「鍾離…さん…?」
「…無事か、凝光殿」
凝光の目の前にはバリアを張り、オセル達からの攻撃を防ぐ鍾離とシュウの姿があった。
「はい、なんとか…。しかし、璃月は人間が統治する国になると意気込んでいたものの…この体たらくでは夢のまた夢ですね…」
「そうでもない。アレが現れたのは俺達のせいでもある。むしろ、その”人間が統治する国“に厄介事を押し付けてしまった俺に一番責任がある。気にする必要はないだろう。」
「そうですか…鍾離さんは二人で来られたのですか?」
「ああ。璃月全土でバケモノのような存在が確認され、村を襲っているのだろう?仙人達はその対応の援軍に向かわせた。千岩軍だけにこれらの問題を押し付けるわけにはいかないからな」
「……ご助力、感謝します」
「ああ」
凝光はふと、シュウの方を見る。
いつもならば会話に入ってくるはずだが全く入ってこない。
それどころかこちらを見ようともしなかった。
「シュウ…?」
「………。」
話しかけても返事はない。
目の前にいる男は何も言わずにオセルの方を向いていたのであった。
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オセルは驚いていた。
岩神が現れた事にではない。
岩神が岩元素を使い、バリアを張った事に対してだ。
本の力を使い、このテイワット大陸で自分達以外は元素力を扱えないようにした。
神とて例外ではない。
ならば何故目の前の岩神は岩元素を使えるのか。
考えられることは一つ。
隣に居る男だ。
あの男は今オセル自身が使っている力のいわばオリジナルである本を持っている。
そして、本を使用したことのある人物である。
その力に対しての対応策を知っていても何ら不思議ではない。
あの男をなんとかしなくてはならない。
オセルは冷静に状況を分析する。
跋掣は考える。
あの男をどうするべきか。
排除出来ればそれにこしたことはない。
しかし、そう簡単に倒せる相手ではないことを跋掣は理解していた。
よって出した結論は一つ。
排除するのではなく、余裕を無くせばいい。
岩神に対して使用している力を使う余裕を無くさせればいい。
となればやるべきことは一つ。
跋掣は冷静に対処法を考える。
オセルと跋掣は自分達と戦う相手を減らすために璃月に武装型ギアをコピーした存在を出現させ、村を襲わせていた。
村を襲わせれば、当然そちらの対応もしなくてはならなくなる。
そちらに人員を割かせるためにオセル達の取った策だ。
本とは『森羅万象、ありとあらゆるすべてを記している存在』である。
言い換えればオセル達は本を使用することで様々なものを作り出すことが出来た。
ギアを作れたのも本によるもの。
オセル達は本によりギアを生み出し、岩神をサポートしている男の近くに出現させた。
出した命令は一つ。
『あの男を潰せ』
生み出されたギアは生み出された瞬間にあの男に距離を詰め、その鋭利な爪をあの男を引き裂かんと振り下ろした。
男はギリギリで後ろに避けようとする。
しかし、避けきれずに爪により傷を負った。
………。
何かがおかしい。
岩神が動かなかった。
あの男の方を見向きもしなかった。
間に合わなかったと言われればそこまでだが。
しかし、まるで動こうとしなかった。
まるで問題無いかのように。
そんなことする必要は無いかのように。
あの男を見る。
引き裂かれたはずの男の姿を。
男は銃を構えギアを撃ち抜く。
……。
銃を構えて?
男は銃を撃ちながらこちらを見た。
笑っている。
まるですべて想定通りであると言わんばかりに。
そして告げる。
「あ~あ。やっぱり、気付けなかったね」
ネタバラシを。
そして気付く。
「最初に言っておく。コイツの威力は通常の3倍だ。山なら吹っ飛ぶ威力だぜ」
自分の目の前にまで距離を詰めている男の姿を。
「ああ…それとお前、さっき確か言われてたよな」
先程まで自分達が遠くに見ていた男の姿を。
「もう一度、俺からも同じようなことを言わせてもらう」
大剣を構えながらこちらを見つめる男の姿を。
「テメェは、塵も残さねぇ」
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アウトレイジをオセルに叩きつける。
同時に、あらかじめ溜めていたエネルギーを開放し消し飛ばそうとする。
「コイツで…どうだァァアアアッ!!!!!!!」
瞬間、アウトレイジを介して凄まじい破壊力を持つ爆炎がオセルを消し飛ばさんとする。
その反動で後ろに自分も吹き飛ばされるほどの爆炎。
本来ならばひとたまりもない一撃。
もっとも。
「…チッ……」
本来自分の手に伝わるはずの手応えをまるで感じなかったが。
そのまま距離を取りつつ群玉閣方面へと下がりながらオセル達の方を向く。
「あれは…」
結論から言えば、オセル達は無傷であった。
何故か。
「絶対防壁…フェリオン…!!」
そこには築かれていた。
遥か天高くそびえ立つ要塞が。