「なんだ…今のは…」
鍾離はその光景を見ていた。
シュウの渾身の一撃はたしかにオセルに向かって放たれた。
オセルには避ける暇も余裕も無かった。
しかし、鍾離の視線の先に居るオセルは無傷だった。
だからといって元素力を使った形跡も見られない。
一体何が起きたのか。
鍾離にはいまいち理解出来なかった。
鍾離だけではない。
甘雨も凝光も刻晴も申鶴も。
誰もわからなかった。
だが、その光景を見て状況を理解した者が一人いた。
「あー…そっか…ソレ、使っちゃうんだ」
ケイオスだけは理解出来ていた。
鍾離はオセル達からの攻撃を捌きつつケイオスに疑問を投げかける。
「…お前には何が起きたのかわかったのか」
「まあね。多分アレは“絶対防壁フェリオン”かな」
「絶対防壁フェリオン…?」
「簡単に言っちゃうと…とりあえずなんでも防げるバリアってとこかな。ちなみになんでもっていうのは本当になんでもだ。ありとあらゆるものを防げる、と理論上はなっている」
「と、いうことはだ」
「そう。今のところあの怪獣モドキにこっちからは手を出せないってこと」
「…厄介だな」
たしかに鍾離はオセル達からの攻撃を捌き切っている。
しかし、いつか限界はくる。
それは鍾離自身も例外ではなかった。
鍾離達には今のところ、ただひたすらに耐えるしか取れる行動が無かった。
______________________
同刻、帰離原にて。
仙人達や彩麟(さいりん)、旅人こと蛍達は千岩軍らと共に突如出現したギアを相手にしていた。
「ハァ…ハァ…」
「どうした歌塵。もう息が上がっているぞ」
「わかって…いますよ…!」
もっとも、長時間の戦いによりかなり疲弊してきている様子ではあるが。
「あっ!!旅人!後ろだ!!」
「クッ……!」
長時間による戦闘は彼らの集中力を徐々に削って行った。
旅人のように巨大ギアに背後を取られることも増えてきていた。
「…フンッ!!!」
「ハァッ!!!」
そしてそれをカバーするように他のものが補う。
それをひたすらに続けてなんとか持ちこたえていた。
「魈!ありがとな!」
「…例をいう暇があるのなら気を抜くな」
「貴方もありがとう。…えっと」
「…彩麟だ」
「うん、彩麟さんもありがとう」
そんな中、彩麟はギアを相手にしながら何処か迷いが感じられていた。
そんな彩麟を援護していたのは、
「……。」
「大丈夫?これで少しは体力的に楽になるはずだよ」
帰終であった。
そして帰終はその迷いをなんとなく彩麟から感じ取り、なんとなく理解していた。
「やっぱり、私達と一緒に行動するのはいや?」
「……。」
「…今だけ、今だけでいいの。我慢してほしい。この騒動が終わったら、好きなだけ私達に手を出していい。だから…」
「違うのだ」
「…え?」
「確かに私はお前たちのことが憎い。同族、仲間とも言える奴からの言葉がなければ自分でも歯止めが効かぬほどに。しかし、奴と約束を交わした。『復讐は諦めよう』と。私はその手を取ったのだ」
「なら、今の貴方の迷いは…?」
「……。」
少しだけ考えてつつギアを相手にしながら彩麟は答える。
「私にはわからぬのだ。お前達にどんな感情を向ければ良いのか。憎しみ以外の感情が、生まれつつある。お前達は奴の…いわば仲間とも呼べるような存在だ。私はお前達が憎い。しかし、奴の仲間を…憎みたくはない」
「彩麟さん…」
「奴の言葉で事情も大体把握した。ならば、私はお前達に何をすればいい…?この憎しみと悲しみは心のなかで包む他無いのか…?」
彩麟はなにかに縋るような目をしながら質問に答える。
それは油断ではない。
しかし、確実に隙が生まれていた。
「…ッ!?帰終ッ!!!!」
「……しまっ…!!」
彩麟を上手く躱し、帰終に対して巨大ギアが今にも右手を振り下ろさんとしていた。
咄嗟に距離を取る帰終。
すぐさまその右手を止めんとする彩麟。
しかし、間に合わない。
手を伸ばしても彩麟には届かない。
それは、ギアが帰終に右手を振り下ろす動作を始めた瞬間であった。
彩麟の横を人影が
「ビーク…」
黒雷が走った。
「ドライバァァァァアアアアアアッ!!!!!!」
人影が放つ黒雷を纏ったその”旗“による強烈な一撃は巨大ギアに直撃し、その圧倒的破壊力で巨大ギアを遥か後方まで吹き飛ばす。
「…ハァッ!セイクリッドエッジッ!!!」
そして、その後ろから吹き飛んでいる巨大ギアに追撃の形で巨大な剣の形をした雷を放つ二人目の姿がいた。
「ふぅ…!危ねぇところだったな!」
「全く…やり過ぎだぞ、シン」
「良いじゃねぇかよ、助けられたんだから!それに…」
「ヒーローは遅れて登場するもんだろ?」
短くて申し訳ないですがとりあえず久しぶりに更新します。
目標は年内に書き終え…え?
もう年を越した…?
…そんなバカな。