「また君に会えるなんて僕は幸運だね。この世界でやりたいことリストが一つ埋まったよ」
「…やりたいこと?スラサタンナ聖処を占拠して、世界樹に記録されてる情報をコピーして一体何をするつもりだ?」
「ハハッ…!やっぱりバレちゃうよね。君はこの世界の本を持ってるから。でも、君はその本を使うのを躊躇ってたよね?ロミオ君からなんか言われた?」
「ああ。『平和ボケすんな』とか『使える力をしっかり使え』とかここに来るまでに色々と説教をな。それで?何が目的なんだ?」
「うーん…とりあえず、とある女の子についての話を聞かない?」
「聞かない。俺はお前の目的を暴いて、お前をボコボコにして、多額の金を貰って帰る」
「そっか、でもその女の子に関する情報を一つだけ提示すると…君は必ず聞いてくれると思うんだけどね」
「…何が言いたい?」
「じゃあ話してあげよう。君と育った村の…二人目の生き残りの半仙の話をね」
「………なんだと…?」
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〈スメール アビディアの森〉
アビディアの森。
そこで彩麟(さいりん)は、ケイオスより合図がくるのを待っていた。
その合図と同時に計画を進められるように。
そんな彩麟の前に、一人の女の子が現れ声をかけてきた。
その女の子は不思議な…形容しがたいオーラのようなものを感じさせる存在感があった。
「ねぇねぇ、お姉さん?こんな所で何してるの?」
「…少し休憩しているだけだ。お前こそこんな所で何をしている」
それは気まぐれであった。
いつもなら『近寄るな』や『気安く話しかけるな』といった返しをする筈なのに。
何故かその時だけは普通に返事をしてしまった。
彼女自身、何故そんな返しをしたのかはわからない。
だが何故か返してしまった。
「私?私は…えーっとね…」
「なんだ?答えづらいことでもあるのか?さてはお前…家出でもしてきたな?」
「…うーん…家出…なのかもね」
「…ハァ…言ってみろ。お前は何をしでかしてきた?」
「…お姉さんになら言ってもいいかな。私ね…もうたぶん死んでるんだ…」
「……なんだと?」
「ここらへんにはね?昔は村があったの。お姉さんが休んでるそこには、私とお父さんとお母さんの3人で住んでいた家があったんだ!」
「……。」
「でもね…ある日突然村が盗賊に襲われてね。みんな殺されちゃったの」
「……そうか。それは…気の毒だな」
「ううん。気の毒なんかじゃないよ」
「……何?」
「本当に気の毒なのはね?生き残ってしまった人だもの。この村にもね?そんな生き残ってしまった男女が二人居たの」
「……。」
「その二人はね?絶望して、悲しんで、立ち直れなくなりそうになってたの」
「……それで?」
「でもね?その二人はお互いに励まし合いながら助け合ってなんとか生き残って命を繋いでいったの。そして繋いだ命はまた違う村を作っていった」
「……。」
「お姉さんも、見つけられたら良いね。助け合える人を」
「……私にはそんな者…」
そう言った時には女の子の姿は無かった。
『そんな者…居るはずがない。私は…孤独だ…孤独なのだ…!!』
小鳥のさえずり、風の音が聞こえるアビディアの森。
その森には自分を気遣ってくれていた少女は居ない。
そこにはもう、涙を流す半仙しか残っていなかった。
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「彩麟…その人が…」
「そう、君の過ごした村の生き残り。一人だけじゃなかったんだね。生き残りは二人だったんだ」
「お前は…その事を俺に知らせてどうするつもりだ…?」
「じゃあ、話を聞いてくれたお礼に知りたがってた僕の目的を教えよう。目的は2つかな。一つは君が成長する環境を作ること。そして、もう一つは……」
「……ッ!?何だッ!?」
ケイオスがもう一つの目的を言おうとした瞬間、地面が揺れ始める。
いや、地面が揺れているわけじゃない!
まるでこの世界そのものが揺れているかのような!
凄まじいエネルギーにこの世界が揺らされているかのような!
「もう一つは、そのもう一人の生き残りである彼女に力を与えること!君の持ってるその“この世界の始まりの書”!そのコピーを作ること!!世界樹の情報だけじゃ駄目だったんだ!!君という情報が必要だった!!」
「な、なんだと!?」
〈同時刻 アビディアの森〉
「………来たか」
「ついに計画が動くのか」
「ついに復讐を始められるのか!」
「待っていろ岩神!」
「待っていろ仙人!!」
「待っていろ璃月ッ!!!!!!」
〈同時刻 璃月港〉
「…帝君」
「魈…来たか」
「はい、残念ながら」
「皆を集めろ。向かうぞ層岩巨淵の地上鉱区へ」
「はっ!」
(……虚しいものだな…)
〈スラサタンナ聖処〉
「さぁ!急いで璃月に戻った方が良いんじゃないかな!?彼女を止められるのはきっと君だけだろうからね!!」
「そうさせてもらうが…もう一つだけ俺の質問に答えろ」
「なんだい?」
「お前、俺に彼女を救って欲しいんじゃないのか?」
「……というと?」
「お前…本当はだいぶ正気に戻ってきているんだろ?」
「どうしてそう思うんだい?」
「どうして…って聞かれてもな…」
「……。」
「相棒としての勘だ」
「ふーん…そっか。なら僕の答えは一つだけ」
「君だって”元“をつけ忘れてるよ。元相棒」