とあるオタク女の受難(裏世界ピクニック編)。 作:SUN'S
「小桜さん、これ何ですか?」
そう言って紙越空魚はあいつの置いていったハンドセット型の電話機を見ており、興味深そうに持ち上げたり引っくり返している。
「電話」
「いえ、それは分かってますよ?でもケーブルもないのに使えるんですかこれ」
「それは裏側の相手に使えるやつ。こっちが裏側の干渉を受けにくいケータイ…なんだよ」
私が机の引き出しを開け、ごとりと音をさせながら彼女の前にケータイを置くと驚いたような表情で私を見ている。なんだ、なにかしたか?と考えるも原因が分からない。
ちらりと空魚ちゃんの隣を見ると二科鳥子も硬直していた。とりあえずケータイは仕舞っておこう。そう思って手を伸ばしたら鳥子に二つとも先に奪われた。
「……おい」
「これサツキも持ってるの?」
「サツキは持ってない。それより返せ、お前らに持っていかれると私が困る」
私の言葉に渋々といった感じで返してくる。
「こういうのはあんまり渡したくないんだけど」
ぎぃっと音を立てて椅子を降る。
ソファの座る部分を押し上げて収納スペースを二人に見せる。ここにあるのはあいつが作るだけ作って置いていったものばかりだ。
あいつとの連絡に使っているのはコンドルデンワーだけだし。あとは保管してるか、いつでも使える場所に置いてある。
「USBメモリとケータイ?」
「こっちは腕時計とカメラだ」
「それはメモリガジェットだ。裏側の素材を使って作られたサポートアイテムみたいなやつ、少なくとも私は使ってないから新品だ」
私はそう言うと鳥子の持っていたUSBメモリをケータイの充電口に差し込む。するとケータイは形状を変形させてクワガタになる。
「「え、すごっ!?」」
「そりゃそうだろ。これ作ったやつは裏側にサツキを探しに行ってる。こういうものが無いと向こうじゃ探索も儘ならないらしいからな。……幾つか貸してやる」
正直に言えば貸したくない。
「空魚ちゃんが持ってるのはスパイダーショックっていう高性能腕時計だ。私は使ったことないけど、特殊ワイヤーを使って高所を登ったり降りたりできる」
「ねえねえ、こっちは!?」
「それはバットショットだな。静止画・撮影・リアルタイムで動画をケータイに転送してくれる」
「これを作った人ってどんな人なんですか?」
私の説明を遮って空魚ちゃんは聞いてきた。
それに鳥子も賛同するように私を見てくる。そういえばあいつがどんな人とか考えたことないな。気づいたらサツキも含めた三人でいたし。
「あいつは良いヤツだよ」
なぜか鳥子も空魚ちゃんもキョトンとしている。なんだよ、なにか言えよ。そんなことを思いながらあいつの用意してくれた作り置きの蒸し鶏のサラダを頬張り、私を見つめる二人を睨む。