「さーて…探すとしますかね、噂の旅人さん」
アルベドの研究所から出た俺はドラゴンスパインを歩きながら法力を展開する。
今回使う法力は簡単に言えば特定の人物が何処に居るのかを探すための法力だ。
この法力はかつて別世界で起こったギアと人間の戦争、聖戦にて重宝した法力だ。
ギアが何処に潜んでいるのか探す時や、逃げ遅れた人を救出する時にこの法力が有るか無いかでは天地の差と言える。
と言っても、万能ってわけじゃない。
ある程度条件を絞らないと細かい特定は出来ない。
だが今回はその条件を絞るための最低限の情報はわかってる。
なんでもその旅人とやらは神の目を持ってないにも関わらす元素の力を使用出来ると聞いた。
しかも使える元素の力は一つじゃないときた。
探し出すのは苦労はしねぇはずだ。
………まぁ、もっとも。
俺はあんまりこの法力は得意じゃない。
探し出せなくは無いんだが…時間が少しかかる。
とりあえず石門辺りを目指しつつ場所が分かり次第動きますかね…。
そんなことを考えながら歩いていた。
だからだろうか。
自分が歩いている方向に人影が見えることに気付くのに遅れたのは。
「……帰終?」
そこには見知った人物が行く手を阻むように立っていた。
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「よぉ、帰終。こんな寒いとこまで来てどうした?俺になんか用か?」
とりあえず、流石にスルーするってわけにもいかないから声をかける。
こんな寒いとこまで来たんだ。
なんか用があるに決まってる。
「………。」
「つーか、鍾離のやつはどうした?一緒じゃねぇのか?」
「………。」
「……帰終?」
妙だ。
声をかけても反応が無い。
普段は話しかければ元気な声で何かしらの返しをしてくるお調子者の帰終が、まったく返事をせずにこちらを見つめている。
何か様子のおかしい帰終を見ながらどうしたものかと考えながら近づいていく。
よく見るとこちらに右手を突き出している。
何をしているんだろうか。
「………。」
「………ッ!?」
…いや、違う!
あれは、ただ右手を突き出しているんじゃないッ!!
「……冗談だろ?」
突き出していた帰終の右手には、確かに拳銃が握られていた。
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何故帰終が拳銃を持っているのか。
何故帰終がここに居るのか。
何故こちらに何かしらの返事をしないのか。
色々な思考が頭に駆け巡る。
まず、拳銃をこちらに向けられているが…。
俺の体はギアだ。
銃弾が飛んできて体を貫いたとして、多少の痛みこそあれど10秒もすれば傷は無くなり完全に回復する。
そんなことを考えていたその時
「……ッ!?」
あたりに銃声が大きく響き渡り、右肩を撃ち抜かれる。
傷口を抑えて痛みを堪えながら、すぐさま銃の射線上に入らないように大きな岩陰に入る。
帰終に撃たれた衝撃に動揺しつつも冷静に現状を整理する。
まず、帰終の様子は見るからにおかしい。
ちらっと見えたが、帰終の顔は無表情だった。
声をかけても返事は疎か、反応すら返ってこない。
おかしいと考えるべきだろう。
銃撃時、帰終には一切の動揺が見られなかった。
感情がまるで無いかのように。
とにかく、帰終は銃撃を辞めるつもりは無いらしい。
そして、帰終に俺は反撃することが出来ない。
出来ないとは言うが、不可能ではない。
ただやりたくないというだけである。
事実上出来ないと同じくらいの感覚でやりたくないというだけなのだが。
そこまで思考していて、さらに気付く。
「傷口が…治らない…?」
先ほど撃たれた右肩の傷口が一向に治る気配がない。
(どうなっている…?)
これには流石に動揺を隠せない。
しかし、そんな事はお構い無しと言わんばかりに帰終が距離を詰めてくる。
徐々に足音が近付いて来ている。
「……クソ………ッ!」
とりあえず思考を少し緩め、再び逃げるように距離を取る。
途中、逃げるのに邪魔になる巨大な岩を無理やりふっ飛ばしながら。
今のところ俺に取れる取れる選択肢は、それしか存在しなかった。
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「でも旅人!シュウに会いに行ってみるって言ったってどうするんだよ!何処に居るのかオイラたちわかんないぞ!」
「確かに…どうするの?旅人」
「……とりあえず璃月に行ってみようと思う。たしか璃月に彼と親しい人が居るって聞いたから」
そんな会話をエウルアとパイモンとしながら、アカツキワイナリーから石門にかけて歩いている蛍。
そんな彼女は一つ違和感を覚えていた。
(エウルアが彼が何処に住んでいるのかを知らない…?)
彼女が聞いた話では、モンドで彼…シュウと親しい関係なのはエウルアとアルベドだということだった。
エウルアとは、何度も璃月でお酒を一緒に飲むような仲だったのだとか。
そんなエウルアがシュウの居場所を知らない?
そう思いつつも歩き続ける蛍は、ふと異音に気付く。
「ねぇ、二人共。何か変な音がしない?」
「変な音か…?」
「………確かに……ドラゴンスパインの方から聞こえるわね」
蛍にそう聞かれてエウルアとパイモンは耳を澄ませる。
するとたしかに、ドラゴンスパインの方から音が聞こえるのだ。
『何の音だろうか?』と思いつつも聞いて居た3人の耳に突如、大きな破裂音のようなものが聞こえた。
「…間違い無い…!これは…」
「「「爆発音!(だ!)(ね!)」」」
3人はすぐさまドラゴンスパインに向かった。
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「…クソ……ッ!」
ずっと逃げ続けて帰終を巻こうとする俺。
しかし、しつこくこちらを発砲しながら向かってくる帰終。
しかも、こっちは遮蔽物を作りながら無理に逃げ回ったせいで徐々に息切れしてきた。
このままではいずれ追いつかれる。
どうにかならないものかと考えていると。
「………。」(ズルッ!‼)
こちらを追っていた帰終が足を滑らせた。
足を滑らせた勢いでそのまま崖から落ちそうになる帰終。
「……ッ!?」
すぐさま岩陰から飛び出し帰終の手を掴み引っ張り上げることで事無きを得る。
しかし…。
「………。」(ジャキッ!!)
「……クソ…ッ!」
引っ張り上げた瞬間こちらに銃を向けてくる帰終。
(自業自得とはいえ、万事休すか…!?)
そう思いつつも急いて距離を取ろうとしたその時である。
横から見覚えのある大剣が飛んできて、帰終の持っていた銃身の先に当り、銃を吹き飛ばした。
そして、銃を吹き飛ばされて隙を晒している帰終を見逃す筈もなく。
帰終の懐を掴み、そのまま地面に抑え込む。
「危なかったわね」
知っている声を聞きながらそちらを向くと、先ほど飛んできた大剣の持ち主ことエウルアが居た。
「あぁ、ドラゴンスパインの今日天気が【吹雪/時々大剣】じゃなかったら危なかったな」
帰終から銃を奪い取りつつ、そう返事を返す。
奥から知らない二人組もこちらに走って向かってきている。
(あれが旅人か…?)
安心を覚え少し緊張を和らげながら、そんなことを考える。
もっとも、その和らげた緊張は…。
「私の手を煩わせるとは、貴方にまた復讐する理由が出来たわね。この恨み、覚えておくんだから!」
その言葉を聞いて元に戻ってしまうわけだが。
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「……助かった。恩に着る、エウルア」
言いたいことはあるが、何も言わずに冷静を取り繕い礼を言う。
「どういたしまして。それで、何があったの?」
「…あぁ、それがな…」
とりあえず帰終とのやり取りを伝えようとして縛り上げている帰終を見ようとして、帰終のさらなる異変に気付いた。
縛り上げているはずの帰終が少しずつ薄くなっていき…完全に消えてしまった。
「なッ…!?」
「嘘…っ!?」
「えっ!?」
「消えたぞ!?」
ありえない光景を目に、四人とも驚く。
そんな…完全に消えた…?
透明になっているわけではない…。
だが、俺の手には取り上げた銃が握られてる。
どうなっているんだ…?
そんなことを考えていると横から動揺した表情をしつつもエウルアが声をかけてくる。
「…とりあえず、ここを離れましょう。場所を変えたほうが良いわ」
………。
『もしかしたら』という気持ちが確信に変わった。
俺は帰終から取り上げた銃を迷わずエウルアに向けた。
「なっ…シュウ!?どういうつもり!!?」
驚くエウルアにそう言われつつも拳銃を構えるのを止めずに少しずつ距離を取る。
そして十分に距離を離したタイミングでエウルアに銃を撃つ。
銃弾は確かにエウルアの胸を撃ち抜いた。
「な、何を!?」
「一体どうしちゃったんだよ!!」
「二人共!!今すぐソイツから離れろッ!!!!」
旅人にすぐさまそう伝える。
もし仮にコイツがエウルアだったとして。
この十分に離れた距離から撃った弾を避けれない筈はない。
もちろんエウルアの後ろに旅人が居て、避けたら旅人に当たりかねないということもない。
撃たれた筈のエウルアの傷はみるみる塞がっていく。
「あーあ、こんなに早くバレちゃうなんてね」
エウルアの形をしたソイツはそう言いながら帰終と同じように透明になっていって消えた。
……聞いたことのある声だった。
誰かは思い出せない。
だが、確かに聞き覚えのある声だった。
思い出そうとしても思い出せない。
それでも必死に思い出そうとする。
(このテイワットで、何が起こっているんだ…?)
そう考えながら思わず呟いてしまう。
「今日は…厄日を更新したな」
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「どう?彼ってば凄いと思わないかい?イレギュラーという存在に恥じない素晴らしい力を持っているだろう?神の目を持ってないのにもかかわらず元素の力を自在に使いこなせる。凄いよね」
「…何が言いたい」
「……フフ…!」
「君も欲しくない?あの力」
それは悪意ではない。
だが、確かにテイワットに存在していた。
純粋すぎる意図が。