キヴォトスのD.U.区内にある連邦捜査部
「これが先生が何時も仕事をする時に使用する椅子ですか・・・。これはまぁ、何ともいい座り心地ですね。・・・・・はっ!まさかこれも先生の神秘に近づく手掛かりなのでは?クックック、私はまた一歩先生の神秘に近づいたのかもしれません」
彼の名は黒服、神秘の探求者である。先生の神秘に近付いたと喜ぶ彼を睨み付けながらセイアが自分をシャーレに呼んだホシノに尋ねる。
「小鳥遊ホシノ。私は先生を護る方法があると聞いたからシャーレまで来たんだが・・・。何故ゲマトリアのソイツが先生の椅子に座っているんだ?」
「おじさんも何でコイツが先生の椅子に座ってるのか分からないけど少なくとも先生を護る方法はコイツが教えてくれるよ」
シャーレに集まった全員が黒服を見る。
「ククク・・・。どうやら皆さん集まったみたいですので話を始めましょうか」
「まずその椅子からどいてくれない?そこは先生の席だから⭐︎」
「落ち着つけミカ」
ミカの要求に失敬、と謝罪をして黒服が立ち上がる。
「まず担当直入に申し上げます。今回の犯人は以前ゲマトリアに在籍していたベアトリーチェと言う方です」
「「「!?」」」
ベアトリーチェと言う名に反応したのはセイアとミカ、そして今日はバイトで偶然シャーレに来ていたサオリだった。
ベアトリーチェとはサオリが在籍していたアリウス分校を支配していた人物で、サオリを含めるアリウス分校の生徒達のトリニティやゲヘナへの恨みを利用し、セリアの暗殺未遂を起こし、両学校の平和条約であるエデン条約を襲撃させ、トリニティとゲヘナの自治区を侵略しようとしていた。
しかし、先生が担任を務めるトリニティの補習授業部を含めトリニティの正義実現委員会やゲヘナの風紀委員の活躍で計画は失敗。
しかし今度はサオリ率いるアリウススクワッドのアツコを生贄にとある儀式を行おうとして今度は先生とアリウススクワッドに計画を阻止される事となった。
しかし、その儀式によってベアトリーチェは色彩に接触し、色彩の力を得たためゴルコンダにより異空間に閉じ込められたのだ。
「彼女の力を直接見た百合園セイアさんと錠前サオリさんのお二人なら分かるでしょう?彼女は既にこの物語に於いては物語を崩壊させる矛盾でしかありません。色彩の力を持つ彼女は小鳥遊ホシノと言う最高の
黒服がそう言い終わるとネルが黒服のシャツを掴む。
「んなことは聞いてねぇんだよ!とっとと先生を護る方法を教えやがれ!」
「ネル先輩落ち着いて!」
ユウカがネルを黒服から引き離して落ち着かせる。
「皆さんどうやら殺気立っている様ですね。少し大人になりましょう。小鳥遊ホシノさん」
「何?」
「貴女はどうして先生の命を助けられたのですか?」
再びの黒服の問いかけ。夢で見たと言っても誰も信じないだろう。所詮は夢だ。根拠も何もない。
「では私がお教えしましょう。貴女は夢を見たんです」
「!?」
黒服の言葉にホシノは目を丸くする。
「ではどんな夢を見たのでしょうか?」
「砂漠で、先生が死ぬ夢・・・」
「だから貴女は先生について行ったと」
「ま、待って!ホシノちゃが夢を見たから助けられたって?それじゃあまるで・・・」
ミカがセイアちゃんみたい、と言いかけて黒服は首を振る。
「いいえ。小鳥遊ホシノさんのものは予知夢の様な者ではありません。そもそも何故小鳥遊ホシノさんは急に予知夢まがいの夢を見る様になったのか。それは別の世界線の小鳥遊ホシノがこの世界に来た事による副作用。だとするならば先生はどうしてトイレで襲われたのでしょうか」
「それは先生が一人になったからで・・・」
「私が聞いているのはそう言う事じゃあないんです。私は先生の神秘を探求するために常日頃から先生を監視しています。貴女は先生が死ぬ夢を見て、それを防ぐ為に砂漠まで着いて行った。なら何故先生は砂漠で襲われなかったのか?そもそもどうしてトイレになんて行ったのでしょうか」
「さっきから何が言いたいの?早く本題に入って」
そろそろ我慢の限界だと言わんばかりにゲヘナの風紀委員長のヒナが黒服に詰め寄っていく。
しかし、ヒナとは裏腹にセイアの顔が黒服の話から導き出せる信じられない一つの真実に青くなっていく。
「まさか先生は初めから死ぬ気だったのか!?」
「少し語弊はありますが、おおよそその通りです。先生は皆さんを護る為に自分の命を持ってベアトリーチェを止めようとしています。ですので、貴女方が取れる先生を護る方法は先生が眠っているうちにベアトリーチェの本拠地を見つけ出し倒すしかありません」
先生は後二、三日は起きる事がないだろうと救護騎士団が言っていた。つまり猶予は最大で七十二時間。
「ちょっと待ってください!」
ようやく方針が決まりかけた時に待ったをかけたのはコタマから音声データを受け取っていたユウカだった。
「先生が襲撃された時の音声ファイルがここにあります。これを聞く限り先生は弾を避けようとして当たっています。死のうとしてとなんて100%あり得ない!」
「その弾が当たったことが問題なんだよ」
セイアの言葉にユウカが首を傾げる。セイアの言葉を代弁する様に後ろからヴァルキューレのカンナが話出す。
「先生は襲撃された当時シッテムの箱を所有していました。それは先生の所持品にあったタブレットが示しています。そしてシッテムの箱は先生を守ってくれると以前先生が仰っていました」
「その通りです。流石は公安局局長ですね。よくお調べで」
黒服に拍手され褒められた事に不満を覚えながらカンナはコートに入っていた写真を取り出す。
その写真をホワイトボードに貼り付けて文字を書いていく。
「ではこの中から一人、先生の監視を決めそれ以外での調査を開始しましょう」
再びシャーレの空気が凍る。誰が先生の側に付き添うのか、それを決めるための血を血で洗う戦いが始まった。