Brave shine   作:恒例行事

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勇者シャインと勇者たち①

 

『──シリアス。私のことは、そう呼んでください』

 

 青紫に染まった髪を後頭部で一つ結びにまとめた女性はそう名乗った。

 

 剣士シリアス。

 後の世で勇者一行となる、()が一番最初に仲間にした人だった。

 

 腕試し兼仲間集めと称して命知らずが集うと言われているコロシアムに乗り込んで勇者の力を振り翳していた私と、唯一対等に渡り合ったシリアスは、この人を仲間にしないとダメだと勘が働く程度には強かった。

 だから勧誘した。

 三日三晩考えたプランの一番最初、仲間になって魔軍討伐に参加して欲しいなんていう頭のおかしい誘いに、彼女は二つ返事で同意した。

 

『その……よかったの?』

『何がですか? ◇△●%(・・・・)

『そんな、簡単に頷いちゃって。……魔軍討伐だよ、これから、人類を滅ぼそうって奴らと正面から戦わなくちゃいけないんだ』

 

 あの頃の私は、怖がっていた。

 だって、いくら私が強いと言ったって、それは人の規格で表せばというレベルだったから。真の意味で私が【勇者シャイン】になったのは、仲間が全員集まって魔軍幹部と相対したあの戦い。

 

 だから、そんな私の誘いにすぐさま頷いたシリアスが、理解できなかった。

 

『いいんですよ。シ#%●が誘わなくても、一人でだっていくつもりでした』

『わあ……それはなんというか、勇ましいというか』

『無謀ですよね。だけど、黙っていられなかったんです』

 

 シリアスは心優しい人だ。

 神器を手にするまでは剣を握ったことすらなくて、果樹園や花畑を育てて生活したらしい。

 

『戦う力を持ったのに、それを活かさないまま滅ぶことは……私には、選べませんでした』

 

 優しい人だ。

 だから、死んだ。

 私の目の前で、私を庇うように魔王の斬撃になすすべ無く身体を削られながら、恐怖で泣き叫びながら。

 

 私はそれを、見ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「せんぱーい! 起きてるっスか?」

 

 う…………

 朝日、朝日はどこだ。

 ベッドから起き上がって、足を踏み外して盛大にすっ転びながら僕はカーテンを開いた。

 

 少し痛む。

 

「先輩!? なんかすごい音してるんスけど」

「……おはよう、リザ。悪いけど少し待っててくれるか」

「いや、いつも通り(・・・・・)隊長に起こしに来いって言われただけなんで大丈夫っス。遅刻しないでくださいよー!」

 

 …………ああ、なるほど。

 僕の事情はこの部屋を見ればよくわかる。

 酒の空き瓶とか大量に散らばってたし、やけくそみたいに毎晩飲んでたんだろうね。

 

 そりゃあ朝起こせって言われるよ。

 

「リザにも迷惑をかけっぱなしだな、僕は……」

 

 かつて僕のことを好きだと言ってくれた──未来での話だが──リザはいない。

 この世界の僕のことをきっと、好きだということは無いだろう。

 だらしない男なだけだ。

 そんな奴を好きになる理由がない。

 

「君も、おはようシャイン。よく眠れた?」

『……………………おはよう』

 

 随分低い声だ。

 

『今のが、リザ……』

「どういう感情? それ」

『私のブレーヴにちょっかいかけて……許せない……』

「えぇ……」

 

 謎の拘束欲があるらしい。

 まあ、シャインにならいいか。

 僕は君になら何をされても許せる自信がある。 

 

「それよりもだ。今日の予定はどうする」

『……ん。そうだね、とりあえずシャイン達と話を続けたいところだけど』

「どうやってコンタクトを取るか、だよなぁ」

 

 残念ながらこの世界の僕はかなりのダメ人間だ。

 憲兵として働いていたらしいけどここまでとはね。道理でリザに人が変わったみたいって言われるわけだよ。

 

『エヴリルに秘密のやりとり……は、ダメ。ブレーヴが知ってる筈ないから疑われちゃうかも』

「その内知りたいところだ。彼女達は宿に泊まってるんだよな」

『そう……だと思う。私がいたときは街の人がいいところに泊まれって強制してきたけど、どうかな』

 

 実績がない、か。

 それでも彼女らが強いというのは皆理解しているし、それが唯一無二だとわかっている筈だ。

 だから無碍にして希望をわざわざ捨てるとは、思いたくなんだけど。

 

「そればっかりはわからないな。シャイン、もう一度おさらいなんだけど」

『うん、シリアスのこと?』

「そうだ。本当に、その選択でいいんだね」

 

 花畑でデートだったか。

 僕は彼女の人となりを知らないし草花にも疎く、文化や文明といったものを愛するには努力が足りなかった。

 そんな男が彼女と二人で花畑をみて励ませると思うか? 

 答えは否だ。

 いくらシャインが未来で知った事実から計算しても、不確定要素が強いように思えた。

 

 そんな僕の不安を読み取りつつ、シャインは堂々と答える。

 

『うん、大丈夫。シリアスはブレーヴと同じくらい優しい人だよ』

「…………それは全く参考にならないね。なぜなら、僕は自分を優しいなんて思ったことがないから」

『もー! すぐそうやって面倒な卑下するんだから』

「面倒とか言うな。僕は正当な自己評価をしてるだけだ」

『そういうところだし。終いには怒るよ?』

 

 なんで僕が怒られなくちゃいけないんだ……

 

『当たり前じゃん』

「……そうか、当たり前か。ならしょうがない」

 

 苦笑しつつ身支度を整えて、シャインを腰に差した。

 

「そうだシャイン。聞きそびれてたんだけど」

『あ、うん。どうしたの』

「いや……僕が死ぬたびに巻き戻る場所って、決めれたりするのかな」

 

 結局、エヴリルに助けられてから死んでないので判断のしようがない。

 

 もしもこれで巻き戻るのが、3月17日のままだったら。

 少し気がおかしくなりそうだった。

 最初から、全部最初からか。

 一度のミスも許されない。

 

『……わからない。勇者特性は気まぐれだから』

「それは…………いや。わかった」

 

 勇者特性は気まぐれ。

 シャイン、君は一体何に気がついている?

 魔王との戦いの果てに、君が選んだ逆転の一手はなんだ。

 

 それをいつの日か教えてくれは、しないのかな。

 

『…………そのうちね。そのうち』

「……うん。君を信じてる」

『信じられました。任せてよっ』

 

 

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