昨日、『魔法少女を倒せ』という命令を受け、怪人を討伐しにやってきた魔法少女に攻撃を仕掛けた
魔法少女を一時的に戦闘不能に追い込めば任務完了なのか、永続的に戦闘不能に追い込めば任務完了なのか、分からなかったのだ。
そのため、私は双子の姉であるクロにそのことについて尋ねてみることにした。
クロの答えは、『私には分からないけど、シロがやりたくないことを無理してやる必要はないと思うよ』と。
イエスともノーとも言わない、曖昧な答えだった。
次に私は、組織の幹部の1人である、『ルサールカ』というコードネームの女に、そのことについて尋ねた。
帰ってきた答えは、『逆に殺す以外に選択肢があると思ったのかしら?』だった。
つまり、私が任務を遂行するためには、魔法少女達を殺さなければならない。
そうしなければ、クロとの外出も許されないし、私も自由に動けなくされてしまうだろう。
だから、私は殺さなければいけない。魔法少女達を。
大丈夫だ。ちゃんと殺せる。
前回の怪人は、ゴリラのような見た目の、量産型のモノであったために、複数の魔法少女の対処に手間取ってしまった。だが、今回は違う。今回の怪人は、『
魔法には属性があり、それぞれ『無』『火』『水』(派生で『氷』)『風』『地』『雷』『心』『光』『闇』の9(10)つの属性から成り立っている。ちなみに私やクロが扱っているのは『光』だ。
本来怪人はこのうちの『闇』の属性を扱い、それ以外の属性は扱えないのだが、『
『
他の属性と比べても異質の属性で、端的に言えば、無から何でも出現させることができる、という魔法だ。
この『無』の属性を扱えるのは、現状確認されているのは、3人だけらしい。しかも、そのうち1人は死亡しているというのだから、如何に希少な属性なのかは明白だろう。
まあ、何でも生み出せるというのも、現状武器を召喚するくらいしか使用例が見つかっていないため、あくまで憶測でしかないようだが。
『
私は今、街を襲撃している。魔法少女を呼び、昨日のリベンジを果たすためだ。
案の定、2人の魔法少女が私の元へやってきていた。
忍者の格好をした、双子と思われる魔法少女達だ。昨日戦った魔法少女とはまた別の子達っぽい。
「行くよ、ヒヨリ」
「まかせて、カゲロウ!」
「火遁の術!」 「水遁の術!」
2人はそう言って、それぞれの魔法を私に向けて放ってくる。
なるほど、『火』の属性使いと『水』の属性使いか。
だが、私に魔法が届くことはない。
『シ………』
『
『
『
これなら、行ける。
私は、『光』の属性の魔法で作り出した双剣で、2人いる魔法少女のうちの片方、より厳密に言えば、『水』の魔法を扱うカゲロウという少女へ突撃していく。
今まで2人で『
そして、とうとう………。
『シ……』
ヒヨリの体が、後ろへと倒れ込む。
追い込まれて、つい体勢を崩してしまったのだろう。
そんなヒヨリへ、『
ああ、これで私は、クロと一緒に外出することができる。
まずは、どこを巡ろうか。
美味しい食べ物を食べるのもいいし、一緒に洋服選びなんかをしてみてもいいだろう。幸い、今までと違って働いた分は組織から給金が送られるのだから、私が頑張ればお金の心配もない。
「きゃ……!」
ヒヨリの方に気を取られ、集中力を欠いていたカゲロウもまた、体勢を崩し、ヒヨリと同じように転ぶ。
これで、2人分。
これで、私は…。
「カゲロウ…!!」
「お姉ちゃん!!!」
そんな私の耳に、2人の悲痛な叫びが響く。
私は、そんな2人の姿を、自分とクロの関係に重ねてしまい………。
私は………何をしようとした?
この双子の命を、取ろうとした?
私がもし、クロを殺されてしまったら、どうなってしまうだろうか。
少しでもそのことを考えただけで、気が狂いそうになる。
私は今、それほどのことを、この双子にしようとしているのだ。
「あ………ちが……」
私は思わず、手に持っているその双剣を落としてしまう。
横にいる『
『
「待って!!!! やめて!!!! お願い!!!!!!」
私は全力で叫んで、『
が、私には止められない。距離的に間に合わない。
何でこんなに焦ってるんだろうか。
所詮他人だ。気にしなくてもいい。
………思えるわけない。そう、思えたらどれだけ楽か。
「やめて………お願い………」
私は今更、自分のやろうとしたことの重大さに気づいた。
人の命。それはたかが一つのものであろうと、決して軽んじていいものではない。
私はそれを、あの双子に自分とクロを重ねる事でやっと気づいた。
でも、気づくのが、遅かった。
だって、助けようとしても、もう………。
「『召喚・桜銘斬』!!」
そんな私の耳に、つい最近聞いたような、1人の少女の声が響き渡る。
そこには……。
「誰も、犠牲になんてさせないから!」
昨日会ったばかりの、桃色の髪の魔法少女が、『
彼女は、後ろにいるヒヨリを守るかのように、『
それにしても、さっき桃色の髪の少女が使った魔法は、もしかして………。
「『無』属性の、魔法……?」
彼女は先程、何もない空間から、桜の模様の入った刀(確か名は、『桜銘斬』だっただろうか?)を『召喚』していた。
あんな魔法、『無』の属性以外にできる芸当ではない。
「ヒヨリちゃん、手、貸して」
そんな彼女は、ヒヨリから差し出された手を掴み、お互いに手を握り合わせた状態になる。そして………。
『
手を繋いでいる箇所に、
合わさった魔力は、単純な1+1の関係だとは思えないほど、高火力とかしており………。
一瞬にして、『
「君は……昨日の白い子……」
これが、魔法少女……。
この世に蔓延る悪から、人々を守る正義の戦士…。
この手を血で染めようとした私には、眩しすぎる。
私は、思わず後退りしてしまう。
後ろめたい気持ちと、純粋に敵として相手にすることに対する恐怖心が湧いて出てしまったからだ。
私はそのまま、逃げようとする。
だって、このままいけば、私も消し炭にされてしまいそうだったから。
「待って!」
けれど、当然、そんな私を逃がしてくれるはずがなく。
「私の名前は
しかし、彼女の表情からは敵対心なんて微塵も感じられなくて。
「私の名前は……シロ。姓は、ない」
思わずそう、答えてしまった。