三女神の叡智或いはタキオン製薬   作:かばんm3

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メジロアルダン:担当とダンスを

「はい。トレーナーさん、終わりましたよ」

「ぁ……ありがとうアルダン……」

手鏡を手渡された俺はそれを受け取り、自身の顔を見る。そこには化粧を施され、肩口で切り揃えられた芦毛に大きな赤い瞳が特徴的なウマ娘の姿があった。

「ふふ、よく似合ってますよ?トレーナーさん♪」

そう言って微笑む彼女。艷やかな鹿毛の髪は後ろでまとめており、身につけている衣装は白い燕尾服。胸元には小さな一輪の花飾りを付けていた。

そんな彼女は俺と同じく化粧が施されていて、いつもとは違う魅力を放っている。

「しかし……まさかこんなことになるなんてな……」

そう呟きながら自分の体を見回す。彼女の衣装とは対を成すような黒いドレス。胸元は大胆に開かれており、そこから覗く谷間には薄っすらと汗が浮かんでいる。

腰回りはコルセットによって締め付けられており、身体のラインが強調されていた。また、スカートには大胆にも深いスリットが開いており、歩く度に太ももが見え隠れしそうだ。

正直恥ずかしくて仕方がないのだが、これも全てはメジロ家主催の社交界にお呼ばれした為だ。

アルダンのトレーナーとして参加するために、こうしてドレスを着て化粧まで施しているわけだが……

「それにしても……本当に大丈夫かな?」

「えぇ、大丈夫ですよ。とてもお綺麗ですから」

「うぅん……そうかなぁ……」

最初は自身がスーツを着る予定ではあったのだ。だけど、何故かドレスとメイク道具一式を持った持って現れたアルダンに無理やり着替えさせられて……

現在に至るという訳なのだが……やっぱり不安でしょうがない。

「さぁ、そろそろ時間になりますから参りましょうか」

「あぁ……うん……」

アルダンに手を差し伸べられ、その手を握り返す。

 

「……おぉ」

思わず感嘆の声を上げる。会場内は煌びやかに装飾されており、テーブルの上には数々の料理が並べられていた。

既に多くの来賓客が集まっており、談笑したりダンスをしたりしていた。

そんな中、俺たちは案内されるがままに会場の中央へと歩いていく。

すると、周りにいた人達の視線がこちらに集中した。

(うわぁ……なんかすごい見られているな……)

チラリと横目で見るとアルダンが笑顔を浮かべていた。しかしその表情とは裏腹に繋いだ手からは強い力を感じる。

彼女に連れらるようにして中央に立つと音楽が流れ始めた。どうやらダンスの時間になったようだ。

「それじゃ、踊りましょうか。トレーナーさん」

「あぁ、うん……って、ちょ!?」

突然腕を引っ張られたと思った次の瞬間には、視界いっぱいに天井が広がっていた。

アルダンに丁寧に仕込まれたステップを踏みながらくるりと回る。

履き慣れないヒールで転ばないように注意しながら、彼女に身体を預けると密着する形になる。

凛々しさと美しさを兼ね備えた彼女の顔はすぐ目の前にあり、甘い吐息がかかるほどに近い。

心臓が激しく脈打つ中、なんとか平静を保つように努力するが上手くいかない。

「トレーナーさん?どうかしましたか?」

「い、いや!なんでもない!」

「そうですか?なら良いのですが……」

不思議そうな顔をした彼女は再び微笑むと、先程よりも強く抱きしめられる。

そしてゆっくりと身体を起こすと、流れるような動きで再び俺の手を取った。

「もう1曲お付き合い頂けますか?」

そう言って首を傾げる彼女に対して俺は小さく首肯することしかできなかった。

その後もしばらくの間、彼女と踊った後ようやく解放された頃にはヘトヘトになっていた。

 

「ふぅ……」

壁際に置いてある椅子に座り込む。思っていた以上に疲れてしまったみたいだ。

「トレーナーさん、大丈夫ですか?」

飲み物を持ってきてくれた彼女が心配げに声を掛けてきた。

「ありがとうアルダン……」

差し出されたグラスを受け取り口をつける。冷たく冷えた液体が喉を通り抜けていく感覚に少しだけ気分が良くなった気がする。

「ごめん……思ったより疲れちゃったみたいだ」

「いえ、気にしないでください。私こそ無理をさせてしまい申し訳ありません」

 

─よろしければ、別室を用意していますのでそちらで休憩されてはいかがでしょうか?と提案してくれたので素直に従うことにした。

「それでは、こちらへどうぞ」

「ありがとう……」

彼女の手を借りて立ち上がると、そのまま部屋へと向かう。用意されていた部屋に通された俺はソファに腰掛けると大きく伸びをした。

「はぁ……」

思わず溜息をつく。なんだかんだで今日は色々とあって精神的に疲労してしまった。

「無理をさせてしまってすみません……」

隣に座ったアルダンが申し訳なさそうな声を出す。

「あぁ、別に大丈夫だよ」

苦笑しつつ答える。実際、彼女のおかげで恥を晒さなくて済んだわけだし、感謝しているくらいだった。

しばらくお互いに無言のまま時間を過ごす。静かな空間の中で聞こえるのは時計の針の音だけだった。

そんな沈黙を破ったのは彼女の方からだった。

ぎゅっと手を握られ、肩を寄せてくる。

先程のダンスの熱が残っているのか、普段よりも高い体温を感じた。

彼女の黒に彩られた指先が自分の肌の上をするすると滑っていく。

くすぐったさに身動ぐと、それを咎めるかのように腰を強く抱き寄せられた。

「…んっ…アルダン…」

耳元にかかる吐息がくすぐったくて身を捩るが、逃れることを許さないとばかりに強く抱きしめられてしまう。

やがて、ゆっくりと身体を起こした彼女がじっとこちらを見つめてきた。

吸い込まれそうになるほどの紫色の瞳に見つめられ、ドキリとする。

その奥に燃える情欲の色を感じ取った俺は慌てて目を逸らす。

しかし、それは許さないと言わんばかりに顎に手を添えられ、正面を向かされる。

視線が絡み合うと同時に唇を奪われる。

初めは触れるだけの優しいキスだったが徐々に深くなっていく。

舌先が触れ合い、絡め取られてしまう。

互いの唾液を交換しあい、混ざり合ったそれが口の端から零れ落ちる。

酸素を求めて口を離そうとするも、すぐに塞がれてしまい酸欠になりかけた頭は思考を放棄し始めていた。

しばらくしてようやく解放されると、俺は荒くなった呼吸を整えるように深呼吸を繰り返す。

その間にも彼女は頬や首筋などに優しく口づけを落としていた。

ちゅっと軽い音を立てて離れる度に小さな刺激が走る。

その僅かな感触でさえ、今の火照った身体には大きな刺激として感じられていた。

「ねぇ……トレーナーさん……」

囁かれるような声で名前を呼ばれる。

ー今宵は私の“華”になっていただけませんか? その問い掛けに答えることなくただ黙って見つめ返すことしかできなかった。

それを見たアルダンは妖艶な笑みを浮かべると、再び顔を近づけてきた。

そして今度は耳へと口付けを落とす。同時に甘噛みされ、熱い吐息を吹きかけられると身体が小さく震えた。

いつの間にかドレスのボタンは全て外されており、白い胸元が露わになっている。

そこへ顔を埋めた彼女が軽く歯を立てると鋭い痛みが走った。

抗議の声を上げようとする前に強く吸われ、紅い花びらが散る。

満足したのか、最後にひと舐めしてから顔を離すと再び至近距離で目が合った。

彼女の瞳の奥にある情欲の色は消えておらず、むしろさらに濃くなっているように思える。

そして再び顔を寄せられると、今度は首筋に舌が這う。

生暖かい感覚と時折かかる吐息がくすぐったくて身を捩ろうとするが、がっちりとホールドされていて逃げられない。

鎖骨まで辿ったところで動きが止まったかと思うと、強く噛まれた。

「あ……」

思わず声を上げる。反射的に出た言葉だったが、アルダンはそれを聞いて動きを止めるどころかますます力を込めてきた。

何度も同じ場所を執拗に責め立てられ、じわりとした痛みと共に甘い痺れが全身に広がっていく。

やがて彼女が離れた時には、そこには真っ赤になった印ができ上がっていた。

紅い傷跡を刻まれたことで、自分が彼女のものになったという事実を突きつけられているようで背徳的な悦楽を覚える。

その様子を見てアルダンは嬉しそうに微笑むと、そっと抱きしめてきた。

「ふふ……これで貴方は私だけのモノですね……」

耳元でそう囁かれ、ぞくりとする。

そのまま耳たぶを甘く食まれると、ぴちゃぴちゃという水音が脳内に直接響いておかしくなりそうだ。

空いた手が背中から腰にかけてゆっくりと撫でられると、身体がビクビクと反応してしまう。

「っ……」

不意に太腿をなぞられた拍子に口から艶めいた声が出てしまった。慌てて手で抑えようとしたが既に遅く、アルダンが意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。

「可愛いですよ……」

「やめてくれ……」

恥ずかしさのあまり顔を逸らす。だが、そんなことをしても無駄だというかのように両手を押さえられ、そのままソファに押し倒されてしまう。

「だめです、ちゃんと私を見てください」

逆らうことは許さないといった様子で告げられ、思わず目を合わせる。

彼女の瞳の中にはこれからされることへの期待に満ちた自身の姿が映っていた。

それを見て諦めるように目を閉じた瞬間、唇を奪われ貪るような激しいキスをされる。

舌を絡め取られ、口内を犯し尽くされる。

歯茎の裏側や上顎など、弱い部分をなぞられるたびに身体が跳ねてしまう。

「んぅっ……んっ……んんっ!」

息継ぎをする暇さえ与えられずひたすら蹂躙される。飲み込みきれなかった唾液が口の端から溢れ出したが、それを拭うことさえも許されない。

(苦しい……でも……)

酸欠によって頭がぼーっとしてくる。意識を失う寸前になってようやく解放された。

酸素を求めて大きく呼吸を繰り返す。その間も彼女は俺の首筋に吸い付き、いくつもの花を咲かせていく。

肩で息をしながらぼんやりとしていると、アルダンは優しく頭を撫でてくれた。

その心地よさに目を細める。

「トレーナーさん、愛しています。誰よりも、何よりも。だからどうか私から離れないでくださいね?」

そう言ってまたキスされる。今度は触れるだけの軽いものだったが、それでも十分に満たされる。

しばらくそうした後、どちらからともなく抱き合うとお互いの存在を確かめ合うかのように強く密着する。

こうして二人の夜は更けていった。

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