いや、にわかじゃない知識とかないんですけどね。
今日でゴールデンウィークも終わりなので、更新頻度は下がると思います。
基本不定期です。何時に更新するかもわかりません。
とうとうこの日が来た。
待ちに待った俺の誕生日…そして俺の命日になる日である。
先月は何だか血迷っておかしな考えをした気がするが、あれは気のせいだろう。俺が曇らせにかける情熱は心を燃やした炭〇郎にだって負けてないはずだ。
今日は平日だってのに、アイも社長達も時間を作って身内だけの誕生日会を開いてくれている。俺の推しはアイだが、この分なら身内全員の曇らせを見ることが出来るかもしれない。なんてめでたい日なんだ…
「誕生日おめでとう鈴ちゃん。去年は大変なこともあったけどよ、あんなことは早々起こることじゃねぇし、次は起こさせるつもりはねぇ…これからも、アイのことを頼むな」
「私からもお願いするわ…あなたさえよかったら、アクアとルビーが大きくなったあとも、うちで働くつもりはない?」
「おぉ、いいな!ミヤコも最近は現場に出ずっぱりだしで中々家のことをする時間もとれないし、どうだ?」
だが断る……と言ってもいいが、どうせ今日で終わる身だ。あえて期待を残す感じの返答をして跡を滅茶苦茶に濁しまくって逝くか。
「すごくありがたいです。お二人に言われなかったら私から頼み込むところでした…こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
「これからもよろしくねぇ(専属家政婦ゲット!)」
「おぅ!よろしくな(鈴ちゃんがいるとミヤコの機嫌がいいんだよな)」
上機嫌に酒盛りを始めてしまった二人を一旦放置すると、今度はルビーがすたたたっと駆けて来てそのまま胸に飛び込んできた。
「伯母さんずっといるの!?」
「えぇ、ルビーはどう?嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ!私も一緒にいたいもん!(ママと毎日イチャイチャして尊みを供給して!)」
「ありがとう…アクアはどう?」
ルビーに遅れてアクアが歩いてきた。相変わらずクールぶってるけど、最近はルビーと一緒にテレビの前でオタ芸やったりしてはっちゃけているのを知っている。本性を隠さなくなってきたな…
「僕も嬉しいよ。でも伯母さんはいいの?」
「?」
「ほら、伯母さんもいい歳だし、結婚とかしたいんじゃないかなって。家にいる時間が長いから出会いも少ないし」
…こいつ最近遠慮がなくなってきたんだよな。ストレス解消に揶揄いすぎただろうか。
「いいのよ。アイとあなたたちの幸せを近くで見ることが一番の幸せだから。結婚は…まぁいつかね」
「ふーん(本心かな…結婚への意欲は低いのかな。後でアイに伝えておこう)」
アクアがギリギリ回避できる速度で腕を伸ばして抱きしめようとする、という遊びで時間を潰しているとアイがやってきた。
「あー!社長たちもう飲んでる!私の分はー?」
「お前が遅いのが悪い。ってか誰だよ相手は?男じゃないだろうな?」
アイはさっき知り合いから電話が来たとかで長電話をしていたのだ。
苦笑いをしながらアイは答えた。
「違うよ…ほら、最近新しい娘が何人か入ったでしょ?その娘たちからお祝いの電話」
「あぁ、新人が担当してる娘たちね」
苺プロダクションは凄まじいスピードで規模を拡大しており、それに伴って人員の追加も行われている。新人というのは社長が新しく拾って来たマネージャーで、これまた新しくスカウトした新人アイドルたちの担当を任されている男だ。
新人にしてはかなり優秀ということで、ミヤコさんが珍しく褒めちぎっていたのを覚えている。しかし、見た目が少々怖いのと寡黙なのがネックらしい。俺はまだ見たことはないが。
しかし、新人アイドルか…まぁB小町もアイ以外のメンバーもよく活躍しているが、そろそろアイドル活動を続けるのを考える年齢だ。新人アイドルはB小町の後継者たち、といったところか。
社長はこれから経営に専念することになるし、ミヤコさんはB小町専属のマネージャー兼社長夫人として忙しくなる。
まぁ、俺には関係ないですけどね!わりぃ、俺死ぬわ。
「なんだか申し訳ないわね、私その娘たちと会ったこともないのに」
「リーダーの娘が律儀な性格なんだよねぇ。私からお礼言っといたから、お姉ちゃんは気にしないで」
「ありがとう」
アイは疲れてへばっていたアクアを抱え上げ、ソファーに座っている私の隣に座った。
「それじゃ、お姉ちゃん。改めまして、誕生日おめでとう」
「…ありがとう。これからもよろしくね、アイ」
大人組と一緒にお酒を飲んで。ミヤコさんとアイが作ってくれた料理を食べたり、アクアとルビーに食べさせたり。以前に撮った二人の運動会のビデオを見返しながら、社長が買ってきたケーキを食べたり。
(これが最期の晩餐ってやつか…)
俺は感慨に浸りながら、ベランダで一人涼んでいた。
俺がこれからやろうとしている第三次曇らせ計画の準備はすでに終了している。
すこし前に死なない程度に試してみたが、問題なさそうだったので100%逝けるだろう。急に病院に連れていかれた時は驚いたが、その時もなんとか誤魔化すことが出来た。
方法は簡…いや超むずいわ。俺のチート能力でもこれをやるのはかなり大変だった。
ずばり、肉体操作を究めることで、体の内部…体内を操作するものだ。特に血液や血管を操作する。
冠動脈を物理的に閉じて、心筋を酸素不足にする。すると心筋梗塞が起きるわけだ…たぶん。
うまくいけば心臓は停止し、当然ながら呼吸も止まる。
もちろん、俺の予想が正しければみんなで応急処置を施して救急車が来るまでの時間を稼ごうとするだろうが、処置に対して俺が体内を操作して抵抗することでこの場で絶対に死ぬことが出来る。
やり方は違うが、ようはスタープ〇チナで自分の心臓を止めた承〇郎、みたいなイメージだな。違う点としては、俺の場合はそのまま死んじゃうところかなっ。
(あとはタイミングだな…なんかこう、うまいことアイが第一発見者になる状況がいいんだが…)
◇◆◇
(うわ、二人とも酒くさ…起きた時吐かなきゃいいけど)
最近忙しかった反動か、社長とミヤコさんは飲みまくってソファーで酔いつぶれている。でも、私も今日は飲みすぎちゃったかも。
(先月は結局もう一度言うことが出来なかったし、今日こそはお姉ちゃんに想いを伝えよう)
本当は酔った勢いで…っていうのはよくないと思うんだけど、酔わないと言えないくらいには恥ずかしいんだよね。ライブでファンに『愛してる』っていうのとは次元が違うのだ。それなりに準備が必要。
社長たちは酔いつぶれてるし、アクアとルビーは私の膝の上でスヤスヤと寝息を立てている。私とお姉ちゃんしか起きていないこのタイミングしかない。
「お姉ちゃん」
「ん?どうしたの?」
キッチンで洗い物をしているお姉ちゃんに声をかける。
洗い物は私がやろうと思ってたけど、『これくらいは私にやらせて』とお姉ちゃんが譲らなかったので、仕方なくお願いしていた。今日くらいは私が全部やるのに…
「その、先月一緒にお風呂入ったときさ、お姉ちゃんがのぼせた日があったでしょ?」
「…そういえば、そんな日もあったわね。あの時はごめんね」
「あ、ううん。それはいいんだけど…お姉ちゃん、あの時の私の話覚えてないでしょ」
「あー…なんだったかしら。えぇとたしか、アイが私みたいになりたくてアイドルになった、とか言ってたような…」
(うわ、微妙に覚えてたんだ…すっごい恥ずかしいんだけど)
私は突然恥ずかしくなってしまって、寝ているアクアとルビーの顔を見ながら話すことにした。
今は蛇口から水が流れる音と、お姉ちゃんがお皿を洗う音しか聞こえない。
「その、改めて言おうと思って…私にとっては結構大事なことだからさ」
「…ふふ、はいはい。静かに聞いてまーす」
私は一旦深呼吸してから、もう一度想いを伝えるべく話し始めた。
「私は噓ばっかりの人間だから―――
(頼むから社長たちは起きないでよ、社長に聞かれたら絶対あとでいじられるんだから…)
「施設で暮らすようになって私―――
(よしよし、ルビーはそのまま…あれ、アクア起きてない?嘘でしょ…)
…まぁまぁまぁ、アクアはいい子だから、誰かに言いふらしたりないよね。大丈夫だよね。そのまま寝たふりしててね。
(女優業頑張ってきてよかった~、今のところ一回も噛まないで言えてるよ!)
そのまま一字一句、あの時と同じ言葉を伝える…ちょっと早口になった気がするけど、気のせい気のせい!
「だから、その…今のタイミングで言うのは変なんだけど…うん」
私はもう一度深呼吸をする。やっぱりこの言葉をお姉ちゃんに言うのは大変だ…
深呼吸している間のわずかな時間。私の耳には社長たちとルビーの静かな寝息と、蛇口から水が流れる音だけが聞こえた。
「言える時に言っとかない……と……?」
………あれ?
なにかおかしい…なにがおかしい…?
お姉ちゃんがお皿を洗う音が聞こえないこと?
お姉ちゃんってこんなに水を出しっぱなしにする人だっけ?
私が話しかけた時は、洗い物はもうほとんどなかった。
洗い終わってこっちに戻ってきてもおかしくない…わざわざ立ったまま聞いてくれてるの?
一つ一つは気にするようなことではなかったのかもしれない。もしかしたら私に気をつかって立ったまま聞いてくれてるのかもしれない…『静かに聞いてまーす』って言ってたし。
それでも私はなんだか胸騒ぎがして、キッチンに顔を向けた。
「お姉ちゃん…?」
…いない。キッチンにお姉ちゃんの姿が見えない。
そういえば、流れる水の音に紛れて、何か聞こえるような…
「お姉ちゃんっ?」
「…んん……?」
「アイ…?」
少し大きな声を出してしまった。
起きてしまったルビーと狸寝入りをやめたアクアをその場にいるよう伝えて、私は恐る恐るキッチンへと向かった。
「…」
心臓がバクバクいってる。こんなに緊張したのはいつ以来だろう…
(そうだ。ドーム公演の…あの時もこうだった。救急隊員の人が来るまでずっとこんな感じだったなぁ)
…しかしキッチンが遠い。リビングから歩けば数秒で着くのに、なぜだかやけに時間が遅く感じる。
(あ、この音わかった。誰かの声だ。声っていうか、唸り声っていうか…)
私は震える足を必死に進め、とうとうキッチンまでたどり着き、中を覗き込んだ。
「―――」
「あ……あ…い…」
そこには、苦し気に胸を抑え、床にうずくまる姉の姿があった。
◇◆◇
「お姉ちゃんっ!!!」
大きな声で呼びながら駆け寄って来るアイを見て、俺は内心の焦りを隠せなかった。
(あ、これ思ったよりヤバい。なんかいい感じのセリフ残そうと思ったのに声でねぇわ)
ブチャ〇ティごっこと煉〇さんごっこのどちらにしようか直前まで迷っていたんだが、いざ始めると激痛でそれどころではなかった。
やろうと思えば痛覚も切れるが、それをやってしまうと体内操作の精密性が著しく下がってしまう。体内のコントロールには集中力と感覚が必要なのだ。
なんかずっとアイが叫んでる…泣き叫んでるし、後ろの方でドタドタ音が聞こえる。誰かが起きたのだろうか。
とりあえず俺は目だけは閉じないよう、アイの顔だけを必死に視界に入れる。
あかん、他のみんなの曇らせも見たかったが、もうこれ耐えらんねぇわ。あっちょっと逝く♡
俺は最期に、推しの泣き顔を見ながら満足感で満たされていた。
(やっぱり…推しの曇らせは……最高だ…ぜ…)
・白根小鈴(オリ主)
条件付きで精密動作性:Aになる人。
曇らせ好きな方の人格は最高の満足とともに昇天した。
えっ、今世の人格?心臓止まってるし…
『死んだんじゃないの~☆』
・星野アイ
被害者その1(二回目)。
1年ぶり二回目の精神的大ダメージを受けた…ように見えるが?
・星野愛久愛海
2年連続で星野家のMVPを獲得した。
ファインプレーをしたが致命的なミスもした。本人は気づいてない。
必死だったからね、仕方ないね。
・星野瑠美衣
土壇場で母親譲りの才能を発揮した。たぶん無意識。
具体的にいうとどさくさ紛れにアクアを別名で呼んだりした。
返事があったのでほぼ確信してる。
・斎藤壱護&ミヤコ
爆睡してたらアクアとルビーにたたき起こされた。
さすがに酔いも吹っ飛んで色々頑張った。陰の功労者たち。