ソードアート・オンラインが始まってから一ヶ月たった。その間にも死者は千人を超えていた。タキは未だにミトを見つけることができなかった。ミトが行きそうな所やミトが使う武器である鎌の強化素材を集めることができるスポットを回ったが未だに見つけることが出来なかった。このままでは見つからないと思い彼は情報屋を頼ろうと探しているが中々見つからない。そのときタキは背後に気配を感じた。
「っ!」
「うわ!?なんダヨ!?」
背後から声をかけてきたプレイヤーにタキは槍を向ける。突然の事にプレイヤーは固まるが、タキはそのプレイヤーの両頬に三本のひげが生えている事に気づきプレイヤーの正体を悟った。このプレイヤーがタキが探していた情報屋であると。
「アンタは鼠か?」
「にゃは、そうだゾ」
ここでやっと彼はベータテスターにおいて最高の情報屋である鼠のアルゴを見つけることが出来た。アルゴの情報の精度はかなり高くかつ迅速に情報を仕入れてくるが、アルゴ自身のスタンスの影響で顧客の情報も売ったりするので彼女と話すだけでプレイヤーのプライバシーも関係ないので出来るだけ話すのに注意がいるのだ。
「単刀直入に言う。探して欲しい人がいる」
「どんな人なんダ?」
「そいつの名はミト。鎌を使う女性プレイヤーだ」
「おお、その顔で女性を探しているのカ」
「どういう意味だ」
アルゴの言葉でタキはジト目を向ける。アルゴはそれを意に解さず続ける。
「いや深い意味はないヨ。一体どういう関係なんだろうなって思ってナ。」
「残念ながらそれは言えないな」
「お姉さんに言えないのカ?」
「そこまで年離れてないだろう。それにアンタの事だ。下手な事を言えばさらにそれを情報として売っていく気だろ」
「ありゃそこまで読まれてタカ・・・」
タキの情報にアルゴは素直に感嘆する。気を取り直してアルゴは交渉を再開する。
「それじゃあフレンド申請送るがいいカ?
「ああ」
アルゴはタキにフレンド申請を送りタキはそれを受託する。
「名前は…タキネ。じゃあ、ター坊だナ」
「ター坊?」
自分に付けられたあだ名にタキは戸惑う。
「情報が出たら裏を取ってから伝えるからナ」
「わかった。それじゃあよろしく頼む。」
タキがその場を去っていく。そのときタキはアルゴに振り返った。
「そう言えば一個言い忘れてたな」
「なんダ?」
「
「!?」
「じゃあな」
今度こそ本当にタキは去って行き、その場にはアルゴだけが残された。その後ろから一人の男が現れた。その男は身長が高く纏う空気は飄々としており、掴み所がない。
「聞いてたカ。ゲイル」
「いや〜。まさか気づかれると思いわなかったッスよ」
「どんな嗅覚してるんだろうナー」
「笑い事ですか?これ…あの人の探し人はおそらく圏外に出てることが多いっスね」
「それはオレっちにも分かる。だから圏外での捜索を頼めるカ?オレっちは圏内で目撃情報を洗うつもりダ」
「わかりました。情報が入り次第伝えますからメッセージを見ててくださいね」
ゲイルは影に溶けるように消えた。その消え方にアルゴは溜息をつく。
「ほんとにあいつの消え方はどうなってるんダカ。いつかオレっちも知りたいネ」
数日後
タキはあるレストランに入りテーブルに付いていた。
そこにアルゴが声をかける。
「ヤァ。ター坊」
「アルゴ…メッセージは本当か?」
「ああ。本当だとモ。確かにお前が話してくれた情報と彼女は一致する。どうやら彼女はビギナーの女性プレイヤーと行動しているようダ」
「そうか。だが本当にホルンカにいるのか?あそこには強化素材とかも無いんだぞ」
「だがそこにいるのは間違いないサ」
「そうか・・・いくらだ?」
「500ダ」
それを聞きタキはトレードメニューを出しアルゴに500コルを払う。
「ありがとな」
「毎度。今後も御贔屓にナ」
タキはレストランから出てすぐさまホルンカに走った。
アインクラッド第1層
ホルンカ
ネペントの森
俺は《リトル・ネペント》を狩りながらミトを探していた。《リトル・ネペント》は単独ではそこまでの脅威ではない。問題は数と実付きと呼ばれる個体がいることだ。数は一度の出現で2体か3体出てくる。そしてその中に混じっている実付きは倒されると実が破裂し音と煙で仲間を呼ぶという厄介な能力がある。よって実付きと出会ったら戦闘は避けるべきものだと言われている。ここで目の前に3対の《リトル・ネペント》が出現した。
「数が多いな。これじゃあ先に進むのも一苦労だ」
《リトル・ネペント》の厄介さに辟易する。ミトを探そうとここに来たのに全然探せない。
パァアアアアアアン
そのとき森に破裂音が響いた。この音は実付きが倒されたときの破裂音だ!だが、どうして・・・まさか!
「ミト達が実付きを倒しちまったのか!」
ネペント達は俺を無視して別の方向に向けて走り出した。その方向には煙が上っている。俺はすぐにその方向に向かう。煙が上っている位置に着くとネペント達が崖下を走っているのを見つける。奴らが追っているのは…鎌をもった女性プレイヤーだった。
「ミト・・・やっと見つけた!」
すぐにでも助けに行きたいが《リトル・ネペント》の集団が邪魔だ。俺はここでは倒すことはせず、ミトを追うことを優先するが《リトル・ネペント》の集団がしつこく追ってくる。崖下に向かう棺桶もなく、ここから落ちれば、死ぬ可能性があり安易に飛び降りることができない。
いや・・・
そんなこと考えてる場合じゃない。飛び降りたら死ぬのなら生身で飛び降りなければいい。
追ってきたネペント達に《両手槍》スキル単発技《ロウ》を発動させる。このスキルは《グレイブ》と違い下段突きの技である。この技は威力が低いが体勢を崩すことが可能だ。なおさら…
グガ!?
俺を追うのに必死ならば余計に体勢が崩れやすい。先頭の《リトル・ネペント》の体勢が崩れたことで後ろの個体がそれに躓き転倒する。ここがねらい目だ。
「フッ!」
目の前で転倒した《リトル・ネペント》を崖下に蹴り飛ばしその上に飛び乗る。そうすれば、コイツをクッションにして、
「ダメージを軽減できる!」
《リトル・ネペント》をクッションにして着地する。《リトル・ネペント》は衝撃で消滅する。おれのHPは少し
削れただけで済んだ。だが、この衝撃で気づかないわけはない。
シュウウウウウウ!
気づいたネペント達が牙を向く。それは目の前に餌が放り込まれた動物のようだ。それに対し笑みを浮かべる
「上等だ・・・」
ネペントを撒いた私は洞窟に身を隠していた。
「私の、せいだ・・・」
それは自身の行動に寄って引き起されたことだ。あのときもし私がレアアイテムにこだわらなければアスナは死なずに済んだかもしれないのに。私が目を離さなければ、アスナは実付きを攻撃してしまうこともなかったのに。あとからあとから後悔ばかりが浮かんでくる。極めつけは、
『・・・ごめん・・・アスナ・・・約束、守れない・・・っ・・・・』
私とアスナのHPの残量、ネペント達の数に私は恐怖し心が折れてしまったこと。アスナのHPが消えるの見たくなくてパーティーを離脱したことが心の傷を広げていく。そのとき一つの足音が聞こえてきた。その音はまるで死神が罪人の魂を奪いに来たように感じた。
「あぁ・・・」
もう私は戦えない。アスナを殺しておいておめおめとリアルに帰ることなんてできない。私の手から鎌が滑り落ちる。現れた影は最小限の鎧とマントをつけ槍をもっている。人影の顔は洞窟内が薄暗くよく見えなかった。
「私・・・ここで・・・死ぬのね」
「ここでは死なせない。絶対にな」
この声は・・・だけどありえない。だって彼は・・・
人影の顔を見て私は確信する。
「タキなの・・・」
「ああ。久しぶりだな。ミト」
というわけでオリキャラの登場です。タグも追加しました。