元帝君の友人になった男の話   作:じーじー

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「それに、そこまで言われてわからない男は…存在しないさ」

 

 

 

とある場所、とある男が一人椅子に腰掛けて客を待っていた。

男は風に耳を澄ませ、自然の匂いを感じ、安らぎを感じ取っていた。

とある友人が話かけてくるまではの話だが。

 

 

 

 

「フレデリック」

 

 

「…お前のコミュニケーションの取り方を悪く言うつもりはねぇが、もう少し常識のあるコミュニケーションの取り方をしろ。

どこの世界に月から地球にいる人の頭をジャックして話しかけるやつがいる」

 

 

「でも、法力を使うには少し時間がかかる」

 

 

「急ぎの用事だってのはわかった。

言ってみろ。

だが、通話料金の取られないからという理由で長電話をしないという条件でだ」

 

 

「シュウイチが今いる世界で問題が発生しているんだけど…君に行ってほしいんだ」

 

 

「調査を?自分で行け。今あっちには確かシンが居たはずだ。シンに守ってもらいながらならお前でも___」

 

 

「いや、僕はたぶん…辞めといたほうが良いと思う」

 

 

「………何があった?いや…何がわかった?」

 

 

「そうだね、短い文章でわかりやすく言うのなら…。

……この前の件は、まだ終わってないかもしれない」

 

 

「……俺は一応、賞金稼ぎを引退しているはずなんだがな」

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

少し時間を遡り、場所はパレメルモニア。

ジョニーとナヴィアは写真を撮られているシンを見ながら雑談に花を咲かせていた。

 

 

 

 

「それにしても…キレイなとこだ、この街は」

 

 

「あら、違う世界の人からそんな事を言われるなんて鼻が高いわ」

 

 

「もちろん、お嬢さんの方が美しい」

 

 

「お世辞でも言われと嬉しいものね」

 

 

「ならもっと嬉しがれるな。このジョニー、女と自分には正直に生きている!お世辞だなんてとんでもない!」

 

 

「そう?でもごめんなさい。あなたの誘いには乗れないわ」

 

 

「おっと、こりゃあ手厳しい…!でも、そんなところも…美しい!」

 

 

「ふふ、わかったわよ。ありがとう、お褒めに預かり光栄ね!」

 

 

「……。」

 

 

 

 

だが、どうもジョニーの目にはナヴィアの様子が何処かおかしく見えていた。

出会った瞬間から。

ジョニーは

『出会ったばかりの自分がそんなお節介をかける理由があるのか、そんな事をされて彼女が何を思うか』

そう考えていた。

 

 

 

 

「…まったく……写真撮りすぎよ……」

 

 

 

 

彼女の何処か余裕のない顔を見つめていると、自然と自分の口が動き始めていた。

自分で自分に驚きつつも出てくる言葉をそのままに吐き出していく。

 

 

 

 

「人間ってのは不思議なもんでな、転んで怪我をして血を流しても数週間もあれば治るように出来てる」

 

 

「…え?」

 

 

「怪我をしたところを消毒して綺麗にすればかさぶたが出来る。かさぶたってのは人が自分の力で作れる絆創膏みたいなもんだ。

でも、かさぶたってのができると痒くなっちまう。

しかも、かさぶたは掻いちまうとすぐに剥がれるときたもんだ。

俺もガキの時はついつい搔いちまってかさぶたを剥がしちまってた。

でも、剥がさないようにしろってオヤジにもよく言われたもんだ。

お前も、言われたことはないか?」

 

 

 

 

『ナヴィアお嬢様、かさぶたは搔いてはいけませんよ』

『その通りですナヴィアお嬢様。痒いかもしれませんが、掻かないようにお願いします』

 

 

 

『ナヴィア!大丈夫か!?お前怪我をしたのか!?なら、かさぶたが出来ても搔くなよ?バイキンが入っちゃうからな!』

 

 

 

 

 

「…ええ、あるわよ」

 

 

「俺は『なんで搔けないんだ?』ってオヤジに聞いたんだ。

そしたら『かさぶたは怪我をしているところを守ってくれてる、剥がしちまったら守れるものも守れないだろ?』って返ってきてなぁ……。

今でもその出来事を鮮明に思い出せる」

 

「お前さんは、きっと怪我をしてる。

見た目だけではわからないが、確かに血を流している。

それも、その怪我は長い間治ってない。

剥がしちまってるんだ、そのかさぶたを搔いちまって。

俺にはどうもそれが見逃せない、特に女がそんな顔をしているのは」

 

 

「…話してなんになるの?」

 

 

「俺が消毒して絆創膏を貼る」

 

 

「だから!それになんの意味が___」

 

 

「誰かを笑顔に出来る。

俺は絆創膏一つで人を笑顔に出来ると思ってる。

そう、信じてる」

 

 

「………。」

 

「私はね、大切な人を二人亡くしてるの…他人を庇って。

でも、私の友達はそれを自分のせいだと思ってる。

『僕と一緒に居る人は、大切な人を失う』そう言って友達は私の前から居なくなった。

私は…その言葉を否定したかった。

でもね?…言葉にしようとしても…返事をしようとしても…何も返せなかった。

本当は否定したいはずなのに」

 

 

「それが、お前さんの怪我か」

 

 

「そんなお行儀の良いものじゃないわよ」

 

 

「……そうだな」

 

 

「治せそう?」

 

 

「手持ちの絆創膏じゃ大きさが足りない。デカい絆創膏を探す必要があるな」

 

 

「治せないとは言わないんだ」

 

 

「入り込んだのはこちらの方だからな。

それに、そこまで言われてわからない男は…存在しないさ」

 

「必ず、助ける」

 

 

 

 

彼女の顔には、確かに『助けてほしい』と書いてあった。

少なくともジョニーの目には、そう見えていた。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

「…どういうことだ?」

 

 

「やっぱり、わかるんだね?」

 

 

「これは…この識別コードは確かに…だが何故だ…?

…いや、調べて欲しいのはソレか」

 

 

「うん。識別コードなんて、わかるのは君くらいなものだからね」

 

 

「…いつ行ける?」

 

 

「今すぐにでも」

 

 

「条件がある」

 

 

「無理のない範囲でよければ」

 

 

「…お前も来い」

 

 

「…え?でも__」

 

 

「黙って来い」

 

 

「いやフレデ__」

 

 

「次はねぇぞ」

 

 

「……わ、わかりました」

 

 

 

 

彼らが見ていた空間式ウィンドウの画面には、確かに生態コードと識別結果が記されていた。

『生態コード識別結果:ギア』

 

 

 

 

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