翌朝。
「で、また僕が酔い潰れてしまったと」
「おう。なんか水魔法の応用とかで血液中のアルコール分飛ばせたりしないのか?」
「そんな便利な魔法あったら苦労してないよ....」
「それもそうか」
翌日、二日酔いで頭が痛そうなエルマを起こし、水を飲ませてやる。昨日はこいつが酔い潰れていたので宿まで運んであげたのだが、それさえ覚えていないらしい。全くどれだけアルコール耐性ないんだか..
「ほいレモン水。あとミントの葉も食え」
「......ミントの葉は頭痛に良いのかい?」
「いや知らん。けど爽やかだからなんか効きそう」
「うーん...おいしい。確かに効果はありそうな気がしなくもないような....?」
「まぁ、本当にあるなら普通に流通してるよな」
「それもそうだね」
頭痛に効く薬ですって言ってミントの葉食わせりゃプラセボ効果とかで痛み治ったりしねぇかな.....しねぇよな.....。
「明日から長期のパーティー遠征あるだろ?その打ち合わせをしたいんだが」
「おっと忘れていた。それはすまないね、早くいくよ」
「オーケー、一階で待ってるから降りてきてな」
俺の所属するパーティー、「追い風」 はメンバーは全員クランハウスに住み、共同生活をしている。このクランハウスはパーティーで得た収入の何割かを貯金に回し、頑張ってお金を貯めて買った家だ。なかなかの規模なので、メンバー全員の部屋が確保できるまである。ちなみにエルマの部屋は2階に、俺の部屋はそのすぐ下にある。
「おはよー」
階段を降り、リビングの大テーブルの椅子の一つに腰掛けている我が妹ヘレナに挨拶をする。
彼女は銃の整備をしていた。
「おはようお兄ちゃん。昨日は大丈夫だった?あの後先輩に何か変なことされてない?」
「大丈夫大丈夫、それより銃の整備か?朝から精が出るな」
「大事な銃だからね、丁寧に使わないと」
彼女は銃を丁寧に分解し、火薬の燃焼によって溜まった汚れを入念に拭き落としている。拭いた後のハンカチが煤で真っ黒になっているのだから、このような定期的な清掃は大事だ。これをしっかりやらないと故障の原因にもなりうるからな。
「いい心がけだぞーヘレナ」
「えヘヘヘヘ」
ヘレナが扱うのは特注品のリボルバーライフルという、ちょっと特殊な小銃である。この世界の銃は黒色火薬を使用したマスケット銃が主流で、それだと射程も短いし何より精度と装填時間が致命的に劣悪なのだ。だから(現代人感覚で)ちゃんとした銃を作るには銃火器専門店へ出向き特注品をお願いしないといけない。ヘレナのリボルバーライフル、別名回転式小銃とは、回転式シリンダーを備えたライフリングの付いている小銃である。一応この世界でもリボルバーの研究が始まっているのだが、高い技術力を必要とするので非常に高価である。だから王族の個人防衛火器として特注生産されている。黒色火薬を使っているため、射程も短く、威力も生身の人間にしか効かないくらいなので、あくまで室内の護身用の武器という風に見られているのだ。
そんなリボルバーの生産を知り合いの銃火器屋の爺さんが受け持っているとのことなので、ゴネてゴネまくってなんとか技術提供をしてもらった。そこで俺が一から設計図を書いて作らせたのが、今ヘレナがせっせと磨いている銃である。設計は前世のナイツリボルバーライフルという、 アメリカのナイツ・アーマメント・カンパニーが1990年代に「100m以内で十分な精度を持ち、軽量で携行しやすく、完全消音かつ、しかも排莢を行わない」という要求仕様の元に製作したリボルバー式スナイパーライフルをベースにした。銃火器屋の爺さんに作らせ、完成したものはなかなか逸品であった。それもそのはず、魔力結晶を火薬として使っているためである。魔力結晶とは、膨大な魔力を凝固し結晶化したものを指す。この存在はまだ世間にあまり知られていない。それもそのはず、発案者が俺だからだ。魔力結晶は爆発すると凄まじい威力を誇るやばいクリスタルだ。それの粉末を火薬として使っているせいか、威力は抜群だし、設計時に銃身を延長しておいたことも相まって射程がめちゃくちゃ伸びている。弾丸に『強射』というエンチャントをかければ戦場で敵の士官を一方的に殲滅できるようなエグい銃が完成する。魔力結晶の爆発は透明に近い青色で、かつ音もさほどしないので対人用スナイパーライフルとしてはエグいモノが出来上がってしまった。
また、俺も特注の銃を持っている。前世から引っ張ってきたM82バレットだけだと近距離戦闘が心配なので、魔力結晶を火薬としたリボルバーを装備しているのだ。
銃の整備についてしばらくヘレナと話し込んでいると、うちのパーティの近接役のレオナルドが、眠そうな目をしてやってきた。
「朝から騒がしいのはやめてほしいんだけど...」
「おはようございますレオ先輩」
「レオ、今もう昼だぞ」
「暗くないなら同じようなものじゃないか....?」
「えぇ....」
レオと呼ばれた、金髪碧眼のこのいかにも王子様キャラって感じの男は、俺らのパーティーで唯一の戦士である。槍と盾を巧妙に使いこなし、遠距離攻撃が外れ接近を許してしまった魔物を返り討ちにしてくれる頼もしいやつだ。
「団長遅いっすね」
「お兄ちゃんがお酒飲ませたせいでは?」
「いや別に飲ませたってわけじゃないんだがなぁ....」
「下戸で悪かったね諸君」
「おっ、噂をすれば」
騒がしくしてるとエルマも降りてきた。
「おはようございます団長」
「あぁ、おはよう。ユリウス、昨日は迷惑をかけて申し訳ない。そして色々ありがとう」
「大丈夫大丈夫」
潰れた人を搬送するまでが飲み会だからな。
「まぁ何にせよ助かったよ....ところでセシリアはまだかい?」
セシリアというのは、うちの副団長の魔術師である。
「彼女は確かソロ任務があって昨日夜遅くに出発してましたね....僕には今日の朝帰ってくると教えてくれましたが...」
と、レオ。じゃそろそろ帰ってくるかもな〜なんて思ってるとやはり、噂をすればどーたらこうたらってことでクランハウスの扉が大きく開く。
そこには息を切らした魔術師、セシリアの姿があった。
「はぁ、はぁ.....。ごめん、待たせた?」
「大丈夫、そんなに待ってはいないよ」
魔術師のローブを身に纏った副団長ことセシリアは、エルマと同じ魔術師である。属性は火と風であり、爆発系の魔法を得意としている。平野で戦う時敵にいたら厄介なタイプの魔術師No.1である。
セシリアは金髪のポニーテールを揺らしながら席につく。それと同時に、エルマは話し始める。
「明日受ける任務はこの街マーヴィンの領主の娘であるアーデルハイト様の護衛だ。王都まで馬車での移動だよ。多分僕たち冒険者はアーデルハイト様の前後の馬車に乗り護衛任務とするよ。編成は----ーー」
♢♢♢♢♢
「以上。質問などはないかな?」
「大丈夫よ」
「大丈夫です」
「よし、準備を怠らないようにね。じゃあこれをもって今日の事前打ち合わせは終了とするので、解散〜!」
エルマの掛け声と共に、各メンバーは勢いよく椅子から立ち上がり、一気に散らばっていった。
「うぅぅーん....! はぁ....やっと終わったぁ〜」
打ち合わせの緊張感から解放されたヘレナは腕を天井に向け背伸びをしている。
「お疲れヘレナ」
「貴族の護衛かぁ、なんか久しぶりの大仕事だよね、お兄ちゃん」
「そうだなぁ....他のパーティに任せたいところだが、生憎この街にランクCのパーティは俺らしかいないんだからしょうがないんだけど」
「うん...しかもランクAやBは大抵が王都を拠点としてるから....」
「そもそも絶対数が少ないしな、高ランクパーティーは。だから雇う時も結構な金がいる。そういう意味では俺ら『追い風』は使いやすいパーティーなんだろうよ、報酬金はそこまで多くなくていいし、ある程度は強いし」
この世界の冒険者には、FランクからAランクまで階級がある。ランクFとは初心者冒険者のパーティーがまず一番最初に授与される階級である。俺たち『追い風』も最初はFランクだった。
ランクが上がるにつれて、冒険者としての格が上がってく。Eランクはまだ初心者に毛が生えた程度だが、Dランクとなると中堅のそこそこ経験値が多いパーティーがある。Cランクになってくると一流の冒険者として認められるようになる。与えられる特権は書庫の閲覧や、徴兵時に士官としての階級を与えられることだ。戦時には正式な国立陸軍の一小隊の指揮権を譲渡され、パーティーでその部隊を好きに使う権限を与えられるのだ。というのも、Cランクから上は誠実に冒険者やらないとギルドから昇格させてもらえないランクである。性格的にも戦力的にも問題ないパーティーというのが、Cランク以上の冒険者だ。
さらに上に上がり、BランクやAランクになってくると、国が保護したくなるほど強い奴らばかりになってくる。戦場に彼らを放り込めば雑兵なんか一瞬で蹴散らしてくれるし、何より補給を圧迫しないので戦時は重宝されるパーティーだ。平時でも脅威度の高い魔物を討伐できる数少ない人材なので、ギルドや国家、また有力貴族たちは彼らを必死に派閥に取り込もうとしている。
「はぁ...貴族のお抱え冒険者ってなんか嫌よね、自由が束縛されるみたいで」
「実際そうだと思うぞ?自由に活動できないから多くの高ランク冒険者はお抱えになることを嫌うそうだ。でも大体は金やら土地やら男やらを与えられ続け、骨抜きにされていってしまって結局貴族の思惑通りになってしまうってわけさ」
「うわぁ....私たちも気をつけないとね」
「そうだなぁ」
「あ」
ふと気づいたようにヘレナが呟く。
「そういや私、弾薬が少なくなってきてるのよ。そろそろ補充がしたいんだけど」
「あー、俺もだ。完全に忘れてた。あとそろそろ発注していた弾薬の受け取りに行かないとな...今から爺さんの所に行ってくるか。ヘレナはついてくるか?」
「うん!お兄ちゃんと一緒なら」
笑顔で即答するヘレナ。.......その気持ちは嬉しいがハイライトが消えた目は怖いんだよなぁ...
♢♢♢♢♢
ってわけで鍛冶屋兼重火器販売店、シュナイダー工房へとやってきた。
「来てやったぞ爺さん」
「来てやったとはなんじゃ....頼まれた弾薬はあそこの二つの木箱に2人分入ってるから持って行きなさい」
銃火器屋を営んでいる知り合いの爺さんとは彼、ルドルフ・シュナイダーのことである。元軍人であり、退役前は陸軍の大尉だったらしい。中距離での制圧が可能なマスケット銃に可能性を見出した、銃火器論者の第一人者であった。彼の生み出す戦術論は軍部内でも支持を得たが、騎士団から騎士道を侮辱するとして、圧力をかけられた。結局上級貴族が出てきて退役に追い込まれたが、当時身についた身体能力は退役の後も自己鍛錬を行なっていたため少なからず維持されている。シャツからチラチラ見える筋肉がその証拠である。
「いやーいつも助かるぜ爺さん」
「なぁに。あんな量は工場で作らせれば一週間あれば終わるさ」
と、長く伸ばした白い髭を投げる爺さん。いやー、年齢的にはまだまだなんだろうけどなんかこの人めちゃくちゃ顔が老けてんだよなぁ...普通に70歳くらいのお爺さんに見えちゃう。実際はそれよりもずっと若いんだろうけどね。
「おーすげ。そういや工場持ってたな。羨ましいぜ」
この世界には金属を扱う工場が少ない。機械による金属加工の技術が発達していない。そんな世界でもこの爺さんは自分の工場を持ち、高価な型やプレス機、ボイラーなどを取り入れたシュナイダー工場というものを運営している。俺たちの弾薬はそこで作られているのだ。
「よっこらせっと...」
爺さんが作ってくれた弾薬が詰まった木箱を持ち上げる。いやーめちゃくちゃ重い。身体強化使いたいけど魔力ないンゴねぇ...
「にしてもお主はアイディアが尽きないのぅ....魔力結晶の発案といいライフリング?とやらの発明といい....どうじゃ、わしの助手となってこの銃工房をさらに発展させていく気はないか」
「いやちょっとそれは無理っすね、冒険者やってるんで。あと店に来るたび誘うのやめてくれない?」
毎回断ってるんだがしつこいなジジィ...しつこいおじさんは嫌われるぞ?
「そう言うと思ったわい....まぁ気が向いたらでいいんじゃ」
「おう、検討するのを検討しとくよ」
♢♢♢♢♢
「疲れるなぁこの作業」
クソデカ木箱を抱えながらクランハウスにもどり、中身を取り出して空間収納袋というドラ○もんの四次元ポケット的なやつに詰め込む。
側から見ればただの小さな麻袋にしか見えないが、この袋はめちゃくちゃ便利である。ここに入れとけば重い弾薬も軽々と運べるのだ。戦闘中とかは嵩張らなくてマジで便利なので俺はこいつを重宝している。
そのあと武器の整備や最終確認などをしていたら、気づいたら夜になっていた。この世界では蝋燭は高価なので、暗くなったらもう寝るしかない。
「ふっ」
灯しておいた灯りを消す。
ささっとベッドの上のごちゃごちゃを片付け、ベッドに入る。
「明日は早いからしっかり寝とかないとな......」
.........すやあ......
文章書くの下手くそなのでアドバイスしてくれる方....はいないだろうけど評価とかお気に入りとかはモチベに直結するのでよろです。