「と、言うわけだけど。今後の計画、頭にばっちり入った?」
「ふん…。しかし、お前…本当に計画通り動くのだろうな?」
「もちろん。僕は君の…ボスの望むままに動く駒だからね。僕のこと、信用できない?」
「………信用はしない。ただ利用するだけだ」
「うん、それでいいよ。僕も信頼を寄せられるより楽に動けるから」
ケイオスと彩麟(さいりん)はそんな話をしながらとある場所へと向かっていた。
とある計画を実行に移すために。
それぞれの思惑のために。
「彼らもあの雪山で二週間ぐらいは足止めされてくれてるから、全然大丈夫だと思うよ」
「…信じられんな。そんな力があるとは」
「大変なんだよ?この法力を組み立てる理論は1年あっても作れるものじゃない。天才でも無い限りね」
「で、それがお前だと?」
「そういうこと」
「気に入らん奴だ……」
「気に入られるためにやってるわけじゃないからね」
「………。」
「さて、ついたよボス。じゃあ、始めようか君の物語を。ここ、スメールシティからね」
計画は、進んでいた。
着実に。
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エウルアは、腹を立てながらも俺達の話を聞いていた。
今まで何があって、どういう事になっているのか。
今わかっていることは何か。
説明していくにつれ、エウルアの表情は怒りを感じさせるものから真剣なものに変わっていった。
「なるほどね…それが今あなた達の身に、そして私の身に起こったことなのね。だとしたら大変なことよ。一大事ね」
「あぁ、俺等もこの状況はマズイと思ってる。今後何が起きるかわからないし目的も良くわからない。動こうにもどうするか決めかねているってとこなんだ」
「……そうね。それもあるんだけど…」
「どうした?何か気になることでもあるのか?」
「気になることでも…というより…そうね…落ち着いて聞いてくれる?」
「なんだ…?」
「私は彼女…旅人がモンドに来たところを見ているのよ」
「そうか」
「で、彼女はその日のうちにモンドを出たのよね?」
「ああ、間違い無い」
「……だとしたらおかしいわ。だって、私が旅人を見たのは二週間前なのよ」
「……何…?」
「そ、そんなこと…おかしいぞ!だってオイラ達がモンドに出たのはつい数時間前だぞ!?」
「…間違い無いよ、エウルア」
「…えぇ。嘘を言っているわけじゃないことはなんとなくわかるわ。とにかく、行動するなら急いだほうが良いわね」
「あ…あぁ、わかった…急いで璃月に向かうとする…。」
「あ、あともう一つだけ」
「な、なんだ?」
「あなた達…自己紹介ぐらいしたらどうかしら?」
「「「あー……」」」
そう言えば自己紹介はまだだったな……。
なんというか…締まらないなぁー…。
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そんなことがあり、俺達はドラゴンスパインから璃月の近くまで急いで移動した。
エウルアはこの事をモンドにいるジン達に知らせるために別れることになった。
「なぁ旅人」
「パイモン、どうしたの?」
「どうしてシュウのやつ…あんな顔してるんだ…?」
「確かに…ねぇ、どうしてそんな…渋い顔してるの…?」
「いや…そうだな……簡単に言えば……」
「言えば?」
「二週間……経ってたろ……?」
「おう、経ってたな…」
「あんな状況で二週間も璃月を空けてたら…何言われっかなーって思ってさ…」
「『何言われるかなー』って一体何を言われ…る…ん……だ……よ………」
そんなこんなで、璃月に戻ってきた俺は少し気不味い表情をせざるを得なかった。
パイモンも気付いたらしい。
俺とおんなじ顔をしている。
「久しぶりだな、旅人。そして……待っていたぞ、シュウ」
「……あぁ、だろうなとは思っていた」
璃月の入口で待っていた険しい表情をした鍾離を見ながら。
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「3人とも、付いてきてくれ」
それ以上は何も言わずに、ただ何処かに向かい始める鍾離の後ろを三人で付いて行く。
そうしてたどり着いたのは……
「往生堂…?往生堂に来てほしかったのか?」
「あぁ、そうだパイモン。少し話をしたかっただけなんだ。そう時間をかけるつもりはない」
「……何人居る?」
「璃月に居る者たちは全員…といったところだ」
「…チッ…めんどくせぇことになりやがったな…」
「そう言ってくれるな…まぁ、とにかく入るぞ」
往生堂に着いた俺達四人。
とりあえず中に入るよう言われたため中に入ることにする。
すると色んな方向から視線を浴びることになった。
主に俺に向けての視線だが。
……本当に鍾離の正体知ってるやつ全員居るじゃねぇか。
そんなことを思っていると凝光に話しかけられる。
「ずいぶん長いお休みだったようね」
「あぁ、一瞬で終わったバカンスだったがな」
「少しはリラックス出来たのかしら?」
「リラックス出来てるように見えるのか?」
「…いえ、全然」
「ならリラックス出来てないんだろうな。残念だ」
「ええ、本当に残念ね」
「……………鍾離、言いたいことをとっとと言え。俺はこんな茶番に付き合うつもりはない。『で?お前結局過去を引きずってんのか?』それぐらい普通に聞けば良いだろうが」
空気に耐えきれずそんなことを鍾離にこぼす。
それと同時にその場の空気が信じられないくらい凍る。
咄嗟に何も言えない鍾離に変わって帰終がなんとも言えない表情をしながら返事を返してくる。
「……聞いて良いの?」
「聞きてぇことはそれだけなんだろ?」
「…うん。たぶん」
「ハァ……旅人とパイモン、お前らは外に出てるか?」
「ううん、良ければ私にも聞かせて欲しい」
「保証する。面白い話じゃ無い」
「それでも良いよ」
「……そうか」
…覚悟はしていたが、いざ本音を語るとなると少し口が重たい。
少しずつ、言葉を絞り出すように続けていく。
「……鍾離…今から一つだけ聞いておく。それを俺の思ってることだと考えてくれ。あと、勝手だが…何を言われたりされたりしても文句は言うなよ」
「…もちろんだ」
「そうか……なら遠慮はいらねぇなァ!!」
許可は得た。
俺は鍾離の胸元を掴み思いっきり壁に叩きつける。
鍾離は声一つあげずにされるがままだ。
少しだけ気に入らない。
「いいか、言いたいことは一つだ。お前は…お前は…ッ!!テメェは…何故あの村を守らなかった…ッ!!!!!!」
「……。」
「あの村にいた仙人達は…全員元々はお前の部下のような存在だった!全員だ!一人も例外はいねぇ!だが!お前はそいつ等を見て見ぬふりをして!あまつさえそいつ等が何者かから襲われ、滅ぶ様を救いもせず!!言ってみろッ!!テメェどの面下げて俺の前に居るッ!!どうしてそんな事が聞けるッ!!!!どんな理由があってもやっちゃならねぇことがあるだろうがッ!!!!何故救わなかったッ!!!!!!救える命だったろうがッ!!!!!!!」
「落ち着いて!モラクスにだって何でも救えるわけじゃないの!!」
「あぁ!そうだろうよ!!完全な存在なんて何処を探しても居るわけねぇよ!!だがな!!俺は何人救った!?お前に帰終に仙衆夜叉に稲妻の眞達にスメールの草神にモンドの旧貴族にフォンテーヌの奴らに!!」
「…シュウ…」
「どんなに救っても帰ってこねぇんだよ!!!!!!俺の大切だった奴らは!!!!!!どんなことをしても完全に死んだ奴らは戻ってこれねぇんだ!!!!!!」
「……。」
「……本当は…わかってんだよ。お前にもあの村の奴らが救えなかった理由があるってことぐらい。だがな…なら、俺のこの怒りは…悲しみは…絶望は…どうすれば良い?どうすればこの苦しみは無くなる?」
「……。」
「なぁ、元岩神よ。岩王帝君よ。璃月の国を作った神よ。俺はあと何人救えば良い?一体誰と…この悲しみを語り助け合えば良い?俺はお前らを許したい…だけどこの苦しみを一人で背負っていかなきゃいけないってのか…?」
「……それがお前の」
「…二度は言わねぇ。お前を責めもしねぇ。だが、この悲しみは忘れられないんだよ。心の…奥底の…ずっと深いところに引っかかってて…取れないんだよ…」
そう言い切った。
鍾離達は何も答えられないようだ。
その時だった。
「やっと終わったかい?やれやれ、僕は長話を聞く趣味なんて無いんだ。むしろ嫌いと言ってもいい。まぁ、君と僕との仲だからね。今回は見逃してあげるよ」
「…な、何故お前がここに居る…?ロミオ…!?」
「そう、僕こそ君のかけがえのない親友…ロミオ・F・ノイマンその人さ」
この場にベッドフレームの上に寝ながらこちらを見ている男が現れたのは。
「やぁ、元気かい?」
「残念ながら、とても元気そうには見えないわ。とりあえず外で話をしたいの。構わないかしら?」
右手にスメールの草神を鷲掴みにしながら。