元帝君の友人になった男の話   作:じーじー

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「起動しろッ!!!!アウトレイジィッ!!!!!」

 

 

 

ケイオスの話を聞いてスラサタンナ聖処を飛び出した俺は外で待っていたロミオに声を掛ける。

まるで何を言われるか全部知っているかのような顔をしたロミオに。

 

 

「ロミオ…頼み事が__」

「行こう」

「…まだ何も言ってないんだが?」

「言わなくてもわかる。彼女なら多分まだ層岩巨淵じゃないかな。岩神や仙人達とドンパチやり合ってるみたいだよ」

「…ッ!…本当か!?」

「行くだろ?」

「あぁ!すぐに連れて行ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

〈層岩巨淵 地上鉱区〉

 

 

「岩神に仙人…堕ちたものだな…ここまで弱っているとは…」

「…グッ………!」

「て、帝君!!!!!!」

 

 

そこには層岩巨淵の上空にて本を持ち、法力と元素力を行使する彩麟(さいりん)の姿があった。

そしてその前方には致命傷ではないものの傷を負いつつある岩王帝君と仙人達の姿が。

本来ならば帝君が一方的に押されるなどあり得ない。

しかし…

 

 

(上手く…元素力が使えない…ッ!?)

 

 

本を使う彩麟の前では話が違った。

彩麟は本を使い、この世界の自分以外が使える元素力を縛っていた。

これにより彩麟は、鍾離達相手だろうと有利に立ち回る事が出来ていた。

そして、彩麟はすでに法力と元素力を用いた術式を組み立てつつある。

それは璃月港を吹き飛ばすための。

璃月を屠るための術式であった。

そんな彩麟に帰終は吠える。

 

 

「どうして…どうしてこんな事をするの!?」

「…なんだと?」

「璃月にどうしてこんな…。こんなこと…普通じゃない…!」

「知ったような口を聞くなァ!!!」

「…ッ!」

「私はな…憎くてしょうがないのだッ!!お前も!!岩神も!!璃月も!!!私の故郷が滅ぼされんとしていたというのに!!!お前たちは助けもせず自分たちだけ生き残った!!!!」

「……まさか貴方は…!?」

「そうだ!お前達が見捨てたあの仙人達の村で産まれた…あの村の唯一の生き残りだッ!!」

「…ッ!?」

「私は今日という日を待ち侘びていたんだッ!!!!貴様らを地獄に叩き落とす今日という日をッ!!!!」

「しまった!!帰終!!!」

 

 

彩麟によって生み出された元素力によるエネルギー波。

そのエネルギー波に飲み込まれそうになる帰終を庇う鍾離。

その時だった。

 

 

「起動しろッ!!!!アウトレイジィッ!!!!!」

【アウトレイジ エネルギーリチャージモード起動】

 

 

投げ込まれたアウトレイジによってそのエネルギー波が吸収されていく。

 

 

「何ッ!?」

 

 

咄嗟の出来事に動揺する彩麟。

その彩麟のエネルギー波を完全に吸収しつくして、地面へと落ちていくアウトレイジをキャッチしながら彩麟と鍾離達の間に割り込む人影。

その人影を帰終は見た。

見覚えのある男の人影を。

 

 

「シ、シュウ……」

「悪い、遅れた」

 

 

そこには今まで見たこと無い程に真剣な表情をしたシュウが自分たちを…璃月を庇うようにそこに居た。

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

(似ている…あのおっさんとそのかみさんに…)

 

 

目の前の人物を…かつて自分が世話になった二人の姿を彩麟に重ねながら叫ぶ。

 

 

 

 

「引け!!こんな事をしてもお前のその悲しみが晴れることなんてない!!」

 

 

「黙れ!!お前にそんなことを言われる筋合いはない!!」

 

 

「何故だ!!何故こんな事をする!!」

 

 

「璃月の民が…すべてが悪いからだ!!!」

 

 

 

 

すると無意識のうちに感情的になっているのか、向こうからも同じように叫ぶように返答が返ってくる。

 

 

 

 

「だが、お前には感謝しているぞ。お前が法力やこの“本”という力を見せてくれたお陰で私は念願の復讐をようやく果たすことが出来る!私は引きはしない!!引くのは貴様のほうだ!!!早くそこをどけ!!!!!」

 

 

「それこそ断る!!もしここで俺が引いて璃月港が吹き飛ばされたとして、璃月に生きている人達がお前と同じように悲しみに沈み、復讐に囚われてしまう!!そんなことを許すわけにはいかない!!!」

 

 

「貴様ァ…!貴様も知ったような口を利くなぁッ!!!」

 

 

 

 

先程、帰終に放ったエネルギー波のようなものを今度は本からこちらに放ってくる彩麟。

そのエネルギー波を先程と同じようにアウトレイジにリチャージすることでなんとか無力化する。

それと同じタイミングでこの場に発生している本による元素力の縛りを無力化する。

こちらにも本はあるのだ。

それも向こうのオリジナルとも言える本が。

 

 

 

 

「グッ…!こんな…こんなことはもうやめろ!!こんなことを続けていたら心が狂気に取り憑かれるぞ!!!」

 

 

「黙れッ!!貴様…貴様何故そんなことをペラペラと喋れる!!!貴様の目的は何だッ!!!!」

 

 

「俺は…俺はお前を助けに来たんだッ!!!」

 

 

「ふざけるなッ!!!!私はの故郷の仙人達や私の両親は惨たらしく璃月に住んでいた宝盗団達に殺されたんだッ!!!その光景を大地に染み込んだ記憶として見てしまった私の感情がお前なんかにわかられてたまるかッ!!!あの日、私が味わった絶望を貴様のような存在にわかられてたまるものかッ!!!!」

 

 

「………わかるさ…少しだけ…だがな」

 

 

「な、何を…!?」

 

 

「同じだからだ……お前と俺は……」

 

 

「貴様いい加減に…ッ!!!!!!」

 

 

「俺もお前と同じ…同じ村で育った者だからだ…!!」

 

 

「…な…そんな……バカな…!!!デタラメを…デタラメを言うなァ!!!」

 

 

「デタラメなものか!!!浩然と笙鈴!!!俺はあの二人の間に産まれた!!!仙人の血としての力は俺にはもう残ってないが俺はあの二人の実の息子なんだよ!!!」

 

 

「…ッ!!??バ、バカな…あの二人の…息子…だと…!?私以外の…生き残り…ッ!?」

 

 

「そうだ!!!だが、お前の気持ちがわかるとは言わない!!!!だが、それでも!!!俺はお前を助けたいんだ!!!!」

 

 

「そうか…お前が…。だとしたらお前にもわかるはずだ…!私の深い悲しみが…この心を焼き焦がす絶望の炎というものが…!頼む…お願いだ…!そこをどいてくれ…!!」

 

 

「………。」

 

 

 

 

 

俺は何も言わずに構えを解いて全身から力を抜く。

 

 

 

 

 

「な、なにを……」

 

 

 

 

 

突然の行為に驚く彩麟。

右手を見る。

アウトレイジが握られている。

エネルギー波をリチャージすることで自分を守っている俺の武器。

今、これは必要のないものだな。

俺は体の力を抜いたまま、右手に持っていたアウトレイジを投げ捨てた。

 

 

 

 

「…な……!?」

 

 

「彩麟さん…その本で組んでいる術式で璃月を撃ち抜くというのなら、まずは俺を撃ち抜いてからにしてくれ」

 

 

「………そんな…こと……」

 

 

「それでもし、あんたの気持ちが晴れないなら…その時は諦める…」

 

 

「…そんな…こと…私に…出来るはずが…」

 

 

「…なぁ、彩麟さん。俺は…いや、僕は考えたんだけど。鍾離はさ、本当にあの村を見捨てていたんだろうか」

 

 

「な、何を言って…」

 

 

「もしさ、あの村が本当に誰からも守られていなかったら…あの村はとっくの昔に魔人とかに滅ぼされていたはずなんだよ」

 

 

「……そんな…こと…は…」

 

 

「あの村が宝盗団に滅ぼされていたっていうのもさ、普通に考えたらおかしいと思ってたんだ。だって仮にも仙人が20人以上は居るのに宝盗団に負けるのかなって」

 

 

「………。」

 

 

「僕の友達にさ、アルベドっていう凄い人が居るんだ。その人と一緒にかつて村があった場所を調べてみたことがあるんだ。そしたらね?その場所は地脈の流れが不規則で、神の瞳無しでは戦いで使えるような強力な元素力がろくに使えないような場所だったらしいんだ。しかもその地脈…なんだか普通じゃ無くてさ。詳しく調べてみたところ、人為的に地脈の流れがいじられていたんだ。多分、誰かがその地脈をいじってその場所では戦いが起きないようにしていたんだろうね」

 

 

「………。」

 

 

「その後も詳しく調べてみたけど、結局誰が地脈をいじったのかはわからなかった。でも、なんとなくわかる気がするんだ。誰がそんなことをしたのか。」

 

 

「……うっ……!」

 

 

「…彩麟さん、貴方に一方的に復讐を辞めろなんて言わない。だからさ…」

 

 

「うっ…うぅ……くっ……」

 

 

「その涙みたいに…悲しみとか…怒りとかを水に流して…。」

「僕と一緒に…復讐…諦めてくれませんか…?」

 

 

「わ、たしは…ずっと!!!!ずっとひとりでぇぇ!!!!!!」

 

 

 

 

その言葉を聞いてから、本を投げ捨ててこちらに飛び込んできた彩麟さんの涙がすぐに止まることは無かった。

空を見上げた瞬間、雨雲が雨を降らし始めていた。

それはまるですべてを洗い流してくれるかのような。

優しい雨のような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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