悩ましきOL生活~もしもCNPプリンスが会社員だったら~ 作:ふゆきんぐ☆
本来のキャラクター設定は学生で生徒会のメンバーなのですが、こちらは大人の女性向けに会社員の設定で二次創作をさせていただいております。
更に、今作は本編に登場したヒロインの同僚『日野さん』と、小鳥遊ホークのHappyENDになっております。もうひとつのキュンストーリーが皆様の心に届けば幸いです。
4月29日に行われたメタバライブの様子はこちら↓↓
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公式サイトはこちら↓↓
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5/31(水)プリンスたちによる『プリンスペース』アーカイブはこちら↓↓
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6/28(水)『プリンスペース』第二回はこちら↓↓
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登場人物紹介はこちら↓↓↓
画像付き登場人物紹介
いつも、どこか、疎まれるような、腫れ物に触るような、そんな扱いをされてきた。
男だから?女だから?
今時の子育ては、そんなバイアスをかけずに、先入観に囚われないことを心がけて行われるらしい。
けれど、自分のこれまでを振り返ると、どうやっても「女のくせに」と言われ続けてきた人生だったと思う。
小さい頃から父や兄にくっ付いて機械をいじる真似をしていた。
兄がやっているゲームをやりたくて、何度も喧嘩をした。
自分のパソコンを手に入れてからは、オンラインゲームにハマり、タイピングやハッキングゲームなんていうものにも手を出した。
あくまでゲームの上でだけだけれど、私はヒーローだった。
だけど、高校に入ってから。周りの女子たちは化粧を覚え、お洒落を覚え、キラキラしい青春に浸るようになって。
そうして、少しずつ、私の中と外がバラバラになり始めた。
頭も運動神経も人並み。体形はどちらかというと瘦せ型。顔も悪くはなかったようで、友達と同じように彼氏が出来たりもした。
一緒に集まって、遊んで、流行りの歌を歌って。
だけど、本当にやりたいことはそうじゃない。
その心の叫びに気づいた時には、私は特に興味もない事を大学でただ淡々と学んでいた。
そこからは一気に波乱万丈の人生に変わっていったと思う。
親に頭を下げて大学を中退し、バイトをして貯めたお金で電子系の専門学校へ行った。
そこから何とか親や周りを見返すために、名のある会社へと就職を決めて。
負けん気の強さだけで好きな道に進み、その反動で全ての『興味がないもの』を捨ててきた。交友関係も、彼氏も、オシャレも、全部。
だけど、そうやって進んだ道の先で、出会ってしまった。
一目ぼれって、こういうことを言うのだろうか。見た瞬間に体中に電撃が走ったような衝撃を受けた。
「主任を任されている、小鳥遊ホークだ。よろしく。」
顔や体形や身長や、そういった外見が素敵だったのは言うまでもない。けれど、この男性しかいない部署に女性である私が配属されたことに対して、彼は何も言わなかった。
てっきり「女性が配属されるなんて珍しいな」とか、「女性一人だから困ったことがあれば言って欲しい」とか、何かしらを言われるだろうとやや身構えていた。
けれど彼は何も言わず、ただ「じゃぁ、慣れないことも多いだろうがかんばって」とだけ。他の男性社員たちと同じように私を扱ってくれたのだ。
これは、本当に嬉しかった。
いつもどこか劣等感を常に抱いてきたと思う。
それは、男性に対しても、女性に対しても。
お洒落を捨ててきた私は、今更お洒落をしたら負けだと思っていた。
キラキラした営業部の女性たちには敵対心を持っているし、同部署の男性たちには「負けたくない」というライバル心を持っている。
つまり、全方位敵だらけだった。
「あのさ。」
「!は、はい!」
「あなた、主任に色目使いに来たの?」
「……はい?」
会社をあげて始まった新規プロジェクトで我が部署にやって来たとある女性社員は、あっという間に部署の男性たちの目線をかっさらって行った。
派手なわけではない、けれど、可愛らしくて一生懸命な、所謂「守ってあげたい系」女子である。
主任にだけは近づかれたくなくて、頭をフル回転させてみたのだが、裏目裏目に出てしまい、結局主任の隣を明け渡す羽目になってしまう。
「だから、主任狙ってこの部屋にいるのか、って聞いてんの。」
「えっと……仕事、をしに来てます。こちらでの作業や動き、皆さんのお仕事を表面だけでも分かった状態で営業さんに持っていくのが私の仕事ですので。」
「あんたの仕事内容なんてどうでもいいの。主任に気があるのか、って聞いてんのよ。」
こっちのことなど意にも介さない様子で、彼女は言い返してくる。
「私は、ここに仕事をしに来ています。それ以上もそれ以下でもありません。ですので、日野さんのおっしゃるような事は欠片も考えていません。」
「あっそ。だったらさっきのは何なの?これ見よがしに主任の隣に座ってさ。アタシのこと馬鹿にしてんの?」
「……画面共有をしていただければ呼ばれなかったと思うのですが……。」
「は?なに、アタシが悪いって言いたいわけ!?」
ついヒートアップしそうになったところで、主任が戻ってきてしまった。
私は慌てて誤魔化したが、つまりそう、私はこの女に惨敗したのである。
結局、彼女はうちの部署での仕事をそつなく終えて、また別部署へ移っていった。
思っていたほど、悪い奴じゃなかった、と思う。
(結局、謝れなかったじゃない……。)
あれからずっと心の中で妙な罪悪感のようなものが燻り続けていた。
だから、というわけではないのだが。
プロジェクトの打ち上げの席で営業部の女子たちがあの子を囲んでいるのを見て、つい体が動いてしまっていた。
キラキラした、私の捨ててきたものを、これでもかと詰め込んだような女たち。
勝手に私が敵だと思っている彼女たちもまた、私を敵だと認識しているらしい。
そんな輩に負ける気は欠片も無くて、無事に撃退してやると、子犬みたいなあの子が尻尾を振って寄って来た。
女子と飲み会で仲良く話したことなんてあったっけ。
可愛くて、一生懸命で、だけどどこか抜けていて。偏見も何もなく私を見てくれる女子に初めて出会ったような気がして、私はついついあれこれと話をしてしまった。
正直、楽しかったと思う。絶対に認めたくないけど。
同期が心配だからとあれこれ世話を焼こうとするので、私は致し方なく主任を呼びに行った。
正直、そろそろ諦め時だとは思っている。だって散々アプローチしても全く気に留めてくれる様子が無いから。
多分、この子のような「いい子」が彼の隣に相応しいんだろうな、なんてちょっと自虐的になるのは、お酒が入っているからだろう。
そういえばこの前幼馴染が「そろそろ結婚したいな、最悪お前でいいか」とかふざけたことを抜かしていた。
私なんて、そのくらいの扱いをされるのが丁度いいのかもしれない。
タクシーにみんなで乗り込み、ボーッと外を眺める。主任が鬼一太郎(主任の後輩で社内では人気の可愛い系男子)を家まで送っていく様子が見えた。
どこか、胸に穴が開いていくような、重い鉛玉が沈んでいくような、そんな感覚。
きっと、今日が、諦め時だ。そんな直感が脳を掠めた。
「ねぇ。」
「はい?」
「あのさ、主任の事なんだけど、どう思う?」
「どう、って、素敵な方だなぁ思いますけど。」
「……だよね、素敵だよね。」
良かったですね、主任、脈ありですよ。なんて、思ってもいない言葉が浮かんできて、私の心を傷つけていく。
その言葉を発しているのは自分だとわかってはいるけど、止められない。
「私もう片思いして長いんだけどさ。だんだん分かんなくなってきたんだよね。」
「分からなく、っていうのは……?」
「主任さ、私には興味ないってオーラが全身から出てるのよ。望みなし、ってやつ。いつまでも執着してもなぁ、とか、もっと身近に誰かいるのかな、とか思ったリしてさ。」
「身近に、っていうのは……。」
「んー、最近色々あってさ。あ、主任戻って来た。あぁ、なんか酔っぱらって変な話した。忘れて!」
そう言うと同時に主任が助手席に滑り込んでくる。やがてタクシーはうちの近くへと停車した。
「日野さん、家まで送るよ。」
「え、すぐそこなので大丈夫ですよ、珍しく積極的ですね!どうしたんですかぁ~~~?」
白々しく茶化してみたのだが、真面目な顔をした主任は私の少し前を歩き出す。途中で何かを思い出したようにタクシーへと戻っていった。
あの子の事を気にして、だろう。何かを話しているが、ちょっと時間が掛かりそうだ。
私は、ちょっと急ぎ目に自分の家へと向かった。
多分、今、二人にしてあげたほうがいい。きっと、あの二人は上手くいくから。主任は、幸せを掴んでくれるから。
そんなことを考えているうちに、私の足は自然と走り出していた。自分の感情が整理できなくて、目から涙が溢れてくる。
珍しく化粧をして、珍しくマスカラなんてつけるから、マスカラがボロボロと取れてきて不快だ。
もうどうでもよくなって、家を通り過ぎ近くの緑地帯まで走る。
公園ですらないそこは、ただ街灯に照らされた芝生にベンチがあるだけの寂しい場所だった。
息が上がる。お酒でも買ってくればヤケ酒できたのにな。なんて思いながら、私はベンチにへたり込んだ。
汗と涙が一緒に落ちてくる。もう嫌だ。こんな自分は大嫌いだ。
ゼエゼエと息が荒くて、それもまた見苦しい。こんな、こんな自分なんて……
「まさかそのヒールで走るとは思わなかったよ……。」
「!?」
頭上から降って来た声に、体が跳ねた。あまりにも聞き慣れた声だ。どうして、こんなところに。
心臓がバクバクいう。今、私は多分、いや、確実に酷い顔をしているはずだ。
マスカラは溶けて目の周りが真っ黒になっているだろうし、汗をかいて前髪は張り付いているし、目も充血しているし。
「どうした?もしかして具合でも悪いのか?あ、少し待っていてくれ、水買ってくる。」
近くの自販機に向かって走っていくその後ろ姿は、どこからどう見ても主任だ。ワケが分からない。なぜ彼はこんなところに居るんだろう。
私は、とりあえず慌ててカバンから小さな鏡を取り出すと、ウエットティッシュで目の周りを拭き、髪の毛を整えた。
いつもほとんど化粧をしないから、マスカラが落ちたところでさほど変わりはしない。
むしろ、見慣れた姿だろう。
「良かったらこれ。ただの水だけど。あ、麦茶の方がよかったか?一応どっちも買って来たんだが……。」
「水で大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
ペットボトルの蓋を開けて水を一口飲む。冷たいものが喉を伝っていく感覚が気持ち良くて、ちょっとスッキリした。
主任は私の隣に腰を下ろして、麦茶は飲まずにベンチに置いた。
「えっと、主任。なんでこんなところにいるんですか?」
「日野さんが走り出すからだろう。」
「だって、あの子に話があったんじゃ……。」
「ん?話?いや、ここまでのタクシー代を清算していた。そのままタクシーを使って帰ってもらって、領収書は取っておくように言ってある。経費で落ちるはずだからな。」
「あぁ、そういう……。主任の家と方向違ったんですか?」
「あぁ、いや、まぁ、そんなところだ。」
もごもごと口ごもる主任がなんだかおもしろくて、私は空を見上げた。星がチラチラと光っている。
夜風が気持ち良くて、私は思わず目を閉じた。何だか全部がどうでも良くなってきた。
ただ、隣に主任が座ってて、お酒もいい感じに回っていて、さっきまでのどん底な気持ちが嘘みたいに消えている。
ちゅっ
と、唇に何かが触れた。
「!?!?!?」
「いだっ!」
「わ、ごめっ……!え、主任、何してんですか?」
「いや、だって、日野さんが目つぶって待ってたから……!」
驚いて動いた結果、どうやら主任に頭突きをかましたらしい。というか、え、今。もしかしてキスされた???
「主任って……チャラ男だったんですか……?」
「な!何を失敬なことを……!」
「いや、失敬ってそんなおじさんみたいな。」
「俺は今とにかく必死でだなぁ……!」
「?何にですか?っていうか、ほんと、主任、なんでここに???」
純粋に疑問をぶつけてみると、主任は盛大な溜息と共に肩をこれでもかと落とした。この人、こんなになで肩だっただろうか。
「プロジェクト、がんばってくれただろう?かなり助けられた。日野さんが居なければプロジェクトは成功しなかっただろう。」
「いやいや、何ですか藪から棒に。」
「今日は結構グサグサくるんだな。」
「ふふっ、すいません。吹っ切れたからだと思います。」
「吹っ切れた?」
「はい。私、これからは主任のこと追わず、地に足つけてやっていこうと思いまして。」
少しだけ、声が震えた。だけど、涙は出さずに済んだ。主任の顔を見て、笑顔で言えた。なんだ、言えるじゃない。大丈夫、私は、もう、大丈夫。
「それは……もう、俺の事は何とも思っていない、ということだろうか……?」
「そうですね。そう言えばこの前幼馴染に告白されまして。そろそろ身を固めるのも……。」
「それは困る!!」
突然、主任が大声を出した。ビックリして、流石の私も固まってしまう。
「それは、困るんだ……!それじゃ、俺は、どうしたらいい……!確かに遅すぎたとは思う。だけど、今日まできちんと我慢してきたんだ。プロジェクトが終わってから、と。それを……!」
「いやいやいやいや、ちょっと、主任?話が見えないんですけど。」
「日野さん!!!」
「はい!!!」
「結婚したいというなら、俺にしてくれ!もう俺は君が居ないとやっていけない!男なのに情けないが、責任とってくれ!!!」
「はぁ!?」
「毎日あれだけ俺を見てくれていたのが、突然現れた幼馴染とやらに持っていかれたら俺の立つ瀬がない!遅すぎたというならそれは俺が悪い!だが、だが……!」
「ちょ、ちょっと待ってください。主任、まさかとは思いますけど、私のこと好きなんですか?」
「さっきからそう言っているだろう?」
「言ってないです!言ってないですから!!!」
思わずツッコんでから、改めて主任の顔をまじまじと見つめる。
いつもの丹精な顔立ちだが、眉が下がり、困り果てた大型犬のように見える。
これは……なんというか、可愛い……。
「えっと、あのぉ、私、結構前から主任のことが好きでして。ただ、あまりに興味を持っていただけないので、そろそろ潮時かな、と思っていまして……。」
「俺は!この男だらけの職場に飛び込んできてくれた女性がいる事が嬉しくて、しかも優秀で、それで俺に好意を示してくれるから、どうしたらいいのか分からずにいたんだ。だが、もう日野さんがいなければプロジェクトも回らないし、他部署から女性がきて、やはり君じゃないとだめだと思って、だから、俺はプロジェクトが終わったらそれを伝えようと思っていたんだ。なのに、言おうと思ったときには君は走って逃げてしまうし、追いついたら泣いているし、どうしたらいいのか分からなくて……。」
「な、泣いてないですから!!忘れて!忘れてください恥ずかしい!!!」
「今も真っ赤な目をしているぞ?忘れられないだろうな。抱きしめそうになった。」
「抱き……っ!?な、なにを、言って……!」
「あれ、意外だな。日野さん、結構照れ屋なのか。」
「誰のせいだと思ってるんですか!!!」
全然話がまとまらなくて、それがあまりにもいつも通りで。
とにかく分かったことがある。どうやら私の長い片思いは、今日報われたらしい。
「もう、仕方ないですね。小鳥遊ホーク主任?」
「お、おう。いや、はい。」
「入社した時から、ずっと好きでした。私の彼氏になってください。」
「そこは俺に言わせてくれるところじゃないのか!?」
そう言う顔がまた可愛くて、私は笑い転げながら彼に抱き着いた。
ガシッと受け止めてくれた腕が力強くて、温かくて。
私は、漸く手に入れた心安らぐこの場所で、思い切り力を抜き、その温かさに身を預けたのだった。
~fin.~
お読みいただきありがとうございました!
シリーズ内で一番長いお話になってしまいました(汗)
日野さん……幸せになってくれてよかったです、ありがとう。
彼女は作者の脳内で生まれたオリジナルキャラクターで、ヒロインのライバルとして登場しましたが、皆様から思わぬ人気を得てこのようにSSの主人公の座を獲得いたしました。
これにて、今シリーズは完全に完結となります。
CNPプリンスが続いていく以上、また新たなシリーズ展開にてお目にかかりたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします!!