キーファ2580と申します。
軽い緊張で手が震えてますがよろしくお願いします。
暗い部屋の中でポツンとライトが光っている。
周りには机と椅子、ピアノやギター等色々な機材が置いてあった。
そのライトの前には1人の青年がいた。
「ん〜と、よしっ!」
キーボードにカタカタとタイピングしている。
どうやら何か作業をしているようだ。
「…できたな、耳コピ」
青年は何かの曲をコピーしていたようだ。
パソコンの画面には音楽を作るソフトが立ち上がっており、様々な楽器のアイコンの横に色々な波形が描かれていた。
カタンッという音を最後に部屋には静寂が広がった。
青年はふぅ、と息を吐いた。
「やっぱ◯OASOBIさんの曲はいいね〜、しかも今回は今までとは少し違う雰囲気なのにめちゃくちゃかっこいいし!」
声に熱を持たせながらウキウキした様子で耳コピした曲のアーティストを評価する。
「じゃあネットにあげてみるか〜」
今コピーした曲を音源に変換してデータをネットに送る。タイトルは耳コピした曲とそのアーティスト 耳コピしてみたと書きアップロードと書かれているボタンをクリックした。
「おわったでぇ〜、いやぁたのしみだな〜、後でどのくらい再生数増えたか確認しよう!」
ひと段落終えた青年は部屋着を脱ぎ、ジャージに着替え、財布とケータイ、イヤホンを持ち部屋を出た。
「んー少し肌寒いなぁ」
春というにはまだ少し夜風が肌寒く感じる。
ジャージのポケットに手を突っ込み、家の鍵を右手で弄びながら、夜道を歩いた。
「それにしても、あのアニメ初っ端からすごかったなぁ、1話目から完結しちゃうんじゃないかってくらい進み早かったし、ドームライブするの早くない?って思ったわ」
ポケットに入れていたイヤホンを耳に入れ、ケータイと繋げて音楽を聴く。
流れる音楽に合わせながら体を少し揺らして、ゆっくり歩いて行く。
「あの曲のMVもそうだけど、あんなんあの子が主人公だって勘違いする人いっぱいいるでしょ!」
足元に落ちていた落ち葉を気持ち強めに蹴りながら、コンビニに向かって歩いて行く
「まぁでも、最後のあのシーンはめちゃくちゃ衝撃的だったけどねぇ」
歩いていた足を少し止める。
視線を空へ向けながら、軽いため息を吐いた。
「ストーリー的にはあの終わり方がいいと思うんだけど、やっぱりハピエン厨のワイからすると、生きていて欲しかったなぁなんて思う訳ですよ」
「アイちゃん」
星野アイ…先ほど話していたアニメ、推しの子という作品に出てくる最重要キャラだ。
彼女がいなければ、この物語は始まらないと言っても過言ではない。
彼女のことを説明すると、星野アイという人物は物凄い嘘つきである。
それは、相手に悪意を持っていたり、何かを隠したいからではなく、彼女の幼少期の環境によってそうせざる終えなかった…
俺は可哀想な嘘つきって感じにみえたかな。
まぁ別に悪い子って訳じゃないけど…
彼女の過去はまたいつか話そう。
「アニメ1話終わってからずっとそのことばかり気になっちゃったせいで、あんまりやらない耳コピとかしてるし、なんかモヤモヤするんだよなぁ、アイちゃんはアクアとルビー3人で家族として幸せになって欲しいってワイは思っちゃう訳ですよ」
そして再び足を動かして歩きだす。
ふと、車の排気音が聞こえた。
後ろから近づいているようだ。
「あと、これは個人的なことだけど」
視界にコンビニの名前が入ってる看板が見えてきた。少しだけ早歩きになりながらコンビニに向かう。
車の排気音は更に大きくなって行く。
「アイちゃんがあんな終わり方すると少し自分の将来が不安になるんだよね」
更に大きくなる車の排気音。
イヤホンで聴いている音楽が半分くらいかき消されている。
「だって、俺と同じな…ってうるさいな!なんだy」
ドンっ!
という大きな音と共に視界が回転する。
上下左右が回る、わずかに視界で捉えられるアスファルトは、回転の速さ故か色ぐらいしか捉えきれていなかった。
ゴシャァ!
何かが地面に落ちる音が辺りに響いた。
「……ゴッァ!?」
体が痛い。
後ろから感じた物凄い衝撃を感じた瞬間、気づいたら地面に倒れていた。
何が起きたか痛みで把握できてない青年は、現状を理解しようと立ちあがろうとする。
「…いっ…てぇ…なん…だよ…」
気力だけで頭を動かし、視界に映ったのは自分が歩いていたところからまっすぐ離れて行く自動車の姿だけだった。
そして青年は自分の身に起こったことを理解した。
「くっ…そ……ぅ」
(体のあちこちが痛みで悲鳴をあげてる…しかもなんか視界がぼやけて…これは…もう… )
腕を地面につけて力を入れようとする。
立ちあがろうとしたが、自分の体重を支えるほどの力が出なかった。
「しに…た…く…ねぇな……」
ふと青年は思い出した。
そういえばアイちゃんが死んだのも俺と同じ20歳の時だったと。
馬鹿らしいって思った…まさか最期に思い出すのがアニメのキャラクターになるなんて。
普通、走馬灯とかで家族とかの記憶とか友達とかと遊んだ記憶を振り返るもんじゃないの?
軽く自分に呆れてる
(まぁ…でも)
血が辺りの地面を覆い、まだまだその広がりは止まりそうにない。
(幸せになってほしかったんだろうなぁ…本気で)
瞼が落ちてきた。眠気とは違う生命の活動停止をしようと体が勝手に動いているみたいだ。
そして、もう息も止まりかけている。
(いき…たい)
拳を握った。
掌は血と石がごちゃごちゃにまざってよくわからなくなっている。
(まだ…死ねないっ…俺には…)
そして
(…まだっ…)
命の灯火が
(やりたいことが…!)
消えた。
次の瞬間。
「オンギャァァァ!」(あるんだっ!)
「先生!生まれました!」
「よしっ!タオル持ってきて!」
「産声確認よしっ。奥さん!元気な男の子ですよ!」
「あぁぁ……よかったぁ…」
目を閉じて死ぬ感覚に引っ張られていた俺は。
(っは?…えっ?)
気づいたら周りは明るくなっていた。
いや、目の前にあるライトによって明るくなっているのだろう。
いやむしろ眩しいくらいだ。
そして周りには緑の手術着を着る人たちが3人…そして横になって息絶え絶えの女性が1人の合計4人がいる。
(一体何がおきてっっ)
視界が高くなって医師の顔が近づいてくる。
一体どうなっているんだっ!と困惑しながら手足をバタバタと動かしている。
無我夢中で動かしている途中でふと自分の手に目を向けた。
そこには成人男性ではあり得ないであろう、ぷにぷにとした手、少し濡れているが絹のような白い肌、そして15センチにも満たない短い腕だった。
(は?)
本日2度目のはっ?である。
青年のショックを置いて、視界がまた変わる。
今度映っているのは、20台半ばの女性の顔。
少し汗をかいているようだ。
「奥さん、お名前はお決めになっていますか?」
「はいっ、もちろん決めてます!」
その女性はこちらに目を合わせながらにっこりと笑っている。少し涙も浮かんでいる。
「流星(りゅうせい)…君の名前は哀川流星…哀しい川を星で流す、流星です。」
「オンッギャャャャャ!?」(はっ…はぁぁぁぁぁ!?)
そして俺…哀川流星は生まれた。
生まれた時から前世の記憶を持つ…いや少し持っている子供が、生まれた。
皆様、ご拝読ありがとうございます。
こんな感じでよければ、次も見ていただけると嬉しいです。
何卒よろしくおねがいします。