今回は結構会話が多めです。
それと、誤字報告大変助かっております。
至らぬところがある私ですが頑張っていきます。
それは、幼き日の記憶。
とある女の子が食材、薬草を売って生計を立てていた頃の話。
ある日その少女がいつものように裸足で商売をしようとしていた時、ヒルチャールの群れと居合わせてしまった。
少女は神の目など持っておらず、ただ逃げるしか出来なかった。
体力があるわけでもなく、当然追いつかれるだろう。
少女が心の底から助けを呼ぶ様に目を閉じて大声で叫ぶ。
しかし、いつまで立ってもヒルチャールからの攻撃が来ない。
恐る恐る目を開けるとそこにはヒルチャールの亡骸と大剣を軽々しく片手で持っている男の姿があった。
『大丈夫か?』
それが女の子…凝光とシュウの初の邂逅であった。
それからというもの凝光はシュウに自分の護衛を頼むようになった。
ヒルチャールや遺跡守衛、スライムにトリックフラワーといった存在から身を守ってくれる存在であるシュウに彼女は心を開いていた。
しかし、彼女の目からでも彼の強さは異常であった。
そしてなにより、彼は神の目を所持していなかったのだ。
神の目を所持せずに驚異的な身体能力を見せる彼に凝光は問う。
『どうしてそんなに強いのか』
彼はこう告げた。
『守りたい者がたくさんあったんだ…。でも、守りきれなかったもののほうが多くてね。誰かを守る為にはそれ相応の力が必要だったんだ。俺はね、凝光。強くなんてないんだ。ただ、力を持っているだけ。自分の存在を必死に証明したくて、自分の存在を否定されるのに耐えられなくて。それで手に入れたのがこの力。人間では無くなってしまったけども、確かにこの心は人間のはずなんだ。でも、時々自分が何の存在なのかわからなくなる。人間なのかバケモノなのか。凝光。君は絶対に俺みたいにはなるなよ。』
彼女は幼いが故に彼の言っていることがあまり理解できなかった。
彼女が天権になった日、彼を探して感謝を伝えようとした。
しかし彼はもうすでに璃月港を離れたあとであった。
彼女は彼を探している。
しかし彼は見つからない。
今も何処かで生きていることを信じて。
もっとも…彼が天権となった凝光から身を隠していただけなのだが。
『彼は私の命の恩人よ。そして私が護衛となることを許す唯一の人でもある』
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「貴方…シュウ…!?シュウなの!?」
「……。」
冒険者協会での手続きが終わって報酬を受け取り、空が暗くなってきて自分の家に帰ろうとした時のことだ。
帰ろうと思った矢先に、最も出会うと面倒な奴に出会ってしまった。
思わずため息を吐きながらどうしたものかと考えていたが、凝光がなにか言いたげな顔をしながら話を続けてきた。
「貴方という人は……。まぁ、いいわ。言いたいことは山ほどあるけど聞かないでおいてあげる。」
「…それは助かる。あわよくばこのまま見逃してくれたりしないもんか?」
「それは駄目よ。でも、折角の再会なんだし…そうね…。再会を記念してとっておきの場所に案内してあげるというのはどうかしら?」
「帰りたいんだが」
「あら、私の案内は不満かしら」
「ああ、帰りたいんだが」
「例の件、本当の事として公表してあげましょうか?」
「喜んで付いていきます」
「よろしい」
そうして俺は、誰も来ないような…それでいて璃月を眺めることが出来る場所に連れて行かれたのであった。
「…こんな場所があったんだな」
「秘密の絶景スポットってとこかしら。…まだ貴方にしか教えたことが無い場所でもあるわね」
そんなことを言いながら璃月の夜景を見ていると、凝光が話しかけてきた。
「さっきも言ったけど…例の話、聞いたわ。鍾離さんが岩王帝君何じゃないかって話。」
「…そうか」
「本当なの?」
「……。」
少し考えてから否定しようとするが、自分が今すぐに答えられないという状況が答えになってるような気がして諦めながら自白するように質問の答えを返す。
「…駄目だな。俺はこういうときに、考えてから喋る癖がある…。即答出来ないなんて『はい、その通りです』と答えているようなもんなのにな…」
「じゃあ、やっぱり?」
「ああ、お前の考えてる通りだ。」
「そう…やっぱり本当なのね。でも、気にしないで大丈夫よ。私の中では確実にそうなんじゃないかって思ってたから。」
そんなふうに俺のフォローをしてくる凝光。
でもその顔はまだ、聞きたいことがあるような表情をしていた。
「でも、それが本当の話なら…貴方に聞きたいことがあるわ。」
「…なんだ?」
「鍾離さんが帝君なのだとしたら、死んだはずの岩王帝君は生きているということになる。そして帝君は自らの死を偽造して凡人を目指しているということになる。そこに一体どんな意図があるのか、私にはわからなくて…。きっと帝君のことだから、私達には到底思いつかないようなお考えだとはわかるのだけど。どう?岩王帝君の数少ない対等な立場である…鍾離さんの友人である貴方になら岩王帝君のお考えというものが分かるのかしら?」
それを聞いて俺は、少し考えてから自分なりの答えを出すように話し始めた。
「…凝光…お前は帝君を、鍾離をどうしたいんだ?」
「どうしたい、というのは?」
「帝君の考えを知ってどうしたいのかって聞いてんだよ」
「…何が言いたいのかしら」
「そうだな……アイツは今日、朝早くから散歩をしていた。それも朝の4時からだ。どうしてだと思う?」
「質問の意図がわからないのだけど…。」
「朝早くから鍾離が散歩してた理由はなんだって聞いてるんだ。いいから、答えてみろ」
「……そうね……璃月の現状の治安や利便性、その他諸々を含めた…」
「残念だが違う。」
「…それじゃあ答えは何かしら」
「『朝4時に起きて暇だったから』だ」
「……暇だった。帝君が暇だったというのはいささか…」
「まぁ聞け。次は…そうだな…俺はアイツに海鮮丼を無理やり食わせようとしたことがある。ちなみにアイツは海鮮丼が死ぬほど苦手だ。なんて言われたと思う?」
「……ごめんなさい、わからないわ。」
「『俺がこれを食べるのは構わないが、当然お前も苦手なものを食べるんだろうな?』だ。めちゃくちゃ凄い圧をかけられながらそんなことを言われた。よっぽど嫌いな奴の反応だったぞ、あれは」
「……。」
「じゃあ凝光、今度はお前に質問だ。今日の朝飯…何食った?」
「…え?」
「だから、朝食は何だったのかって聞いてんだよ」
「モンドから取り寄せていた物で、手軽に食べれるパンだけど…」
「何故?」
「何故って…?」
「いやだから、何故朝食はパンだったんだ?」
「そんなの深い意味はないわよ」
「ま、そうだろうな。じゃあ…次は…その服。なんで今日はその服を着てるんだ?」
「なんでって…いい加減にして。私は何かしら理由がないとこの服を着れないのかしら?」
「別に?服ぐらい着たいものを着ればいいだろ」
「じゃあ、なんでそんなこと聞くのよ」
「お前だって聞いてたろ?鍾離の行動の意図とやらを」
「……。」
「アイツが元帝君だとして、なんで一々行動に意味を持たなきゃならない?アイツだって俺たちと同じように感情がある。深い意味なんて無くても行動だってする」
「……続けて。」
「確かにアイツは岩王帝君として長年璃月を治めてきた。考え無しにあんなことはしない。自分の死を偽造したのもそれなりの考えがあっての事だろう。だが凝光、お前はアイツからその考えってのを聞いたことがあるのか?自分の中で勝手に解釈して、それは自分には想像出来ないものとして考えてないか?果たしてその考えの行き着く先にアイツの考えてることはあるのか?」
「……。」
「『璃月には最近、神の力に頼らずに前に進もうとする者が現れ始めた。今の玉衡などがまさにそれだろう。俺もそろそろ、身を引くべきなのかもな』……前にアイツが言ってた言葉だ」
「……ッ!」
「気になるなら本人に聞いてみろ…俺の名前を出して事情をしっかり話せば、アイツなりの考えってのを聞かせてくれるかもな。」
「……。」
「凝光、俺はアイツの考えてることなんてわかんないって思うことのほうが多い。でも、それはお前にも言えることだ。俺はお前の考えてることもわかんねぇ。でも、聞くことが出来る。お互いに意見を交わしたり、相談し合ったり出来るんだ。」
「相談…。」
「そう、相談だ。」
何だか今日は話したい気分になりつつあった俺は、勢いそのままに自分の考えを話し始める。
「もう璃月は神が統治する国じゃなくなった。この国にはもう岩王帝君は居ない。でもこの夜景を見てみろ。神なんか居なくたって人は前に進めてる。人は成長出来るんだ。過去を見直し、今を体験し、未来を創造する。お前もそうだ。かつては薬草なんかを売って生計を立てていたお前は、今では群玉閣を建てるほどに至った。鍾離は、きっとお前らに期待してるんだと俺は思う。」
「……そうだと良いのだけれど」
「…ハァ…ったく……凝光。」
「…何かしら。」
「お前は今じゃ天権だ。それはもう凄く偉い立場だ。だが、お前はお前だ。どんなに肩書がついても人間であり感情があることに変わりはない。疲れることだってあるだろう。あんまり背負い込みすぎるな。天権であることに…自分の行動に意味を求めるな。…なんかあったら何時でも相談しに来い。そん時は茶でも用意してやる」
「…シュウ」
「なんだ?」
「…ありがとう」
「ああ…」
そんなことを話しながら俺たちは夜の璃月港を眺めるのだった。
ちなみに書き終えるまで合計3時間です。
もうよくわかりません。