悩ましきOL生活~もしもCNPプリンスが会社員だったら~ 作:ふゆきんぐ☆
本来のキャラクター設定は学生で生徒会のメンバーなのですが、こちらは大人の女性向けに会社員の設定で二次創作をさせていただいております。
4月29日に行われたメタバライブの様子はこちら↓↓
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画像付き登場人物紹介
カタカタカタカタとキーボードを叩く音が部屋に響いている。
私は、ただただ体を小さく丸めて、部屋の一角にある応接スペースのソファへ鎮座していた。目の前には一台のノートパソコン。しかし、今は特にやらなければいけないタスクはなく、とりあえずの報告書を書くに留まっていた。
ここは技術開発室。先日鬼一くんたちと完成させた資料を基に、エンジニアさんたちが技術の粋を集めて奮闘している。
ただ、正直彼らが何をしているのかさっぱり分からない私は、この場に酷く不釣り合いだった。
体を丸めて小さくなっている理由はもうひとつある。
「はぁ……。」
……と、これ見よがしに聞こえてくる溜息。会社一の美人と名高い美人クリエイターの日野さんだ。
最初にこの部屋を訪れた時は、特にやりにくさを感じるような事はなかった。皆真剣に出来上がって来た資料に目を通し、中継ぎの私の話にも耳を傾けてくれていたと思う。
時折質問をもらったりして、ある程度の役割分担が出来たところで、皆は各々のデスクに戻っていった。
半日ほど作業が進み、その間私は進捗状況を伝えたりするのにプロジェクトリーダーである課長の元へ向かったり、またこの部屋へ戻ってきたりしていた。技術開発室に長居していたわけではないので、その時も特に視線など感じなかったと思う。
で、昼過ぎに小鳥遊ホーク主任が出張から戻られた。
「午前中は席を空けていてすまなかった。進捗状況を報告してくれ。」
ミーティングが開かれ、各自受け持った仕事の進行状況を共有していく。
「わかった、いいペースだが、もう少しペース上げて行けそうか?」
「もう、主任ってば!私たち結構一生懸命頑張ってるんですけど!」
「あぁ、それはもちろんわかっているよ。日野さんは飛びぬけてペースが速いしな。助かる。」
「ふふっ、ありがとうございます。もっともっとがんばりますね!」
「お、頼もしいな。よろしく。」
なんてやり取りがあって、一応私もそれなりに察してはいた。日野さんは小鳥遊主任を好きらしい。隠す素振りも一切なく、全身から「好きですオーラ」が漂っているように見えた。
しかし、当の小鳥遊主任は全く気付いていないらしい。もしくは、わざと気づかないフリをしているのだろうか。他のメンバーと全く変わらない感じで日野さんに接している。
皆作業を再開させる中、私は与えられた応接スペースで主任に一から中継ぎをすることになった。
「そうか、鬼一が。」
「はい。すごく頑張っていました。私はあまりお手伝いできませんでしたが、最初から最後まで鬼一くんの仕事ぶりを見られて幸運だったと思います。」
「そうだな。鬼一は本当にすごい才能の持ち主だから。それを分かってくれる人が近くに居てくれるのはきっと心強いだろう。ありがとう。」
突然主任に頭を下げられ、私は慌てて立ち上がった。
「しゅ、主任!頭を上げてください!そんなことしちゃダメです!」
「?なぜだ?俺は素直に嬉しいと思ったんだが。」
「あの、主任に感謝されるような事は何もしていません。私は当然の仕事をしたまでです。」
「……そうか。そう言ってもらえるとますます嬉しいな。」
そう言って、主任は凄く優しい微笑みを浮かべた。すると、周りから息を飲む、声にならない悲鳴が聞こえてきた。どうやらかなりレアな表情を見てしまったらしい。
それからだったと思う。日野さんからの視線が物凄く痛いものに変わったのは。
一通り説明を終えると、主任はデスクへと戻っていった。私は中継ぎとしての役割を終え、プロジェクト室へ戻ろうかと思っていたのだが、皆さんのこの真剣な空気感を次の営業さんたちに伝えたくて、技術開発室に残る選択をした。……それがまた問題だったらしい。
ある程度仕事が終わってしまっている事が、雰囲気から伝わってしまったのか、「いつまでここに居座るんだ」という視線を凄く感じる。主に日野さんから。
ただ、部屋を出ようにもなかなか出にくい雰囲気で、だいぶ迷う。どうしよう、中継ぎとしてこの少しピりついた空気感を知っておきたい、何か動きがあれば即時対応したい、という気持ちと、一刻も早くこの場を離れたいという気持ちのせめぎ合いだ。
ちょっと冷や汗すら出てきそうになった時、ガタリと日野さんが席を立った。
「主任、ある程度出来上がったのでご確認お願いできますか?」
「あぁ、ありがとう。画面共有してくれ。」
「データそちらにお持ちしますよ!」
「いや、共有にしよう。データ端末の接続が厳しくなったのは通達来ていただろう?」
「……。そうでした!共有しますね。」
一瞬の沈黙が怖かったが、日野さんは自分のデスクに戻り主任と画面共有を始める。
多分、多分だけれど。恐らく日野さんは一つの画面を主任と一緒に見ながら報告をしたかったんじゃないだろうか。……多分だけど。
私にも画面共有をしてもらえないだろうか、と思いチラチラ日野さんを見てみるが、当然無視される。
「あぁ、そうか、せっかくだから一緒に見てもらおう。日野さん、彼女にも画面共有してもらえるか?」
「え……あぁ、はい。あ、でも主任、すみません、私彼女のパソコンとは連携していないのでだいぶ時間が掛かってしまいますぅ。」
「あぁ、そうだよな。じゃぁこちらへ。俺のパソコンの方が画面が大きいから。見づらかったら言ってくれ。」
……勘弁してほしい、なんて言えるはずもなく、私は日野さんの突き刺すような視線を浴びながら主任の隣へ移動した。
小鳥遊主任は近くにあった椅子をさっと持ってきて、私に勧めてくれる。ありがたく着席したが、これは。隣り合って画面を一緒に見るというのは、恐らく日野さんが狙っていた形ではないだろうか。もう居た堪れない。どうしよう。
彼女の作ったデータは素人目に見ても素晴らしいものだった。もちろんプロの目から見れば改善点があるようで、その後主任からあれこれ指示が出ていたが、大枠ではOKらしい。
今の内容を報告書に残すべく、私は自分のPCで作業を始めた。
主任が少し席を立つ。
姿が見えなくなったところで、日野さんがツカツカとこちらへやって来た。
「あのさ。」
「!は、はい!」
「あなた、主任に色目使いに来たの?」
「……はい?」
そっち方向で文句を言われるだろうとは思っていたが、あまりにも開けっ広げで見当違いな質問に思わず間抜けな声が出てしまう。
「だから、主任狙ってこの部屋にいるのか、って聞いてんの。」
「えっと……仕事、をしに来てます。こちらでの作業や動き、皆さんのお仕事を表面だけでも分かった状態で営業さんに持っていくのが私の仕事ですので。」
「あんたの仕事内容なんてどうでもいいの。主任に気があるのか、って聞いてんのよ。」
もう同じ質問しかしない彼女を、私は正面からハッキリ見据えて言った。
「私は、ここに仕事をしに来ています。それ以上もそれ以下でもありません。ですので、日野さんのおっしゃるような事は欠片も考えていません。」
「あっそ。だったらさっきのは何なの?これ見よがしに主任の隣に座ってさ。アタシのこと馬鹿にしてんの?」
「……画面共有をしていただければ呼ばれなかったと思うのですが……。」
「は?なに、アタシが悪いって言いたいわけ!?」
ちょっとヒートアップした日野さんが怖くてギュっと目をつぶったところで、ガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「……あれ?どうした、何かトラブルか?」
「あ、主任、おかえりなさぁい!仕事の効率を考えて、彼女と画面共有設定をしておこうと思ったところですぅ。」
「あぁ、そうだったのか。今独歩……いや、蛇神プロジェクトリーダーに確認してきたんだが、彼女のPCも普通に同じネットワーク上にいるからすぐに検出されるはずだと言っていた。日野さんのPCには表示されなかったか?」
「あれぇ?私見落としました??すみません、次の時はちゃんと探してみますぅ。主任のPCには表示されますかぁ?」
そう言いながら、この機を逃さんとばかりに主任のデスクへ寄っていく日野さん。画面をのぞき込み、「あ、あったぁ。おかしいなぁ。」なんて言っている。他のメンバーをチラリと見ると、どうやらいつもの光景らしく、みんな「ヤレヤレ」といった顔だ。
そんな中、小鳥遊主任がこちらをじっと見ていたことを、私は気づかずにいたのだった。
~Side 小鳥遊~
俺は、鈍い。
ホーク自身がそれを自覚しているほどに、彼は自分に対する周囲の評価というものに無頓着であった。
この世に存在するありとあらゆる機械が好きで、大きなものから小さなものまでとにかく触って来た。機械とは言えないようなトレーニングマシンさえ可愛くて仕方がない。
自分の肉体も改造できるのが楽しくて、機械いじりと筋トレにとにかく時間を費やしてきた。それが許されるのは、ひとえにそんな自分を許し、評価し、支えてくれる仲間たちが居るからである。
特に幼馴染であり同じ高校の生徒会役員であり、今は同僚でもある蛇神独歩、鬼一太郎、リー・ハオランには支えられて今があると言っても過言ではない。
彼らのお陰で、ホークは今も楽しく仕事を続けられていた。
主任という立場はホークにとって願ってもないポジションである。仕事をある程度割り振ることができるのだ。自分に向いていないという仕事は優秀な部下たちが担ってくれた。自分が徹底的にやりたい仕事はとことんできる環境でもある。会社にそれを提案してくれたのが独歩であることを、実はホークは知ってた。
ただ一つだけ悩みの種があるとすれば、部下の日野である。優秀なクリエイターなのだが、如何せん自分に対して熱っぽい視線を送って来るのだ。
女性に全く興味がないわけではないが、正直今は仕事に人生の50%、筋トレに49%、それ以外の生活に必要なことに1%の比率を置いているので、そういったことにリソースを割けないのが正直なところである。
これまで自分を目当てに入って来たキャッキャした女性たちは、自分の反応がつまらないからなのか、日野さんと合わないからなのか、気づけば居なくなっていた。
『仕事』に重きを置いていられないのであれば、それも致し方ない、というかチームの輪が乱れなくなるのであればそれで全く問題ないと、今でも思っている。
ただ、今回は少しばかりいつもと違った。
中継ぎとしてやって来た独歩の部下は、真面目で、仕事に対しての熱量が高く、部下の話だとあの日野さんに正面から言い返したらしい。自分はあくまで仕事できているのだ、と。
これまでそんな女性は居ただろうか。そう考えると、自然と口角が上った。
日野さんが画面共有を渋っていることを察して、自分の隣に来るよう椅子を勧めてみれば、やや緊張した面持ちで素直に椅子に座り、いざ仕事となると真剣な顔で食い入るように画面を見つめる。その横顔をチラリと盗み見てしまい、なぜか顔が熱くなるような気がしたのは、気のせいだろうか。
自分たちの作業がある程度終われば、彼女は営業部へと向かって行く。営業部に居るのはハオランだ。あの華やかな部署には、それだけたくさんの人がいて、特にハオランの周りにいる女性たちは、強い。
(彼女は、大丈夫だろうか……。)
柄にもなく女性を心配している自分に気づき、慌てて顔を上げた。
いつものジムで、いつものトレーニングマシンに座る自分が鏡に映っているが、妙に顔がニヤついているような気がして、ホークは己の頬をパチンと両の手で叩いたのだった。
お読みいただきありがとうございました!初のライバル女性キャラ登場回となりました!!が。……ホークくんは私の中でSSを書くのが一番難しい人なのです……。なんとか完成してよかった!このままエンドに持って行けるのか!?とは思っていますが、引き続き楽しく妄想していこうと思います☆