邪神に転生させられたポケモンオタクとチャンピオン(予定)の二人旅 作:電脳図書館
会場中の視線がステージに立つ俺とアンノーンに集中する。おかしい俺はジムに挑戦する旅を続けていたはず。そりゃ折角ポケモンの世界に転生したんだからジムだけじゃなくてコンテストにも興味はありますよ?実家のテレビで観戦してたし「ジムバッジ集めが一段落したら一度出て見たいなー!」的なことも考えてましたよ?でもさー、今は違うじゃん!まだ俺ジムに挑戦してすらいないんだぜ?しかも手持ちはアンノーンとコイキングとか原作の序盤のNPCトレーナーの方がまだまともな手持ち持ってるよ!!うちの将来のエースはいまだに化石だしな!何でこうなったんだっけ?
【二時間前】
ヨスガシティに到着した俺達はポケセンで宿を取ると、早速コンテスト会場に向かった。
今回はリボンが一個以下の駆け出しが参加権利がある。大会ごとに大会を制したリボンの数によって出場できるか決まる感じだ。
「コンテストは初めてですか?」
そうそう、会場の受付のお姉さんが懇切丁寧にコンテストのことを教えてくれたんだよな。
俺もこの世界のコンテストと原作やアニポケのコンテストとの違いを知れたのでありがたかったのだけど・・・。
「あ、ハル!コンテストの参加者が出そろったみたいよ」
「当日に飛び入り参加するトレーナーいやコーディネーターの為に少し前に発表するんだな」
「はい、当日参加枠でご参加することになります。頑張って下さいねハル様」
「モチのロン・・・ん?」
「あれ?」
一瞬受付のお姉さんの言葉が分からずフリーズする。その様子にニコニコ笑顔で応えるお姉さん。
「ご安心下さい、既にハル様の選手登録はこちらで既に済ませてあります。最初の大会で興奮するのも分かりますが次からはもっと早くからの登録をお勧めしますよ?」
「「え」」
「え」
・・・如何やらお姉さんは俺がコンテスト参加者だと思っていて、当日参加枠の締め切り時間が迫っているので気を利かせて登録してくれたようだ。勿論俺達に参加する意思なんてないので、直ぐに断ろうとしたのだが、参加者全員が出場する前提の段取りが出来ていてここでドタキャンすれば、更に調整を必要としスタッフの皆さま方に迷惑を掛けてしまう。世間の皆さんからの心証も悪くなるだろう。
とはいえ所詮駆け出しレベルの大会なので、それほど記憶に残らないだろうしドタキャンしても大した影響が無くあったとしても自分だけで済むだろうが、それは今の所の話だ。
将来どうしてもコンテストに出る必要が出て来たときに足かせになるだけでは無く我らがチャンピオン(予定)シロナがチャンピオンになったときにこのことが知られれば、マスゴミの連中に親友兼当時その場にいたということで難癖を付けられてしまう恐れもある。マスゴミは前世に比べれば遥かに少ないとはいえ用心しておくべきだ。それに俺が参加してさえしてしまえば例え惨敗しようが、駆け出しという立場もあって余り目立たずそれらのトラブルを回避することが出来るだろう。ならば答えは一つ!
「そうそう、こんな感じだったな」
皆に聴こえない様に肩を竦ませながらぶっつけ本番で、第一次審査を受ける。
「いくぞアンノーン打ち合わせ通りに」
「ノーン!」
『ハル選手、アンノーン共に気合十分です!それでは第一次審査スタート!!』
ポケモンコンテスト運営からの無料レンタルで借りた歌のお兄さんを彷彿とさせる衣装を身に纏い、またまた無理言って会場の小道具を借りた俺が立てたプランは至って簡単。そもそも大した準備をしてこなかった俺達が駆け出しとはいえしっかり準備して来たコーディネーター達に総合力で勝てる道理はない。
ましてやポケモンがアンノーンやコイキングなら尚更だ。かと言って最初からあきらめるのも時間の無駄なのでここはメタを張ることで如何にかしよう。
「会場の皆ー!おもちゃは好きかな?」
「「「「「「好きー!!」」」」」」
ノリのいい子達で大変助かる。そうメタとは観客に対するメタなのだ!言うまでも無いかもしれないが、コンテストのスタジアムでの鑑賞には料金が掛かる。それは上のランクに行けば行くほど高くなるが、駆け出しレベルの今回の様な大会では、その料金が非常に安く10歳未満の子供は無料で観戦出来る。
恐らくコンテストへの憧れと運営費に宛がう為の財源確保の為にやっているのだろう。
実際10歳未満の子供連れの家族は無料の対象以外の人の料金も幾らか割り引かれるので、運営側の涙ぐましい努力と工夫が伺える。つまり観客の殆どは小さい子供とその両親が圧倒的に多い。
ならばその子供と親御さん達が楽しめるステージにすれば評価が通常よりも上がるということなのだ。
「そうだよね。皆おもちゃ好きだよね!それじゃアンノーン、そのおもちゃ達に命を吹き込もう!」
「ノーン!」
借りて来た小道具の一つ、それがブリキポケモン人形などのおもちゃ達だ。彼らをアンノーンのサイコパワーを使い観客の前で動かしていく。ロボットは観客席の上を飛び、可愛いお人形は観客に手を振ったりお辞儀をするなど子供を楽しませ、子供がはしゃぐ姿を見て親御さん達からの評価も稼ぐという一石二鳥の策である。アンノーンは単体ではこのサイコパワーは凄く弱く技にもならないほどだが、小さいおもちゃを操るくらいなら出来るのだ。ここで俺自身も借りたハーモニカを手に取り演奏をして観客のボルテージを上げていく、因みに曲は前世の日本人なら一度は聞いたことがあるあのチャチャチャである。
前世で最後に演奏してから今世も入れて、十数年のブランクはあるが問題無く演奏することが出来た。
伊達に中高の夏の青春を6年間捧げただけはあり、魂が感覚を覚えていてくれて助かった。
「わぁ可愛い~!」
「ロボットが空飛んでるかっけええ!」
「なんだか楽しい気分になるわね」
よし、男女の子供と親御さんの評価は上々。審査員の趣味趣向を調べる時間は無かったがここまで観客が盛り上がるなら悪い結果にはならないはずだ。まぁ評価は後だ今は子供達を楽しませることに終始しよう。
その後持ち時間一杯までアンノーンと共に子供達を楽しませ、親御さん達にも笑顔を作って上げることが出来た・・・何か10歳なはずなのに動くおもちゃにやたらと興奮している我らがチャンピオン(予定)がいたような気がしたが、第二審査まで進んだのでその為の準備もあるし、見なかったことにしてやろう。
読了ありがとうございます!因みにハルがハーモニカを演奏出来る理由はまた今度書こうと思います。