私は異常な性癖を持っていないし、みんな幸せハッピーエンドな作品が大好きです。
これだけははっきりと真実を伝えたかった。
それは出産を終えたアイが、双子とともに病院から社長宅に戻ってしばらくしたころ。
(今はいいけど、ママはそのうちアイドルに復帰する…よね)
ルビーは少し不安だった。ルビーは推しのアイドルの娘として再び生を受け、推しに四六時中オギャり放題という夢のような時間を過ごしてきた。
しかし、当然ながら母はアイドルとして仕事を再び始めるだろうし、社長は以前から仕事で忙しそうだ。
社長夫人であるミヤコも、そう頻繁に世話が出来るとは思えない。
(やっぱりベビーシッターとか雇うのかな…?)
母親の腕の中で考え事をしている内に、柄の悪そうな男性…苺プロダクションの社長である『斉藤 壱護』と、その妻である『斉藤 ミヤコ』がやってきた。
「さて、以前にも話したが、改めて今後のアイの活動について確認するぞ」
「復帰第一弾は明日の歌番組だ。生放送だが、体調は問題ないか?」
「もちろん!絶好調だよ!」
「よし」
アイに問題がないことを確認すると、社長は妻であるミヤコへ視線を向けた。
「子供の面倒はアイのお姉さんが住み込みでやってくれるが、あの人も赤ん坊の世話は経験が少ないそうだ。ミヤコはフォローしてやってくれ」
(お姉さん!?ママってお姉さんいたの!?)
ルビーの前世…天童寺さりなは重度のアイドルオタクで、推しであるアイに関してはもはや崇拝といってよい感情を抱いている。
なにせ、『アイに男なんているわけない。自分たちは処女受胎で産まれてきた』と本気で思っているのだ。アクアからは、『前世はアイ推しの相当ヤバいドルオタだったんだろう…こんなのが今世の妹なのか…』とか思われている。
…まぁ、前世のアクアも結構なファンだったので、あまり人のことは言えないのだが。
「それはまぁ、構いませんけど」
ミヤコは少し不安そうに話し始めた。
「社長とアイさんが信頼している人っていうのは知ってますけど、私まだ直接話したことないですし…」
ミヤコの不安は当然である。
赤ん坊の世話なんてしたことがないし、経験者が世話をしてくれるなら正直ありがたいことだ。将来的にはいつか自分も子供を作るかもしれないし、フォローするだけだったらいい経験になるだろう。
しかし、事前に顔合わせもしない状態で、初対面の人と一緒に赤ん坊の世話をするということで緊張している。ミヤコには社長夫人としての仕事もある。不在の時は双子の世話を完全に任せることになるし、どうしても不安が拭えなかった。
そんなミヤコに声をかけたのは、社長ではなくアイだった。
「大丈夫だよ!お姉ちゃん優しいし、家事もなんだって出来るし、むしろミヤコさんは楽出来ちゃうかもよ~?」
「そ、そうですか?」
「そうそう!私もお姉ちゃんの料理食べるの久しぶりだな~!楽しみー!」
「まぁ、お前の不安もわからなくはないが…アイほどじゃないが、俺もあの人とはそれなりに付き合いが長い。十分信頼できる人だよ」
「まぁ、お二人がそういうなら…」
…その日の夜。
熟睡している母に気づかれないよう、双子の兄妹はこそこそと話をしていた。
「…ねぇお兄ちゃん」
「あぁ、言いたいことはわかる。アイのお姉さんって人のことだろ」
「どんな人なんだろうね…ママのお姉さんってことは…あれ、なんて呼べばいいんだろ?」
「伯母さんでいいんじゃないか」
(伯母さんか…ママに似て可愛い人なのかな)
「話を聞いた感じ、たぶん血の繋がりはないんだろうな。アイって施設で育ってるはずだし」
「あ、それもそっか」
「なんにせよ、あの二人が信頼している人みたいだし、そんなに心配しなくても大丈夫だろ」
「べ、別に心配なんてしてないもん。私はママとの時間が減ることが残念だっただけ…!」
「いやまぁ、気持ちはわからなくもないが…お前はもうちょっと自重した方がいいんじゃないのか?」
「は?ママに甘えることは当然の権利なんだけど。なにもおかしなことはないよね」
「(こいつほんとヤバいな…)」
(私が心配しすぎなだけかな…ママが伯母さんの話をしてる時はすっごい嬉しそうにしてたし、案外お兄ちゃんの言う通りなんとかなるかも)
そんなこんなで翌日、ルビーは少しの期待と不安を残したまま、伯母さんと会うことになるのだが―――
◇◆◇
(そういう…ことだったんだ)
その時、星野ルビーはこの世の真理を知った。
(やっぱりママに男なんていなかった…!)
(伯母さんとママの間に産まれたのが私たちだったんだ!!)
ママは『二人』いたっ!
兄であるアクアがミルクを飲まされている間、ルビーはいつにもましてアホなことを考えていた。
◇◆◇
アイが生放送の番組に出演する日の午前。その女性はやってきた。社長と親し気に話し、初対面であるミヤコともあっという間に打ち解けている。年齢が近いのもあるだろうか。
アイとはひと悶着あったが…
「お姉ちゃんどうどう!?うちの子見てよ!」
アイは双子を抱きかかえながら、姉に対して宝物を自慢するように話し始めた。
「お兄ちゃんの方はアクアマリンで、妹の方はルビーっていうの!この可愛さヤバいよね~!夜泣きもほとんどしないし、すっごく素直だし。いや~私も子育てってちょっと不安だったけど、案外なんとかなるもんだね~!それにほら、髪の色はお姉ちゃんと似てて顔立ちは私と似てるし……ねっ、なんだかこうして見ると、私とお姉ちゃんの「アイ」えっ、なに?」「座りなさい」」
「ちょっとそこに座りなさい。正座で」
女性は床を指さした。マットも敷いていないフローリングの固い床である。
「ど、どうしたのお姉ち「いいから座りなさい」う、うん…」
「…アイが、私に妊娠したことを電話で伝えてきたときのことは、今でもよく覚えているわ」
「どうして妊娠中期を過ぎてから報告したのかとか、そもそも相手は誰?とか、本当にその名前でいいの?とか、いろいろ疑問はあったけど…あなたが不安そうに話すから、とりあえずは聞かないでおこうと思った」
「そ、そうなの!不安だったのは本当だから、お姉ちゃんが話を聞いてくれて嬉し「でもね」あっはい」
「なんで入院してる病院教えてくれなかったのよ。身の回りのお世話、全部斎藤さんに任せっきりにして…教えてくれればすぐに行ったのに」
「それは…その…」
「…まぁ、人気アイドルだもんね。情報漏洩とか、いろいろと事情はあったんでしょうけど」
「あぁいや、その辺を指示したのは俺なんだ…あんまりアイを責めないでやってくれ…」
「社長…」
思わず社長がフォローする。
実のところ、目の前の女性は信頼できる人物なので、情報漏洩に関しては心配していない。社長としては、病院に来てアイの世話を手伝ってくれるなら大歓迎だったのだが…アイが『お姉ちゃんには迷惑をかけたくない』と言うから、呼ばなかったのである。
しかし結局、アイが仕事中の育児に関して斎藤夫妻は不安だったので、ダメもとで応援要請したところ、本人が非常に乗り気だったので、きちんと給料を払って雇う形になったのだ。
「はぁ…」
「…」
アイは怒られた小さな子供のように、顔を俯かせていたが…
「っ…!」
「よく頑張ったわね」
俯いたアイを、女性は優しく抱きしめていた。
「あなたも大変だっただろうし、もう何も聞かないわよ…その代わり、これからは困ったことがあったら、なんでも相談すること、いいわね?」
「…う、うん」
「血の繋がりはなくとも、私はあなたのお姉ちゃんなんだから…」
「…ありがとう」
◇◆◇
―――と、ここまではよかったのだ。
麗しの姉妹愛にアクアとルビーは尊みを感じていたし、伯母さんが普通にいい人そうで安心していた。
さて、社長とアイが仕事で出かけた後。
初日ということで、情報交換も兼ねてミヤコと伯母さんが世間話をしていた頃。
(いい人なのはわかったけど…ママが不在の間の私を満足させてくれるのかどうか、それが問題よね)
アイの子供に転生してから、今まではほぼ四六時中アイが傍にいて世話をしてくれていた。推しにお世話をされている時間はルビーにとって至福の時間だった。だからこそ、これからアイが仕事に復帰して、アイドルとして活躍が増えれば一緒にいられる時間が減っていくことになる。
推しが活躍するのは大歓迎だし、様々な番組でアイの躍進を見れるのは素晴らしいことである。
しかし、それはそれ、これはこれ。
「そろそろあの子たちもお腹が空く時間ですかねぇ」
「え、わかるんですか?」
「敬語なんていいですよ。ミヤコさんは社長夫人で、私は雇われの立場なんですから」
「そ、そう?」
「えぇ。私のことはメイドみたいなものだと思って、なんでも仰ってください……さすがに施設に赤ちゃんはいませんでしたけど、ご近所さんで赤ちゃんのお世話を手伝ったことが何度かあるので、そのおかげですかね」
(よし、ここは…)
「あう…あーうー」
ルビーは声を上げながら手足をぱたぱたさせる。
「あら、やっぱりミルクが欲しいみたいですね」
「えぇっと…じゃあ、私はミルク作るから、相手してもらっていいかしら?」
「わかりました」
ルビーの元に来た伯母さんは、ごく自然にルビーを抱え上げた。
「ルビーちゃん、もうちょっと待っててね~」
(え、なに今の動き…抱え方もうまいし…)
「あうう…ふえぇぇええええ!」
「あらあら…」
(あやすのはどうかな…ちょっと試してみよ)
◇◆◇
(この俺を試すつもりか…面白い)
…斎藤社長に伝えていたことは嘘ではない。
俺が施設にいた頃は小さい子の世話なんて毎日していたが、さすがに赤ちゃんはいなかった。ご近所でやらせてもらったのも、ほんのちょっとした手伝い程度。ほぼ見ているだけだったので、育児経験豊富だなんて口が裂けても言えない。
だが
(今世の俺の体は、俺が望む通りの動きをしてくれる。条件はあるがな)
発揮できるパフォーマンスのレベルは俺の知識量によってある程度上下する。まったく知らないことには最低限の動きしか出来なくなるし、逆によく知っていることなら経験がなくとも熟練した動きをすることが出来る。
ちなみに、デタラメな知識や明らかに間違った知識を取り入れてしまうと、大概の場合はうまく動けずに失敗してしまう。情報の取捨選択が重要なのだ。
…しかし時折、奇跡的(あるいは致命的)なバグが起きて、よくわからんが成功してしまうときがある。なんちゃってアイキドーはそれの産物である。
(施設にいた頃から勉強しまくって培った育児の知識はあるが…相手が生きた赤ん坊である以上、これを理想通りに出力するのは本来なら難しい)
俺の体が理想的に動いたとしても、相手が理想的な反応を返してくれるかはわからない。赤ちゃんならなおさら…だが相手の中身は前世持ちの転生者で、普通の赤ちゃんと違って理性を持っている分動きが予測できる…そして…!!
(なんちゃってアイキドーを応用して、赤ちゃんの体を自由自在にコントロールする…!抱き上げた今、お前の体の支配権は俺にあるんだよ!)
「よーしよしよし……すぐ泣き止んで、ルビーちゃんはいい子ですね~」
自分の意思に反して体が勝手に泣くことをやめたのだ。ルビーはさぞ困惑しているだろう。
「?なんだか難しい顔して…あっそうか」
俺はおもむろに胸をさらけ出し、ルビーの顔へと近づけた。
「ママのおっぱいが恋しいのね。私はお乳が出ないから、あとでちゃんとミルクも飲むのよー?」
(どうだ抗えまい!アイより小さいが自慢の美乳だぞ!)
ルビーは吸い寄せられるように先端にしゃぶりつき始めた。
(よし!俺の勝ちだな!)
―――
――
―
「ミルクできたけどって、何してるの?」
「ありがとうございます…どうやらママのおっぱいが欲しかったみたいです」
「あぁ、そういえばルビーは哺乳瓶あんまり好きじゃなかったわね」
哺乳瓶を受け取ると、夢中で胸に吸い付いているルビーの口を哺乳瓶へと誘導する。
「はーい、ルビーちゃん、ミルクですよー」
「(赤ちゃんは経験少ないって言ってたけど、全然余裕あるじゃない。ルビーはすっかり懐いてるみたいだし、この様子ならアクアのことも任せて大丈夫ね)」
◇◆◇
さて、次はアクアだな
?おいおい、逃げようとしたってそうはいかねぇぞ!
お前も素直になったらどうだ?本当はルビーのようにオギャりたかったんだろ?
まぁ、お前の気持ちはよくわかる。転生したばかり頃の俺は前世の記憶は朧気だったが、それでもリアル赤ちゃんプレイは恥ずかしかったのを覚えているからな。
だが、体は間違いなく赤ちゃんになっているんだ…今のお前にはオギャる権利と義務があるんだよ。
おらっ、身も心も赤ちゃんになれ!
…あ~!尊厳が破壊される音ぉ~!!
よし、上手にお世話出来たな!
いや~、それにしてもいいおもちゃが手に入った。
アイの曇らせまではアクアで遊んでストレス発散だな!
アクアに比べるとルビーは随分ちょろかったが、あいつは前世も子供だったからな。
……なんかすっげぇキラキラした目で見てくるんだけど、なんだろう、そんなに俺のおっぱいがよかったのかな…?
・オリ主
赤ちゃんをストレス発散に使う人間の屑。
どことはいわないが色々と控え目。そのくせアイより背は高いし体重も重い。太っているわけではなく、むしろほっそりとした儚げな外見をしている(外見だけ)。
自身の能力をフルに使って双子をオギャらせることに成功する。「俺がママになるんだよ!」
アクアの尊厳はぼろぼろ。
・星野瑠美衣
父親なんていなかった。そう確信した。
後に、帰宅したママと伯母にダブルよしよしされて昇天しかける。
・斎藤ミヤコ
勝ち組。
・星野愛久愛海
死にたい。