星の子と鉄の散華   作:単眼駄猪介

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シリアスがシリアルになる奇妙な話だよん。

とりあえずこれで完結ッ!閉廷ッ!

………あれ?これって普通にシリアスしてる?()




後編

 

オルガ・イツカは赤ん坊というものを見るのは初めて……ではないがほとんど見たことはない。

名瀬の所の赤ん坊を見たことはあるものの、オルガは赤ん坊の世話をすることに関しては大変だという事しか分かっていない。

しかし、目の前の双子はどうだろうか。

サイリウムをブンブンとキレよくブン回し、周囲のオタク顔負けである。

それに、斎藤壱護の妻である斎藤ミヤコは何か知っているような感じがするのだ。

オルガはそんな彼女らに怪訝な目を向けつつ、今度ヒッソリ伺ってみようと考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双子もハイハイができるようになり、そして成長もかなり早くもう喋れるようになった双子。

男の子はアクアマリン……まあ長いのでアクア、女の子はルビーと名付けられた二人は元気に成長していた。

オルガとて、アイのネーミングセンスに引いたがまあ悪くはないと思ったのは別の話。

スラムの孤児の無知っぷりを侮ってはならない。

アイとは業務上の関係や双子の世話で、親しい仲になりひょんな事でお互いの過去を話すことになった。

アイの嘘に塗り固められた半生を聞かされたオルガはその凄まじさに気圧されつつ、オルガもまた話し始めた。

ちなみに双子が横にいるのはまあ気にしないでおく。

それに、オルガとていつまでも恩のある人達に隠し事は良心が痛むのである。

だから、オルガは最初に発言したのは自分が異世界の人間であることだった。

 

「俺は……信じられないだろうが異世界の人間なんだ。元いた世界で、ヒットマンに撃たれて、死んだ」

 

そこから歯止めが効かなくなり、オルガ自身の人生を語り始める。

三日月・オーガスという相棒との出会い、CGSでの苦しい生活。

鉄華団の誕生から地球での戦い、そして滅亡の道を歩んでしまったオルガにとって後悔の一言では片付けられない鉄華団の末路。

悲劇というものに優劣があるわけではない。

むしろ、そんなものをつけるのは死者への冒涜であり他人を傷付けるような行いでもある。

しかし、悲惨さで言えばオルガに上がるのではないのだろうか。

一人で鉄華団を導いてきたその重荷とオルガを信じて逝った仲間達。

彼らから罵倒を浴びせられる悪夢を何度見ただろうか。

それで彼は背負い続けた。

誰にも縛られないどこかに行くために。

 

 

 

 

彼の話を、アイは信じた。

嘘をつくプロである彼女である、それくらいはわかるのだろう。

勿論、想像を現実に持ってくる無自覚なイタイ奴だという説も否定できないが。

どのみちお互い肉親はいない仲である。

そんな親近感で距離が縮まり、仲良くなるのは必然的だったのだろう。

 

 

 

 

ちなみにこの日からオルガは双子から「団長!」と呼び慕われるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に数年間、オルガは星野親子に振り回されつつも楽しい時間を送った。

勿論、人気の上昇によって書類仕事も倍増し徹夜するオルガもいたが、そういうときは大抵社長夫妻か双子にストップをかけられ、社畜から脱却しつつあった。

しかしオルガは相棒たる三日月がそばにいないことに、最近寂しさを感じていた。

ホームシックになっていたオルガであるが、今では新しい仲間がいる。

だが、オルガは最近周囲からのある声に悩んでいた。

 

「お嫁さんは迎えないのか?」

 

「そろそろ奥さん持たないとまずいんじゃない?」

 

そう、所帯を持つことを皆から言われているのである。

実際オルガはもう二十歳を過ぎて二十歳後半に差し掛かろうとしている。

なんならアイが「私がお嫁さんになってあげようか?」と、冗談混じりに言うくらいにイジられる。

双子からも色々言われており、なんなら双子からも半ば公認のようにイジられてたりする。

オルガ的には冗談だと信じたいが………

 

「団長がお父さんでも、私は構わないよ!」

 

「団長なら大丈夫そうって思うよ、僕」

 

「二人は構わないって言ってるけど、どうする?」

 

「何言ってんだお前らぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫するくらいにはイジられたのだった。

そもそもアイドルなのにそんなこと気軽に言うなと文句を言いたいが、双子がオルガの余裕を削る。

結果、オルガは出会い系サイトを覗くようになったのは仕方がなかろう………

ついでにアニメ等の娯楽にも目を向けるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーだこーだとしてまた歳を重ね、B小町は遂にドームでライブをすることになった。

オルガもまた、そのことは誇らしく一層意気込むのだがそこを諌められるのは最早伝統芸。

双子にも笑いの種にされながらも一番はしゃいでいたのは社長の壱護なのは言わずもがな。

双子の方も大喜びで、ドームライブは生で見たい等とはしゃぐ。

そんな彼らに不穏の影が近付いている事など、誰も知るはずがないだろう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引っ越しした星野親子。

念の為に一日だけオルガが警護に付くこととなった。

念を押す分には全然問題ないのだ。

ちなみにネットでのオルガについてだが、意外と受け入れられている。

無職かつ記憶喪失という設定で彼のプロフィールを簡単に公式が公表しており、オルガの真面目さや時折ギャグみたいな姿をアイがネットのツ○ッターで公開。

そのためファンには受け入れられており、一部の過激派も受け入れる者達もしばしば。

特に社長婦人の子という虚偽をしながらオルガと双子の絡み合いの姿が、その厳つい顔からは想像もつかない面白い姿が最も大きな影響であるだろう。

近年放映された映画のカボチャのダンスや、双子に怪獣扱いされ、角みたいな前髪を引っ張られて取れて絶叫したりと、ギャグ要員である。

なんなら苺プロのお笑い芸人か?等と疑われる始末である。

それにオルガもイケメンに属するので普通に女性から人気である。

双子から「団長!」と慕われていたり、ヤクザごっこやヒーローごっこで大抵やられ役をするオルガは三日月達が見れば、優しい目で見るだろう。

 

 

閑話休題。

そんな訳で苺プロの賑やかし係としても活躍するようになったオルガ。

しかし、そんな彼らの幸せな生活に死がやって来る……

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

ーー

 

 

 

 

 

 

それはオルガがいかにもといった感じでサングラスでヤクザみたいな姿で双子のためにお菓子を買った帰り道。

最近運動不足を感じてエレベーターではなく階段で星野宅に向かっていたオルガ。

ようやくその階についた、と疲れたなぁと少しだけかいた汗を拭いながらドアまで歩こうとした、その時。

 

「なっ……!」

 

ボソボソと話していたので内容は分からなかった。

だが、白い花に隠して取り出したナイフが見えたオルガは走り出す。

菓子が入った袋を投げ、自分に視点を向かせる。

 

「アイさん!離れて!」

 

「ぐわっ!?」

 

「えっ?オルガさん?」

 

アイは突然のことに呆然とするが、袋を投げ付けられた大学生か高校生くらいの男はそれどころではない。

 

「このっ、邪魔しやがってぇぇ!」

 

男はオルガにナイフを向けた。

それに怯えることもなくオルガは声を張り上げてアイの前に出る。

 

「逃げろ!アイッ!!」

 

「ッ!!」

 

「クソがぁぁぁ!!」

 

諦めの悪い男は押し通れそうな所に突っ込む。

だがオルガは身を挺してそれを押し止める。

 

「ぐうっ……!!」

 

ドスッ、そんな音がオルガの腹から聞こえる。

男、リョースケは人を刺した感覚にビックリし、手を放す。

オルガは刺されたナイフが抜け落ちないように抑える。

それでも出血は激しい。

あっという間に床がオルガの血で赤黒く染まる。

 

「団長ッ!?何やってんだよ、団長ッ!!」

 

後ろからアクアの悲鳴が聞こえる。

 

「見るな!アクア!」

 

子供にはショッキングな光景だろうと、幼い彼に見るなと怒鳴る。

そんなことは関係ないリョースケは計画を邪魔された事に腹を立てて苛立ちを暴言にしてオルガを罵倒する。

 

「クソ!クソ!なんで邪魔がッ!アイドルが子供を作ってそれを守る?ふざけんなよ!」

 

完全にテンパっているリョースケにオルガは足を震わせながらも、しかし自分の後ろには行かせないという確固たる意思で立ち続ける。

 

「アイドルが、アイドルがよ!愛しているって言っときながら、誰とも知らぬ男と子供作りやがってッ!」

 

殺せなかった腹いせだろうか、リョースケはひたすらヒステリックに叫ぶ。

だが、そんな彼にオルガはドスの効いた声で彼に反論する。

 

「俺はな、お前に似た二人を知ってんだ……」

 

彼の後ろではルビーが救急車を呼んでいたが、そんなことを気にする余裕はないオルガはただただ言う。

汗も血も流れていく。

それでもオルガは立ち続ける。

 

「一人は俺の命令を守る忠犬みたいな相棒、もう一人は一つの偶像に取り憑かれたバカ。お前達の言う、アイドルみたいなもんにアイツらは依存……いや夢中?とにかく熱中していた」

 

リョースケは目の前の男が、なんなのか疑う。

本当に人間なのかと、疑う。

混乱していたのもあるだろうが、それを差し引いても肝が冷える雰囲気をオルガは醸し出していた。

 

「ミカは……そうだな、今の俺を見たら幻滅するかもな。アイツの期待に応えなきゃって、いつも思っていたからな」

 

ゲホッと咳き込むと吐血。

だがそうであっても構わず話し続ける。

自分の悔恨を残さないために。

 

「マクギリスは……どうだろうな。アイツの最後は知る前に死んじまったからな………少なくともバエルに乗れたんだから本望だったろ」

 

「なんの……なんの話をしている……!?」

 

訳が分からない、リョースケはそう言いたかった。

この世界にガンダムという作品はない。

だからこそ、バエルの意味も、マクギリスやミカの単語だって分からない。

それでもオルガは目の前の敵を睨み続ける。

 

「ああ……これは俺の話だから関係ないな。すまねぇ……で、アイドルが子供を作ったら駄目だって話だっけか?」

 

その大きく額にかかった前髪ごしにリョースケを睨む瞳が更に鋭くなる。

まるで、獲物を狩る狼のように。

 

「一人の人間が自分の幸せを追い求めて何が悪い。アイドルだろうが総理大臣だろうが団長だろうが、子供を欲しいと思うのは当たり前だろう!?確かにアイドルはそうあるべきかもしれねぇ……だけどよ、だからアイ個人の幸せを奪っていい事じゃねぇんだよ!解るか!?」

 

「ヒッ…!?」

 

「お前のその殺意はただの嫉妬と思い通りにならない今を八つ当たりに殺そうとしてるだけなんだよ……!そんなんじゃ、まだ飯を用意してくれるCGSの大人の方がまだマシだ…!」

 

トイレの紙のように消耗されていく同胞たち。

それが脳裏に浮かびつつオルガはだからこそと、叫ぶ。

 

「アイドルってのはな……やりたいからやるんだ。そこに目的があるから、夢があるからやるんだ……!お前の都合のいい玩具じゃねぇんだよ!一人の人間なんだよ…!」

 

理不尽にサンドバックにされた日々、阿頼耶識手術に適合せず捨てられていく子供達。

それらの記憶がオルガの立つ力となる。

 

「お前のような奴の為にどれだけ人が死ぬ!?自分の理想を押し付けて、勝手に嫉妬して殺そうとする。殺す度胸はあるのにアイドルの幸せは認められないってかぁ!?アァン!?」

 

両者、共に血の気の引いた顔だ。

片方はオルガに気圧され、片方は失血により眼の前が霞んでいるし、息も絶え絶えだ。

 

「ファンならそれくらい受け止めてみせろよ!俺と違って、お前らは選ぶ権利があるんだからな……ッ!!」

 

「あ、ひ、うわぁぁぁぁぁ!?」

 

リョースケは逃げ、オルガは遂に倒れる。

そんな彼を受け止めるのは涙を流すアイと、アクア。

ルビーもいるが、オルガの視界は既にアイとアクアで埋まっていて、ルビーは見えない。

 

「ガフッ……大丈夫か……お前ら……」

 

「オルガさんッ……!」

 

「喋るな!死んじゃう!」

 

「へへ……すまねぇ……ヘマ、やっちまった…」

 

命が抜け落ちるような感覚、だがそれは既に体感していたものであった。

だが、そこに恐怖はない。

やるべきことをやったのだから、オルガは誇らしかった。

前みたいなもっと考えれば皆生きれていたあの時と違って、自分にできることをやり遂げて死ぬのだから。

 

「駄目だ……駄目だ団長ッ!」

 

「オルガさん……オルガ!死んじゃ嫌だよ、私!ようやく、この気持ちが何なのか、解りそうなのに、こんなの……!」

 

「団長!団長!死んじゃ駄目!」

 

3人に囲まれて見送られる。

新しい家族に囲まれて逝くのも、悪くはないとオルガは思う。

 

「アクア、ルビー、そしてアイ……」

 

意識を失う直前、オルガは言う。

 

「お前らは進めるんだ。俺みたいな考えずに進み続けた俺と違って、止まることも道を選ぶこともできる……」

 

咳き込みながらも話す。

最後になるかもしれないから、だから言わなければと。

人差し指を上に掲げる。

横たわっているオルガには、幻覚か青空が見えた。

 

「お前達のいく未来が何なのか見れないのは残念だ……だけどよ、俺に足を引っ張られて止まるな……!」

 

遺言になるだろう言葉。

だから自分が残せる言葉を残す。

彼の記憶にはないが、それでも最後の言葉が同じなのはやはりオルガという男を現しているからなのか。

力尽きて腕が倒れても上に、前に進めと示すかのように倒れる。

奇しくも前回の死に方の仰向けであった。

 

 

 

 

 

 

 

「だからよ、止まるんじゃねぇぞ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは夢か。

何もない火星の地平線のどこかでオルガは一人立っていた。

 

「ミカ、俺は最後まで鉄華団の団長だったか?」

 

「オルガは俺達の団長だよ。オルガを殺したのは俺だ、そんな俺が団長じゃないなんて言えないよ」

 

オルガの問いに答えるのは三日月・オーガスと呼ばれていた男。

小さな少年はオルガとお互い背中を向けながら、しかし顔を見なくても分かるから振り返ることもしない。

 

「オルガはオルガの道を進んだだけだ。それを非難することはオルガに全部任せてしまった俺達には資格はない」

 

「………俺も、お前らに頼ることを忘れていた。どっちもどっちさ。だから自分を責めるな、ミカ」

 

「うん。わかった」

 

ずいぶんとあっさり受け入れるもんだと、肩透かしをくらうがまあいいかと諦める。

三日月・オーガスという相棒は、こんなもんだから。

だが、その心の底にはしっかりと熱い感情があるということをオルガは理解している。

だから彼の反応に嫌味を感じることはない。

 

「オルガ、俺達はきっともう行き着く場所についてたんだ、きっと」

 

「ああ、そうだな……俺達の夢見た場所、既に辿り着いてたのに気付かなかった。そんな俺たちが欲張って、周りに頼らず突っ込んだ結果なんてああなるのも仕方ないよな」

 

「………でも、俺達は止まらない。それが鉄華団でしょ?」

 

「そうだな……どのみち変えられないんだ。だったらせめて誇るしかないよな、俺達の進んだ道を」

 

赤い土の地平線。

オルガ・イツカの物語は、終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば太陽、なんでデルタ文字なんだ?」

 

「俺が知るわけないでしょ、オルガ」

 

 

 

 

 

 

 

 





読了ありがとうございました!
続きは反応の数次第と思い付くネタ次第ェ………
だって原作見てないし、買う金ないからリアタイでアニメ見るしかないし!

色々小ネタ挟みましたが、面白いと感じて頂けたら幸いです。
ちなみにオルガ死亡ルート、生存ルートのプロットはありますがまあやっぱり反応次第。

ギュネイが主人公の作品を主に書いてるので、良かったらそっちも読んでくれると嬉しいです。

それでは、おさらばでございます……

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