「シュウ……」
「……。」
雨が降っている中、泣いている彩麟(さいりん)を抱きしめていると後ろから鍾離が話しかけてくる。
「俺は…お前に謝らなければならない事が山程ある。
だが、同時に成さなければならない事もある」
「…ああ」
「許してくれとは言わない。
そんなことを言うことが出来る立場だと思っていない。
俺はあの村を救うことが出来なかった。
それは事実なのだ。
そして俺はすでに璃月を収める神という立場から身を引いている。
彼女からの復讐を、俺一人で受ければそれでいいと少なからず何処かで思っていた。
その結果がこれだというのだから笑い話にすらなりもしない」
「そうか…なぁ、鍾離…少なくとも俺は_____」
自分の胸のうちを鍾離に話そうとする。
俺はもう誰も恨んだりしてないことを伝えなければならないと思ったらからだ。
そして、彼女が起こそうとしたことの責任は俺にも存在すると。
「この時を待っていた」
「ああ、この時を待っていた」
気付けなかった。
彼女を止めた時点で俺は気を緩めていた。
それは油断であり、奢りであり、隙であった。
もう大丈夫だろうという根拠のない自身のようなものであった。
だからこそであろうか、誰もその瞬間まで気付けなかった。
彼女…彩麟が使った俺の持っている本のレプリカ。
それを笑みを浮かべながら拾う存在がいることに。
「「この時を待っていたぞ…!」」
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「これが、本。
模造品とはいえこの世界の真理が記されている…我らの望み…」
「これが、本。
我らの望みを叶える希望の象徴…」
拾い上げた本を見つめながらそんなことを言う目の前の見知らぬ男女二人。
(なんだ、コイツ…)
そう思いながらなにかただ事ではない雰囲気を感じ取り、その男から本を奪い返そうと近付こうとする。
するとその男はこちらを見て、男は話し始める。
「岩王帝君に璃月の仙人たちよ、私はこの時を待っていたのだ。
今こそ我らが復活の時…璃月を滅ぼす時ぞ。
ついに我らが悲願が達成されるのだ」
「……悲願?」
「そうだ、我らが悲願。
それは我らが復活。
そのために我らは少ない力を行使し、この男の体を動かし計画を進めていたのだ」
「…復活…お前らは一体____」
「仙人と人間の間に産まれし者…いや、人間としての生を歩まず仙人としての矜持を持たぬ愚かな存在よ。
貴様から本を奪おうとするために我らは長年ずっと行動してきた。
そのためにこの世界の貴様に対する認識を歪め、貴様自身が平和に慣れ…腑抜けるその時を待っていたのだからな」
「な…ッ!?」
その瞬間、地面が大きく揺れ始める。
まるで強大な力が封印から解かれようとしているかのような。
まるで強大な存在が蘇り、この世界を震わせているような。
その強大な力が地面を揺らしているかのような。
「苦労したのだ。
貴様らのあの村を滅ぼし、貴様らをぶつけ合い本を確実に奪い取ろうとするのには」
「ああ、苦労したのだ。
わざわざそこにいる半仙の女に本の模造品を作らせる状況を作らせる状況を作らせるのには」
「なんだと……?」
「「もはや封印は解かれた。我々は本来の身体に戻らせて貰う。そして、璃月を我らの力をもってして滅ぼしてくれようぞ」」
聞き捨てならない発言が聞こえた。
俺達の村を滅ぼした…?
コイツらが?
「お前らは…お前らは、何者だ…?」
絞り出すように言葉をこぼす。
目の前の男女は倒れる直前に答えた。
返ってきた返答は知っている者の名であった。
「我はオセル、渦の魔神」
「我は跋掣、渦の余威」
「「貴様らを、そして璃月を沈める者の名だ」」