『
魔法少女達は『
そうだ。『
それだけ強い『
ここに私が追撃を入れれば、多分2人を倒すことは可能だろう。
いや、だが。
別にいいじゃないか。待っていれば、怪人達が勝手に魔法少女を始末してくれる。私が介入する余地などない。放っておけばいい。私はただ見てるだけでいいのだ。
考えなくていい。
待っていれば、全て終わる。
何も考えるな。何も………。
何で私は、考えないようにしてるんだろう。
疲れるから? じゃあ、何で疲れるんだろう。
頭を使うから。それはそうだ。
でも違う。別に、頭を使うことなら普段からやっている。じゃあ、何で今、考えると疲れてしまうんだろうか。
魔法少女が、怪人にやられている光景を見るのが辛いから?
私は、魔法少女のファンだったのだろうか。
いや、そんなことはない。
じゃあ、何故……。
「液体型の怪人には、攻撃が通じないみたいね。困ったわ」
「妖精型の怪人も、宙に浮いていてこちらの攻撃が届きづらいみたいです。中々厳しい状況ですね」
2人の少女は、互いに戦況の報告をしている。会話から察するに、彼女らには状況を打開する手段はないのだろう。
今、私が2人を攻撃すれば、2人を追い詰めることができる。魔法少女の首を、持って帰ることができる。
攻めるなら、今だ。
私はステッキを手に取り、『光』の魔法で2人の魔法少女へ攻撃を加え始める。
「あの子も動き出したみたいだわ!」
「八重さん! 怪人の相手を頼みます!」
私が動き出したことにより、2人の魔法少女は分担して戦うことにしたようだ。
八重と呼ばれた、青い髪の少女は怪人2体の相手を。逆に、『風』の魔法を扱う、緑髪の少女が私の相手をしてくれるようだ。
「貴女が、シロさんですね。私は
どうして? ああ、そっか。戦う理由、か。
そんなの、決まっている。
「私は、魔法少女を倒すために、組織で生まれた魔法少女。貴女達と戦うのが、私の役目!!」
そうだ。何を迷っているんだ。私の役目は、魔法少女を、殺害すること。そのために私は生み出された。それがこなせなければ、私の存在意義などないし、クロとの生活も失われてしまう。
だから、殺す。
私は、束という魔法少女の体勢を崩すために、彼女の足に蹴りをいれる。
まさか魔法を使わずに攻撃するとは想定していなかったのか、束は私の思惑通りバランスを崩す。
「もらった!」
私はそのまま、束にステッキを向け、魔法を放つ。
束の体は、私が魔法を放った瞬間、横方向へとすっ飛んでいった。
私が魔法を放った方向とは、全く異なる方向だ。
つまり……。
「避けた?」
「痛いですね…………」
にしては、束の体は思いっきり壁に叩きつけられている。
いや、そうか。
「もしかして、『風』の魔法の使い手?」
「正解ですよ。『風』の魔法で無理矢理貴女の攻撃を回避したんです」
私の問いかけに、束は素直にそう答える。敵に情報を簡単に渡してしまっていいものなのかとも思うが、使っている属性については戦っていればバレるし、問題はないのだろう。
「まあ、避けなかったとしても、あの攻撃では私を倒すことはできなかったと思いますよ」
「別にあの攻撃一つで仕留めようとしたわけじゃない」
束はあの時バランスを崩していたのだ。そこで彼女に一撃を加えることができれば、その一撃では倒せなくとも、なし崩し的に彼女に何度も魔法を撃って、倒すことくらいできた。だから、私はそう反論したのだが。
「そうですね。でも、貴女には私を殺すことはできないと思いますよ」
「何が言いたいの?」
「櫻さんから聞きましたよ。貴女、怪人が魔法少女のことを殺そうとした時、咄嗟に庇おうとしたみたいですね。貴女にとって、敵であるはずの少女を」
「……………」
「大人しく降伏してください。悪いようにはしません」
本当は、分かってる。
私に誰かを殺す度胸なんてないことくらい。
組織のやってることは、きっと『悪』なんだろうということも。
本当は、こんなこと、やめたいって思ってることも。
『あんまり、自分を押し殺さない方がいいと思うよ。ゆっくり、自分の気持ちと向き合ってみたら?』
クロの言う通りだ。結局私は、自分の気持ちと向き合うことを避けて、自分を押し殺していたんだ。
気づいてた。けど、蓋をしてた。
だって、考えたところで、無理なんだから。
私は組織に逆らえない。組織は私の
私は黙って、ステッキを束に向ける。
「従うつもりはない、ということですか」
それに応じるかのように、束もまた、ステッキを構える。
私は横目で八重という魔法少女が『
『
束は私に降伏するよう要求してきたが、そんなことを言えるような余裕は彼女らにはなかったのだ。
「お仲間さん、危なそうだね」
そんな束に対して、私は煽るようにそう言い、挑発をする。
彼女の冷静さを欠かせ、戦況を有利に動かすためだ。
「あの怪人達、ただの怪人というわけではないみたいですね……」
だが、束は冷静さを欠くことはなかった。ただ、彼女の注意が八重と『
私はその勢いのまま、束との戦闘を開始する。
お互いに魔法を撃ち合い、多数の弾幕が空中を跋扈する。
互いに回避しては攻撃し、回避しては攻撃しを繰り返す。
対魔法少女の戦闘は、クロとの訓練でしっかり取り組んできた。
そのおかげか、私の攻撃に、束は対応が遅れつつある。
悲しいことに、このままいけば、私は彼女らの命を奪うことになってしまうだろう。
逃げたい。
嫌だ。
この手を汚したくない。
帰りたい。
クロは今頃、組織で呑気に訓練にでも取り掛かっているのだろうか。
羨ましい。
何で、私はこんなことしなきゃいけないんだろう。私の方が訓練に真面目に取り組んで、実力が高かったから?
それなら、クロでよかったじゃないか。クロの方が、魔法の才能はあった。私なんかより。
私じゃなくて、クロがやれば………。
…………やめよう。
クロは何も悪くないのだから。
いくらここで現実逃避したって、現状は変わらない。
「ごめん、なさい……」
私は、罪悪感からか、思わず小声でそうこぼす。
きっと、彼女のことを、大切に想っている誰かは存在するんだろう。
私がクロのことを大事に想っているように。
私は今から、そんな彼女達の命を奪うことになる。
だから……。
「ごめんなさい………」
少しでも、罪悪感が薄まるように。
「ごめんなさい…………」
私は何度も、そう呟きながら、攻撃を繰り返していく。
見れば、八重という少女は、『
束もまた、私の攻撃でボロボロになってしまっていた。
そんな光景を見て、私は………。
何故か、涙が溢れ出て止まらなかった。