カミーユ・フォレスティエ
本作の主人公。スパイファミリーの世界にTS転生した元現代日本人。なんやかんやで秘密警察になったかわいそうな奴。現在13歳。
博士
東国で兵器を作ってるすごいやつ。放っておくと虐殺兵器が完成する。
<黄昏>(本名不明)
忙しすぎてビキビキきてる3徹目の西国最強エージェント。はやく帰って寝たい。
<黄昏>なんてわたしはかなわない
カミーユ・フォレスティエはTS転生者である。
そして、東国<オスタニア>の秘密警察である。
かつて21世紀の日本でのほほんと暮らしていた男だったが、何の因果かSPYxFAMILYの世界に女として生れ落ちた。平和と惰眠をむさぼる2週目の人生をと思ったが、東国<オスタニア>と西国<ウェスタリス>の大冷戦時代に生まれたのが運の尽き。
いつのまにやら、暴行盗聴脅迫拷問etc…東国内にはびこるスパイや不穏分子を狩るためなら何でもありの超法規組織、国家保安局<SSS>もとい秘密警察に所属する羽目になってしまった。
そんなカミーユ・フォレスティエには二つの顔がある。
ひとつは秘密警察としての顔。よく訓練された、忠実に任務を遂行する諜報員としての顔。
もうひとつは女学生としての顔。うら若く美しい、努力家で優秀な女学生としての顔だ。
女であることも子供でもあることも、どちらも秘密警察として強力な武器になる。民間人であると認識されやすく警戒されづらいからだ。
諜報員たちはそれをよくわかっているが、監視されるターゲットもそうとは限らない。油断して話してはならない情報を漏らしてしまったり、思いがけない隙をさらすことも多くある。
ゆえに、どちらの面においてもプロフェッショナルの域にあるカミーユ・フォレスティエは、国家保安局にとって重要なカードの一枚足りうるのだ。
もっとも適正と希望が合致しているなんてことは、世の中そう多くない話。
忠誠心と労働の対価にもたらされる金銭よりも、カミーユはただ平穏が欲しかった。しかしこの仕事に辟易しているなんて内心を漏らそうものなら、カミーユ・フォレスティエはすべてを失うことになるだろう。
そんな話はさておこう。
東国における最高峰の兵器開発研究者、通称“博士”が西国に亡命を申し込んだ。
そして、ある西国の諜報員が博士を亡命させようとしているという情報を、カミーユは持ち前の情報力で手に入れた。
以降、秘密警察によって博士は常に監視下に置かれている。
外出禁止はもちろんのこと、研究所内でもトイレの中に至るまで複数の見張りが付く状態だ。
どれだけ西国のスパイが優秀だろうと、これだけ厳重な警備を敷かれてはそうそう亡命などさせられない。
だが今日となれば話は別だ。
政府高官と関係者が集まり、年に一度の研究成果報告会をかねたパーティを行う。権威ある式典で不参加にさせるわけもいかず、博士は会場に護送され研究報告を行うことになっていた。つまり、万が一のチャンスがあるとするのならば、間違いなく今日だった。
そこで国家保安局は厳重な警戒態勢を敷いたうえで、カミーユに任務を下した。
政府高官の親族という形で自然にパーティに潜り込み、博士のそばで護衛を行い、有事の際に逃がすこと。すなわち、亡命を防ぐ最終ラインとしての任務である。
そうしてカミーユは責任重大な任務を引き受けることになった。
上流階級の美しい13歳の少女のふるまいを完ぺきにこなしながら、自然体のまま参加者たちを警戒していた。今のところ不審な人物はみつかっていないが、どこかに潜入している可能性はある。とにかく…とにかくだ。
つまりカミーユ・フォレスティエは…わたしはいま、ひどく緊張しているということだ。
(落ち着くのよ、カミーユ。わたしはなにもみていない。なにも起こりっこないわ。だいじょうぶ。だいじょうぶ、だいじょうぶ。だいじょうぶよ。だいじょうぶ)
そう言い聞かせたのもつかの間だった。
式典の終了が告げられるとともに、突如として会場の照明が落ちた。
暗闇の中にひびきわたる肉を打ち付ける音と野太いうめき声。
何かが起きていると誰もが気づき、会場は阿鼻叫喚につつまれた。
暗闇の中、会場に鳴り響く怒号を聞き流しながら、わたしは博士の手を取り混沌とした場から抜け出そうとする。建物内の構造はすべて頭に入っている。視界がない状態にもかかわらず群集の海を潜り抜け、事前の打ち合わせ通りに避難経路へともぐりこんだ。
これでもう大丈夫だろう。建物は闇に包まれており、襲撃者はわたしたちを見失ったはずだ。あとは護衛部隊が時間を稼いでいる間に護送車へと博士を運べばいい。任務達成も同然だ。そのはずだった。
逃げても逃げても気配が迫ってくる。待ち伏せていた護衛たちの悲鳴が背後で鳴り響いている。どれだけ必死にはしっても、撒くために進路を変えても、いつまでもわたしたちは追われていた。
わたしは近くの客室に入り込み、部屋を閉じ切って鍵をかける。
「博士。服をぬいでいただけますか?」
妙齢の博士はどぎまぎとして、「な、なんと破廉恥な……」と呟いた。
何を言われているのか理解できず、思わず一瞬硬直する。
「……え?ぁあ!ち、違います!そういう意味合いじゃありません!」
わたしは顔を赤くして慌てて否定した。
こんな時にいったい何を考えているんだこの人はと内心頭を抱えながら、事情を説明する。
「盗聴です!博士の服かアクセサリかに盗聴器が仕込まれていて、音であなたの場所を特定しているんですよ!で、ですからそういう意味合いじゃありません!確認するので、早く脱いでください!ほらっ!あなたも殺されるかもしれないんですよ!?」
十中八九この騒動の目的が博士の誘拐である以上、彼が殺されるなんてことは起こりえない。しかし、そんなことはつゆもしらない博士は脅しがきいて大慌てで服を脱ぎだした。ジャケット、ネクタイ、シャツ、ベルト、ズボン、はたまた下着にいたるまで。(誰もそこまで脱げとは言っていない!)
気を取り直して、わたしはつぎつぎと服を受け取り、手際よく考えられる仕込み場所を確認していく。
そしてものの数分とかからずに、お目当てのものを見つけた。
右の革靴、ヒール部分に仕込まれた小型マイクと送信機をナイフで取り出すと、それを勢いよく踏みつぶした。
「これであとは逃げるだけです。最低限の服だけ着なおしてください。すぐにここから移動しなくては」
そう、あとは逃げるだけだ。なんとしても、ここから彼を逃がすのだ。すでに制圧されてしまったのだろうか、先ほどまで聞こえてきていた闘いの音がまるで聞こえない。首筋に刃物をあてられるようなヒヤリとした感覚が迫っていると錯覚してしまう。
「…開けます。わたしから離れないで」
そして部屋を飛び出したわたしが目にしたのは、あり得ない状況だった。
あれほど備えていた護衛部隊たちが地に倒れ伏している。あるものは顎を蹴り砕かれ、あるものは奪われた拳銃で眉間を撃ち抜かれている。
そして廊下の先に目を向ければ、彼らをそんな有様にした仕立て人がこちらを見ていた。無慈悲にて冷血、任務達成のためなら情け容赦のない合理主義者が、視線の先に立っていた。
(まずい、まずい、まずい、まずいまずい、まずい、まずい、まずい、まずい!)
今なんと名乗っているのかは知らないが―――
厳重な警備をかいくぐって潜入し、腕利きの護衛部隊を苦も無く対処する。
こんなことができる諜報員など、わたしは一人しか知らない。
西国が世界に誇る生きた伝説の
彼が全てを駆使したのなら、その戦闘能力は一個中隊にすら匹敵するという。
理性と信念によって作られたバケモノが、今から全力をもって博士を確保しに向かってくる。唯一よろこべることがあるというのならば、博士の目にも<黄昏>が怪物に映ったことだろう。
「―――走ってください!」
わたしの鋭い叫び声に合わせて、博士は一目散に駆け出した。
「逃がすかっ!」
(~~~~ッ!)
背後から迫ってくる圧を肌で感じながら、わたしと博士は走る。しかし、所詮は無駄な抵抗だ。すぐに追いつかれることなどわかりきっていた。
かたやドレスで着飾った少女と運動不足の中年研究者。かたや鍛え抜かれた世界一の諜報員。ただでさえそんな絶望的な状況なのに、博士の足がもつれてころんでしまう。
「そこで止まれっ!」
わたしは倒れた博士と<黄昏>の間にすばやく入りこむと、太もものホルスターから仕込み拳銃を抜いた。
―――はずだった。
瞬間、手元から銃が弾き飛ばされる。
いつの間にか投げつけられたカトラリーナイフが、正確無比に仕込み拳銃をはじきとばしたのだ。
(あ、ダメだ殺される)
脳内で<黄昏>に殺された護衛たちの死体がフラッシュバックする。
彼を止めようと闘ったところで鋭い蹴りで頭を砕かれるか、はたまた銃弾で撃ち抜かれるかの違いしかない。床に転がる彼らと同じように、始末されるまで一秒たりとてかからないだろう。
やけくそになって格闘戦をしかけたところで、勝てる要素はみじんもない。なぜならば、相手は世界最高峰のスパイであり、エージェントなのだから。
どうせならせめて安らかに逝きたい。
恐怖が限界に達したわたしだが、護衛対象がいる手前引くわけにもいかない。
わたしは涙をこらえて格闘戦の構えを取った。
ゆえに<黄昏>は――――
「ま、まってくれ、たのむぅ!ねらいは私なんだろう、この子は…この子は見逃してやってくれ!」
博士がすがりつくように<黄昏>の前に踊り出し、わたしをかばうように立ちふさがった。
訳も分からず呆然としているわたしをチラリと見やって、<黄昏>は表情を変えずに言い放つ。
「命拾いしたな」
そして博士の手を掴み強引に立たせると、悠々と<黄昏>は歩き去っていく。
わたしはただそれを眺めていた。
彼が黄昏のように姿を消していく様を、わたしはただそれを眺めていた。
命が助かった安堵で、体の一部が暖かくなる。
それがわたしたちの第一遭遇。
当時まだ13歳だったカミーユ・フォレスティエと、まだその名を持ってすらいないロイド・フォージャーのはじめての邂逅。
すなわち―――
わたしの
「……漏れちゃったじゃん」
とりあえず、今は泣いておこうと思った。
特殊タグのおためしと箸休めで書いていきます。
原作もおもろいし偉大な先駆者様もいるのにSPYxFAMILYの小説が13件しかないのってなんかのバグだとおもうのでみんな書いて(切実)