表現的にも少々キツめだと感じるところがあるかもしれないのでどうかご容赦ください。
また、今回も会話多めです。
「GEAR…というものに対しての説明を求めるわ。」
そう聞いてきたのは刻晴ではなく、凝光だった。
知らないのも無理はない。
GEARとは、本来この世界には存在しないはずのモノだ。
GEARについて説明を求められるのも当然のことだった。
「何から話すべきか…。…少し長くなるが、大丈夫か」
「大丈夫よ」
「わ、私も大丈夫…!」
「…問題ないわ」
長話になることを伝えると大丈夫だと返答が帰ってきたのでそのまま続けさせてもらうことにする。
「まず、GEARとは人間の手によって作られた人工生命体だ。それも、本来この世界には存在しない生命体でもあるがな。」
「…人工生命体」
「そうだ。もっとわかりやすいように、とある世界の話をしようか」
「こことは違う、別の世界。そこでは人間達は科学を発展させて文明を発達させていた。移動手段や連絡方法、食事に医療。ありとあらゆるものが科学の進歩によって進化していた。
だが、どの世界でも争いが存在する。その世界では発達させていた科学を使い国と国との戦争を行うこともあった。発達した科学によって行われた戦争はその世界を荒廃させ、蝕んでいった。
荒廃した世界になることを阻止するべく世界が取った方法は科学の放棄だった。その世界において科学を使うことの一切を禁止した。当然その世界に住む人々の暮らしは悪化していった」
全員の顔を見ながらそんなことを話す。
3人とも真剣な、それでいて信じられないような顔をしながら話を聞いていた。
「そんな中、科学の代わる新たな力が発見された。
それが、法力だった。実質的にリソースを必要としない法力は人々の生活を少しずつだが、改善させていった。
そして人間は自分たちの生活をより豊かにすることを目的として、法力によって新たな生命を生み出した。それがGEARだった。
GEARは生活を豊かにするために色々なサポートをしてくれる存在だった。
だが、悲しいことにGEARと呼ばれる生命もまた人間の手によって生まれた物でしかなかった」
「…戦争に使われたのね」
「……人間が次に行ったことはGEARの戦争への投入だった。人間の代わりに戦闘用のGEARを生み出し、世界はさらに荒廃していった。皮肉にも人間の暮らしを豊かにさせるために生まれたGEARは人間の住む世界を荒廃させていくことになった。」
「……。」
「そんな世界で、とある科学者が戦争に使われているGEARを止めて戦争を止めるべく新たなGEARを誕生させた。それが統率型GEAR、個体名『ジャスティス』。」
「ジャスティス…。」
「ジャスティスはいわば、完成型のGEAR。それまでに生まれた全てのGEARに命令を出すことのできる唯一のGEARだった。
しかし、その世界の人間を待っていたのは戦争のない世界ではなく…ジャスティスによって統率されたGEARとの新たな戦争だった。
世界は人間とGEARによる大きな戦争、『聖戦』に突入していった。
まぁ、人間は最終的にGEARとの戦いに勝利したんだが。その話は割愛させてもらう。
結論を言うと、俺にはその世界で生きていた記憶。いわば前世の記憶を持っている。それも精神的な、オカルト的な話ではなく…法力の力によって。」
「「「「「「……ッ!?」」」」」」
『前世の記憶を持っている』このことは鍾離にしかまだ話したことのないことだった。
外で盗み聞きしていた奴、物体に憑依させる術を使い盗み聞きしていた奴、姿を消してこの話を聞いていた奴。
計6人の動揺を感じることが出来た。
「前世の記憶…?どういうことか説明して頂戴。」
「…世界にはバックヤードと呼ばれるこの世の全ての情報が記録されている空間、この世界の決まり事が記されている本のような情報空間が存在している。その空間にはこの世界で起こりうる現象が全て記されている。
明日何人産まれて明日何人亡くなるのか。
火や水が発生する条件や雨はどうして降るのか。
それらは全てバックヤードに記されている。
いわば…この世界のルールブックみたいな物だ。
そして俺の使っている力である法力。
刻晴の言っていた剣に付与されているのも法力だ。
そして法力はバックヤードを利用した力だ。
簡単に説明すると…法力というのはバックヤードから無理やり理由を作り出して、何もない空間に火や水を生み出すことの出来る力だ。
それを使って剣を扱いやすくしてある」
「……続けて頂戴」
「法力というのは何でも出来る力だ。
比喩じゃない。文字通り何でも出来る。
前世の俺はその力を使い、バックヤードに自分の魂と紐付けられた自分の記憶のバックアップを取っていた。
そうすることでもし自分が人生を終えたとしても、来世なるものがあるのなら記憶が引き継がれるからだ。
そうして俺はこの世界に産まれた時に、バックヤードにバックアップされていた自分の記憶を復元することが出来たわけだ」
「にわかには信じられない話ね。…でもそう考えると貴方の力から元素力の痕跡を感じることが出来ないのにも納得できる。
でも、それが貴方がGEARであることとなんの繋がりがあると言うの?」
「…そうだな。例えば…この場に居る俺を除いた全員、神の目を持っている。
だから…理解出来るとは思うが、神の目を持った者は元素力を扱うことが出来て、驚異的な身体能力を持つようになる。
神の目を持ったら元素力を扱うことが出来るのはわかる。
しかし何故、身体能力の向上が起きるのか。
普通は『元素力を扱えるようになるのが神の目である』という話で完結するはずだ。
『神の目を持つ者は驚異的に身体能力が向上する』というのは必要ないように見える。
ならば何故、身体能力の向上が起きると思う?」
「…まさか、身体能力が向上しなければ…!?」
「そう、体が元素力を使うことに対しての負荷に耐えられない。
法力にも似たようなことが言える。
『法力を扱う時は体に大きな負荷がかかる』
『だから、体をその負荷に耐えられるようにする必要がある』
という話になるわけだ」
「…まさか貴方ッ!!」
「……ああ、お前の考えている通り…俺は元々、人間だったんだ。人間の自分の体をGEARに作り替えたんだ」
凝光が鋭い視線を向けてくる。
やめろって、お前のその視線はめっちゃ心に来るんだぞ。
「わからないわね。貴方、何故力を使うためにGEARになったのよ」
「…そうだな。なら、昔話をしようか」
「…昔話?」
「そう、とある男のつまらない昔話を」
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とある時代。
魔神戦争が起き、世界に争いが耐えなかった時代。
とある村に男の子が産まれた。
その村は、決して裕福とは言えない村であった。
しかし、その男の子は沢山の愛情によって育てられていった。
その男の子には友人が居た。
異性の幼なじみが居た。
狩りの仕方を教えてくれた親戚の叔父が居た。
自分を愛してくれた家族が居た。
ある日、その男の子は両親や周りにいる人達を集めて
『自分には前世の記憶がある』
と言った。
禁忌とも呼べるような力すら使えると告げた。
しかし、男の子の話を聞いた人達は
「なにを言い出すかと思えば」
と笑っているのだ。
その村の人達にとって、その男の子は…例えどんな記憶を持っていようと、どんな力を持っていようと愛すべき友人であり家族であることに変わりはなかったのだ。
男の子はその日涙を流しながら何度も感謝を告げた。
次の日のことであった。
男の子が起きると、村の異変に気付いた。
誰一人として村に人が居ないのである。
男の子は急いで村の人達を探しに行った。
村から少し外れたところで男の子が見たものは。
かつて村人であったモノだった。
そしてそれを処理しつつ、村の金品を持ち帰ろうとしている盗賊であった。
盗賊の何人かは神の目を所持していた。
神の目を所持してすらいない村の人達が抵抗することが出来るわけも無く、一方的に蹂躙されていたのだろう。
男の子はその光景を見て怒りに我を忘れていた。
気付けば、自分の体は前世の記憶にあった人ならざるモノへと作り変えられていて…盗賊の姿はどこにもなかったという。
男の子はその日、誓を立てた。
『必ずこの手で、全ての者を救う
もう二度と同じ惨状が起きないように』
男の子はその日から修羅となった。
盗賊や害をなすありとあらゆる悪を狩り、弱き者や善なる心を持つ者を救っていった。
魔神戦争が終わり、青年の見た目となった男の子が後ろを振り返ると…そこには屍だらけの道が出来ていた。
青年は悔いた、自分の狩り取ってきた命の多さに対して。
その青年は自分の力を罪として、その力を無意識の内に制限するようになった。
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「「「「「「…………。」」」」」」
「その青年は今でも悔いているはずだ。
『もう少し早く人ならざるモノになっていれば、もう少し早く気付いていれば』
と。」
「「「「「「…………。」」」」」」
「…俺が話せそうなのはこれくらいだ。上手く質問に答えられたか、わからないが…とりあえずこれを回答とさせてもらおう。それでいいか、玉衡様?」
「……えぇ、悪いわね。こんな話をさせてしまって。」
「おいおい…なんだその暗い顔は。別に同情だとかしてほしくてこんな話をしたんじゃ無かったんだぞ俺は。
まぁ…だったらもうちょっと話す内容について考えろって話のような気もするがな」
もうちょっと明るめの話にすべきだったな。
反省しておこう。
上手く書けたかはわかりませんが、とりあえず暗めの話になってしまったと思っております。
もう少し明るめの話にしなくては…。