を開いた。
「いいけど、晩御飯までには帰ってきてよね」
「なんだよ、それ」
加州清光は思わずつっこんだが、大和守安定は加州清光に向かって笑顔を見せ、それからもう一度面影を見た。
「おいしいものたくさん作って待ってるから。約束」
大和守安定は、必ず帰ってこい、と言っているのだ。
「ああ、分かった」
面影は力強くうなずいた。