邪神に転生させられたポケモンオタクとチャンピオン(予定)の二人旅 作:電脳図書館
異常とも言える吹雪は幸い一晩だけの事だったのか今日は台風の後の様に良く晴れていた。俺とシロナは取り敢えず町の人達と一緒に雪掻きをしている。一晩でもそこそこ積ったのか少し大変だなと思っていると雪で遊んでいるフカマルを見てとあるアイデアを思い付く。
「という訳でフカマル頼んだぞ」
「フガフガ!」
フカマルの身体にロープでくの字に曲がったプラバンをロープで括りつけて「たいあたり」の勢いで走って貰えばショベルカーの様に雪掻きできるのではないかと考えた。そして案の定直線に置いてなら人間がやるよりも効率よく雪掻きをすることが出来たのだ!
「フガフガー!!」
「良い調子だな。その意気だぞー!」
「一応私のポケモンなんだけどね」
喜々として雪掻きを手伝うフカマルを見て苦笑するシロナ。今はこんなほのぼのした事後処理で済んでいるがあと数年もすればそうは言ってられなくなるだろう。あの二神だってウルトラホールの数が増えれば対処が間に合わない可能性もあるし、なんだったら別地方に開いたウルトラホールから出て来た個体が自力でシンオウ地方に渡って来る可能性もあるのだ油断は出来ない。とはいえ時空の異常やウルトラホールを先取りしやがった黒幕の対処を今から考えても情報がないので無駄になるのでまずはウルトラビーストの対処が先になるだろう。しかしこの時間軸で有効な対処方はアローラ地方の守護神足るカプコケコ達とZ技くらいなもの、後は純粋な実力でウルトラホールに返すしかない・・・この手もウルトラホールが既に閉じていたら使えない。その場合ウルトラボールが無い以上特定の場所で監禁するしかないが、ウルトラビーストにストレスを与え脱走の可能性も考えると厳しいと言わざるを得ない。
「将来的にはアローラ地方に渡ってZ技を修得したい所だけど、まずは地元で実力を付けないとな」
「どうかしたの?」
「いや、何でもない。旅に出た後どうするかって考えてただけさ」
「旅か・・・ハルも出るのよね?」
「ああ、勿論。流石に俺のポケモンもタマゴってことはないだろうからシロナと同じタイミングで旅に出ることになるだろうな」
「そう・・・」
御三家を貰えるかは分からないが俺までタマゴってことはないだろう。そんな少し先の未来を思いながらも日常は続く、長老によると俺の誕生日会にシロナは図鑑を渡されることになるという。もし俺がポケモンを貰うならその時だろう。その時までこの町から出られないので旅に出る準備を進めながら過ごす日常はフカマルが加わったこと以外は変わらない・・・いや、正確には少し違う。本来なら自分のポケモンを持ってご機嫌になるはずなのシロナだが時折考え込むような様子を見せる。最初は旅のことで不安がるのかと思って話を聞こうとしたが「今度話すから」と言われ聞き出すことは出来なかった。気にはなるが幼馴染兼親友シロナの言葉を信じて等々俺の誕生日会当日を迎えた。この日は普段よりも早起きし、アルセウスからの贈り物を受け取る為にこの町の壁画の遺跡に入る予定だ。人目の少ない時間帯かつ見咎められても「誕生日に浮かれて目覚めちゃいました!」とか言えばどうにかなるという我ながら完璧な作戦である。
「まぁまずシロナから逃げないと始まらないんだけどな!」
「スゥ・・・」
はい、今現在寝ているシロナに抱き着かれてベッドから出れません。何でシロナがお前んちいんねんというツッコミに関しては前日にシロナがお泊りがしたいと言い出して俺がそれを受け入れたからだ。…馬鹿かお前は?と俺でも思う。実際最初は断ろうとしたのだが・・・
『あ、そうよね。この前は非常事態だっただけで・・・幼馴染だとしても異性なんだし、もうお泊りとかしない歳なのよね。ごめんなさい!ハルは気にしなくていいから』
『ちょっと待て』
という感じで俺が自ら引き留めたのだ・・・だってシロナがめちゃくちゃ切なそうな顔してんだもん。あのまま断るとか無理だよ!あ、因みにフカマルは床の小型ポケモン用ベッドで寝てます。
「しかし遺跡に行くために無理矢理にでも離して行かねば!」
シロナの身体を引き剥がそうと腕を握って力を込めるが、シロナも中々の力で抱き着いているからか中々引き剥がせない・・・正直あのときと違い間にタマゴが無いからか色々当たっているので個人的には名残惜しいのだが、一時の気の迷いでアルセウスの贈り物をスルーするのは流石にどうかと思う。
「ぐぐ・・・!すまんシロナ頼むからどいて「う、ハル・・・暗いよ」・・・はい?」
抱き着く力が妙に強いなと思っていたがシロナの顔をよく見れば眠りながら怯えているように見える。もしや悪夢でも見ているのだろうか?
「ごめんなさい・・・きのみ喜んでくれるかと思って」
「きのみ・・・ああ、数年前の」
数年前の俺の誕生日。シロナは新鮮なきのみをプレゼントしてくれようと採取に出てくれたのだが足を踏み外してしまい自然に出来た縦穴に落ちてしまったことがあった。足も捻ってしまい動けないシロナを一番最初に見つけたのは俺だったっけ。俺も命綱を付けて縦穴に入っていきシロナを抱えて大人たちに命綱を引っ張って貰って救出したことを思い出す。
「大丈夫大丈夫、ちゃんとここにいるから」
「ん・・・」
少し涙も出ていたシロナだったが俺が頭を撫でてやると安心したように表情が穏やかになって寝息も静かになっていく。さて、こっからシロナを引き剥がしてまた泣くであろう幼馴染を置いて俺は遺跡に向かわなければならない!・・・。
「うーん、無理☆」
この世界はゲームでは無い、リアルなのだ。前世では心の中ではシロナさんと呼んでいたのを今世では呼び捨てにしていることからも分かるように前世では知りえなかった面や思い出がある俺の中では彼女はもうゲームのキャラクターと思う事は出来ない。一人の人間として、親友、幼馴染として見ている彼女を蔑ろにするつもりは毛ほども無い。
「にしても幼馴染の誕生日にお互いに過去の記憶の悪夢を見るとは、因果なもんだな」
思わぬ共通点に苦笑しつつも結局シロナを置いてはいけず時間は過ぎ、一緒に起きてからもシロナとフカマルは俺の傍を離れなかったので遺跡には行け無いまま夜になり誕生日会の時間になってしまった。
「改めて誕生日おめでとうハル!」
「ありがとうシロナ。とは言っても今日はずっと一緒にいたし、散々言われたから感動とかもないけど」
「確かにそうかもね。皆のプレゼントはどうだったの?」
「例年通り実用品と食べ物、本とかだな」
「ハルは小物とか部屋に置かないものね」
俺の部屋は実用品が小物を兼ねているレベルだからな。これは前世からそういう性分なのだが、この町に生まれて長いので身内どころか町の住人なら知っているレベルで広まっている話だったりする。
「だから私も実用品をプレゼントにしようと思ったのだけど、私が貰ったプレゼントと同価値の物を送りたいと思ってお婆様(前回は焦るあまり小さい頃の呼び方が出て来てしまっていた)に頼んでご友人の方から譲って頂いた物があるの」
「友人・・・ああ、この前友人に会いに行ってた理由はそういうことか。というかお金大丈夫なのか?」
「貯金を使おうとも思ったのだけど「旅に出るんだからそれはそっちの支度に使いなさい!」って言われてしまってね、タダで頂けたの。本当だったら私も受け取りに着いて行くのが筋なのだけど」
「タマゴがあったんだしょうがないさ」
俺に預けるという手もあったがやはり自分の手で温めたいと考えるだろう。それにもし行っていたら俺がタマゴを孵していただろうからこれで良かったのだ。
「それでそのプレゼントなのだけど・・・はい、『やみのいし』よ!」
「マジか!?」
俺の想像していた物よりも数段良い物がプレゼントされたので普通に驚いた。俺がプレゼントした『ひかりのいし』と対を成す『やみのいし』はドンカラスやムウマージへの進化などに必要になる進化の石だ。シロナのしてやったりみたいな顔を見るに狙って合わせたのだろう。
「なるほど自分からハードル上げるだけはあるな」
「でしょう?流石にハルを真似でパチリスを借りるのは無理だし、そもそも時間もないから元トレーナーだって言うお婆様のご友人にダメ元で電話で聞いて見た甲斐があったわ!」
「世話掛けたな。ありがとう大切に使わせて貰う」
俺がプレゼントを喜んでいるのが分かると己が事の様に喜んでくれているシロナが言ってくれたように、大切に使うと約束する。
「ええ、そうして頂戴・・・次は本命かしらね」
「あーシロナのも楽しみにはしてたぞ?」
「気を使わなくていいわよ。ポケモンが貰えるのだものそうなって当然よ」
ナナカマド博士からのプレゼントを本命と言われ図星だった少々たじろいでしまったが、長い付き合いなだけあって俺の気持ちを理解しているのかシロナには嫌な表情一つ無い様子なので、安心すると博士の方に向く。
「博士!自分の為にポケモンを用意してくれたんですよね!長老から聞いてますよ」
「あーうん、用意はしたな」
あれ何か気まずそうな表情を成されている・・・もしかしてさっきのシロナとの友情熱きプレゼントの後になったから気圧されてるのかな?まぁ確かに自分が博士の立場だったら気まずくなるだろうな。と内心思ってしまった。
「・・・よし、ハル君こちらに来なさい」
「はい」
意を決したかのようにテーブルの一角に比較的大きいトランクケースが置かれる。あ、これ見覚えがあると思ったら原作で御三家が入っていたトランクケースやんけ!lこのときから愛用していたのか・・・まさか御三家が貰えるのでは!と興奮を隠せないでいて、シロナとフカマルも俺の隣で黙ってはいるが楽しみにしながらトランクケースを凝視している。
そしてそのトランクケースが開かれそこに納められていたのは三つの・・・
石っぽい何かだった。
「石?」
「フガ?」
てっきりモンスターボールが入ってると思っていたシロナとフカマルが揃って首を傾げ、周りの大人達は困惑してしまっている。そして俺は・・・その石を見て一言もしゃべらず目が点になっていた。
一つは綺麗な丸い頭の様に見える石、一つはまるびを帯びたまるで盾の様な頭に見える石、一つは透明な黄土色の中に小さな虫が固まっている石のような物体・・・ポケモンオタクである俺は察してしまった。これが何なのかを。でもいくら何でも最初にこれってあんまりだと思うんだ。
「こ、これって・・・」
「その様子だとこれらが何かは知っている様だな。ハル君、この『ずがいの化石』『たての化石』『ひみつのコハク』の中から好きな化石を一つ選びなさい・・・その化石から復元されるポケモンが君の最初のポケモンになるだろう!」
威厳のあるお顔でそう言い切る博士に唖然としつつ徐々に状況が飲み込めて来る。ふむふむなるほど!
「いやいやいや!俺の最初のポケモン今現在生きてすらいないんですけど!?あと化石を復元出来るクロガネシティってここカンナギタウンから結構遠いんですよ!!え、俺そこまでポケモン無しで行くんですか!?無理無理ー!野生のポケモンに襲われて死んじゃうってーーーー!!」
ここはゲームでは無いリアルなのだ・・・良くも悪くもだが。
読了ありがとうございます!漸く今作の主人公の最初のポケモンの候補達(化石)がお目見えしましたね!次回ハルはこの中からどんなポケモン(化石)を選び取るのか。それは次回をお楽しみに!