ts転生オリ主がやらかした話   作:ヤンデレ好き

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長期的に見ればみんな幸せエンドです。


ハッピーエンド②『幸福は作れる』

 

 

 

 

☆月□日(晴れ)

 

今日から日記をつけることになった。

まずは自分のプロフィールから書いておこう。

 

私の名前は白根小鈴。年齢は今年で31歳。

大学を卒業してからはとある夫婦の家で暮らしており、そこで双子の子供のお世話や家事炊事をやっていたようだ。家政婦さんみたいなものだろうか。

 

27歳の時に私は質の悪いストーカーに刺されたことがあるらしく、お腹を中心に体のいくつかに傷が残っている。相当深い傷だったのだろうか。怖い。

28歳の誕生日、私は突然倒れてしまったらしい。心筋梗塞だったようだ。怖い。

一時期は心臓も呼吸も止まり、もう助からないと思われたそうだが、なぜか蘇生した。医者は色々調べたそうだけど原因はわからなかったようだ。怖い。

 

あ、そろそろ時間だ。

 

 

 

〇月▽日(晴れ)

 

とりあえず前回の続きから書こう。

 

私は命こそ助かったものの、3年近く目を覚まさなかった。どうしてそうなったかはわからないけど、今の私に記憶がないことが関係あるのかもしれない。

 

私には記憶がない。

正確にはエピソード記憶という、自分が今まで経験してきた記憶のほとんどがない。

 

病院で色々試したけど、結局記憶は少しも戻らなかった。

そのあとは、私を迎えに来てくれた人たち…斎藤夫婦と一緒に彼らの家に行くことになった。

私さえよければ、以前と同じように一緒に暮らさないかと言われた。私には身寄りも行くところもなかったし、正直とてもありがたかった。

 

その家には

 

 

 

 

□月△日(曇り)

 

変なところで終わってしまった。

 

斎藤夫婦の家には双子の子供と、そのお母さんである星野さんという女性がいた。

随分若々しい母親だけど、彼女とは私が施設にいた頃から姉妹のように仲良くしていた間柄らしい。

最初に抱き着かれた時は驚いたけど、話している内に興奮は収まった。どうやら以前の私と今の私は全然違うようだ。

 

以前の私はいつもニコニコしていて、喋り方も優しくて、誰とでもすぐ打ち解ける優しい女性…だったらしい。信じられない。

今の私は表情が作れない。いつも無表情だ。喋り方もぶっきらぼうで、人見知りなので話すことがそもそも苦手だ。

 

一応、家事のやり方なんかはわかるけど、私にとってこの家の人は全員知らない他人だ。みんな凄く優しいし、子供は可愛い…でも、こんな私がやっていけるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月◆日(雨)

 

この家を出よう。

 

 

 

 

 

 

●月☆日(晴れ)

 

交渉は大変だった。

私は今、アパートで一人暮らしをしている。

 

 

あの家での暮らしが悪いものだったわけではない。

むしろ、仕事量に反して安定した生活だっただろう。でもだめだ。

 

私には家事しかやることがないのに、奥さんはことあるごとに手伝ってくるので私のやることは少なかった。子供たちの世話も、子供たちがすごく賢いのでやることがない。まだ小学1年生なのにほとんど自立している。

星野さんは…この人の態度が一番キツイ。たまに私を『お姉ちゃん』と呼んでくるのだが、私はそれにすぐ反応することが出来ない。まだ自分が星野さんの姉であるという自覚がないのだ。

私が返事をしないと不機嫌になるし、でもそのあと悲し気な顔をして謝ってくる。

 

特に、ふと気づいた時に向けて来るあの目。あの目が嫌だった。

失望したような、諦めたような目。

別に星野さんだけじゃない、他の人たちも大なり小なりあの目を向けて来る。

 

私は耐えられなかった。

 

家主である斎藤壱護さんに土下座して頼み込み、少ない荷物を持って家を出た。

 

幸いそれなりの貯蓄があったので、しばらくの間は安いホテルで寝泊まりし、今のアパートが見つかった後はそちらに移り住んだ。

手続きのやり方は何とかわかった。経験した記憶はないけど、物事の意味や方法なんかは大体理解している。なくなったのが経験した記憶だけで本当によかった。

 

 

 

 

?月〇日(曇り)

 

あの家を出てから数か月。

私は近くのスーパーでパートをしながら暮らしている。

 

貯蓄がかなりあったので金銭的には余裕があったけど、収入がないのはやはり不安だったし、何もしてないのが落ち着かなくて働くことにした。

以前の私は欲がなかったんだろうか。私物も少なかったし。

 

仕事も…元々要領がよかったのか、すぐに慣れたので今は安定した生活を送れている。このまま静かに暮らせていけたらいいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★月◆日(雨)

 

あれからもう2年が経つ。この日記も何冊目だろうか。

 

私は静かで安定した生活を送れている。

記憶は戻らないけど、もう諦めた。別になくても困らないから。

 

時間のある日は図書館に行って本を読んでいる。

私の体は何だか不思議なもので、自分が知ったものならそれを完璧に近い形でこなすことが出来た。たとえ実際にやったことがなくとも、知識さえあれば良い。才能なのだろうか。

 

図書館に通っているのは、お金をかけないで知識を蓄える方法として一番良いと思ったからだ。ネットの知識は嘘か本当かを見分けるのが大変だったから。

 

 

それと、めでたいことに私に恋人が出来た。

 

相手はごく一般的な会社員の男性で、歳は私と同じ。郊外にある一軒家に一人暮らしをしているらしい。図書館でちょくちょく会うことがあって、話すうちに気が合ってそのまま付き合うことになった。

 

相手の男性は私と似ていた。

激しい喜びはいらない。そのかわり深い絶望もない。植物の心のような平穏な人生を望んでいると。

綺麗な手が好き、というちょっと変わったところがあるけど、それ以外はごくごく良識的な人だ。

 

付き合い始めてから一か月。

今夜は彼が初めてうちに来る日だ。

大した飾り気もない普通のアパートの一室だけど、出来るだけ綺麗にして準備している。

心の準備も…

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ピンポーン、と。呼び鈴が鳴る音がしたので、女性は慌てたように玄関へ駆けていく。

 

「はーい!」

 

恋人でも来たのだろうか。

女性はいつもは無表情な顔だが、今は少しだけ嬉しそうに口角が上がっている。頬も薄っすらと赤くなっていて、誰が見ても嬉しそうなのがわかる。

 

「今開けるね」

 

女性は不用心にも、覗き穴も確認せずドアを開いた。浮かれていたのだろう。

 

「?…あれ?」

 

ドアを開けた先には誰もいない。

不思議に思ってそのまま女性は外に出たが、開いたドアの陰にいた人物に気づかなかった。

 

「今誰か―――」

 

そこで女性の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「アクア、ルビー、行ってらっしゃい。車には気を付けるんだよ?」

「はーい!行ってきまーす!」

「行ってきます」

 

子供たちを見送ってから、社長達に声をかける。

 

「それじゃ、私もちょっと出かけて来るね」

「おぅ…何も聞く気はねぇが、くれぐれも問題は起こすなよ」

 

社長が釘を刺してくる…もしかして感づかれてるかなぁ。でも深く聞いてこないあたり、本当に親切心で注意しているだけか、もしくは全て知ったうえで黙っていてくれてるのか。

 

私はそのままタクシーに乗りこみ、ある程度進んだ後は途中で友達の運転する車に乗り換えて目的地へ向かう。彼は元々運転手をしていたらしく、腕がいいのか乗り心地は良い。寡黙なのでこちらから話しかけないと会話が発生しないのがちょっと問題だけど。まぁ、別に話すことなんてないんだけどね。

 

 

目的地の一軒家についた。

この豪邸を買うのは苦労した。アイドルとして、女優として、タレントとして様々な仕事に出て大金を稼げるようになった私でも簡単には購入できなかった。コネを広げておいて本当によかったと思ってる。

 

この豪邸には地下室がある。

元々はそれほど広くはなかったんだけど、友達に頼んで色々と改造してもらった。

防音で空調完備、外部と遮断されても半年は暮らしていけるだけの食料などの備蓄もある。

壁も頑丈だし、セキュリティも万全…一種のシェルターと言ってもいい。

 

この地下室では今現在、ある一人の人間だけが暮らしている。

 

私は上の階で監視カメラから下の様子を確認した後、問題ないと判断して下へと降りて行った。

 

 

女性は私が部屋に入ると、読んでいた本を置いてこちらへ顔を向けた。

 

「アイ、いらっしゃい。今日も来てくれて嬉しいわ」

「…うん。鈴は今日は何してたの?」

 

しばらくは私の仕事の話や、お姉ちゃんが読んでいた本の話なんかで時間が過ぎていく。

 

…うーん。1年だとこんなもんか。

私は部屋を出ようとする。

 

「それじゃ鈴、また来るからね」

「…あ、あの…」

「うん?なに?」

「そろそろ私も出たいなぁって…ほ、ほらっ、アクアくんとルビーちゃんにも久しぶりに会いたいし」

 

私は考え込むようにしてあごに指を当てた。

 

「そうだなぁ……」

「…っ」

 

期待の目を向けて来るお姉ちゃんに対して、しかし私は首を横に振った。

 

「まだダ~メ♪」

「へっ…ど、どうして?」

 

「鈴はアクアとルビーは呼び捨てって何度も言ってるよね?」

「あっ、そ、そうだったわね」

「それにさ」

 

私はお姉ちゃんの顔を指さした。

 

「鈴はそんな引き攣った笑顔じゃないんだよねぇ。コレジャナイ感がすごいっていうかさ」

「っ!ご、ごめんなさい…私、もっと頑張るから…頑張るから…」

「いいよ」

 

私は俯くお姉ちゃんを優しく抱きしめた。

 

「時間はまだあるから、ゆっくりいこう。焦らなくていいから…ね?」

「…ありがとう、アイ」

 

 

私はお姉ちゃんと別れたあと、上の階で友達と話し合う。ここにいるのは精神医療などの人の心に関するスペシャリストたちだ。中には裏でヤバいことやってるような黒い経歴の人もいる。

 

「1年でコレってどう思う?このまま続けて大丈夫かな?」

 

「そうですね…一番確実な方法ではあったんですが、やはり時間はかかりますね」

 

「私はやはり、強引にでも進めた方がいいと思いますよ。アイさんもいち早く元の生活を取り戻されたいでしょうし」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 お姉ちゃんが倒れたあの日。

病院でお姉ちゃんが息を吹き返したところまではよかった。私を筆頭にみんな喜んだし、きっとそのうち目を覚まして、すぐに元の生活に戻れると思った。

 

 でも、お姉ちゃんはすぐには目を覚まさなくて、3年も経ってからようやく意識を取り戻した。

時間はかかったけど、これで全ては元通り…とはいかなかった。

 

 お姉ちゃんは記憶喪失になっていた。

私たちと過ごした日々を失っていて、性格や態度、口調も何もかも別人のようだった。

それでも何とか一緒に生活していけば、いつかは記憶が戻るんじゃないか、って淡い期待を抱いていた。

 

 なのに、お姉ちゃんは家を出て行った。

社長が聞いた話では、お姉ちゃんは私たちと暮らすことに精神的なストレスを感じていたらしく、とうとう耐え切れなくなったのだという。罪悪感もあったようだが、私はショックでそれどころではなかった。

 

 

 それから私は多くの友達に頼み込んで、お姉ちゃんの居場所を探し当て、監…見守ることにした。

日々のお姉ちゃんの暮らしを報告として聞きながら、私はただひとつのことを願い、どうすればそれが叶うのかを考え続けた。

 

(またあの頃に戻りたい。一緒にみんなで笑顔で暮らしていたあの頃に)

 

 どうすればいい?それなりに一緒に暮らしたけど、お姉ちゃんの記憶はまったく戻らなかった。今も報告の内容を聞く限りは特に変化はない様子だ。

 このまま見守り続けて、いつか記憶が戻ることに期待する?それはいつまで?どれくらい?

 

考えて、考えて、考え続けて……私は閃いた。

 

 

(お姉ちゃんを作ればいいんだ!)

 

 

 目標を決めてから、私は精力的に行動した。

お金も人手も足りないので、とにかく仕事、仕事、仕事の毎日だ。

社長達は、実質的にお姉ちゃんを失った私が仕事に打ち込むことで悲しさを紛らわせている…と思ったようで、以前よりも一層私の仕事をサポートしてくれた。

 アクアとルビーに接する機会は減ってしまった。覚悟はしていたことだけど、正直悲しかったし申し訳ないと思ってる。その分少ない機会にはたくさん甘やかすことにしたけど、子供たちもそんなダメな母親を許してくれた。この子たちには本当に助けられてばっかりだな…

 

 

 そうして紆余曲折ありつつも、入念な準備をしてこの地下室にお姉ちゃんを招いてから1年。

 

 来たばかりの頃よりはだいぶ昔に近づいたけど、まだまだぎこちない。さっきの感じだと知識もちょっと危ういだろうし、一緒に暮らすのは当分先かな。

 

 でもいい加減、私も待ってられないし、少し強引な手段を取ろうと思ってる。

 

 洗脳や暗示、薬を併用したマインドコントロール。方法はたくさんある。ここには専門家がいっぱいいるからね、いつでもどれでもOKだ。

 

…一回今の精神を完全に壊して、文字通りまっさらな状態にしてから『お姉ちゃんを作り直す』ことも検討している。まぁこれは最終手段だけど。

 

 ちなみに、お姉ちゃんには私とは本当は恋人関係だったと刷り込んで、二人っきりの時は呼び捨てで呼んでいた、ということにしている。

 お互い名前で呼び合った方が恋人らしさがあっていいからね。

 

 

(待っててね、お姉ちゃん…全部元に戻ったら、また一緒に暮らそう…今度は恋人として)

 

 

私は幸福な未来を想像しながら、愛しい子供たちのいる家に向かった。

 

 

 




・白根小鈴(オリ主)
 幸せになった人。
記憶喪失中の性格は死んだ母親を演じていない今世の素の性格。内気でコミュ障気味。
以前の自分と親しかった人たちには申し訳ないと思いながらも、精神的に耐えられなくて逃亡。
平穏でそれなりに幸せな生活をしており、恋人も出来て順調順調……と思ったら地獄に引きずり込まれた。
体はほとんど鍛えておらず、精神的にも闘争に向いていなので糞雑魚。アイキドーは見る影もない。

そのうち再び『お姉ちゃん』としてアイたちと暮らすようになる。
頻繁に病院(?)に行かなきゃないし、なんか知らん薬を常飲してるけど概ね昔と変わらない状態になる。

アイと恋人関係になって毎日イチャイチャしてるので幸せ。
少なくとも本人はそう思い込んでいる。


・星野アイ
 幸せになった人。
『やっぱり私って天才だな~』とか思いながら計画を練った。すごく頑張った。
基本的には姉とイチャイチャしながら幸福な生活を送ることになるが、ちょくちょく解釈違いを起こして姉を調教する。

『お姉ちゃんはね、怒るときは怒るし、卵焼きは甘口が好きだし、もっと慈愛に満ち溢れた笑顔じゃなきゃいけないの』


・手フェチな一般会社員男性
 スタンド能力は持っていないし、殺人鬼でもない。ちょっと変わった性癖があるだけのそっくりさん。
恋人の家へ向かう途中に消息不明となった。
家族もおらず、天涯孤独の身だったので誰からも探されることはなく、ひっそりとこの世から去った。




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