ts転生オリ主がやらかした話   作:ヤンデレ好き

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シリアス(笑)な回。

やっぱりまともな精神状態じゃなかったよねって話です。


推しに曇らされる系ts男子(女子)

 

 

 

「おかえりなさい。今日は一緒にお風呂入る?」

「…私はもちろんいいけど、アクアとルビーは?」

「今日はミヤコさんにお願いしたから、一緒に入りましょう。お姉ちゃんが洗ってあげる」

「そ、そう?じゃあお願いしよっかな」

 

(何だか最近お姉ちゃんが優しい…いやお姉ちゃんは前から優しいけど)

 

 お姉ちゃんの周りから危険そうな男たちを一掃し、私は再び心穏やかな毎日を送っていた。相変わらず私は暇を見つけてはお姉ちゃんの体の攻略を進めていたわけだけど……なんだか最近のお姉ちゃんは抵抗することがなくなった気がする。

 

それどころか、今日のようにお風呂に誘ってきたり、子供たちが寝静まった夜に一緒にお酒呑んだり、お姉ちゃんからのボディタッチが増えたり…いや嬉しいんだけどね、大歓迎なんだけどね!

 

(こういうのって嵐の前の静けさって言うんだっけ。この前出たクイズ番組で言ってたやつ)

 

 そんな時期だったから、アクアから話を聞いた時は『これだ!』って思ったんだよね。

アクアが言うには、お姉ちゃんはたまに胸を抑えて苦しそうにしていることがあるから、病院で診てもらった方がいいんじゃないかってことだった。

 

 息子が私よりしっかり報連相出来てることは嬉しかったよ。ちょっと複雑…とか思ってない。

 

 私は早速、仕事を休んでお姉ちゃんを病院に連れていくことにした。

社長からは小言を言われたけど、他のB小町のメンバーでカバーできる範囲だったから許された。まぁ、それは元々織り込み済みだったんだけど。

 

 病院に関しては、芸能関係者から聞いた一番評判の良い病院を選んだ。コネを広げると情報が多く集まるから良い。憎き黒幕探し以外にもいろいろと役に立つ。

 

 そんな感じで何日かに分けて検査をしたわけだけど、お姉ちゃんの体にはどこにも異常はなかった。むしろついでに検査した社長がちょっと問題だった…最近お酒飲みすぎだからヤバいんじゃないかな~とは思ってたんだよね。

 結果的には、社長が飲酒量を控えるようになっただけで何事もなく終わった。私とアクアの心配は杞憂だったけど、少なくとも体は健康ってことがわかったので一安心である。

 

 

 さて、そうなるとお姉ちゃんが私を前より(肉体的に)受け入れてくれるようになっただけで、特に問題はないようにも思える。

 でも私の考えは違う。

 

(これは…お姉ちゃんが慣れただけだ!)

 

 そうだ。お姉ちゃんのこの反応は慣れからくるものだ。

うまくいけば前よりもぐっと心も体も関係を進めることが出来る。でも失敗したら倦怠期に突入してしまうかもしれない。重要な時期が来た、と見るべきだろう。

 

(アプローチを変えた方がいいかな。体の関係は少し控え目にして、言葉でお姉ちゃんの心を攻める)

 

 

 どんな話でお姉ちゃんの心を攻めるかを考えながら、私はお姉ちゃんとお風呂へ入っていた。

 

「アイは全然体形変わらないわよねぇ。この前のドラマも高校生やってて違和感なかったし、この世の理不尽を感じるわ…」

「そうかな?まぁ私も陰で努力してますから」

 

(お姉ちゃんがそれ言うのはおかしいでしょ…私の記憶が確かなら、施設の頃から外見変わってないと思うんだけど)

 

 私がもやっとする心を静めている間にお互いに体を洗い終わり、お姉ちゃんと一緒に湯船へと浸かった。

 

(よし、とりあえず話は決まった。このエモエモトークでお姉ちゃんの心を…)

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんにはさ、私がアイドルになった理由って言ってなかったよね」

「突然何よ…『何かおもしろそうだしお金いっぱいもらえるからー』とか言ってたけど、あれはやっぱり嘘だったの?」

「あはははっ、そんなこと言ったかも」

 

 それはアイと風呂に入っている時のことだった。

俺は次の曇らせに向けて、アイをとことん甘やかすことにしていた。特大の幸福を与えたところで『死』という抗いようのない特大の絶望を与える。このギャップがry

 ようするに1回目と同じだ。これが1番早いと思います。

 

「本当の理由はさ、ちょっと恥ずかしくて言えなかったんだよね」

 

「私はさ、お姉ちゃんみたいになりたかったんだ」

「私みたいに?」

 

 突然何を言い出すんだこの妹は…?

いや、いつも通りか。

 

「私は噓ばっかりの人間だからさ、自分でも何が本当で何が嘘なのか、わけわかんなくなってたんだ。こんな自分が誰かに愛されたり、誰かを愛するようなことは一生ないだろうって、そう思ってた」

「そんな何もかも嫌になってる時に、お姉ちゃんと出会った。お姉ちゃんは可愛げのない私にもまっすぐ向き合ってくれた。優しくて、抱きしめてくれて、些細なことでも褒めてくれて、でも怒るときは私の目を見て怒ってくれた」

 

 あの頃のことは覚えている。当時のアイは『私がこの世で一番不幸』みたいな面をしていて、見ていて俺はイライラしていた。

 だから、前世の記憶が戻ってから決めた『推しの曇らせ』を見るための過程として、アイをとことん甘やかそうと思った。今と同じだな。

 

「施設で暮らすようになって私、ようやくわかったんだ。あぁ、これが誰かに愛されることなんだ…って」

 

 どうやら俺の演技に完璧に騙されていたようだな。さすがはチート能力だぜ!

 

「でも私、愛されることはわかっても、愛することはわからなかった。私もお姉ちゃんを愛してあげたいのに…これじゃあ貰ってばかりで、どうすればいいのか悩んでた」

「そんな時に社長にスカウトされて、その時言われたの。嘘でも、『愛してる』って言い続ければそれがいつか本当になるんじゃないかって」

 

………。

 

「だから私はアイドルになったの。アイドルになって、たくさんの人に『愛してる』って言い続ける。そうしていつか、本当の意味で人を愛することが出来るようになったら、今まで愛された分だけお姉ちゃんに愛を返したいなって」

「子供を作ったのは、子供を愛せるようになれば、もっとお姉ちゃんに近づけるんじゃないかって思ったから…あっ、ちゃんとあの子たちのことは親として愛してるよ(お姉ちゃんとの子供ってことすれば事実上の夫婦になれるんじゃないかって考えはあったけど)」

 

……。

 

「だから、その…今のタイミングで言うのは変なんだけど…うん。言える時に言っとかないとね」

 

…。

 

「お姉ちゃん……」

 

 

 

 

「愛してる」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「…」

 

 お姉ちゃんが無言で俯いたまま、お風呂には静かな時間が流れていた。

 

(し、失敗した!?いつものお姉ちゃんなら『私も愛してるわ』って言って頭を撫でてくれるパターンのはず…)

 

 この話は実のところ、いつかお姉ちゃんに言おうと思っていたことだ。私はいつも嘘ついてばかりだから、せめてこういう時は嘘偽りのない本当の気持ちを伝えたかった。

 

…あの子たちには本当に感謝しなくちゃいけない。アクアとルビーを産んでから、私は二人を育てるうちに心からの『愛してる』を言えるようになった。やっぱり母親になったのは間違いじゃなかった。

 本当は最初にお姉ちゃんに伝えたかったけど、どうにも勇気がなくて今までうだうだしていた私を見たアクアとルビーが、私の背中を押してくれたのだ。

 

『言葉で言わないと伯母さんに伝わらないと思う』とアクアが。

『伯母さんは体よりも言葉責めの方が効くと思う』とルビーが。

 

…その通りだ。私は肉体的なスキンシップばかりだから、お姉ちゃんには言葉できちんと気持ちを伝えた方が良いのだろう。恋愛でも天才的な才能を発揮した子供たちをいっぱいよしよしして、『愛してる』を伝えた。

 

 

だから今日は気合を入れたし…もしかしたら生涯で一番勇気を出したかもしれない。

手ごたえはあったと思うんだけど…

 

「…」

「お姉ちゃん?」

 

 そっとお姉ちゃんの顔を覗き込もうとする。

 

「…ちょっとのぼせたかも…えぇと…なんだっけ…?」

「だ、大丈夫?」

「ごめんなさい。先に上がって休んでるわ」

「あ、うん…」

 

 そのままお姉ちゃんはさっさと上がってしまった。

 

(わ、私の勇気はいったい…)

 

…だめだ。また同じこと言うなんて無理だよ。アクア、ルビー、情けないママでごめんね…

それにしても―――

 

(気のせい…だったのかな…?)

 

 

お姉ちゃん泣いてたような―――

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

(俺はいつからこうなっちまったんだ…?)

 

 アイの話を聞いてから、俺の心は滅茶苦茶だった。

あの話はアイの嘘偽りのない本心だ。俺にはわかる。伊達にお姉ちゃんやってたわけじゃない。

以前の俺なら、『こいつはよく騙されてくれるなぁ』とか内心で茶化して終わってたはずだ。

 

…でも今は違う。

アイがこれほど自分を想ってくれていたことがわかって…いや、アイの気持ちはとっくの昔にわかっていたんだ。でも俺は誰かに愛してもらえるような人間じゃないんだ。

 

 

 俺は推しの曇らせを見るのが好きだ。

でもそれは二次元の話なんだ。現実となったこの世界で、自分の死を使って誰かを不幸にするなんて、やっていいことじゃないんだ。

 

 俺にはそれが出来る。出来てしまう。俺はそんな屑野郎で、でも幸せだからよかったんだ。

 

 これから俺が決行する計画で、きっとアイは悲しむし、絶望した顔を俺に見せてくれるはずだ。その顔を想像しただけで俺は……喜べるのか…?満足して死ねるのか…?

 

 

(わからない…いつから俺はこんな半端な糞野郎になっちまったんだ)

 

 

 

 あの時だってそうだ。

アイとストーカーの間に割って入った時、俺ならナイフを致命的な箇所に刺すことが出来たはずだ。そうすれば手当も間に合わずに死んだだろう。なのになぜそうしなかったのか。

 

生きたいと…思ってしまったのだろうか。

 

アイに出会ってから今までの人生を、俺は楽しんでいたのか…

 

(きっと、この世界に長く居すぎてしまったんだな…)

 

 

 

 

 

「ちょっと(すず)?あなた髪も拭かないで何してるの?」

 

 リビングの椅子の上でぼけっとしている俺に、ミヤコさんが声をかけて来た。

 

「ごめんなさい。ちょっとのぼせちゃって…」

「もう。姉妹でおしゃべりするのはいいけど、体調には気を付けてよ?今は事務所も忙しいし、あの子たちの世話はあなたに任せてるんだから」

 

 口調とは裏腹に、ミヤコさんは片手に水のペットボトルと、もう片手にはタオルを持っている。

今気づいたような態度だが、恐らくさっき見かけて準備してくれたんだろう。この人根っこはいい人なんだよな。

 

「ありがとうございます…あの、ミヤコさん」

「なによ?」

「妹のこと、よろしくお願いします」

「ちょっ、急に何よ!?」

「いえ、なんとなく…」

 

 困惑した様子のミヤコさんだったが、すぐに呆れたような顔をした。

 

 

「はぁ…別にあなたに言われなくともアイの面倒は見るわよ。ていうか、現場では私がマネージャーとしてずっと面倒見てるんだから、今更言うことじゃないでしょうに」

 

『落ち着いたら髪乾かしてとっとと寝なさい』

 

なんて言いながら自室に戻っていくミヤコさんの背を見送り、俺は決意を新たにした。

 

 

一か月後。

この世界での俺の28歳の誕生日。その日で最期だ。

 

 

 




・オリ主
 名前を出すといいつつ愛称しか出なかった人。
前世の知識しかなかったので、精神年齢は割と年相応だった。なので両親の死を目の前で見てからはメンタルボロボロ。
普通に振る舞うことが出来なくなったので、表向きは死んだ母親の性格を真似することで誤魔化している。

アイと出会ってからは前世の記憶が戻ったが、前世と今世で人格が分かれた。
そこからは『推しの曇らせを見たいという前世の自分』と、『死んで両親の元へ行きたいという今世の自分』の目的がある程度合致したので何とか生きてこれた。

アイ達と暮らすうちに今世の自分が生きる希望を持ってしまったので、思考と行動に食い違いが起きるようになっている。

今世の名前は白根 小鈴(しろね こすず)。愛称は鈴。
小白根をどうしても名前に入れたかった。順番おかしいけど。




・星野アイ
 勇気を出して告白したらメンタルに止めをさした人。




なんでこんな七面倒臭い設定にしてしまったのでしょうか。
やっぱり勢いで書くのはよくないんですね。

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