邪神に転生させられたポケモンオタクとチャンピオン(予定)の二人旅 作:電脳図書館
誕生日会の翌日。俺はシロナの部屋に呼ばれナナカマド博士から頂いたポケモンのタマゴについて話し合うことになった。
「取り敢えず一晩中ベッドの中で抱きながら暖めて見たのだけど、変化はないわね」
「そりゃゲームじゃないんだから一日じゃ孵らないさ。この町にはタマゴ孵化装置もないしな・・・ほのおのからだ持ちがいれば話は別だが」
「ほのおのからだ?」
「ポケモンの特性の一つだ。バトルでは直接攻撃を受けた時に30%程の確率でやけどを与える効果だが、それ以外にもタマゴの孵化を早める効果もあるんだ。有名なのはブーバーとかだな」
前世ではウルガモスとかがメジャーだったが別の地方のポケモンだし、そもそもこの時代ではアララギ博士が複数の個体を発見する前なので、伝説や幻ポケモン扱いのままだから俺が知っているはずがないから言えないけどな。
「そういう特性もあるのね。でも私達は持ってないわよ?」
「ああ、だから地道に温め続けるしかないだろう。後は偶に外に連れ出すといいかも知れないぞ?」
「あ、それお母さんから聞いたことがあるわ。クロナがまだお母さんのお腹に居たころにも同じことをしてたわね」
その後は俺のアドバイス通り外にタマゴを連れ出すようになったが、流石にシロナ一人だと危ないので俺か家族の誰かが一緒に出掛けるときに限られた。町の中を散歩したり210、211番道路のカンナギタウン近くで仲の良い野生のポケモンにタマゴを紹介していた。俺やクロナも触らせてもらったが馴染みのある鶏の卵よりも艶々していて固く、温かい。そうそうこの世界には普通に鶏とかの動物はいるみたいでポケモンの一部に食べられる種類がいる感じだ。
「まぁお陰で前世と同様に気軽に卵が使えるのはありがたい」
ポケモンのタマゴをシロナが貰ってから数週間経つ。今日は雨という事でシロナの家でタマゴを暖めている。俺はキッチンを借りて卵、小麦粉、適量のバターを掻き混ぜて生地を作っている・・・因果なもんだな。前世では多少料理を作るという程度だったが、シロナの世話をしていたら料理の腕やレパートリーが増え簡単なお菓子とかも作れるようになってしまった。昔田舎だからあまり甘いものを食べたことが無いようなので朧げな記憶でバニラアイスを作ってやったら見事に甘党に目覚めているが、アニポケとか見るに時間の問題だろうから気にしなくていいだろう。
「バタークッキーの型は・・・ポケモンの奴だとシロナが喜ぶんだよな、俺はたべっ子どうぶつを作ってる感覚だけど。あ、あれはビスケットだったか」
今世にはない、前世の幼少期にお世話になったお菓子に既視感と懐かしさから思いを馳せつつ、クッキーの型を取りオーブンに入れて少し待つ。外に目を向けると先程よりも雨が強くなっている季節は今は春の折り返しになったばかりなので俺の家と同様にシロナの家も暖房器具は仕舞っているはず、だとすると家の中の気温が多少冷えて来てしまうだろう。何か温かい飲み物もあった方がいいな。
「確かインスタントのココアとモーモーミルクがあったっけ。うーんバタークッキーとココアは甘すぎるよな。身体に悪いし、甘味がくどくなる・・・シロナなら問題なく頂くだろうけどここはモーモーミルクのホットミルクにするか」
バタークッキーがオーブンで焼かれている間作ってしまおうとモーモーミルクを鍋に入れて中火で沸騰しない温度で温めていく。ミルクを温める時に出来る膜は好きな人もいるが俺とシロナは無い方が好みなので温めている間よく混ぜて膜が張らない様にする。今回は長老とお婆さんは買い物に出ていてクロナはその付き添いで出かけているので俺とシロナの二人分しか作っていないが、帰って来た時に身体が冷えてるだろうから作ってやるか。
「ん、オーブンも終わったか丁度いい」
ホットミルクが良い感じに出来て来るとオーブンで焼く時間が過ぎたことを告げるアラームが鳴ったので、オーブンから取り出しバターの甘い香りを漂わせているのを確認すると帰って来るクロナ達の分を取り分けてから皿に盛る。ホットミルクも火を止め同様に二つのコップに移すとホットミルクは温かいながら飲みやすい温度に、バタークッキーは粗熱を取る為に少し放置しその間に後で使うホットミルク用の調理器具以外の余ったバター、小麦粉、エプロンを片付け、おしぼりも二人分用意しキッチンを軽く掃除すると粗熱の取れた俺とシロナ用の皿に盛ったバタークッキーの一つを頬張る。
「モグモグ、うん問題無いな」
味見を終えると二人分のコップと皿をトレーに乗せシロナが椅子に座ってタマゴを暖めている居間に向かう。着くと待ってましたとばかりに笑みを作るシロナは如何やらこの地方の伝承、シンオウ神話の絵本をタマゴに読み聞かせていたようだ。この町はシンオウ神話と縁深い土地で伝承も多数伝わっていてシロナは子供ながらそれらに強い興味、好奇心を抱いている。その興味と好奇心が将来彼女を考古学の道に導いたのかも知れない。
「あ、出来たのね。さっきからバターとミルクの良い香りがしてのよね!」
「鼻がいいなお前は。バタークッキーはクロナ達の分は取り分けているから俺達で全部食って大丈夫だ。まぁ取り敢えずホットミルクを飲め冷えて来ただろう?」
「あ、やっぱりホットミルクは其の為に用意してくれたのね。丁度冷えて来た所だからありがたく頂くわ」
「それから食べる前におしぼりで手を拭くのと、バタークッキーの粉が手に付くだろうから食べ終わったら再度おしぼりでちゃんと手を拭いてからタマゴに触れる様に」
「はーい!」
おしぼりで手を拭くとシロナはご機嫌な様子でタマゴをタオルケットに包んで、椅子の上に置くと俺の横に座ってホットミルクを美味しそうに飲んでいく。
「ゴクゴク、ふぅ温まるわ。温度も丁度いい」
「なら良かった。ほれバタークッキーも食べて見ろ」
「ええ!・・・んー!サクサクで程よい甘さとコクがあって美味しい!それからこのクッキーの形ってポケモンよね?」
「シロナはその方が好みそうだと思ってたからな。前に作ったときもポケモンの形のクッキーを選んで喰ってたし」
そう言うとシロナは一瞬きょとんとした顔をするが、直ぐにニコリと笑って先程よりも機嫌が良くなっている。
「ふふ、良く見てくれているのね」
「急にどうした?」
「このホットミルクも雨が激しくなって冷えない様に作ってくれたのよね?冷えて来るだろうなと思っていたらホットミルクの良い匂いがして来たから嬉しかったわ」
「お、おう」
想像以上に気遣いが好評だったのが少し恥ずかしくなるが、喜んでくれているのはうれしいもんだ。俺もシロナもお菓子とホットミルクで身体が温かくなってくる。このまま雨が止めば気温もあが、あが
「上がらねぇよ!!寧ろ雪が降り出したんですけど!?」
「寒い寒い!」
俺とシロナが外の吹雪により冷え切った室内でタマゴを挟んで抱き合いながら寒さに震えている。何だこの吹雪は季節的にありえんだろ!
「ち、長老達は?」
「は、ハクタイシティに買い物に行ってて友人の家を訪ねたら帰って来る予定だったのだけどさっき電話で、この町には今夜は帰ってこれそうにないそうよ」
「え、お前一人?大丈夫か?」
「・・・だからハルの両親に今夜はこの家に泊って欲しいとお願いしたそうよ」
「根回しが早いな、夕食は温まる料理を出すとして・・・あ、寝間着と寝具はどうしようか?」
「だ、大丈夫よ!こんなこともあろうかとハルの寝間着の予備は家にあるから!」
「なんで?「因みにハルの家には私の寝間着の予備があるから!」えぇ」
確かにクロナが生まれて来る前は良くお泊りなどをしていたが・・・だからって幼馴染の寝間着が双方の家にあるっておかしくないか?
「し、寝具も私のベッドで一緒に寝ましょう?昔は一緒に寝たりもしたし・・・というか寒くて一人で眠るとか無理!タマゴも冷え切ってしまう!」
「い、色々言いたいことはあるが緊急事態だ仕方ねぇ、取り敢えず今は今夜を乗り切ることを優先しよう!」
寒さに震えながら互いに頷くと俺は簡単にうどんを作り、風呂を沸かして食事と風呂を済ませるとまだ寝るには早い時間帯だが寝間着に着替えシロナとタマゴを挟んで一緒にベットに入った。
「少し狭いけど我慢してね」
「俺達も成長したからな。もう幼児っていう体形じゃなくなったし」
抱き合っているとシロナも随分と少女らしい体付きになっているのを感じる。前世は二十歳を超えていたのである程度肉体に引っ張られるにしても十歳の少女をそう言う目や欲は湧かないが、目の前にいるのはあのシロナである。前世の女性などよりも何倍も美人で、幼い現在でも十分に美人と言える。これで肌のケアは兎も角化粧をしたことは無いというのだから恐ろしい。伊達に前世で幼少期の姿がメディアやアニポケで登場したときにネットをお祭り騒ぎにしただけはある。俺の場合は長い付き合いになる為傍から見たり、話すだけで動じることは無くなったが流石に抱き合うと感触やら匂いやらで意識してしまうが、幸い俺達の間にあるタマゴのお陰で抱き合っても胸とかは接触しないで済んでいる・・・グッジョブタマゴ!
「それにしても何でこんな季節に吹雪なんて・・・」
「そうだな(異常気象、この世界じゃポケモンが関係していることが多いんだよな)」
寒さを誤魔化す為談笑をしていると互いに瞼が重くなっていく。そのまま眠気に身を任せて眠るとしよう明日は晴れてくれるといいのだが。
『・・・きよ!』
『・・起きよ!』
『ハル起きよ!』
「うるせぇ糞邪神!」
『ぐおおーー!?目を覚ましてそうそうアッパーカットだと!?』
人が寝ていたのに急に起こすんじゃね!こいつがいるということはここは俺の夢の中かと俺に攻撃されて、悶絶しているアルセウスを見る。
「テメェあれだけのことやって九年以上連絡よこさないとはどういう了見だこの野郎!」
『こちらとて安易に世界に介入するのは避けねばならないのだ・・・転生の件は・・・うん、まぁシロナという少女と仲良くやれているからいいであろう?』
「良くないです!・・・で、今回俺の夢に現れた理由は今の異常気象か?」
『その通り、予想はしていると思うがこれはとあるポケモンが激しい戦闘を行ったことによる影響だ』
「世界規模の異常気象となると伝説辺りか?」
『ああ、イッシュ地方に存在する抜け殻にして氷の竜と言えば分かるであろう?』
「キュレムか!」
BW、BW2で出て来る第三伝説、ストーリーでは後者に絡んで来る重要なポケモンである。なるほどあの吹雪はそういうことか。
「だがキュレムがそれほど激しい戦いをするって相手も相当な・・・」
『無理もない、キュレムとて自身が見たことも無いポケモン、オーラを持つ相手なら全力で応じるしかあるまい』
「見たこと無い?それはイッシュ地方以外のポケモンって意味か?それとも」
『この世界外のポケモンということだ』
・・・!?おいそれってもしかしてあいつらか!
「ウルトラビースト!?おいおい時代を先取りし過ぎだろ!」
『私も予想外だった。最初は時空の歪みを観測しただけだったからな。大方パルキアとディアルガがやらかしたか偶然次元の穴が開いたかくらいに考えていたのだが・・・もしかすると偽装だったのかも知れん』
「偽装か・・・とするとウルトラホールがこんなに早く開通したのも意図的な可能性もあるな」
『今回は幸いキュレムが追い返した形で収まってくれたが今後出現頻度が増えてくれば各地の伝説のポケモン達だけでは対処出来んだろう。しかし本来の歴史通り人間に任せようにも』
「ウルトラビースト自体の研究なんてまだしてねぇだろうしな。ウルトラボールに至っては技術的に作れるのかも怪しい」
十年以上前の時間軸となるとウルトラビーストを研究しているエーテル財団が設立されてるのかも疑問符が付く。おまけにあそこはゲームのサンムーン、ウルトラ・サンムーン、アニポケの三者三様で根本的な設定の違いがあるんだよな・・・恐らくウルトラホールの接続実験の事故から分岐するんだろうけど確か子供のリーリエ達が生まれた後の出来事だったはずだからまだルート分岐は起こっていないはず。
「ウルトラホールの研究が先んじて行われるようになるのか?だがウルトラビースト達が駆除対象じゃなくて保護対象になったのは事前の研究もある程度考慮されたのもあるだろうがぶっちゃけ関わった人の善良さと運にやる所が大きい。その事前の研究も出来ていない状況下で、今現在ウルトラビーストをどうするか決められる人達が同じ決定をするとは限らない・・・結構まずくないかコレ?」
最悪ウルトラビーストとの全面抗争もあり得てしまう。如何にか避けたい所だ
「しかし今の俺ではな。時間が足りないぞ色んな意味で」
『案ずるな。シンオウ地方に限定すれば時を司るディアルガ、空間を司るパルキアが居ればしばらくはウルトラホールの発生をある程度抑えられるように出来るだろう』
「その間に腕を磨けと。まぁキュレムとまともに戦える奴を相手にするとか今の状態だと死にに行くようなもんだしな」
『分かればいい・・・だが何もたせずに旅に出すのも無責任だな。君の誕生日の日、カンナギシティの遺跡を訪れよ。君に渡すものがある』
「む・・・分かった。あの遺跡の中だな?何とか人目を避けつつ行って見るよ」
『頼む、我らと関わり合いのある場所に干渉するのなら消費する力や現世への影響は最小限に抑えられるのでな』
「了解、所でスルーしてたけど何でさっき俺如きの攻撃で悶絶してたの?」
『この私は分身体でな、君とのやり取り用に作ったから戦闘力が皆無なのだ・・・コストカットは出来得る限るしなければいざというときに力が発揮出来ないのだ』
「えぇ・・・」
如何やら神様でも予算には勝てないらしい。
『ピピ!ピピ!!』
「ん、朝か」
朝の時間にセットした目覚まし時計が鳴り響く。俺が欠伸をしながら目覚まし時計のアラームを切ると大きな伸びをする。さて、朝飯でも作るかなと思っていたらシロナも起き出したようだ。
「うう、おはようハル」
「フガフガ」
「おはようさん、まだ寝てていいぞ」
「起きるわよ一人だけ寝てるとかだらしないしね」
「フガ!」
「分かった。今日はトーストにカリカリベーコンと目玉焼きの組み合わせでいいか?」
「美味しそうね!着替えて待ってるわ!」
「フッガー!!」
今日のモーニングを伝えると好評で眠そうだったシロナと
「フガ?」
「「あれ?」」
不思議そうな表情で俺達を見つめるフカマル。見た感じ俺とシロナの間で寝ていたようだ・・・そしてフカマルの最終進化はガブリアス。あ(察し)
「「た、タマゴが孵ってるーー!?」」
「フガフガ♪」
「わ、私お婆ちゃん達に電話してくる!!」
二人で驚いた後軽くパニクリながらも長老に電話をしに行く。一人と一匹になった部屋で、フカマルは目をパチクリしていた。
「まぁこれからよろしくなフカマル」
「フガ、フガフガ!」
フカマルの頭を撫でながらもう片方の手でフカマルと拳を合わせる。さて、こっからがようやっとスタートライン、あの邪神の言うとおりにするのは癪だが聞かなったら犠牲者が増えてしまうのは忍びない。より一層頑張って行くとしよう!
「あ、お婆ちゃん!そ、そのえっと夜にハルと抱き合ってたら(孵すことが)できちゃった!!」
『・・・なんじゃと!?等々やりおったかあの小僧!!』
シロナと長老は混乱している!
「待て待て待て待て待てーーい!?誤解する言い方してんじゃねぇぞシロナーー!!!」
その後必死の弁明とフカマルの鳴き声という証拠で誤解は解けたけど・・・勘弁してくれ(白目)。
読了ありがとうございます!色々オリジナル要素も出て来るので早めに旅に出したいのもあって駆け足気味ですが、次回の第三話もよろしくお願いします!