元帝君の友人になった男の話   作:じーじー

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「…ハッピー?」 「名前だよ」

 

 

 

「……。」

 

 

かつて、テイワットに一つの村があった。

その村はそこまで大きな村では無かったが様々な年代の者たちが幸せに暮らしていた。

しかし、その村には不思議な点がいくつかあった。

村人の見た目が全員若々しいのである。

というより、老人が一人も居なかった。

その村に住む者たちは誰一人として歳を取っても見た目が変わることは無かったのである。

 

 

「…なん………に。」

 

 

璃月には仙人が居る。

璃月という国が出来るまでに多くの仙人が命を散らしてきた。

守るべきもののために戦い…倒すべき者を倒すために戦い…。

一人、また一人と数を減らしていった。

だが、戦うことをせずに自分たちを守るために。

生き残るために集団を作り、村を作った。

村を作った仙人達は自分達が仙人であることを隠し、ただの人間であるように振る舞っていた。

 

 

「…なん…た…に。」

 

 

ある日のことだった。

ある女仙人が一人の人間の男を村に連れ帰った。

その男は体中血だらけで、怪我も酷い様子で。

息絶えるのも時間の問題であった。

村に居る仙人達は『たとえ仙人でなくとも救える命は救うべきである』としてその男をすぐさま治療した。

そんな男はみるみる元気になり、外の世界の様々な技術をその村に提供し『代わりにここで世話になりたい』と仙人達に言った。

仙人達はその申し出を快く受け、共にこの村で歩むことを決意した。

男はあまり体が強くはなかったが、他の者には考えつかないような発送が出来る知恵を持っていた

その後、その村で一人の女の子が産まれた。

人間の男とかつてその男を連れ帰った女仙人の間に産まれた娘であった。

その半仙の女の子はどんどん成長していき、母親から仙術を教わり、父親から知恵を授かった。

その娘が100年の歳を重ねた時に『村から出て、世界を見て回りたい』と思っていた。

そしてついに、村の仙人達を説得し外の世界に飛び出していった。

 

 

「…なんのために…。」

 

 

その後、少女は旅をした。

ある時は人を助け、ある時は星を見て夜を過ごし、ある時は恋をした。

そして少女はテイワット大陸を見て回り得た情報を村に持ち帰り村に居た仙人達に教えようとしていた。

 

 

「…なんのために!」

 

 

…………。

…もっとも。

…村に帰ったところで。

 

 

「なんのためにッ!!私は生きているんだッ!!!」

 

 

誰一人生きている者は居なかったわけだが。

その村には人間達が欲しくてたまらない数々の技術があった。

盗賊たちは村に住む仙人達を騙し、貪り、蹂躙した。

かつてその村に住むことになった男と同じ方法で村に入り込んで。

少女は憎んだ。

人間を、テイワット大陸に住む者たちを。

自分の大好きだった者たちを見殺しにした者たちを。

すべてを憎んだ。

 

 

「…潰す。…潰してやる…一人たりとも生かしてはおけない。力が欲しい…この世界を壊せる力が…ッ!」

 

 

かつてテイワットを旅した少女は…テイワットを愛した少女は居ない。

もう、ここに居るのは憎しみに囚われた女仙人だけであった。

 

 

「……フフ…ハハ…ハハハハハッ!良いねぇ、君。素晴らしいよ。こんな素晴らしい偶然があっただろうか」

「……。」

「いいや、無いね。そんな偶然は無い。この世界に存在する偶然は周りが勝手にそう呼ぶだけだ。この世界に偶然なんてものはない。偶然と呼ばれるものを紐解いていけば、そこには必然と言うべき理由が残る」

「……。」

「あぁ、すまない。君を置いてけぼりにしてしまった。これは失敬。僕は…あー…そうだなぁ…今からこの世界を壊す物語の主人公になる君を手助けする魔法使いだ。よろしく」

「…目障りだ…私の目の前から消えろ」

 

 

女仙人が片手を前に突き出すと、その存在の体に大きな穴を開けた。

体の穴から向こう側の景色が見える、普通ならば一つの命が終わりを告げる。

しかし、目の前の存在の体はみるみるうちに再生していった。

最初から穴なんて空いてなかったかのように。

 

 

 

「……なんだ…お前は…」

 

 

 

あぁ…!聞いてしまった…!

それを聞いてしまっては始まってしまう。

かつて同じ村に住んでいたことのある二人の物語が。

その質問に答えてしまっては始まってしまう。

たった二人の生き残りが交わる物語が。

始まるべきではないはずなのに。

決して踏み出してはいけない一歩なのに。

そう、これはいわばレッドライン。

絶対に越えてはならない一線。

それをこの女仙人は…彩麟(さいりん)は越えてしまった。

あぁ…始まる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……フフッ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、止められない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピーケイオス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、誰も止めることは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッピー?」

「名前だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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