組織に帰った後、当然ながら私には罰が与えられた。
当面の間、クロとの交流を禁止する、という罰が。
組織において、クロといる時間が唯一私の心が休まる時間だったのだが、それが今、奪われた。
組織には私の味方なんていない。唯一味方と呼べる相手とは会えない。
組織にいてやることと言えば、ずっと魔法の訓練だけ。ただひたすらに、自分の魔法を極めることだけを目的として、毎日ただ過ごすだけ。
知らなかった。1人がこんなに辛いなんて。
知らなかった。実は私は、こんなにも自由がない環境にいただなんて。
外に出て、気付いた。自分がいかに今まで狭い世界にいたのか。どれほど組織に縛り付けられていたのか。
それに、魔法の訓練をただするだけじゃ、ダメだ。
私は、次に外に出る時、1人でも魔法少女を討伐できるようにと、そう命令されてしまっている。
もし、実行できなかったら?
もし、組織から、『こいつは無能だ』と認識されてしまったら?
捨てられるに決まってる。
私はどうせ替えが効く。そもそも、魔法少女じゃなくても、怪人にやらせたっていいのだから。
私の有用性を示さないといけない。
じゃないと、誰も私を必要としてくれなくなる。
私の存在価値が、なくなってしまう。
生きていたいのに、
生きていいって肯定してくれるものが、なくなってしまう。
そんなのは嫌だ。だから、頑張らないと。頑張って、頑張って………。
……私が戦った魔法少女の子達も、こんな風に特訓したりしてるのかな。
ふと、そんな考えが、頭によぎる。
何気なく考えたことだけど…………けど、よく考えてみれば。
あの子達も、自分の街を守るために必死になって戦っていて。
誰か大切な人のために、命をかけていて。
それなのに、私は、自分のことばかりで。
「もう………嫌だ……」
他人の……それも、誰かのために必死に足掻いているような人の命を奪ってまで生きて、それで私は自分が生きていいと、そう肯定することができるだろうか?
できるわけがない。きっと一生、引きずってしまうに決まっている。
結局、意味なんてないんだ。
どう足掻こうが、私は幸せにはなれない。
組織にいたって、誰かを殺すことを強要されるだけ。
なら、いっそのこと。
「どこか遠くへ、逃げてしまおう」
どうせなら、外の世界を満喫したい。
組織から抜け出して、色々な場所に行って、それで死ぬなら、それでもいい。
どうせ死ぬなら、自由に生きたい。
だから、私は……。
訓練が終わり、私は自身の体に浄化の魔法をかけ、体を清める。
ここまではいい。問題は………。
「アスモデウス……」
組織の幹部の1人、アスモデウス。
私やクロのお目付役でもあり、仕事人間って感じの男だ。
私語は一切せず、ただひたすらに仕事をこなす。組織のために、最適化された動きを、淡々と行う、機械のような男。
そんなやつの監視を潜り抜け、外の世界に出ること。それは不可能だ。仮に実行して、上手くいったとしても、脱走したことはすぐにバレるだろうし、捜索されれば一発で見つかってしまう。
なら、結構するなら、次の任務のときだ。
魔法少女を殺せ、その任務が下れば、私には外出の許可が出る。そうすれば、私が組織内にいなくても、何も違和感はないし、私がどこか遠くへ逃げても、暫くは気付かれずに済むだろう。
「とりあえず、今日は寝よう」
怪しい行動は極力控えた方がいい。
自由になれる、そんな日を希望にして、毎日同じ生活を、耐え忍ぶことしか、今の私にはできないのだから。
★☆ ★☆ ★☆ ★☆ ★☆
そして、ついにやってきた、任務の日。
私はようやく、この組織から解放される。
『ビリュ………』
同行者として、『
ちなみに、『
まあ、どうでもいいか。どうせこいつらとは、短い付き合いなわけだし。
さて、まずは櫻と出会うところから……。
「来ましたか、シロさん」
そこにいたのは、櫻、ではなく……。
そして、その場にいたのは彼女だけではなく……。
「ふん! 悪党め!! 知っているか? この世に悪が栄えたたぬきはない!」
「焔ちゃん……たぬきじゃなくて試しじゃないかな………」
「あっはは! 相変わらずだなー、うちらの焔は」
他にも、青、黄、赤と、信号機を彷彿とさせるような、三組の魔法少女がいた。
燃えるような赤髪を持つ、焔と呼ばれた魔法少女は、自信に溢れていて、見た感じ少しおバカな感じの子のようだ。青色の髪をおさげにした少女は、少し気弱そうで、あまり自分に自信がなさげ。金髪の子はザ・ギャルって感じの見た目で、多分だけど、この子それなりに強いと思う。
前の先頭から、束の実力はある程度把握した。彼女は、勝てはしないが、『
金髪の子と赤髪の子は、どちらもそれなりに実力がありそうだし、2人で『
つまり、こいつらに『
とりあえず、『
何もかも、しがらみから解放されて……。
それで私は、どうするのだろう?
いや、考えなくていい。またあの縛り付けられて、がんじがらめにされるような生活に戻るくらいなら。
私は自由を手に入れる方が、きっといい。
その先が、野垂れ死ぬだけだったとしても。
どうせ死ぬなら、抗ってみたい。
だって、そうしないと……。
仕方ないんだから。誰も、私の代わりに私を助けてはくれない。
私を助けられるのは、私だけなのだから。
私を理解できているのは、私だけなんだから。
るなじゃ、私の心の懐には入れない。
櫻は、私1人を見てくれているわけじゃない。
クロと一緒にいても、私に自由は訪れない。
だから、私は私のためだけに。
私の心を1番理解していて、私1人だけを見ることができて、私に自由をもたらすことができる。
そんな、自分だけを信じて、生きていく。
それでいい。きっと。それで。
「『
私は2体の
作戦通りだ。
このまま、私はこの戦場から逃げる。
誰も私を止められやしない。
誰も私を阻むことはできない。
そうだ、解放されるんだ。何もかもから。
他人のことを考えたって、しんどいだけだ。
なら、自分のことだけ考えればいい。
組織も、クロも、櫻も、るなも。
どうでもいい。
全てが、どうでもいい。
だって、お前らはどうせ、私の心を救ってくれやしないのだから。
私は、駆ける。
ただひたすらに、走る。
私の肌に触れる風が、どこか気持ちが良い。
そうか、これが自由か。
束縛から解き放たれた私はまるで、羽の生え、大人になった鳥かのようで。
翼が生えた自分に、どこか酔いしれていた。