ハニーデュークスの女の子   作:雪羊

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チャーリーとイースターエッグチョコレート

 

 

 

 

「そろそろ着く頃だ」

 

 

ロンは羽ペンを投げ出してテーブルいっぱいに広げた教科書を片付け始めた。復活祭の休みはクリスマス休暇と違いハリーたちは宿題に追われていたが、今日は楽しみな予定が入っていた。

 

 

 

ロンの二番目の兄、チャーリーが遥々ルーマニアからホグワーツへやってくるのだ。到着が夜遅くなるというので、グリフィンドールの談話室ではパーシーとロン、ハリー、ヘーゼル、ハーマイオニー、それにウッドが眠い目を擦りながら待っていた。

 

 

 

 

「チャールズキャプテンのご到着だぞ」

 

 

フレッドとジョージが声を揃えて行進するように肖像画の穴をくぐり談話室へと入ってきた。双子の後から入ってきたチャーリーは筋肉質ながっしりとした体型で、日焼けしたようなそばかすだらけの顔に懐かしむような表情を浮かべ、グリフィンドールの談話室を見渡している。髪の毛は他のウィーズリーの兄弟たちと同じ燃えるような赤毛だ。

 

 

 

 

「やぁロン。ホグワーツを楽しんでるかい?」

 

 

ロンを見つけるとチャーリーはにっこり笑って肩を叩いた。まるで太陽のような笑顔だ、とハリーは思った。続けてハリーとハーマイオニー、それからヘーゼルと握手したチャーリーの手は硬くごつごつしてタコや火傷の跡が沢山あり、とても暖かかった。

 

 

 

「パース、立派に監督生してるかい?」

 

 

「もちろん、しっかり勤めていますよチャールズ兄さん」

 

 

チャーリーに頭をわしゃわしゃと撫でられ、ズレた眼鏡を戻しながらパーシーが言った。耳が赤くなって照れている姿は、何だかいつものロンのようだ。

 

 

 

「随分でっかくなったな、オリバー!今年は優勝杯を狙えそうかい?」

 

「君がいなくなってから逃してた優勝杯を今年は奪い返せると思うよ。レイブンクロー戦が楽しみさ。何たって今年はポッターがいるから」

 

 

パーシーに負けず劣らず赤くなったウッドが胸を張って答えた。三つ上でグリフィンドールチームの伝説的なシーカーでありキャプテンだったチャーリーは、ウッドの憧れの存在なのだ。

 

 

 

「レグルス!怪我はもうすっかりいいのかい?相変わらず綺麗だね。ロニー坊やのお守りをありがとう」

 

 

談話室のふかふかの椅子に座っている黒猫、レグルスを見つけるとチャーリーはパーシーを撫でるよりうんと優しく、そっと美しい毛並みを撫でた。レグルスはその間、悪くない、といった顔ですましていた。

 

 

それを見てジョージがにやにやと言った。

 

「気をつけろよ、レグルス。またドラゴンに変身させようとするかもしれないぞ」

 

「やらないさ、またママがカンカンになるだろうからね。まったくレグルスなら『オーストラリア・ニュージランド・オパールアイ種』にも負けない綺麗なドラゴンになるだろうに、残念だ」

 

チャーリーが言うと、レグルスがタイミング良く怒ったような鳴き声を出したので、みんなが笑った。

 

 

 

 

その時、肖像画の穴をくぐってマクゴナガル先生が談話室に入ってきた。

 

「皆さん、出迎えが済んだのならもう寝室に行く時間ですよ。チャーリー・ウィーズリー、本当にこちらで寝るのですか?貴方はドラゴン使いとしてダンブルドア校長先生直々に呼ばれたのですから、来賓用の部屋が用意されているのですよ」

 

「ありがとうございますマクゴナガル先生。でも、せっかくなので弟たちや後輩と過ごしたいんです。明日の夜にはもう帰らなくちゃならないので」

 

屈託のない笑顔でチャーリーが言うと、マクゴナガル先生はにっこりと滅多に見せない優しい笑顔を見せた。

 

「相変わらずですね、明日は朝八時にハグリッドの小屋です。今晩はしっかり身体を休めるように」

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、ハリーはロンと一緒に大急ぎで着替え、朝食を口に詰め込むとハグリッドの小屋へ向かった。

 

「ドラゴンの卵が孵るところなんて、一生に何度も見られるもんじゃないぜ!」

 

ロンは興奮しながら言った。手にはまだベーコンの入ったサンドイッチを持っている。ハグリッドの小屋の前は魔法生物飼育学に熱心な上級生や、怖いもの見たさの一年生など様々な生徒でちょっとした人だかりになっていた。ハリーはきょろきょろと人だかりを見渡した。

 

「ヘーゼルとハーマイオニーは何処だろう?談話室にいなかったから、てっきり先に行ったと思ったけど・・・」

 

 

 

小屋の入り口の前にはハグリッド、チャーリー、銀色の髪をした年配の先生(確か魔法生物飼育学の教授だ)、それにダンブルドアが立っている。

 

ハリーとロンが小屋に近づくとそれに気が付いたハグリッドがバツの悪そうな顔で手を振るので、ハリーは、僕の身体はもうぴんぴんしているよ、ハグリッドと一緒にドラゴンの卵が孵化するところを見れるなんて最高に嬉しいよ、という顔を作ってにこやかに手を振り返した。

 

ドラゴンの卵と引き換えに三頭犬フラッフィーの情報を漏らしてしまった責任を感じ、大泣きするハグリッドをなだめるのに、ハリーは随分苦労したのだ。

 

 

 

 

「ハリー、ロン!間に合ったかしら?まだドラゴンは出てきてない?」

 

 

丁度その時後ろから息を切らしてヘーゼルがやってきた。両側には少し気まずそうに距離を空けてハーマイオニーとドラコがいる。

 

 

「やぁ、ヘーゼル、ハーマイオニー、それにドラコ。間に合ったみたいだよ。僕たちも今来たところさ」

 

ドラコはハリーに向かって軽く手を挙げて答えたが、隣のロンのことはまるで見えていないかのように無視した。二人はあまり馬が合わないのだ。

 

 

「わざわざこいつを誘いに行ってたわけ?」

 

ロンが不服そうに言うとヘーゼルは顔を輝かせながら答えた。

 

 

 

「そうよ。だってドラコったら、クラッブやゴイルがまだ寝てるからって見に来ないつもりだったのよ。とってもドラゴンが好きなのに!」

 

いつもは青白いドラコの頬がほんのりピンク色になり、言い訳するように口を開いた。

 

「ウィーズリー兄弟の何番目かみたいにドラゴンのことしか頭にないってわけじゃない。ただ僕の名前の由来、竜座のドラコが、ラテン語でドラゴンを意味するから、小さい頃よく本で読んだりしてただけさ」

 

ここでロンが盛大に吹き出した。ドラコが怒るよりも、ハリーとハーマイオニーが嗜めるよりも早く、ヘーゼルがぴしゃりと言った。

 

 

「ロン、人の名前を笑ったりするのって、本当に良くないわ。私好きじゃない」

 

美形のヘーゼルに冷ややかに睨まれると結構な迫力がある。

 

「親や名付け親が心を込めてつけてくれた名前を笑うのって家族を侮辱してるのと同じよ。それに私は初めて聞いた時ドラコってとっても素敵な名前だと思ったわ」

 

ヘーゼルの迫力にロンは顔を青くさせて固まっていた。

 

「ドラコも、まさかチャーリーのこと馬鹿にしてるんじゃないわよね?貴方の言い方って誤解を招くわ。ロンの大切な家族なのよ」

 

「ああ・・・うん、悪かった」

 

急に矛先を向けられてドラコは呻くように言った。ロンも気まずそうに歯切れ悪く答えた。

 

「僕も悪かったよ。竜座っていうのは知らなかったな、うん、悪くないよ。結構、その・・・格好良い」

 

ふん、と鼻を鳴らしたドラコの頬はまだピンク色のままだった。

 

 

 

 

「あっ、いよいよ始まるみたいだわ」

 

ハーマイオニーが爪先立ちになりながら言った。チャーリーが小屋の中へ慌てて入り、ハグリッドがおろおろと後に続いた。

 

「どうやって見学すればいいのかしら?とてもじゃないけど、こんな人数、ハグリッドの小屋に入れないわ」

 

 

ハーマイオニーが首を傾げて言った。ハリーも丁度同じ様に考えていた。おまけにハグリッドの小屋の窓にはぴったりとカーテンが閉められている。

 

 

次の瞬間、ハリーはその方法を理解した。ダンブルドアが杖を一振りすると、ハグリッドの小屋はまるでマグルのドールハウスの様に手前側の壁が消え、中が丸見えになったのだ。小屋の中では暖炉がゴウゴウと燃えさかり、炎の真ん中、やかんの下にドラゴンの卵が置かれていた。中にいるチャーリーとハグリッドは壁が消えたことに気付いていない様だった。

 

 

「大広間の天井と同じ魔法なんじゃないかしら。つまりは、中が映し出されてるだけで本当に壁が消えたわけじゃないのよきっと」

 

 

ハーマイオニーがぶつぶつ呟いた。ロンはありったけ首を伸ばして小屋の中を覗き込み、ドラコも興奮を隠しきれない顔だった。

 

 

チャーリーがドラゴン革の手袋をつけた手でそっと卵を持ち上げテーブルの上に置いた。その場にいる全員が固唾を飲んで見守っていると突然キーッと引っ掻くような音がして卵がパックリ割れ、赤ちゃんドラゴンがテーブルにポイと出てきた。真っ黒な胴体に、大きな骨っぽい翼、長い鼻にこぶのような角、オレンジ色の出目金姿はまるでシワクチャの黒いこうもり傘のようだ。

 

「ノルウェー・リッジバックだ!珍しいドラゴンだぞ」

 

ドラコが叫ぶように言うと、ロンも興奮でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 

 

ドラゴンの赤ちゃんがくしゃみをすると鼻から火花が散り、口々に感嘆の声が上がったところで魔法生物飼育学の教授が生徒たちに呼びかけた。

 

 

「えー、諸君。ドラゴン使いチャールズ・ウィーズリーの協力のもと、ドラゴンの卵が孵化する貴重な瞬間を見守ることができた。ドラゴンの生息地を度々訪れる私でも、こんなに間近で見るのは初めてだ」

 

 

「シルバヌス・ケトルバーン先生よ。とっても熱心だけど、向こう見ずな性格で生身の手足がほとんどが残ってないって聞いたわ」

 

ハーマイオニーがささやくように言った。ケトルバーン先生はうっとりと夢見るような恍惚の表情をしている。小屋の中でドラゴンの赤ちゃんを見守るチャーリーとハグリッドも、似たり寄ったりの顔だった。

 

 

「言っておくが僕のドラゴン好きはあそこまでじゃないぞ。恋愛対象は人間だ」

 

チラリと顔を窺い見たハリーにドラコが大真面目に言うので、ハリーとロンは腹を抱えて笑い転げた。つられたようにドラコも口の端を上げてニヤリと笑った。

 

 

 

 

「まぁ、ヘーゼルったら!またなの?」

 

ハーマイオニーの呆れた声に振り返ると、いつの間にかヘーゼルがリー・ジョーダンと一緒に何やら大きな革袋を持って沢山の生徒に囲まれている。

 

 

「これも生徒会の活動なのよ。ハーマイオニーもひとついかが?ミニチュア入りのチョコエッグが一つたったの2シックル」

 

 

ヘーゼルが笑顔で売り捌いているのは色とりどりの銀紙でラッピングされたイースター用のチョコレートエッグだった。

 

さっそくチョコレートエッグを買って齧り付いたらしいハッフルパフの三年生とその取り巻きが驚きの声をあげた。

 

 

「すごいや!まるで小さな本物のドラゴンだ」

 

 

ハリーたちも近付いて覗き込むとチョコエッグの中身は精巧なドラゴンのミニチュア模型だった。青みがかったグレーの美しいドラゴンはハッフルパフの三年生の掌の上でまるで生きているかのように動いていた。スウェーデン・ショートスナウト種と書かれた札が首からかかっている。

 

 

ロンとドラコは押し合うようにして革袋に手をつっこみ、チョコエッグを選んだ。ハリーもハーマイオニーもくすくす笑いながらそれに続いた。

 

 

ドラコが選んだ薄紫に金色の幾何学模様のエッグにはウェールズ・グリーン種が、ロンが選んだ茶色に赤の唐草模様のエッグには真っ赤な中国火の玉種が入っていた。

 

ハリーが選んだ明るい黄緑色のシンプルなエッグにはハンガリー・ホーンテールが入っていて、ハンガリー・ホーンテールのミニチュアはいかにも気性が荒そうな顔で威嚇するように両翼を広げ、ちっちゃな牙をむいた。

 

 

「わお!ハーマイオニー、それってレアよ。噂ではグリンゴッツにいるドラゴンなの」

 

 

ピンク色のウサギ柄のエッグから出てきたハーマイオニーのウクライナ・アイアンベリー種は、みんなのドラゴンより数倍大きく、暗赤色の目で爪は長く、ロンとドラコは目を輝かせて羨ましがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャーリーったら、全てのドラゴンをコンプリートしたのよ」

 

ハリーたちより少し遅れてグリフィンドールの談話室に戻ってきたヘーゼルは空になった革袋を見せながら笑った。

 

 

「ハグリッドには特別にノルウェー・リッジバックをプレゼントしたの。本物のドラゴンの赤ちゃんと同じ、ノーバートって名前をつけて大切にするって涙ぐんでたわ」

 

「ねぇ、生徒会の活動って言うけど、売り上げは一体何に使うの?今日だって、クィディッチの試合でだって、君たち大分稼いでるだろう?」

 

ロンの問いにヘーゼルに続いて顔を出したフレッド、ジョージ、リーが歯を見せてニヤリと笑った。

 

「生徒会の活動方針は管理人のフィルチさんの部屋に張り出してもらってるからね。売り上げ金の使徒についてもそこで確認してくれたまえ」

 

「そんなの、誰も見に行きゃしないよ!」

 

フレッドの言葉にロンが憤慨したように言った。

 

「ヘーゼルは俺たちと同じくらい天才だぜ。あと交渉にも長けてる。これからホグワーツはますます面白くなるぞ」

 

ロンの肩を叩きながらジョージが言うと、ハリーは心配そうにヘーゼルの顔を覗き込んで言った。

 

 

「ヘーゼル、無茶なことはしないでよ?僕、アイラおばさんやアンブロシウスおじさんや、それにダドリーからも頼まれてるんだ。お転婆ヘーゼルをちゃんと見張るようにって」

 

 

「ええ、ハリー、もちろんちゃんとマクゴナガル先生にも許可を取りながら進めてるし大丈夫よ。私、これからは突っ走ったりしないって決めたの。みんなを危険な目に合わせたし、レグルスも怪我させちゃったし・・・それにハリー、貴方が気を失ってた間、生きた心地がしなかったもの・・・」

 

 

ヘーゼルは申し訳なさそうに眉を下げた。

 

「それはもう言わないで。悪いのは君じゃないんだ。それに君だって僕らを庇って三頭犬に足を噛まれたじゃないか」

 

 

ヘーゼルが突っ走りクィレル先生を尾行すると言い張った結果、ハリーたちは思いがけず賢者の石を『例のあの人』から守ることとなったのだ。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、今のうちに山ほどある宿題をやっつけなくちゃ。チャーリーがいる間にレイブンクロー戦の作戦を練り直すってウッドが言うんだ」

 

切り替えるようにハリーが言った。

 

「そりゃいいや」

 

フレッドが肩をすくめた。

 

 

「今度は六時間くらいで済むんじゃないか?何せ作戦を練り直すのはこれで三回目だからな」

 

 

 

 

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