俺達はあれから攻略を進めた。先頭で攻略を行っているのは専ら黒ずくめのコンビであり、俺達に宝箱等は残されてなかった。たまに残っているものもあるにはあるが…
「こいつら全部ミミックだな」
「そうね。全く早いわね。アスナ達」
ミトは適当に拾った石を投げるとミミックはそれを食いちぎる。
「でも攻略は続けていかないとな」
「レベルも上げないと後がキツくなっていく」
「そうだな…っとメッセージだ」
「誰から?」
「ゲイルだ」
ゲイルからのメッセージはこうだ。
『レジェンド・ブレイブスとネズハの動向を探りました。その結果アルゴにも彼等に対する依頼が出されていたようでその依頼主と合同で探ることになりますがよろしいでしょうか?』
「これって…」
「おそらく俺達と同じく疑問に思った奴らがいたんだろうな。そいつらとも一旦合流してみるか」
☆¥%
で合流したわけだが……
「お前らだったのか…」
「アスナ!久しぶり.!」
「ミト!」
ミトは久しぶりにあったアスナを思いっきり抱きしめる。その後ろには所在なさげに立つ黒ずくめが居た。俺は黒ずくめに近づこうとすると黒ずくめは少し動揺する。
「こうして話すのは初めてだな」
「そ…そうだな」
?なぜどもるんだ。
「いやごめん。あの時は…」
ああ……そう言うことか。
「クハっ…」
「え……」
「お前あの時のこと気にしてたのか」
こいつはあの時にあんな啖呵を切れる割にそう言うのを気にするのか。意外だな。
「確か俺は使えないって言ってたよな」
「いや……あの……その」
「こっちこそすまなかった。あの時は役に立てなくて」
「え?」
「俺もベータテスターだ。なのにあんな不甲斐ない真似をしてしまって」
俺はあの時のことを謝りたかった。コイツがビーターと呼ばれてしまった原因は俺にある。俺があの時力があれば…
「気にしないでくれ。あの場はそうでもしないと収まらなかった」
「そうか?…ならいいんだが」
「にゃははは!ター坊もキー坊みたくそう言うのを気にするノカ!コイツは傑作ダ!」
「やめた方がいいっスよ。彼には彼の答えがあるわけですし」
アルゴが俺の謝罪に笑っているのをゲイルが注意する。人のことをなんだと思ってるんだか。
「今は依頼のことです。とりあえず私はレジェンド・ブレイブスとネズハの動向を探りました。そして依頼されたその日にネズハはアスナさんの持つウィンド・フルーレを騙し取ろうとしました」
「え…本当なの!」
「ええ。でもキリト君のおかげでこの子は今もちゃんとあるから大丈夫よ」
アスナの剣もターゲットにされていたのか…だが黒ずくめも流石はベータテスターと言ったところか。
「そっちはどうして彼らを?」
「タキの槍が取られかけちゃってね。タキも直ぐに対処したからよかったんだけど危なかったわ」
ミトが落ちついた所でゲイルが手を鳴らす。
「はい一旦話を戻しましょう。タキさんやアスナさんのように強化詐欺にあったプレイヤーは数名確認されています。その売り上げをネズハはある四人組に提供しようとしていました。しかし、どうやらアスナさんのレイピアが奪い返されたことに気づいたのか解散した。という顛末です。」
「そうか…五人組じゃなかったのか?」
「はい。四人組です。それが一体なんスっか?」
「いや…いいよ。当てが外れただけだ。」
「外れてないわよ」
「え…」
キリトは思わずと言った声を出す。ミトはすぐに何かに気づいたようだ。
「思い出したんだけど、もしかしたら………」
ミトの推理を聞いて俺達は納得のいく答えが出た。
「流石だな。ミト」
「たいしたことじゃないわ。もっと早く思い出していれば」
「今でも十分だ。あとは武器を奪った手口だ。この証拠があれば抑えられる」
「それなら、俺とアスナで考えた。この手で行くぞ」
黒ずくめは目星を付けているのか。なら…
「俺とミトも協力させてもらうぞ。このまま見過ごすのは性に合わないからな」
「いいのか?」
「俺も詐欺の被害者でもあるわけだしな」
「放置しておけば、それこそどうなるか分からないしね」
「………ありがとう」
とりあえずこれで協力は取り付けられた。
☆¥%
「武器の強化を頼む」
ネズハに俺の剣を渡す。今俺と彼…タキとネズハの店にやって来た。ただし俺もタキも全身に鎧をつけ兜を被っている。こうしておけば俺達の正体が分かることはない。あとはアスナとミトが手口を見ていれば…
「わかりました。上昇させるプロパティは?」
「鋭さで頼む」
「わかりました」
ネズハは剣を炉に配る。剣はあっという間に光となる。しかし、そこで俺は剣がクイックチェンジによってすり替えられる。確定だな。ネズハはすり替えたエンド品の《アニール・ブレード》を金床に置き槌で打ち始める。その手際は丁寧でこれから詐欺を行う人のものではない。その顔はまるで剣に懺悔しているような感覚だ。そして剣を10回叩くと剣は光出すがその剣は根本から折れ粒子となり消滅した。ネズハは直ぐに土下座を敢行する。
「申し訳ありませんでした。この剣「その必要はない」…え?」
タキがメニューを開き装備を外していく。タキは話しながら装備を外して行くのが、俺には少し怒りの表情になっている。
「わかってみると案外単純だ。まさか鍛冶屋がクイック・チェンジを持っているとは誰も思わない。つまりは、完全犯罪になるというわけだ。俺が自力でトリックに辿り着きたかったが、俺もまだまだか」
クイック・チェンジで背中に戻ってきたアニール・ブレードを抜きネズハに向ける。ネズハも俺の顔を見て既にカラクリにたどり着いていることを悟ったのだろう。
「ネズハ。事情は聞かせてもらうぞ」
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ネズハはあのあと大人しくなり宿屋の部屋に連れて行くことは出来た。あのあとゲイルは依頼があるとこの場から脱していて今は俺とミトにアスナと黒ずくめ、アルゴにネズハだ。テーブルにはキリトとアルゴが座りネズハが対面に俺達はキリトとアルゴの後ろに立つ。
「要するに騙し取った武器は全部換金して飲み食いやら宿代やらで豪遊してほとんど残ってないと…そう言うんだな?ネズハ」
「はい…本当に申し訳ありません」
ネズハの謝罪にキリトとミトはビクッと反応する。だが2人の気持ちはわからんでもない。アインクラッド史上初の詐欺師が素直に謝罪していることが不自然に思うのだろう。こればかりは同意する。俺にも疑問が湧いてくる。
「一つ聞こう…お前が騙し取った金は攻略組が命をかけて稼いだものだ。その上武器はまさに攻略を支える相棒だ。その武器をお前のために利用したことはどう思ってるんだ?」
「それは…僕はただ美味い飯や快適な宿に泊まりたいと「嘘だナ」…え?」
ナーザはそこで言い淀む。まるで誰かを…本当のことを隠そうとしているように。アルゴがここで調査の結果を報告する。
「お前のここ最近の暮らしを調べさせてもらったヨ。食事は安くてあまり味がしない黒パン一つに泊まっている宿は快適とは言えない宿だヨ。この暮らしでは君が言っていた美味い飯や快適な宿とは全く釣り合わないヨ」
ネズハはアルゴの言葉に黙り込む。
「現在君はただ一人のプレイヤー鍛冶として市場を独占している。それに加えての強化詐欺だ。計算がまったく合わない……俺たちは今こう疑っているんだ。
君は荒稼ぎした金を誰かに意いでいるんじゃないか?…ってさ
」
「は…ははそんな…一体誰に!!なんの根拠があってそう言うんですか!!これは僕が全部やったことです!!それは誰も変わりません!!」
ネズハは大声で否定する。しかしここで…ミトが近づいてきた。ネズハはそちらを見る。
「な…なんですか!」
「あるにはあるわよ…
「っ!?」
俺もミトから聞いて驚いた。まさかネズハの読みが違うものであり、
「確かナーザ…正しくは哪吒だけど中国の小説に出てくる少年の神の名前よね。確か宝貝って武器を使って空を飛ぶらしいわね。でもそれはまるでオルランドやベオウルフと並ぶ
ネズハ…ナーザは思わず顔を伏せてしまう。キリトとミトはまだ足りないのかさらに問い詰める。
「教えてくれ。何故君だけが不当なリスクを背負いながらこんな不正が出来た?それに見合う対価を約束されたのか?彼らは…君達はなぜ強化詐欺が出来たんだ!」
「貴方達は攻略組をも超える収入を得たことでかなり強化されたみたいだけど、そこまでして貴方達はトップに立ちたいのか…どうなのよ?」
流石に熱くなりすぎだろう。こんなに熱く…そして焦っている黒ずくめは初めてだ。
「落ち着いて2人とも。論点はそこじゃないでしょ」
「いや、大問題よ!」
「このペースでいけばレジェンド・ブレイブスは攻略組をも超えるトッププレイヤーになる!悪事を厭うことはない犯罪者たちがだ。そんなやつらがトップになった攻略組はどうなる!」
アスナが諌めようとするがミトと黒ずくめの言いたいことは分かるだが…ナーザは歯を食いしばって耐えている。まるで何かに我慢ならないように。アスナはそれにきづいていたのかは知らないが慈愛に満ちた目でナーザを見る。そして机の上に一本の投げナイフを置く。
「アルゴさんに調べて貰ったら、NPCショップで売ってる物ではなく、プレイヤーメイドの物。そして、これを作れるのは、現段階では貴方だけよ、ナーザ」
「な…何故?」
「やっぱり…眼帯をつけたあの人は貴方だったのね」
アスナは机に置かれた投げナイフを取り、持ち手をナーザへと向ける。ナーザは観念したように、投げナイフへと手を伸ばす。しかし、その手は空気をつかむのみだった。つまりあいつは、
「やっぱり、貴方目が………!」
「…見えないわけじゃないんです。ただ、ナーヴギアを介して見ると、遠近感が…!」
「まさか、FNCなのか!?」
キリトが驚きの声を上げる。ミトもアルゴも思わずといった表情を浮かべる。
「FNC?」
「フルダイブ不適合ノン・コンフォーミング……民生用のナーヴギアで偶に発生する脳とフルダイブマシンとの間の接触障害ダ」
「五感のどれかが機能しないとか微小なラグがあるとか症状はたくさん。ひどい時にはダイブそのものが出来ないなんてのもあるわ」
「恐らく、彼の場合は両眼視機能不全、奥行きが判別できないんだろウ………SAOには弓や魔法と言った遠距離攻撃は存在しなイ。剣で戦うには致命傷ダ。ログインは諦めるべきだっタ」
アルゴとミトの声は怒りというよりもやるせなさの方が強い。キリトもそんな表情を浮かべながら続ける。
「いや、でも気持ちは分かる。俺だって、ダイブ可能ならどんな障害があってもSAOこの世界を見たいしな………まさか!」
そこで、キリトはある推測を思い浮かべる。
「レジェンド・ブレイブスは、剣士としての君を見捨てて、弱みに付け込んで汚い仕事を!?」
「違う!」
ナーザは椅子から立ち上がり机に思いっきり手を付けキリトの推測を否定する。ナーザは、声を荒げたことに驚き、固まる。ここまで来れば俺もわかる。
「ナーザ。レジェンド・ブレイブスはお前を置いて行くことができなかったんだろ?」
「え?」「うそ…」
ミトと黒ずくめは思わず驚愕の声を上げる。ナーザの反応を見ればある程度想定できる。
「まず、あいつらが詐欺でコルを稼いで武器をどんどん強化していくなら、ウルバス・バウの時わざわざ前に出て攻撃を止めたりしない。もし、名誉目当てだとしても…あそこで俺達にトドメを譲らない」
「それだけじゃ証拠には…」
「ならない。だがもう一つだ…人は悪行を初犯でする時は大概恐るもんだ。そして、自分と同じ立場の奴を決して見過ごさずに罪に引き込む。これはどこでも変わらない」
これは俺の持論だ。他の人からすれば許容はできないものかもしれない。だが…俺の過去はこの記憶は脳裏から離れない。
「アンタは本当にそう思っているのか?」
「ああ」
「それじゃあ!ナーザやブレイブスが詐欺をしてもいいというのか!」
黒ずくめはやはりクールに見えてその実熱血なのだろうな。だからこそ…あいつはビーターと呼ばれても戦える。だが…
「勘違いするな…俺は詐欺行為を容認したんじゃない。ただこの件には黒幕…もしくは手口を思いついた奴がいるはずだ…そいつの名を出せ」
俺はナーザを威圧する。ナーザも少し体を震わせながら思わず椅子から立ち上がり後ずさる。俺はそれを追う。
「それは…」
「なんだ。言えないのか。お前の裏には何がある?それくらいは話せ」
ナーザはどんどん追い詰められアインクラッドの外に繋がる窓の手すりに持たれるようになった。だが、俺はそこで止めない。真実を明かさなければ…また武器を取られる奴が生まれる。……もしミトが俺と同じ目に会いそのまま死んだなら?
俺はそんな未来断じてみとめない。認めてたまるか!ならいっそのこと…
「タキ!!」
なんだ?いきなり?…これは…手?目線を上げればその手の持ち主…ミトが俺の手を握っていた。
「ミト?」
「そんなに追い詰めたってナーザは喋らないわ。それに…怖いの。まるで貴方が人が変わったようでナーザをどうにかしようと手を汚してしまうんじゃないかって」
ミトは涙を流しつつそう言う。それを見て俺は心の中のどす黒い部分が少しずつ収まっていくのがわかった。
「そうだったな。…すまなかった」
「いえ…僕がこんなことをしでかしたのが悪かったんです…話します。真実を」
そこからナーザの口から真実を聞いた。どうやらナーザは遠距離で視界が悪くても攻撃できる《投剣》スキルを習得したが通用するレベルになるのに時間がかかり途方に暮れていたところ1人の男が声をかけたそうだ。そいつはポンチョでフードを被り顔がわからないようになっていた。
「だか…それだけでそいつの言うことを信じるようになるのか?」
黒ずくめの疑問も分かる。ただそれだけ…いきなり見知らぬ奴に手口を教えられただけでそのまま実行しようとなるだろうか。
「普通なら信じないですよね。でも、その人の声がまるで脳にじんわりと来て心地よいんです。あの人が去った後僕達の中にはいけるだろって気持ちがいっぱいになったんです」
ナーザの言葉を信じるならそいつは高度な扇動技術があることが窺える。
「信じるわ…それで一つ聞きたいの。貴方はこのまま終わっていいの?」
「終わる……?」
「貴方はただ鍛治職だけで終わって見返すことができなくていいの?」
「……嫌だ……嫌だ!まだ終わりたくない!」
ナーザが人一倍叫ぶ。ミトはそれを見て上出来と判断したのかにっこりしている。
「ナーザ、君の所持してるスキルはなに?」
「《投擲》に《所持容量拡張》と《片手武器作製》です……」
「この武器を使うにはあるエクストラスキルが必要になるわ。その入手方法がわからないから無駄足になるかもしれないけどナーザ…貴方は鍛冶スキルを捨てる覚悟はある?」
☆¥%
あの後、体術スキルはアスナとキリトが場所を知っているので明日の朝に向かう予定になった。今はそれぞれ分かれて宿に泊まっている。今私とタキは一つのベッドで一緒になってはいる。でも、あの時のタキを見て私は怖くなってしまった。まるでタキがタキじゃなくなったかのような感じで、私から離れて行ってしまうんじゃないかって。タキはあの時離れないって言ってくれた。その言葉には偽りはないはずよ。現実でオンラインで顔や声を共有しようとも実際のタキから感じる熱は私をぬるま湯に浸らせる。もし私から離れようというのなら、私はもう生きては行けない。残るのはただの屍である私だけ。ああ…もしそうなったら…私は……
「タキ…」
その声は自分でも冷たく感じた。
更新しました
いやーこの話書いてる最中に評価バーに色ついたの嬉しかったですなぁ。
聖夜の夜に上げようというのに必死すぎてイブの朝までかかりました笑
出来れば執筆スピード上げたい。それでは良いお年を。