音割れポッターBBの知識だけでドラコ・マルフォイになってしまった 作:樫田
クィディッチ・ワールドカップでの死喰い人騒動は怪我人ゼロ、しかし逮捕者もゼロという結果に終わったと報道された。
正直なところ、ここで父がアズカバンにでも入ってくれていたら動きやすくなる部分もあった。かわいそうだがはっきり言って自業自得だし、闇の帝王の下で殺人をさせられるよりはマシなはずだ。しかし、魔法省がそんな能力を持っているはずもなく、父は事件後も自邸で悠々自適の生活をおくっていた。
それにしても、あの闇の印を打ち上げたのが誰なのか判明していないことは気がかりだ。今年最初のイベントは父ではなく、あの男の伏線だったと考えるべきだろう。
犯人の人物像は判然としない。闇の帝王に忠実な死喰い人ではあるのだろうが、だったら何故アズカバンにいないんだ? シリウスが本当に死喰い人だったら真っ先に疑いが向くところだ。その関連で言うとペティグリューが候補者になるが…………性格的にも目的を想像してみても有り得ないだろう。折角シリウスから逃げおおせたところなのに、ペティグリューにとっての利がなさすぎる。
父の周辺にいる元死喰い人たちも、父が僕を傷つけられる可能性を考慮した以上、とりあえずは除外だ。とすると……自分はのうのうとアズカバン行きを免れながら、同じ境遇にある人間を憎むダブスタ人間か、それこそペティグリューのようにずっと潜伏して生きて来たにも関わらず、ワールドカップというド派手な舞台で花火を打ち上げる狂気の忠義者か……といったところか。
両方とも行動に一貫性がなく、しっくりこない。ただ、死喰い人は仲間同士でもお互いを知らないことはざらだったようだし、僕が調べて来た死喰い人容疑者リストに載っていない、どちらかの性格を持つ人間が存在する可能性は大いにある。それに、僕が知らないだけで、ワールドカップの場でなくてはならなかった合理的な事情がある可能性はゼロではない。
どうやって今まで闇の帝王への忠誠を隠したまま生きてこられたのか? 何故クィディッチ・ワールドカップという場で闇の印を打ち上げたのか? その両方を説明できる人間を地道に探していくしかない。
また、次に来る事件を予想するには、今年のホグワーツでは三大魔法学校対抗戦があるというのも考えなくてはならない。企画を立てた人間の中にダンブルドアがいるが、彼はこれにハリーが巻き込まれるだろうことは許容しているのだろうか?
今までの傾向を考えるなら、ホグワーツで大々的に開催されるこのイベントに、主人公が全く関与しないだなんて有り得ない。むしろ、「物語の納得度」を考えるならハリーの参加はほとんど決まってしまったとすら言えるだろう。
一応、年齢制限は設けられている上に、ダンブルドアも目を光らせてはいるんだろうが……ハリーは結構無鉄砲だし、この世界はその年に出た「面白そうな」情報はその年に使ってしまうだろう。去年、ホグズミードは来年以降に行けるだろうから大丈夫と思っていたら、ハリーにまんまと出し抜かれたことを僕は少し根に持っていた。
本当にハリーの前から全ての危機を取り除きたいなら、僕は絶対に彼が選ばれないように工作すべきなのだろう。しかし、おそらく原作通りである場面を致命的に破壊して、後の動きの予想がつかなくなることは避けたいし、試合という形でハリーの危機に陥るポイントがはっきり出てくれるのは正直なところ、かなり助かる。
今までの三年間で、ハリーが本格的に害されようとした出来事の傾向が少しずつ見えてきていた。
一年目は、クィディッチピッチでの箒への呪いと、禁じられた森でのクィレルとの遭遇、学年末のヴォルデモートとの対決。
二年目は、呪いをかけられたブラッジャー、禁じられた森でのアクロマンチュラ、学年末のトム・リドルとの対決。
三年目はクィディッチピッチに乱入した吸魂鬼に、校庭でのルーピン教授の変身。
二年目の校内で起こっていた石化事件と三年目のシリウスによる襲撃という「本当にハリーを傷つけるわけではなかった出来事」を除けば、全て城の外で起こった事件か、六、七月の闇の帝王との対決で全てだ。
ここからハリーに関しては、学期末を除いて城の中にいれば概ね問題ないと言える。ダンブルドアや彼の母の守護が働いてくれるのか、城の中のハリーを傷つけるものはほとんどいない。
対抗戦の課題は、過去のものを参考にすると室内では行われない。故に、事件はそこで起こると考えられる。
しかし……今年闇の帝王は復活するのだろうか? だとすれば、学期末に行われる課題が途端にきな臭くなってくる。流石にダンブルドアも警戒を強めているだろうが……彼が最強ではあっても全能ではないということは流石にこの三年で身に染みていた。
ペティグリューだけでなく、あの「忠義者」がヴォルデモート復活のため動いているとすると、僕も学校で迂闊な身の振り方はできない。ダンブルドアだって敵のホグワーツへの侵入を警戒しているだろうが、「動物もどき」という穴が去年明らかになってしまった。二年目に警戒を怠って何が起きたか考えれば、慎重になるに越したことはない。
ヴォルデモート帰還を阻止できれば最高だが、そうならなかった場合、やはり僕は自身の墓穴を掘る可能性が高くなってしまうのだから。
しかも、僕の推理はこの三年だけを「物語」という枠に当てはめて考えたものにすぎない。枠が正確にどんな形をしているか知らない以上、常に自分の予想を検証し続ける必要がある。もう恒例になって来たが、やはり今年も気が抜けないのだ。
最終的に、僕の行動方針は、闇の帝王に目をつけられない動きで、ハリーの課題の達成を助けながら、裏で動いている「忠義者」の正体を探る、ということになるだろう。……矛盾しそうな部分がかなりあるが、仕方ない。闇の帝王が戻ったとしても、ハリーと仲がいいのは父がかつてそうしろと言っていたから……という線で言い逃れができると信じたい。
ワールドカップから一週間が経ち、九月一日がやって来た。
ホグワーツへ向かう汽車の僕がいるコンパートメントは、例年と同様に混み合っている。しかし、面子はいつものスリザリン生だけではなかった。
相変わらずパンジーとザビニはウィーズリーの双子のところだし、ミリセントとゴイルは隣のコンパートメントでハーマイオニーとネビルと何やら話し込んでいる。去年からここは対スネイプ教授という共通の目的のもと、妙な絆で繋がれつつあった。
代わりに、ロンとハリーが僕、クラッブ、ノットのいるコンパートメントにやって来た。クラッブはハリーを見て顔を顰めたが、ハリーの方が僕の周囲にいる人間に嫌われてはまずいと悟ってくれたのか、仲良くしようとしてくれている。
効果があったかは……知らない。クラッブは結構頑ななところがある。彼はスリザリン生にしては正義感が強いから、一度先入観を捨てたら仲良くなれそうなのに。
クラッブと何とか話をしようとしているハリーをよそに、ロンはノットとチェスを始めてしまった。哀れ、ハリー・ポッター。僕は心中で合掌した。この二人が仲良くなってくれれば僕が目立たなくなりそうだし、実際ありがたいのだ。ぜひ頑張ってほしい。
いろいろ話題を捻り出していたハリーが、ふと僕らスリザリン生に尋ねた。
「ねえ、今年ホグワーツで何かあるみたいなんだけど、君たち心当たりある? ドレスローブを用意させられたりさ。ウィーズリーおじさんもロンのお兄さんたちも知ってるみたいなんだけど」
僕らは顔を見合わせた。みんな、心当たりがあるはずだ。話しかけられていたクラッブが答える。
「三大魔法学校対抗試合のことだろう。北欧とフランスからボーバトンとダームストラングが来る。今夜の宴でダンブルドアが発表するんじゃないか?」
ハリーは何のことか知らないようだったが、ロンは心当たりがあったようだった。僕らが対抗試合のことを説明するにつれて、ハリーも見る間に興味津々と言った顔に変わった。
ロンは浮き足だったような顔で、しかし少し不満そうだった。
「僕のパパも言ってくれたらよかったのに」
「ルールと子供のサプライズを守るいいお父様じゃないか」僕は思わず苦笑して言う。ロンはそれでも納得した感じではなかった。
「君、別に言うべきじゃなかったって思ってないだろ」
僕は肩をすくめた。どうせあと数時間で発表されることなんだし、アーサー・ウィーズリー氏のような直接は関係のない人間まで話がいっているのに、隠してもしょうがないだろう。
それにしても、ロンとハリーは随分と対抗試合に浮き足立っているようだ。やっぱりグリフィンドールは自分の勇敢さを見せたいと思うものなのだろうか?
僕はハリーが参加するだろうことを予想しながらも、彼らに釘を刺した。
「今回から成人してないと参加できないようになったし、僕らは見てるだけだよ」
途端に二人の顔に不満が広がっていく。ここで当たり前だと思わないあたりがやっぱりグリフィンドールなのかも知れない。
クラッブも呆れ顔で口を開いた。
「お前ら……十七歳以上の高学年より自分たちが優れていて、代表に選ばれるかも知れないと思ってるんだったら、思い上がりもいいところだぞ」
僕も頷いたが、二人はそれで納得しないようだった。しばらくブツクサ言っていた後に、ハリーがクラッブに向けて口を開く。
「でも、ドラコなら年齢制限がなければ選ばれるかも知れないじゃない?」
随分と高く評価されたものだ。しかし、クラッブは否定せずに満足げに頷いていた。おい、身内贔屓が過ぎるぞ。流石に口を挟まざるを得ない。
「それはない。七年生には勝てないよ」
そう言う僕に、クラッブとハリーは眉を顰めた。
更なる同意を求め、僕は窓際の二人に目をやった。しかし、元からノットは対抗試合の話に全く興味がなかったし、ハリーの隣にいたロンはもう出場できないと分かって興味を失ったのか、チェスに戻っていた。
ハリーは相変わらず熱心に言葉を口にする。
「君がこの学年で一番呪文や呪いができるってみんな知ってるよ」
ハリーの中の僕は一、二年生のときの印象が強いのだろう。実際あの年頃の子どもにしては色々できたと思うが、年々年齢が実力に追いつきつつある。
僕は肩をすくめて返した。
「成績の話だろう。ハーマイオニーだってほとんど負けてないじゃないか」
「でも、ハーマイオニーはあんまり機敏って感じじゃないだろう? 君はチェイサーだし、いい線いくんじゃないか?」
ハリーは僕を煽てるとクラッブが少しだけ機嫌を良くすることに気づいたらしい。涙ぐましい努力だ。
「いや、変身術だけで競うとかだったら可能性はあるかも知れないけど……他で勝てない。それこそ、フリントやハッフルパフのセドリック・ディゴリーなんかの、クィディッチチームのエースやキャプテンが選ばれるんじゃないか?」
「フリントはない!」
ハリーは嫌そうな顔をして言った。まあ、そりゃあハリーはフリントが嫌いだよな。クラッブも実はクィディッチのことで僕をなじるフリントが好きではないので、その後は二人してスリザリンのクィディッチチーム上級生をこき下ろしていた。やっぱり仲良くなるのに、共通の敵って大事なんだな。
その後は他国の学校がどんなところかという話に話題が移った。非魔法界以上に他国との交流が薄い中、さらに情報が秘匿される魔法学校の状況は伝聞などでしか窺い知れない。いつか各国の教育ノウハウを結集させる会議などを設けたいものだ。
嵐が強まる中、ホグズミード駅に着き、ホグワーツの玄関ホールまでやって来たところで僕らはようやくそれぞれの寮に別れた。スリザリンのテーブルにやって来たハーマイオニーとネビルと一緒にいたはずのミリセントとゴイルは何だか疲れている。クラッブが訝しげに尋ねた。
「どうしたんだ?」
ミリセントは大きくため息をついてテーブルに腰を下ろしながら答えた。
「ハーマイオニーが屋敷しもべ妖精の扱いについて根掘り葉掘り聞いて来たの。もう、しつこいったら!」
ゴイルも肩を落として頷く。
「ワールドカップの事件でクラウチ氏の屋敷しもべの扱いを見て、ひどいって思ったらしい。
ロングボトムだってちょっと理解できないって雰囲気だったのに、あの子、マジで聞く耳持たずって感じだったよ。あれは突っ走って何かやらかしそうだな……」
何というか、ここですら流石ハーマイオニーだ。今までになく彼女は自らの正義感に燃えているようだった。
「でも、ホグワーツだって屋敷しもべがいっぱいいるのに、全く頼らずにっていうのは無理よね?」
ミリセントはどこか心配げだ。
組み分け後の夕食のときに、僕らはこっそりハーマイオニーの様子を窺った。彼女はグリフィンドールのゴーストと何か話した後、目の前の自分の皿を遠くに押しやった。屋敷しもべ妖精が作ってると気づいて、断食しようと思ったのだろうか?
僕らは顔を見合わせて、結局自分たちの食事を始めた。
皿からデザートが消え、ダンブルドアの話が始まった。
僕は大広間に入った時から今年の『闇の魔術に対する防衛術』の教師を探していたが、新顔は見当たらなかった。まさか元からいる先生の誰かに任せることにしたのだろうか? 去年のルーピン教授のことがあって、僕は破滅を迎えると殆ど決まった防衛術教師職の存在に怯えていた。
しかし、新しい教師はやって来た。ダンブルドアの話を遮り大広間に入って来た男は、天井で光る稲妻に照らされてひどく恐ろしい風体をしていた。義足に、傷跡で覆われた顔に、ぐるぐると動く義眼。実際に顔を合わせたことがあるわけではないが、それは間違いなくマッドアイ──アラスター・ムーディだった。
その引退した闇祓いの男は、今までの防衛術教師の中で、ダンブルドアがどのような経緯で頼んだのか、最も初見で想像がつく人選だった。
去年のことがあって、ダンブルドアもいよいよ何も知らない人間に防衛術を担当させる訳にはいかないと考えたのだろう。だから、相手は事情を知った上で、なおその運命を受け入れる覚悟があるものでないといけない。しかし、闇の帝王の復活が迫っている。校内の守りを固めるという点でも、少しでもまともな教師を用意する必要がある。
歴戦の闇祓いであるマッドアイ・ムーディなら、引退したと言えどもその技量には疑いがない。その上、引退しているからこそ、そして先の戦争を知り、闇の帝王復活の危機感を共有できる人間であるからこそ、この一年で犠牲になることを了承してくれる人間でもあったのだろう。
なるほど、感動的な話だ。……しかし、スリザリン生としては少し不安を覚えるのも事実だった。アラスター・ムーディは僕の父をはじめとした、アズカバン行きを逃れた死喰い人をよく思っていないだろう。それでスリザリン生に当たり散らされたりしたら、僕らはたまったものではない。
内心複雑な心境で僕は壇上のダンブルドアの顔を見上げた。もう去年のハグリッドの件のように、ダンブルドアがこちらを見ることはないだろうと思っていた。しかし、ほんの一瞬だけ、どこか悲しげに彼が僕の目を見たような気がした。
……僕も大概ダンブルドアに絆されてしまっている。今年一年、アラスター・ムーディが円滑に職務を全うするようにし、かつスリザリン生を守る。僕がダンブルドアのためにできるのはそれだけだろう。彼がハリーや魔法界を守るのに専念するためにも、後顧の憂いは絶っておきたい。
ほとんど例年のホグワーツ教師の尻拭いだ。けれど、きっとムーディは教師としての能力はありそうだし、どうにかなる……と信じたい。
三大対抗試合の説明を────よりにもよってハロウィーンの日に学校代表選手三人の選考が行われるらしい。これはハリーの出場は決まったな────ダンブルドアがしてゆく中、僕は今年やるべきことを頭の中で整理していった。
ムーディ教授の初授業は学期二日目の午前中だった。一日目は────午前にハグリッドの授業がある! 僕は彼が何を用意しているのか知りたくて、先にあった「呪文学」の授業が終わると走ってハグリッドの小屋に向かった。
「おお、ドラコ! 来たな!」
ハグリッドはニッコリ笑って僕を出迎えてくれた。足元には木箱が二つ、檻が一つ置いてある。
「どう? 授業の準備は」
僕が息を切らして尋ねると、ハグリッドは嬉しそうに、その中身を見せた。
「マンティコアと火蟹、それを掛け合わせた『尻尾爆発スクリュート』の幼体だ」
尻尾爆発スクリュート? 新種に自分で名前をつけたのだろうか。ネーミングセンスは正直微妙だ。…………いや、問題はそこではない。僕は頑丈そうな檻の中にいる、子猫に蠍の尻尾と赤ん坊の顔を貼り付けたような動物を覗き込んだ。
「幼体とはいえマンティコアを授業で扱う許可が降りたの?」
ハグリッドは少し誇らしげに頷いた。
「ああ、マニュアルではこの危険度の動物は取り扱っちゃなんねえって話だったんだが、魔法省の役人が幼体であればXXXXのルールに則って、子どもに見せて構わんと言いよった。
可愛いもんだろう。……けども、お前さんもあんまり近付きすぎるな。刺されると痛いじゃ済まんぞ」
そりゃあそうだろう。しかし……彼は本当に魔法生物の危険度を分かってきているようだ。僕は喜びのあまり、思わずハグリッドの手を握った。彼も嬉しそうだった。
他の子達もやって来て、二つの木箱の中身が見せられた。片方は火蟹の幼体で、もう片方は尻尾爆発スクリュートの幼体だ。
尻尾爆発スクリュートは……正直言って、本当に気持ち悪い外見をしていた。マンティコアと火蟹という、脊椎動物と無脊椎動物の子どもが一体どうなるのか────そもそも、その二種の間で子どもができること自体狂ってると思うが────僕はさっぱり予想がついていなかったのだが、確かに両者の特徴を備えていた。
どうやら外骨格は形成されなかったらしい。胴体は青白く、生のエビやカニを彷彿とさせる肉がヌメヌメとした粘液に覆われている。頭らしいところは見当たらないが、それがモゾモゾと動く方向の部分にうっすらと人間の顔に似た模様があるのが心底不気味だ。後ろの細長い尻尾のようなところからは、火蟹の火とマンティコアの毒が合わさった結果だろうか? 時たま小さな爆発音を立てて火花が起き、その衝撃でスクリュートは移動していた。────ほんとうに、ほんとうに気持ち悪い。
生徒たちは皆スクリュートの悍ましさに慄いていた。しかし、ハグリッドがマンティコアの檻を自分の前に持って来て、三種の中で最も安全な火蟹の赤ちゃんを配り、比較しての観察をさせ始めると、動揺は少しずつ収まっていった。
魔法族生まれの子ならマンティコアの危険性は知っている。かなり珍しい危険生物に、みんな結構興味津々だった。特にグリフィンドール生は。勇敢すぎる。
ハグリッドがひっくり返したスクリュートの腹側を恐る恐る眺め、自分の手元にある火蟹と見比べながら、ゴイルが囁く。
「マンティコアなんて、どうやって連れて来たんだろう? 魔法省やダンブルドアがそこまでハグリッドを信用したなんて、驚きだな」
「彼の努力の成果だよ」
僕はちょっぴり誇らしい気持ちで答えた。
マンティコアの実物は最初の一回だけで、今後は三週間に一度ほど火蟹とスクリュートの比較観察を行うらしい。スクリュートはXXXXX分類だと仮定して、相変わらず僕らには触らせないそうだ。スクリュートは正直めちゃくちゃ気持ち悪いが、火蟹だけでも結構人気のある動物だし、かなり良い授業なんじゃないだろうか。みんな、これからもスクリュートを触らなくていいと分かり少しほっとしたようだった。
僕が授業終わりにハグリッドに感想を言いに行くと、まだ何人かの子どもたちがマンティコアを見ていた。ハグリッドは彼らが近寄らないよう、檻の前に立って監視している。
「まあ……悪くない始まりなんじゃねえか? え?」
僕がやって来たことに気づいたハグリッドは、嬉しそうに笑いかけてくれた。僕もニッコリと笑い、頷いた。