僕と水泳とお嬢様   作:京勇樹

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さて、そろそろアンケートをするかな


準決勝戦

準決勝戦第三試合が始まってから、数十分経過

試合は巴の気迫もあり、巴の優勢に進んでいた

しかし、明久は気付いていた

本来だったら、右腕で打つべき場面で巴は左腕で打っていた

痛みが、大分強くなっているのだろう

だから明久は、タイムアウトを取って右手首の処置をしていた

 

(これは、酷いな……)

 

明久は処置しながら、内心でそう思った

もはや右手首は真っ赤に腫れており、見るだけで痛々しい

本当だったら、今すぐ棄権して病院に行かせるべきだろう

しかし、巴はそれを望んでいない

明久としては止めたいが、それに反して止めたくないとも思っている

二律背反

矛盾した思い

それは、明久が一番分かっている

今ここで止めたら、ずっと後悔すると確信していた

だから止めない

故に明久は、自分に出来る処置を全てした

スプレーで冷やし、剥がれかけていた湿布を新しいのに交換し、その上から右手首を固定するように固くテーピングした

そして、最後にリストバンドを優しく着けた

 

「巴ちゃん。分かってると思うけど、僕のはアマチュアの付け焼き刃だ。あんまり右手は使わないようにね?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

明久の言葉に巴は頷きながら返すと、ラケットを持って立ち上がった

点数から見て、これが最後のタイムアウトだろう

これ以降明久に出来るのは、巴の無事を祈るだけだった

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

「ゲームセット! 勝者、日秀巴!」

 

十数分に渡る接戦の結果、巴が押し勝った

明久から見たら、どっちが勝ってもおかしくなかった

観客もかなり興奮したらしく、拍手喝采だった

そして二人は、コートから出て会話していた

 

「流石ね、巴。予想以上の腕前だったわ」

 

「彩乃先輩こそ、流石の腕でした。流石は、女子シングルス優勝者です」

 

二人はそう会話しながら、握手した

その瞬間

ほんの一瞬だったが、巴の顔が歪んだ

その表情の変化に、明久は気付いた

その直後、彩乃が巴を抱き締めた

明久はそれが予想外だったので驚いたが、数瞬後に巴が目を見開いた

そして、彩乃は離れると巴の頭を優しく撫でてからコートを去った

彩乃が去って少ししてから、巴もテニスコートから出た

そして、明久は巴と合流するとすぐに処置を始めた

今は少しでも処置し、右手首の痛みを少しでも和らげることが重要だった

そして幸いと言うべきか、巴と彩乃の準決勝が長かったので決勝まで予定よりも長い時間休憩時間が設けられることになった

だから明久は、巴を人気の無い所に連れていって処置を始めた

幸いなのだろう

今の明久は、テニス部の仮マネージャーみたいなものである

故に、明久が巴を連れていることになんら問題点は無いし、肩からバッグを掛けているのも問題は無かった

そして明久は、処置しながら

 

「巴ちゃん。さっきなんかあった?」

 

と巴に問い掛けた

 

「え?」

 

「さっき、彩乃先輩に抱き付かれた後に、なんか驚いてたでしょ?」

 

明久がそう再び問い掛けると、巴はああと納得した様子で

 

「それがですね。『無理しないでね』って言われたんですよ」

 

と答えた

それを聞いて、明久は

 

「それって……気付かれてたってこと?」

 

と巴に視線を向けた

 

「はい……彩乃先輩はあれで、結構気配り上手ですし、観察力も高いですからね」

 

「なるほどね……っと」

 

巴の説明を聞いて、明久は納得しながらも処置を終えた

そして、ゆっくりと動かしてる巴に視線を合わせて

 

「巴ちゃん。これだけは約束して……決勝戦が終わったら、絶対に正規の治療を受けてね?」

 

と真剣な表情を浮かべながら、そう言った

それを聞いて、巴は頷きながら

 

「はい、わかってます……絶対に、勝って終わらせます!」

 

と宣言した

そして約一時間後、決勝戦の時間になった

決勝戦の相手は、雅だ

雅と巴は、ネット越しに握手しながら

 

「悔いの無いようにしましょう」

 

「そうですね。全力で、最後まで競いましょう」

 

と言って、離れた

ここに、二人の運命を決める試合が始まる

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