こちら、見切り発車となっております。
推しの子成分が足りない。
↓
なら自分で書けばいいじゃないか。え?
復讐だ。これは罰だ。お前はたくさんのファンを、
俺を、裏切ったんだ。
両手に余るほどの花束を持って、ゆっくりを道を歩いていく。
--星野アイ。アイドルグループ【B小町】の絶対的センター。
花束には7本の白薔薇、滑稽だ。復讐なんて言いながら、未練がましい。当たり前だ。デビューした瞬間から、一目見たその時から、俺はアイが好きだった。握手会には必ず参加したし、どんなに小さいライブでも見に行った。買ったグッズなんてもう数えきれない。お土産だって渡したことがある。なのに
隠し子がいたなんて。
許せない。なぜ?いつから?誰と?正直、そんなのはどうだっていい。
「ファンのみんなを愛してる」
あれは嘘だったのか?そう思うと苦しくてたまらない。あの笑顔が、言葉が、どれだけ俺の心を支えていたのか。今になって分かる。俺はどうしようもないくらいアイが好きで、そんな俺がどうしようもないくらいに、嫌いなんだ。
これは俺の決意なんだ。これまでの自分と決別するための、決意だ。アイはファンの誰も、愛してなんてない。愛してなんてないんだ。嘘をついて、嘘を重ねて、嘘を信じさせて、たくさんの人に気に入られる。自分は俺たちのこと気にも留めないで、せっせと子供作って幸せに生きてる。
さぞ楽しい人生なんだろうな。でも、今日でそんな日々も終わりだ。
俺が、終わらせる。俺が、
殺す。
「ここか」
そうこう考えている内に、とあるルートから得た情報の住所に到着した。なかなかいいアパートだ。確かに、一人暮らしには広すぎる。ここにアイが三人で住んでいるなんて、いったい世間の何人が知っているのか。
今なら、まだ、引き返せる。
うるさい。邪魔をするな。俺は決めたんだ。俺は星野アイを殺す。
アイドルだって人間だ。推しが幸せな日々を送ってる。いいじゃないか。
「黙れよ!」
しまった。道端の何人かがこちらを見ている。何を迷ってるんだ、決めたじゃないか。俺はアイを殺す。殺す。殺すんだ。殺して、俺も死ぬ。
一段一段、ゆっくりと階段を上る。足取りは重い。しかし、着実に目的地は近づいていた。そして、気づけばもうそこは扉の前だった。
ピンポーン
インターホンをならせば、中から聞きなれた声が聞こえてきた。しばらくすると、扉が開きアイと目があった。抱えた花束を差し出しながら、言葉を紡ぐ。
「アイ…ドーム公演おめでとう。双子の子供は元気?」
さよならだ。
花束に隠した新品のナイフで、アイの腹部を突き刺した。やった。やってやった。さっきまでの気分が嘘みたいだ。自分が無敵になったかのような、今までにない高揚感に包まれる。アイ、なんて間抜けな顔だ。
「ふはっ…痛いかよ」
笑いがこみあげてくる。しかし同時に、アイに対する怒りが、痛みが沸き上がってきた。
「俺はもっと痛かった!苦しかった!アイドルのくせに子供なんて作るから…!ファ…ファンを裏切るふしだら…っ」
止まらない。止めるわけにはいかない。俺たちの痛みはこの程度じゃ収まらない。収まっていいはずがない。
「ファンのことないがしろにして、裏ではずっと馬鹿にしてたんだろ!この嘘つきが!」
「散々好き好き言って釣っておいてよ!全部嘘っぱちじゃねえか!」
そうだ。嘘つき、こいつは嘘つきなんだ!死んで当然、綺麗な皮をかっぶって俺たちを騙し続けた最低最悪の…!
「私なんて元々無責任でどうしようもない人間だし、人を愛するってよくわからないから。私は代わりに皆が喜んでくれるようなきれいな嘘を吐いてきた」
……。そうだ。それが悪いって言って…
「いつか、嘘が本当になることを願って。頑張って、努力して、全力で嘘を吐いてたよ。私にとって嘘は愛。私なりのやり方で、愛を伝えてたつもりだよ」
…だから何なんだよ…!それがなんだっていうんだ…!
「君たちの事を愛せてたかはわからないけど、愛したいと思いながら愛の歌を歌ってたよ。」
…嘘をつけ
「いつかそれが、本当になることを願って。今だって君の事…」
-愛したいって、思ってる。
「嘘つけ…俺の事なんて覚えてもいないんだろ、見逃してもらおうと…」
「リョースケ君だよね。よく握手会に来てくれてた。」
待ってくれ、やめてくれ。
「あれ?違った?ごめん私、人の名前覚えるの苦手なんだ。」
俺を見るな。
「お土産でくれた星の砂、うれしかったなぁ。今もリビングに飾ってあるんだよ」
そんな目で、俺を見ないでくれ。手を、伸ばさないでくれ!
なんだよ…!なんなんだよ…そうじゃないだろ!
「んだよ…それ…そういうんじゃ…!」
体がアイを拒む。拒まなければいけない。この手を取ってはいけない。取りたい。だめだ、とるな。何のためにここに来た。目をそらせ。受け入れるな。認めちゃダメなんだよ!これだけは!
「あああああああッ!」
全力でアイから逃げた。遠ざかった。揺らぎ切って、最早なんの正義もなくなった決意を理解しないように、拒み、ただ無我夢中で走った。
…気が付けば、俺はビルの屋上に立っていた。
あぁ、ちょうどいい。死んでしまおう。この命に、もう価値はない。思えば悔いしかない人生だった。失敗に失敗を重ねた。ついには推しのアイドルを刺した。アイはそんな俺の事も愛そうとしていたらしい。
笑えない。本当に、笑えない。
ブー。ブー。スマホの通知がなる。
【アイドルB小町 アイ(20)ストーカーによる殺傷】
…早い。殺人てのはこんな早くニュースに…
【警察庁の調査によると、犯人はいまだ逃走中。被害者女性には双子のこどもがおり、それが殺人の動機になったのではとのことです】
…おかしい。なぜ双子のことが公表される。そんなことをしてもなんの意味もないじゃないか。あの双子の将来に傷をつけるような行為だ。アイのマネージャーくらいは知っていたかも知れないが、今まで隠してきたんだ。わざわざリークなんてしないだろう。
そもそも、俺に情報を流した奴はなぜそれをを知っている?それこそ意味が分からないじゃないか。あれだけ世間に隠してきた事実を知る人間なんて、それこそ他にはあの双子の父親くらいしか…
「父…親…?」
そんな訳がない。あっていいはずないじゃないか。父親がそんなこと…
♪♪♪
携帯に電話がかかってくる。あいつだ。
「あれ、生きてるんだ。ちょっと想定外かな。」
…今から死のうと思ってたんだよ
「まぁいいや。ありがとう。アイを殺してくれて。」
何を言い出すんだ。いきなり。
「僕のせいでこんなにも才能にあふれ、誰からも愛される彼女が命を失った。」
そうだ。俺が殺した。この手で。
「ああ、価値のあるあの子の命を奪ってしまった僕の命に…」
「 重 み を 感 じ る 」
なんなんだ…こいつ…!
「おい、黙れよ。なんだよ、お前は何者なんだよ!」
「僕?僕はただの双子の父親さ。母親は君が殺してくれた。」
「さっきから!まるでパートナーが殺されてうれしいみたいに…!」
「だから、そう、言ってるんだ。ありがとう」
頭が真っ白になった。パートナーが殺されてうれしい?こいつ、人の命を奪うことで自分の命を感じてるのか?
「異常だ。あんた」
「人を殺しておいて、ずいぶんなことを言うじゃないか。」
確かにそうだ。だが、少なくともお前はだめだ。存在しちゃいけない生き物だ。
まだ死ねない。こいつを、殺すまでは。
「双子は…どうするんだ。」
「さあ。とりあえずは様子見かな。育てる気なんてさらさらないしね。あ、でも僕とアイの子供なんだ。将来はきっと価値のある人間になる。その時は…」
「もういい。わかった。」
許されるとも、許されようとも思はない。どこまで行っても俺は加害者だ。でもこれだけは決めた。何年かかってもいい。必ず俺はお前も殺す。
【アイドルグループ、小町Bの星野アイさんを殺人した○○亮介(19)さんが自首して……した。懲役は11年……
うーんこれで3000ちょい…意外と大変だなぁ。
ちなみにリョースケは今作の主人公じゃありません。
気が向けば次の話を作るときに出てきます。