予想はついてたかも知れませんが。
*微グロ注意。PG-12くらい?
突如としてメイとサイバノイドゼロの前に現れた、赤き巨獣…VVアサルト。
その巨体で、宵闇に包まれたゴゥレム=シティを睥睨しながら、地面を揺らして闊歩してゆく。
物語はその出現から、約10分前へと遡る。
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メイとサイバノイドゼロによって、ザイオスが倒されたのと同時刻。
現場となった研究所跡から遠く離れた所に位置する、鬱蒼とした森林群に囲まれた、ある沼があった。
もともと遺伝子改造を施した水棲生物の実験場として作られたそこから、低く、空気を震わすような女性のうめき声がこだましている。
『あああぁ…私の…私の可愛い子が…!私の子がぁ…!』
周りは夜という事もあり、沼の様子を視認するのは難しい。が、それ故に、何が潜んでいるか分からない上に、沼自体の底が見えないという、おどろおどろしさが付き纏っていた。
そんな沼から響く声の主は、ひどく淀んだ水中に半身をついた状態で息づいていた。
だが、その外観は異様そのものであった。
硬質化した表皮は、まるで崩壊した建造物の瓦礫を砕き、無理やりひとまとめにしたような、ゴツゴツとした質感。
水中に漂う栄養素を取り入れるべく、植物に似た栄養素循環器官が表皮を、ツタのように満遍なく覆っている。
まるでヒト型のようなシルエットをしたその異形の名は、グレイズという。
ザイオスの生産者でもあり、同時に頂点たる存在である。
彼女の細胞から分化したザイオス…つまり彼女が生み出した子に値する存在は、ゴゥレム=シティの各地に潜伏し、生き続けているのだ。
グレイズとザイオスたちとは共感覚、すなわち一種のテレパシーで通じ合ってもいた。…が、それはグレイズに、我が子たるザイオスの死を感じ取らせる事にも繋がっている。
グレイズの身体の中心にある、透き通った蒼き眼らしき感覚器官と発声器官を兼ねた物体が閃き、振動する。
『…返せ!…返せ!私の愛しいザイオスを!おのれ、許さんぞ…許さんぞニンゲンどもめがァァァ!!』
悲しみに打ち震えた声は、烈火のような怒りを纏った声に変わる。
その瞬間、グレイズから波動のようなオーラが発せられた。
それは空間を伝い、まるで波のように、遠くへ、さらに遠くへと波及してゆく───────
そしてその波動は、ある少女のもとへと伝わった。
******
「……あ────ッ!?…う、ぅっ…は…がァ…ッ…!?」
アサヒは、身体を貫かれるような激痛に苦悶していた。
住処である廃墟への帰路を辿る最中に、自身の身体を襲った異変。
まるで全身が焼け付くような感覚に、地面をのたうち回るしかない。
前触れもなく始まった変調は、アサヒの身体を少しずつ蝕んでいく。
透き通ったような白い肌に、まるで焼き印の如く広がる、亀裂のような紋様。
喉から溢れ出してゆく、獣のそれのような唸り声。
心臓の激しい鼓動とともに、自身の歯や爪が、形を変えながら、長く、太く、尖っていく。
バキン、バキン…と、全身から響く、何かが折れていくような異音。
蒼い瞳は、いつしかその色を血のような赤へと変えていた。
身体を突き破りような感覚が、頂点に達し…
「うゥッ…!うぐァ、ェ、ガァ、ウァァあァあああ────ッ!」
アサヒの絶叫とともに、亀裂状の紋様から、ぶしゅり、ぶしゅっ、と音を立てて、粘性のある、ゲル状の液体が勢いよく噴出した。
それはアサヒの身体を瞬時に覆うと、まるで身体そのものを吸収していくかの如く、体積をどんどん増しながら増殖してゆく。
その姿は、まるで卵のようだった。中にいるはずのアサヒの姿は外観からは、もはや確認できなかった。
ゲルでできた"卵"は肥大化が止まらず、わずか1分足らずで70メートルほどの大きさに到達した。
するとその表面が瞬時に、ばきり、という音とともに硬質化し、途端に
"卵"にヒビが入り始めた。
ヒビは"卵"全体へと瞬く間に広がり、そして。
雄叫びとともに、一気に四方へと"卵"の殻は吹き飛ばされた。
こうして"卵"から生まれ出た巨獣、VVアサルトは、本能のままにゴゥレム=シティへと降り立ったのである。
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時は、現在に戻る。
────あんなバケモンがこの街にいるなんてこれっぽっちも聞いてないんだけど、一体どういう事なの!?
サイバノイドゼロは困惑していた。
あのような巨体を誇る生命体をついぞ見たことがなかったからだ。
またゴゥレム=シティにも、そのような実験生命体がいたというデータはなかったはずだ。
当惑しながらも、彼女はバイクのスロットルを捻り、進撃するVVアサルトから逃げ続けている。
後ろには、自称"旅人"のメイが狩るサイドカーもついてきている。
側車部分には、彼女が使っていたクロスフレイライザーが置いてあるのが見えた。彼女はというと…
「ヤバいヤバいヤバいヤバい───ッ!」
と連呼しており、すっかり平静さを失っていた。
「さっきの飄々さはどこにぶっ飛んだのよ…まあ、この状況なら仕方ないけど」
サイバノイドゼロはそう呟くと、バイクをなおも飛ばしていく。
何処かにこのデカブツの進路から退避できる場所はないか…と思考を巡らせていた、その時だ。
突如として、何かが軋むような異音が響いた。
異変を感じ取ったサイバノイドゼロは、バイクを停車させる。
メイのサイドカーも、数秒遅れて追いつき、停止した。
「…どーなってるわけ…!?」
メイが息を呑む。
2人の目線の先にいたのは、先程まで彼女たちを追っていたVVアサルトだ。だがその様子は、これまでにない異変が生じていた。
ビクリ、ビクリと、まるで感電したかのように巨体を痙攣させ、先程の異音を全身から発し、その動きを止めている。
先程のように吠えようにも上手くいかないようで、VVアサルトの喉からは、掠れた呻き声が漏れ出していた。
「追跡をやめた、とでもいうの…何のつもり?」
サイバノイドゼロは訝しんだが、VVアサルトの様子を見たメイが呟いた。
「なんか、苦しがってるみたい…」
すると、VVアサルトの身体がたちまち、半透明のゲル状の物体に変換され、蒸気を発しながら溶け落ちてゆく。
思わぬ怪物の最後に、メイとサイバノイドゼロは呆気に取られるばかりだった。
だがその中で、2人の目が何かを捉えた。
「あれは、人間─!?」
「女の子だ…!早く助けなきゃ!」
溶け落ちていく半透明のVVアサルトの肉体。その中に、膝を抱えた格好で眠る、1人の少女を発見したのだ。
見たが早いか、早速動いたのはメイだった。
「ちょっと待ちなさいッ、まだ警戒しなくちゃマズいでしょうが…!」
危険を顧みないメイの行動に翻弄されつつ、サイバノイドゼロもそれを追うのだった。
【VVアサルト】
種別: 紅彩巨獣
身長:60m
体重:3万t
能力:不明
ゴゥレム=シティの少女、アサヒが突如変貌した巨大な生命体。
ザイオスの長であるグレイズとは何らかの関係があるようだ。
狼と獣脚類を掛け合わせたような外観であり、全身は体毛で覆われ、発達した前足には太く鋭利な爪「リーサル・ネイルズ」が備わっている。
変貌時には、アサヒの中の細胞が異常活性化を起こし、全身から噴き出す細胞組織構成ゲルがアサヒの身体に直接接続し、VVアサルトとしての肉体を作り出す仕組みになっている。
その都合上、変貌のたびにアサヒの身体には激痛が伴う。