絶対におかしい。
今日は鍾離と凝光の会談の日だ。
凝光は甘雨を連れて鍾離に会いに来ていた。
鍾離は朝から凝光を待っていた。
そう。
俺の家で。
何故よりによって俺の家なのか。
いや、確かに『凝光と鍾離が二人で秘密裏に会える場所なんて何処だろうか』とか思ってたけど。
俺の家は流石に想定外なんだわ。
「ねぇ…お茶、まだかしら?」
『まだかしら?』じゃねぇんだわ。
というかおかしいよね。
なんで俺もその会談のメンバーの中に入ってるわけ?
魈で良かったじゃん。
俺要らなかったじゃん!
「そういえば、俺がお前に持ってきたお菓子が残っていたんじゃなかったか?あれは俺のお気に入りなんだ。限定物のスイーツ、というやつでな。堂主殿もかなりお気に入りの様でかなりの頻度でお使いを頼まれる」
「あら、それは良いことを聞いたわ。ほらシュウ、早くそれを出して頂戴。甘雨も食べるのよね?」
「えっ…!?えーと…じゃあ、私も…」
そんなことを言われながらお茶を淹れ、菓子を出し、自分も座ることにする。
凝光と鍾離が対となる様に座っているのだが、俺はその机から少し離れて座ることにする。
おかしい…凝光は少なくとも鍾離が岩王帝君であったということを知っているはず。
しかし、なんだか既に鍾離と仲が良い様に見える。
少しは緊張するはずだと思っていたが…まさか、鍾離の『シュウと話すときのように接してもらって構わない』という発言を聞いての行動なのだろうか。
そんなことを考えながら不思議そうに見ていると、凝光は俺に説明するように伝えてきた。
「実は、大切な話というのはもう話し終えているの。元…という言葉が付くとはいえ岩王帝君という身分がバレないように『鍾離さん』と呼ぶようにするだとか…岩王帝君の実質的な引退の理由だとか。今の璃月に対しての感情なども。だから今から私達が話すことは、政治的なものというよりお互いの仲を深めるための話だと思ってもらって構わないわ」
「まぁ、そういうことだ。今回の会談は秘密裏とはいえ、俺たちの関係者は今回の会談について知っている。もちろん、言いふらしたりはしてないがな」
「…そうかよ」
じゃあ俺の家使う理由無いじゃん!
『俺の家は一般人は入り込めないから秘密裏に会える場所としてはうってつけなのだろうか。もしかしたらかなり重要な話が行われるのではないだろうか』とか考えていた俺の緊張、返してほしいんだが。
それから、凝光と鍾離の会談が始まった。
と言っても、本当に雑談のような…それでいて知りたいことはしっかりと聞くような…そんな会談であった。
(このまま何も無く終わってほしいんだがな…)
そんなことを考えていた。
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鍾離と凝光には共通している目的があった。
それは
『自分の命の恩人であり、掛け替えのない友人である男を守ること』
であった。
夢の中で出てきた鍾離と凝光が真っ先に話始めたのはこの話題であった。
【なんとしてでも彼を守り抜く】
その覚悟が二人にはあった。
…いずれその覚悟を持った者が3名ほど稲妻より来国されるとは、二人は考えていなかったであろうが。
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甘雨は、確かに緊張していた。
いくら帝君の秘密を守るためとはいえ、一般人のような扱いを鍾離にすることが出来ずにいた。
シュウから見て、彼女は緊張しているようにしか見えないはずだ。
しかし、それだけではなかった。
彼女は今、緊張以外の感情も持ち合わせていた。
数日前、甘雨は鍾離より【シュウの過去】を聞かされていた。
彼女の中には命の恩人であり自分の心の支えになっていた男をどうやって幸せへと導けるか。
そのことについても考えていた。
ちなみにだが、留雲借風真君に相談してみたところ『二人で夫婦にでもなれば良いではないか』と言われてしまったわけだが。
相変わらず、とんでもない仙人である。
何はともあれ。
彼女の生きる目的の中に
『恩人を幸せにする方法を探す』
が追加されたことは言うまでもなかった。
彼女は璃月七星の秘書。
しかし、彼女は仕事以外には情弱であった。
故に彼女は頼ることにしたのだ。
最近よく二人で外食や買い物、雑談をしたりするなど仲良くなった同僚と旅人に。
蛇足だが、彼女の
『幸せにしたい人が居る』
という発言に二人の友人が椅子から崩れ落ちたのは少し先の話だ。
自分でも不定期更新が過ぎるとは思っている。