三日後、屋内プールにはエトワール女学院の全生徒が集まっていた
そして、全員の注目はもちろん、明久と悠に集まっていた
『只今より、吉井明久さんと桐島悠先輩による、水泳メドレー勝負を行います! 司会は私、放送部の新井祥子がお送りします!』
と元気の良い放送がされているが、明久と悠は黙々と準備運動をしていた
すると、悠の傍に居た麗が明久に近づき
「吉井明久! 今日であなたはこのエトワールから去ることになるわ、せいぜい最後の時を楽しみなさい!」
と勝ち誇った様子で言うが、明久は黙々と準備運動を続けていた
すると、麗はコメカミに青筋を浮かべて
「ちょっと、聞いてますの!?」
と怒鳴ると、明久はキョトンとした表情で
「あ、なんか言った?」
と首を傾げた
実を言うと、明久には何かしらに集中すると、周りの音が聞こえないという欠点があった
明久としても直したいが、如何ともし難い
「こ、この……っ!」
麗が怒りで顔を真っ赤にしながら、続けて言おうとしたら悠が麗の肩に手を置いて
「麗、それ以上の侮辱的発言は、星令会副会長として見過ごせないよ」
と語気を強くしながら、断言した
すると、麗は悔しそうに口を噤むと
「わかりましたわ……ふんっ!」
と去った
悠はそれを溜め息混じりに見送ると、視線を明久に向けて
「大丈夫だよ、明久君。明久君は絶対に、僕たちが助けるから」
と言うと、右手を差し出して
「だから、全力で勝負しよう」
と言った
すると、明久は頷いて
「こんな形ですが、お互いに全力を尽くしましょう」
と言いながら、悠と握手した
そして、悠は意識を内偵しているだろう雅と巴に向けて
(頼むよ……雅君、巴君……)
と祈った
その頃、雅と巴は
「なかなか見つからないわね……巴、そっちはどうかしら?」
「まだ見つからないです、お姉さま……」
風紀委員会の会室で、机の上や引き出しの中の書類を調べていた
悠は麗が何かしらの違反をしていると考えて、先生にも内緒で風紀委員会の会室の鍵を雅に渡していた
そして雅は、その渡された鍵を使って風紀委員会会室に侵入
悠に頼まれた通り、麗の不正の証拠を探していた
しかし中々見つからず、探す場所を変えようかと考えていた
その時だった
「っ! お姉さま!」
と巴が雅を呼んだ
「どうしたの?」
「これが捨ててありました」
雅が問い掛けると、巴はクシャクシャになっていた一枚の紙を雅に手渡した
その紙には
《トイレの使用マナー悪化に伴う、見回りの強化について》
という題名が書いてあり、更には麗を始めとする風紀委員会全員の署名すらあった
(風紀委員会全員の署名があるということは、れっきとした議事録の筈……なんで、捨ててあるの?)
と雅が首を傾げていると、悠から預かっていたファイルを開いた巴が
「お姉さま! これ!」
ともう一枚の紙を掲げた
「それは?」
「悠先輩から預かった、件の紙です!」
雅はその紙を受け取ると、二枚を見比べた
そして、何かに気づいたのか、その二枚を照明に掲げながら、重ねた
すると、風紀委員会全員の署名がピタリと重なった
「完全に一緒……しかも、これは!?」
雅はクシャクシャの紙の裏を見て、あることに気づいた
その紙の裏には、僅かながらに黒い跡が付いていたのだ
「巴! もう一回ゴミ箱を探して! 多分、アレがある筈よ!」
と雅が言うと、巴はもう一回ゴミ箱を探し始めた
すると、巴は軽く目を見開いて
「お姉さま!」
とソレを掲げた
ソレはまさしく、雅が目論んだ通りの物で、証拠もクッキリと残っていた
雅は笑みを浮かべて頷くと
「行くわよ!」
「はい!」
巴と共に、風紀委員会会室から駆け出した
不正を正すために
何よりも、明久のために