バイオの空耳についての予備知識があると、1%位は面白さが上がります。
「なぁ、タクトさんよ。ーーーームーファ飼ってみないか???」
「へ??」
…とある昼下がりのベルナ村。
特にする事も無く村をブラブラ歩いていた俺は、突然の声掛けに驚いてしまった。
目の前には、俺の知り合いのムーファ飼いのおじさんが居る。腕には小さな子供ムーファを抱いていた。
…それを飼えと言う事だろうか?
「ん…?何でだよ。俺はムーファ飼いじゃないぞ?本職の人が育ててやった方が良いんじゃないか??」
そう言うと、おじさんが説明を始める。
ーーー曰く、このムーファは生まれつき体が弱く、とてもでは無いが上手く成長出来ない。オスだからミルクも取れないし、体の弱いムーファの毛は、ごわつきが出て品物にもならないそうだ。
…かと言って放っておくわけにも行かず、誰かに引き取って貰おうと言う事で、俺に白羽の矢が立ったらしい。
「なるほど……。ムーファも苦労してるんだな。」
俺がチビムーファに話しかけると、チビムーファはおじさんの腕の中で鳴いた。
「モリィィィィィィィィィィ!!!」
………変な鳴き声だな。なんか今にも倒れそうな位プルプルしてるし……ま、良いや。
おじさんがチビムーファを撫でながら口を開く。
「ま、あんたなら優しくしてやってくれるだろうと思ってな。ーーーー飼ってみないかい?無理そうなら、その時考えれば良いさ。…な?」
「う──ん……分かった。やってみるぜ。」
「お!本当か??…いやぁ助かったよタクトさん!ーーーーちゃんと可愛がってくれよ?」
「おう、勿論だ。」
ーーーーこうして、俺は思いがけずチビムーファを手に入れたのだった。
◇◆◇
「ーーーーて、事でムーファが新しい家族になったぞ白の助!」
「モリィィィィィィィィィィ!!!!」
「その鳴き声どうにかならなかったのかニャ…。」
そんな事言ってやるな、白の助。……まぁ、確かに変な鳴き声だとは思うけどさ。
「まぁまぁ、良いじゃないか。…これからは、ムーファの世話も頼んだぞ白の助。」
「ーーー了解ニャ……ん?アレ?もしかして、押し付けられた??」
ジト目になった白の助。ーーー勿論、俺だって手伝うつもりさ。…本当だよ???
「と、とにかくよ。……コイツは家族だ。ーーー何か名前を付けてやろうぜ?」
「…あぁ。そうニャね。なまえ…名前……うーーん。」
白の助はプルプルしているチビムーファの方を見て、口を開いた。
「モリィィィィって鳴くし、『モリー』でどうかニャ?」
「安直ぅ!…だが、俺の考えた『中田バーガー』よりかはマシかもしれんな。……モリーで行こう。」
「何を思ってそんな名前にしたニャ……。」
「モリィィィィィィィィィィ!!!!!」
ーーーーこうして、チビムーファ改めモリーとの新しい生活が始まった。
しかし、素人がムーファを飼う事はとても難しい事なのだという事を、俺たちは分からされる事になる………。
◇◆◇次の日の朝◇◆◇
ぷ──────ん……。
鼻につく臭いで、俺たちは目が覚めた。
「…何だこの匂い?」
「ババコンガの糞みたいな臭いがするニャ…。」
起き上がった俺たちは、臭いの元へ向かう。……向かった先にはーーーー
「モリィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
……モリーが机にウ○コしていた。
「汚いのしてます!!!」
「ウ○コだ捨てろぉ!!!」
慌ててモリーを机から下ろす俺たち。そして、素早く袋でウン○を処理する。
「うわwけっこう臭うwww」
「言ってる場合かニャ!…さっさと綺麗にするニャ!」
白の助にどつかれながらも、俺は机を綺麗にしていく。ファブリーズが欲しいぜ……。
◇◆◇1時間後◇◆◇
……糞処理で朝からてんやわんやだったが、なんとか机は綺麗になった。
「モリィィィィィィィィィィ!!!モリィィィィィィィィィィ!!!」
「はぁ…はぁ……くそ。コイツ、俺たちの苦労も知らずにモリモリしやがって……。」
「…取り敢えず、モリーの体も綺麗に洗って、朝食の準備もするニャ。」
「おう。そうだな。」
モリーの為に朝食を用意する俺達。…正直、ムーファの食事って何やれば良いのか分かんないが……
「ーーーーでも、コイツは体が弱いらしいからな。…やっぱ、ちゃんと良いもん食ってなるべく育って貰いたいよね。」
ーーーーと、言う事で大事なのは食事!!貧弱な体を少しでも強くする為に、モリーにはたくさん食べて貰うゾ!
「レタス!!(食わせる)」
バリバリ。
「ーーー牛乳!!(飲ませる)」
ゴクゴク。
「ーーーー泡パワー!!!(ウ○コで汚れた体を洗う)」
ワシャワシャ。
「モリィィィィィィィィィィ!!!(喜)」
ピカピカ✨
…こうしてモリーは俺の与えたレタスと牛乳を食べ、ゴシゴシ洗われて綺麗になった。
「お、喜んでる喜んでる。…可愛いなコイツ。」
「……それは否定しないニャ。」
ーーーーなんだかんだ可愛いが、また机にウ○コされても困るので裏庭で買う事にした。
裏庭なら広々としているし、モリーにもちょうど良いだろう。ーーーーなんて思ったのが、行けなかったのかも知れない。
…事件は突然に起きた。
◇◆◇3週間後◇◆◇
その日は、白の助と一緒に狩りに行っていた。もちろん、モリーは1匹ぼっちでお留守番だ。
…仕事上仕方の無い事とはいえ、ちょくちょく家を空けなきゃいけないのは、少し心苦しい事でもある。
「ただいま〜。」
「ニャ〜。」
帰って見ると、裏庭にモリーが居ない。
「…あれ?モリー??」
「居なくなったニャ??」
念の為に家の中を探して見るが、モリーは居なかった。ーーーもう一度裏庭を見てみると、庭の柵が一部壊れていた。……子供ムーファなら、通り抜けられそうな大きさの隙間が出来ている。
「あぁ!モリーのヤツ…まさかこっから外へ?!」
「うニャニャ?!なんてこったニャ!!」
俺たちは、慌ててモリーを探すために村へ飛び出した。…モリーは体がそんなに強くない。何処かでくたばって無いと良いのだがーーーー。
「モリー!何処だーー?!」
…広場には居ない。
「居るのなら返事くれニャ〜!」
…オトモ広場にも居ない。
「子供のムーファ??…いやぁ…知らないわねぇ。」
…村人に聞き込みもしてみたが、ノーヒットだった。
ーーーーその内、雨が降り出してしまう。
「…やべ。雨だぞ白の助。」
「分かってるニャ。…でも。」
雨の中、俺達はモリーを探して歩き回った。…ふと、目が近くの家のムーファ小屋に向かう。
この村では大体の住民がムーファを飼っているから、あちこちにムーファ用の小屋が建てて有るのだがーーーー。
「あ、モリー!!」
…なんと、その小屋の中にモリーが居たのだ。
小屋に俺達は駆け寄ろうとして、ふと気付く。モリーの側には沢山のムーファが居た。…そして、モリーを可愛がる様に子供が1人、小屋の中でモリーの世話をしていたのだ。
…その様子は手慣れている。きっとムーファの扱いに長けた、ムーファ飼いの子供なんだろう。
モリーも周りに沢山のムーファ仲間に囲まれて、喜んでいる様に見えた。
「……喜んでるニャ。モリー…。」
「あぁ………。」
その時、俺は気付いた。
ーーーー俺達はハンターだ。ムーファ飼いにはなれない。…遠い狩場へ行けば、何日も戻ってこれない事もある。その間、モリーは1人ぼっちになる。
…それに、俺達は他にムーファを飼っていない。モリーはムーファの子だ。…同じムーファの中で生きた方が、きっと彼の為になる筈なんだ…と。
「…やっぱり、ムーファはムーファ飼いの所で育つべきだよ。白の助。」
「旦那さん……。」
白の助が見上げて来る。…良いのか?と視線で問われている気がした。
雨の中俺は頷く。
「いいんだ。……見ろよ白の助。モリー、幸せそうじゃ無いか。俺たちがモリーを飼っても、きっとアイツの幸せにはならない。なら、このままあの少年の元で飼われた方が良いに決まってる。」
「…………。」
「優しさだけじゃ、生き物は飼えないんだよ白の助。…コレはモリーの為さ。…アイツのため、なんだけど……なんだろう……」
俺は小さく笑った。…頬を伝うのは雨だろうか?
軽く目頭を拭って俺は呟いた。
「泣けるぜ。」
みんなも、ペットはよく考えてから飼うんだゾ。