その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった。
「えーと・・・なんだろう、これ」
予想外の展開についていけないキリトは落ちていた袋・・・秘鍵を拾う。それを見た
「済まない。これを手にするために数多くの同胞が命を落としたのだ。これで、ひとまず聖堂は守られる・・・」
騎士は密やかに呟くと袋を腰のポーチにしまい、姿勢を正した。紫紺の瞳には厳しさが再び宿るが、その瞳の奥には迷いが見えた。その姿はオレにはとてもただのNPCだとは思えなかった。
「そなたらには礼を言わねばな・・・そなたらのお陰で第一の秘鍵は守られた。助力にも感謝する。我らの司令も褒賞があるだろう、野営地にまでご同行をお願いしても構わないか?」
ここで彼女の頭上のカーソルはクエストの進行を知らせるように【?】のマークに変わる。一応今のところエルフクエストは展開が変わっても進行はするようだ。だが・・・ここからは最早未知の展開になってしまった。もう、このクエストを受けるだけでも寄り道レベルになることはないのだろう。そう思ったのかミトは心配そうな表情でオレに問いかける。
「どうする?」
「もうついて行くしかねえだろ。そうじゃなきゃこのクエスト多分進行しないだろうしな」
オレの出した答えに同意見なのかキリトが
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
「いや、アスナ。そんな曖昧な答えじゃ・・・」
ミトは何かを言いかける。NPCは基本的にイエスノーで明確に答えなければ反応を示さない。だが、この騎士は例外だったらしい。
「良かろう。野営地はここから南だ。霧深い森の奥にあるから私と逸れるなよ」
そうマントを翻しながら答える。その姿は正に騎士だった。そう感慨に耽っていると五人目のパーティーメンバーが加入したことを知らせるウィンドウが現れる。視界の右上を見れば新たなHPバーが追加されていた。そこに記されていた名は・・・《キズメル》。颯爽と歩き始めるキズメルをアスナが軽やかな足取りついていった。それを見ていたミトとキリト、オレの三人は我に帰り直ぐに二人を追いかける。ここからは正に未知の領域、何が出てくるかは分からない。警戒を強めながら進んでいった。
キズメルとの道中は順調と言っても差し支えなかった。道中の森はキズメルの言う通り霧深い。普通に野営地に向かって歩いていたら何処かしらで迷っていただろうな。だが、そんなシチュエーションでは当たり前だが当然モンスターも湧いてくる。しかし、こっちにいるのはここよりも上の層に登場するエリートモブと同スペックのパラメーターを持つ騎士様だ。サーベルの一太刀でモンスターを一瞬で切り刻んでいき、気づけば既に
「意外にあっさり到着したわね」
アスナの一言がオレ達全員の心内を代弁していた。ベータテスト時代はここまで来るのにすらも時間がかかったのだが、キズメルがいてくれたお陰でオレ達はものの15分ほどでここに来ることが出来た。前にいたキズメルはこちらに振り向くと自慢そうにしながら言う。
「野営地全体に森沈みのまじないを掛けている故お前達だけではここまで辿り着くことも出来なかったぞ」
「まじないって、もしかして魔法があるの?」
「いや、魔法と呼べる物ではないな。我らの力は古の偉大なる魔法のかすかな残り香・・・大地から切り離されたその時より、我らリュースラの民は、あらゆる魔法を失ってしまった」
は?大地より切り離された時?アインクラッドの設定にそんなのは確実になかったはずだ。オレはミトとキリトを見るが二人とも口をあんぐりと開けていた。どうやらベータテスターでも知らない情報のようだ。
「お前ら、こんな設定聞いたことあるか?」
「いや、俺は聞いたことないよ。こんな話初耳だ」
「私もよ。むしろ、もっと教えて欲しいくらいだわ」
ベータテスター三人組はコソコソと小さい声で確認をとる。NPCのAIアルゴリズムがベータテストの時に比べてガッツリ上がっているのか・・・はたまた、キズメルを生かした場合のみこの話を聞けるのか・・・オレ達には知る由もなかった。そうこうしている内にオレ達は野営地の中に入る。野営地の中には
「ねえ、この人たちがいきなり襲ってくるってことはないわよね?」
「安心してアスナ、いきなりこの人達に攻撃を仕掛けるとかしない限り襲われることはないわ」
「その言葉だと試したことありそうね」
まあ、ベータテスト時代に一回エルフクエに一緒に挑んだパーティーメンバーが調子に乗って
「それに、ここは
「いんす・・・たんす・・・?」
短い付き合いではあるが今の今までゲームのシステム的なことに質問をしてこなかったアスナが珍しく分からないって顔をしている。基礎的なことはミトが教えていたと言うことは既に聞いているがどうやら初耳らしい。
「
「なるほど!つまり、ここにいる
オレの補足説明を理解したアスナはパッと弾けるように笑う。ご理解頂けて何よりだ。オレ達はキズメルに付いていき司令官のいる天幕に入る。そこでクエストが進行、
「感謝する。そなた達の働きで第一の秘鍵を奪還することが出来た」
「大丈夫だ。助かって何よりだ」
キズメルの感謝の礼にキリトは爽やかな笑みを浮かべて答える。
「そなた達の名を教えてくれないか?まだそなた達の名前を聞いていなかったからな」
「ああ、そう言えば・・・俺はキリトだ。それとこっちの三人が・・・」
「アスナです」
「タキだ」
「ミトよ。よろしく」
キズメルはオレ達の名前を聞くと数秒止まり話し始める。
「ああ、キリトとアスナとタキとミトか・・・人族の名前は発音が難しいな。この発音で大丈夫か?」
「大丈夫だ」
なるほど、今のは発音シークエンスか・・・キズメルもこう言うところはNPCか。そう思っているとキズメルは胸に手を押し当て敬礼の構えを取る。その眼光はキリっとしていて騎士としての風格を醸し出していた。
「我が名はキズメル。リュースラ王国、エンジュ騎士団の末席である・・・以後、よろしく頼む」
そうだ。オレ達のパーティーに所属したことで名前は知っていたがまだ名乗られてはなかったなぁ、と思いつつオレは頭を下げる。他の三人も同様だ。
「「「「よろしくお願いします」」」」
その姿を微笑ましく見ていたキズメルは一度頷く。
「作戦に出発する時刻はそなたらに任せる。一度人族の街まで戻りたいのなら街までまじないで送るが野営地の天幕で休んでも構わない」
ここは休んで行く方がお得である。街の宿屋で寝泊まりするより安上がりだしベッドは上等。食事もついてくるのだ。
「せっかくだし、お言葉に甘えましょ」
アスナの鶴の一声にオレ達は頷く。それを見ていたキズメルはマントを翻す。
「では、そなたらの天幕に案内しよう。少々手狭ではあるが、番同士同じ天幕で文句はあるまい」
「「っ!!??」」
キズメルの言葉に動揺を見せたキリトとアスナを置いていきオレとミトはキズメルの後に続いていく。その姿を見た後ろも急いで歩き始める。キズメルの言う天幕は意外に近いところにあったのか直ぐに着いた。
「ここだ」
「おお、ベータテストの時に比べて広くなってるな」
「多分パーティーメンバーの人数で天幕の広さは変わるんでしょうね」
オレとミトは取り敢えず敷いてあった布団代わりであろう敷き藁に腰を下ろす。しかし、未だに混乱しているのかキリトとアスナは入口の方で言い合っていた。
「ねえ!今から主街区に戻るって言うのは・・・」
「いや、多分無理だ。もうここまで来てるんだし今更言っても後の祭りだろ?」
「お前ら、何してんの?」
「いや、何二人は落ち着いてんだよ!?」
そんなに問題か?・・・ああ、確かに異性もいるのに同じ部屋と言うのも落ち着かないか。
「まあ、しょうがないだろ?それにまあまあ広いんだからまだマシだろう」
「それに私はタキと一緒でも構わないわよ。キリトは・・・外に出てもらう?」
「いや、まあまあ寒い外で寝るのは流石に勘弁してくれ!」
キリトは懇願と共に頭を下げる。まあ、流石にそれは可哀想だろうしな。
「冗談よ。まあ、きっちり境界線は作らせてもらうけどね。変な気でも起こしたら・・・」
「起こしません!起こしません!」
「こんな感じだけどアスナはどう?」
「うーん・・・・仕方ないわね。こんな寒い中外で寝泊まりさせるのも可哀想だしね」
アスナは僅かに悩むが罪悪感が勝ったのか最終的には了承した。それを見たキリトは助かったと言う表情でホッとしている。その後ろからキズメルが天幕に入ってくる。
「ここの天幕は私のものだから私も一緒に寝ることになるが大丈夫だろうか?」
「いや、問題ないわよ。泊めてもらえるだけでも有難いわ」
「すまないな・・・ああ、私は夜警の任がある故外に出るがその際
「「いえいえ、そういうのホント大丈夫ですから!!」」
キリトとアスナが盛大に引き攣った笑みを見せながら否定する。このNPC・・・まさか、そう言うことまでトレースしてるなんてこと言い出さないよな?そう思いながらミトを横目に見る。ミトの方は顔を真っ赤にしていた。
「十分な時間ってまさか・・・・」
「まあ、そういうことだろ。いい加減トリップしてないで戻ってこい。残念だけどキリトとアスナがいる時点で無理だろ」
「あら、残念ってことはタキも期待したのかな?」
「・・・さてな・・・」
こいつ一杯食わしてきやがった。完全にしてやられたぜ。そう思っているとキズメルはこちらを向いて意見を聞く。
「そちらの二人は大丈夫か?」
「ええ、気にしないで」
「そっちも大変なんだろうしちゃんと休む為にも戻ってこい」
「感謝する。陣中故、大したもてなしも出来ないがこの天幕は自由に使ってくれ。食堂はいつでも食事を取れるし、簡易だがゆあみ用の天幕もある」
「お風呂あるんですか?」
すかさず反応したのはアスナだった。キズメルは頷くと外にある二つ並んだ天幕の片方に指を刺す。
「あの天幕だ。隣が食堂天幕。どちらもいつでも使える」
「ありがとう!早速使わせてもらうわね」
アスナは先程と違ってウキウキとした様子だ。どうやらこの子は風呂好きらしい。早速風呂の天幕に向かっていった。その姿を微笑ましくみているとキズメルがこちらにやってきて敷き藁に座る。
「私は少し休む。何か用があればいつでも声をかけてくれ」
「ああ。分かった」
「ゆっくり休んでて」
オレとミトも立ち上がりキリトとアスナを追って行った。天幕の外に出ると立ち尽くしている二人がいた。
「おい、どうした?風呂の天幕に行ったんじゃないのか?」
「いや、それが・・・」
「何か問題あったの?」
「お風呂が一つしかないの」
なるほど・・・つまり、男女で分かれてないのか。ベータテストの時には風呂なんてログアウトして入れば良かったから完全に失念していた。それでどうするか悩んでいると・・・先に女性陣を入れるか。
「それじゃ、男女で風呂の時間分けるか?そうじゃない方は入口で見張ってるってのはどうよ」
「あら、それ名案ね。アスナはどう?」
「それなら・・・大丈夫かな」
「女性陣が先で大丈夫だぞ。いいよな、キリト」
「ああ。俺達は後で入るから」
オレ達は女性陣に先を譲り天幕の入り口の両隣に立つ。それを見た女性陣は風呂用の天幕に入る。その中からはきゃっきゃっと盛り上がる声と装備を外していくシステム音がなり湯船に浸かる音が聞こえてくる。そして・・・
「「はあ────────────────」」
さぞ湯船が気持ちいいのだろう。感嘆のため息が漏れて来た。
「タキ・・・」
「・・・なんだ?」
キリトはやたらソワソワした様子を見せて小声で話しかけてくる。それを見たオレはキリトに合わせて小声で返す。
「この精神攻撃にいつまで耐えていればいいんだろうなぁ・・・」
「まあ、30分は固いだろ」
この天幕の奥でミトは・・・いかん、煩悩退散。そう思いながらオレは瞑想する。確かもう少し上の層に行くと《瞑想》スキルが取れるらしい。今はそのスキルはないが瞑想しておねば。キリトも同じ結論に至ったのか、お互い瞑想し静かな時間が訪れていた。
出来ればミトとアスナの入浴シーン執筆したかったがどう足掻いても出来に満足できず泣く泣くカット。文才がなくてすまぬ