ー13年前
「咲耶ぁ〜、なんで死んじゃったのぉ〜」
都内のとあるバーのカウンターにて、酔い潰れる1人の女性がいた。
「美春も相変わらず咲耶のことが忘れられないんだね…分かるよ。」
「今はアイってアイドルの嬢ちゃんが一番星って言われてるが、咲耶は私達にとっては晴れ渡る夜空に浮かぶ満月そのものだったからなぁ〜」
「マスタァ〜、そんなこと言ったら咲耶が怒るでしょぉ〜 あの娘アイの大ファンだったんだから〜」
「私がおんなじこと言ったらぁ〜 ほっぺたぷく〜ってして… えへへ〜かわいかった…うわぁぁあん!」
「今日はその辺にしときなよ? 明日も仕事、あるんだろう?」
「う〜ん、明日は〜、映画だよぉ…新しい子役? が急に決まったんだって〜」
「そうかい、ならこれ以上飲んじゃいけないよ? 子供の前でみっともない所を見せたら咲耶にも怒られちゃうからね?」
「グスッ… はい…後3杯で終わりにしましゅ…」
女性はそう言うと眠ってしまった。
「やれやれ…」
「マスター、最近もあんな感じか?」
女性の2つ隣の席に1人の男がいた。
「そうだね…定期的に来ては、酔い潰れて帰っていくよ。」
「まったく、明日の打ち合わせに来たのにこの様だよ…」
「まぁ、気持ちもわかるけどな… マネージャーとして、義姉として、最も近い場所で応援してた推しが死んじまったら、誰だって壊れちまうよ。」
「その点で言えばアイツは酒さえ入らなけりゃ普通にしてる… 強いもんだよな…」
男はそう言うとタバコに火をつける。
「すまないね、ここは禁煙だよ。 吸いたければ喫煙室に行ってくれ。」
「マジか、時代だなぁ…」
「君は平気なのかい? 泰志君もいつか自分の手がける作品で出て欲しいって言ってたじゃないか?」
「確かに言ってたがもう2年も前の事で、実際に面と向かって会ったことは無いしな… あの頃は俺も見習いで遠くから眺めるくらいしか出来なかった…」
「そのうちにどんどん高みへ昇っていって、そのまま帰って来なくなっちまった。」
「本当に、これからだったのに残念だ…美春も当時は業界きっての敏腕マネージャーとまで呼ばれたのに…」
「そう言えばさっき美春が言ってた映画ってアイが出るんだったね?」
「ああ、実は面白い子役が見つかってな… そのバーターなんだが、アイもアレで目を惹く… 多分6〜7割持ってくぞ。」
「そんなにかい… さすが咲耶が応援していただけの事はある。」
「最初聞いた時は耳を疑ったけどな〜、まさか今を煌めく名女優が地下アイドルのガチヲタだったなんてな。 時代だなぁ…」
「なんでも時代で片付けるのはどうかと思うよ?」
「それがよぉ、最近の2〜3歳児はユーチューブだけで大人顔負けに喋れるようになるんだぜ?」
「それは… 時代だな…」
「だろぉ? 2人いたんだが、そいつらを映画で使うんだ。」
「それは楽しみだね、五反田監督…」
それから少しの間思い出や子役の話で花を咲かせる監督と中年のマスターなのであった。
翌日
私は二日酔いで体が怠く、撮影場所の室内での作業を手伝っており、先程撮り終えた映像を確認していた…そして、監督一推しの子役の最後の映像を見て…次の瞬間には駆け出していた。
そして離れたところで1人タバコを吸っている監督を見つけた。
「泰志君! さっきの子役はどこ!?」
「うぉ!? お前なぁ、現場ぐらい監督って呼んでくれよ…」
「そんなことより、さっきの黒髪の女の子は何処!?」
「そんなことって… アイツらならもう返したぞ? 撮影も途中少し止まったが、その後は順調に進んだからなぁ…」
「そんな!? じゃあせめて、名前を教えて!」
「名前かぁ、黒髪だよな? それなら星野ラピスだ。」
「星野ラピス…」
「ああ… 本名のもじりだそうで、確か瑠璃って書いてラピスラズリだったぞ?」
「本人曰く目の色でつけられたんじゃねぇかって言ってたなぁ」
「確かに片目だけだが深い青に金色っぽい線が入ってたぞ? 珍しいよなぁ…」
「んで? それがどうした?」
「さっきの演技…まるで咲耶みたいだったの… 周りを飲み込むような空気、立ち振る舞い、特にあの目! 咲耶は両目がラピスラズリみたいで綺麗だった…!」
「!?」
確かに、咲耶の目は前に雑誌で取り上げられていた。
なんでも片親が外国人とかで目があの嬢ちゃんと同じだった。
それに、その作品の世界に飲み込まれる様な感覚は下積み時代に咲耶の現場で感じたものと同じ…
「あの子の所属事務所は…苺プロ!? アイと一緒じゃない! 苺プロ、ねぇ…」
「お、おい まさか移籍しようってんじゃ… お前がいなくなると困るんだよ…」
「まさか! それに咲耶が亡くなって廃人になってた私を拾ってくれた泰志君にはまだ何も返せてないよ…」
「んなこたぁどうだっていいんだよ、お前だって下積み時代助けてくれたことあったろ。」
「そう! じゃあ今すぐにでも移せ「ちょいちょいちょい! そりゃぁねぇだろ…」」
「冗談よ… それより、あの子は咲耶の生まれ変わりなんて事ないかな?」
「んな事あるわけ…」
「それじゃあ、あの年不相応な立ち振る舞いや言動はどう説明するのよ!」
「そりゃ、動画とかで…」
「それこそありえないわよ?! 見聞きしただけであそこまで身についたりしない!」
「そんな非科学的なことあり得るのか?」
「じゃあ、あそこまで理知的な子供普通いる!?」
「確かにそうだが、じゃあ同じくらい理知的な坊主はどう説明すんだよ?」
「そ、それはきっとあの娘と一緒に育ったから…」
「それにだ、もしそうならなんで連絡しないんだよ?」
「それは前に話したことがあるわ… 」
あれは転生ものが流行ってた頃
「もし私が死んだらどうなるのかな?」
「ちょっと、不吉な事言わないでよ…」
「でもさ、死って誰にでもいつ訪れるか分からないじゃない?」
「今こうしてる間に石ころみたいなサイズの隕石が私の頭に降ってくるかもしれないんだし…」
「もしかしたら異世界に生まれ変わるかもしれないし、この世界で死んだ直後に生まれ変わるかもしれないよ?」
「もしそうなったら私が探し出すし、もしこの世界ならすぐに連絡しなさい?」
「それはないかな〜」
「なんで!?」
「だって、この世界に生まれ変わったとしてそれは私じゃないんだよ?」
「例え記憶とかあったとしても、その子には家族がいる訳で…」
「だからもしその時は私からは連絡取らないから、もし見つけて気が向いたらまたマネージャーになってね?」
「良いわよ、もし! そうなったらね?」
「まぁ、ならないでしょうけど」
そんな会話をしながら新幹線で東京に向けて移動していた。
あの日、落ちる飛行機に乗るために…
尚、なんで私がその飛行機に乗らなかったかと言うと、航空会社の手違いでダブルブッキングしており、その相手が親子だった事と、スケジュール的に次の便だと余裕がないため咲耶だけで先に向かったのだ。
「バリバリフラグ立ててんじゃねぇかよ!」
「やっぱりぃ!? もうヤダァ〜! うわああぁん!」
そんなやりとりから数年、2人で色々調べた。
なんだかんだで辻褄が合う事が多かった。
あれからも何度かラピスの作品を泰志君が監督していたが、演技の中の類似点が多くあった。
しかし決定打が見つからないのはしょうがないとしても、もう少し欲しい所だ。
ちなみに、撮影中私は変装していたので、普通に親切なお姉さんで通ってる。
「例えばだけどよ〜 アイツの好きなタイプってどんななんだ?」
「ナニ? 狙ってるの? 殺すわよ?」
「バカかオメェは! そんなんじゃねーよ!」
「…仮に第2の生を送っているとしたら、同じ生き方をするとも限らねぇし、出来なかった事をしてみようってならねえか? 確か浮ついた話は無かったよな?」
「そうね! 確かにあり得るわ… 咲耶の好きなタイプは頼りになる兄系だったわね」
「兄系か… ちなみになんでそうなったか聞いても良いか?」
「そうね…部活ばかりで帰りの遅かった私に代わって弟達の面倒を見ていたからだと思うんだけど、よく漫画のそういうキャラに憧れてたわね… あっ、後は縁の下系のキャラも好きだったわ。」
その時一本の電話がかかってきた。
「あら? 総くん、久しぶりね…」
それから更に数年、あのドラマの撮影最後のシーン 撮影場所にて
あの後咲耶の弟で私の義弟の総司くんがバーのマスターから話を聞いて合流してきた。つけ髭にカツラをつけて…
彼は芸能各所に警備員を派遣している会社のトップの地位にいる。
「美春義姉さん、本当にあのラピスって娘が?」
「そうよ総くん、あの娘が咲耶に違いないわ。」
「最初はからかっているのかと思いましたが、確かにあれは見た目以外姉の要素しかありません。」
「あの幼稚園の頃のヲタ芸にしたってそうです。 結構動画とか見て好きだったようなので…」
そして最後のシーン 撮影終了後…
「キス…してましたね… 2回も… しかも我に返った後恥ずかしすぎて彼の胸に顔を埋めてますよ…あの男…」
「ちょっと泰志君! あの男誰よ!?」
「あ、ああ… スッゲェ良い絵が撮れたな!」
「大人のキスシーンでもあそこまで感情が入ってるのあまり見た事ないぜ…」
「泰志君!」
「ああ、悪い… アイツは急遽…「それは知ってるわよ!」…じゃあ何が聞きテェんだよ?」
「あの2人の関係よ!」
「それか、あの2人は確か同じ中学に通ってるって話だ…お前にも少し前に説明したろ?」
その後、テレビで放送され…
反響が凄かったので急遽、改めて記者会が行われた。
そこで2人が付き合い始めたことを知った。
会見の中で同じ中学の同級生にインタビューをした時の映像が流された。
「縁の下…兄系…器の大きさ…ロイヤルストレートフラッシュね!」
「完全に姉さんじゃないですか! ってかメス顔って言ったやつ表出ろ!」
そして今日、ラピスが高校生になる。
咲耶のマネージャーを務めた私「春原美春(すのはら みはる)」は苺プロに移籍する。
もちろん泰志君の所は大丈夫だ。
なんとラピスの弟のアクア君が監督の所で学びながら補佐的な事をしてくれるようになったからだ。
「約束通り見つけたわよ! 咲耶!」
私は苺プロへと向かった。
最後までありがとうございました。